ULTRA WORLD
ウルトラマン


第30話後編

ウー撃退の行動を起こしたアラシ、イデ両隊員は、
ビートルで上空からウーの姿を求めて白い大地をくまなく見渡した。

「どこに隠れてるんだろう」
やる気に満ちたアラシ隊員だが、眼下は白い雪ばかり。
ウーの姿はどこにも認められない。
「あれが問題の谷間だな。ようし、一発ぶち込んでみるか」
積極果敢なアラシ隊員がロケット弾の発射スイッチに手をかけた。

「アラシ、待ってくれ」
それまで沈痛な面持ちだったイデ隊員が、
その言葉で顔をあげアラシ隊員を制止した。
驚き振り向くアラシ隊員。

イデ隊員はアラシ隊員から目をそらす。
「なんだか今度の事件は、ひどく気が重いんだ」
「もうそれを言うな。
 怪獣は所詮、人間社会には入れてもらえない、悲しい存在なんだ」
気が重いのはイデ隊員だけではない。
だが命令は命令だ。ウーを退治しなければ村が壊滅する。

しかしイデ隊員は割りきれなかった。
「ボクにはウーが、
 15年前に死んだ雪ん子の母親の身代わりのような気がするんだ。
 ひょっとすると、母親の魂が今でもユキのそばに・・・」
「おい!いい加減にしないか!ウーを退治することは本部命令なんだぞ。
 今はそんな感傷に浸っている場合じゃない!」
業を煮やしたアラシ隊員がイデ隊員を一喝する。

「行くぞ!」
戦意喪失のイデ隊員に構うことなく、
アラシ隊員は谷間に向かってロケット弾を打ち込んだ。



村人たちの包囲網を抜け、逃げる雪ん子。
村人たちも逃がさんとばかり後を追う。
「待て!」
「雪ん子、もう逃がさんぞ」

鍛えられた猟師たちより、雪ん子の体力が先に尽きた。
散々追い回され、走り通した雪ん子は力尽き、雪の中に倒れ込んだ。

もう動けない。
雪ん子は雪山に助けを求め、叫び声をあげた。
「ウー!ウーよ!!」
凍てつく空気を切り裂くように、雪ん子の声は山にこだまする。



「ウー!」
風は叫び続ける雪ん子のその声を、主の元へ届けるべく雪を舞わせて流れ出す。

幕のように舞った雪の中に、ウーは姿を現した。
風が運んだ娘の声を、ウーは確かに受け取った。、
ウーは今、雪ん子のために、雪ん子を助けるために、
ここに姿を現したのだ。

「うわぁ!!」
突然ビートルの目の前に現れたウーに、
アラシ隊員はあわてて上昇、体制を整えなおし攻撃に入った。
ビートルのロケット弾が次々とウーに襲いかかる。

しかしウーは一向に弱る気配がない。
見かけによらず強靭な体を持っている。

「ウー!ウーよ!!」
雪ん子が叫ぶ。
暴れ狂っていたウーが急におとなしくなった。
いや、おとなしくなったのではない。冷静になったのだ。
ロケット弾がウーの頭部に命中した。
が、それでもウーは暴れない。

ウーはビートルの動きを観察していた。
雪ん子の声で冷静さを取り戻したウーは、
頭上を飛び回るビートルに反撃の機会を狙っていた。

ビートルが近づいてくる。
ここぞとばかりウーは山の山頂を手ではたいた。
山頂付近は爆発したかのように大破し、大量の雪がビートルにかぶさった。
この攻撃にさすがのアラシ隊員もビートルをコントロールできなくなった。
ビートルはバランスを失い雪原に不時着。戦闘不能となってしまった。



ビートルはかたずけた。
あとは雪ん子を救出するのみ。
ウーは雪ん子を襲う村人たちを蹴散らさんとばかりにゲレンデに歩を進めた。

「ハヤタよりビートルへ!ハヤタよりビートルへ!
 イデ、アラシ!どうしたんだ!!」
ビートルに無線を飛ばすハヤタ隊員。だが応答はない。
そうしているうちにロッジにウーが近づいてくる。
もはや猶予はならない。
ハヤタ隊員は胸ポケットからベータカプセルを取り出すと、
頭上に高く突き上げた。



ウルトラマンの登場だ。
ロッジを挟んで対峙するウルトラマンとウー。

ウーが先に仕掛けた。
邪魔する者は許さない。
ウーはウルトラマンに向かって一直線に突っ込んだ。
冷静なウルトラマンは軽くいなして突き飛ばす。
ウーはそのまま頭からロッジに突っ込んだ。



このやり取りでお互いがお互いの力を知った。
ウーは間合いを取りウルトラマンの隙を窺い、
ウルトラマンもむやみには仕掛けない。
白銀の世界でにらみ合いが続く。

両者同時に飛び出した。
ウーの突進力を利用し投げ飛ばすウルトラマン。
ウーもすかさず起き上がり、またしても組み合う。
どうやら力はウーのほうが一枚上のようだ。



ウーはウルトラマンと組み合うと足を払って横倒しにし、その上に馬乗りになった。
怒りの形相でウルトラマンの首を締めあげるウー。

やっとのことで隙を見つけ、ウルトラマンはウーを払いのける。
そして足を狙って再突進してきたウーの頭部をがっちり押さえ、
強烈なひざ蹴りを額にお見舞いした後、首投げで雪原に転がした。

さすがのウーもこれでグロッキーになる。
最後の力を振り絞り立ち上がるウー。
ウルトラマンは腕を十字に組んだ。
スペシウム光線だ。



しかし、とどめの一撃を放とうとしたその時、
ウルトラマンの耳に、雪ん子の叫び声が届いた。
「ウー!ウーよ!!」
雪ん子の声を聞き取った雪山の風が、
ウルトラマンとウーの周りに雪を舞わせ、
あたり一面が白一色に覆われていく。

「ウー!」
ウルトラマンは十字に組んだ腕の力を抜いた。
目の前に立つウーに、もはや殺気も戦意も感じなくなったからである。



あたりはいつしか吹雪となった。
ウーはその吹雪の中で、もはや暴れることも忘れ
雪ん子の声に導かれるかのように天を仰いでいる。

そして・・・
白い雪と風に誘われ、ウーは姿を消していった。

ウーが去り、ウルトラマンも白い空の向こうに去った。
白い大地に静寂が戻る。
その中に、
雪に倒れたままの雪ん子の姿だけが残されていた。

いつか猟師の罠から助けた白ウサギが雪ん子の周りを跳ねようとも、
冷たくなった雪ん子は動かない。
汽車の汽笛と風の音だけが、雪ん子の優しい心を、
山の奥へと運んでいった。



「おい!」
不時着したビートルの中で気を失うアラシ、イデ両隊員を
後ろからゆすり起こす者一名。
「おおっ!ハヤタ!いつの間に。足は大丈夫か!?」
目を覚ましたアラシ隊員が笑顔で叫ぶ。
「科学特捜隊の隊員が、ネンザしたくらいで休んでいられないからね」
お返し、とばかりにハヤタ隊員は笑って答えた。

「それで、ウーは?」
不安そうに尋ねるイデ隊員。
「幻のように消えてしまったよ。やっぱり伝説の怪獣だったんだ」
なだめるようにハヤタ隊員が話して聞かせる。

「そうか・・・
 雪ん子は、どうした?」
「山へ帰ったそうだ」
ハヤタ隊員の答えを聞いたイデ隊員は、そっと静かに微笑んだ。

「やっぱりそうか。
 オレはこんなことを考えていたんだ。
 雪ん子って女の子は実際にはいなかったんじゃないかって。
 オレたちの会っていた女の子は、雪山の幻だったんじゃないかってね」
イデ隊員の話に、アラシ隊員の心も溶けていく。

「そうかもしれん。可愛い娘だった。
 あんな清らかな心の持ち主には、
 二度とふたたび、会うことはないような気がするな」
本当は戦いたくなかった。いや、戦うべきでなかったのか。
アラシ隊員とイデ隊員は、ウーと、そして雪ん子の姿を思い浮かべていた。

そんな二人の肩を笑顔で叩いくハヤタ隊員。
「さあ、帰ろう」
戦いは終わった。
深紅のジェットビートルは白銀の山に浮かび上がり、
雪ん子の思い出を雪山に残し、本部へと帰還した。

先週春一番が駆け抜けた東京ですが、今回は寒さ一番、雪山のお話です。
ウー、そして雪ん子が大活躍してくれました。

実はこのお話、書きたくて書きたくてしょうがなかったお話なんです。
元々ウルトラワールドを始めた時、ウルトラセブンを書く予定だったのですが、
このお話があったからウルトラマンにしたという個人的いきさつがあります。

それだけに今回は特に力を入れてみました。
返ってくどい文章になって読みづらいかもしれませんが、
今回に限り自己満足が勝りました。
なにとぞお許しください。

「ウー!」と叫ぶ少女の声。
記憶に鮮明に残っておられる方はかなりいらっしゃるようで、
この少女を演じた富永幸子さんをネットで探している人もいるみたいです。

村人から迫害され、追いやられ、
それでも仲間に入れてもらおうと努力する雪ん子の姿。
それが見る人の共感を呼び、名作と呼ばれるようになったんでしょう。
せめて母親が生きていれば・・
せめて育ての親のおじいさんが生きていれば・・・
そう思わずにはいられないほどのめり込んでしまいました。

子供のころはこのお話、それほど面白くなかったのですが、
大人になるにつれ、重さが分かってくるにつれ、
思い出す回数も増えていくようです。
今でも立派に通用するお話だと思います。

それから、今回はムラマツキャップとフジ隊員は完全休養。
一度も出演がありませんでした。
話にのめり込んでいたため、気がついたのはかなり後になってなんです。
あれ?そういえばムラマツキャップって一度も書いてないぞ、ってね(笑)

でもムラマツキャップはいつも忙しく働いているし、
フジ隊員は前回のゴルドン戦で負傷してますから、
今回お休みでもいいのかな?なんて思ったりして(笑)

最後、雪原に倒れたまま動かない雪ん子の姿がありました。
雪ん子は死んでしまったのか?
それとも・・・ハヤタ隊員の報告通り山へ帰ったのか、

いろいろ思い悩みましたが、結局考えないことにしました。
だって、雪ん子はみんなの心の中に生きているんですから。

なんてキザなセリフを残して、今回は終了したいと思います(*^^)v

さて次回はオカルト的なお話。
怪獣?植物?
はたしてその狙いは??
こんな不気味なヤツが大暴れです。



次回もぜひお付き合いください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

あ、ちなみに、雪ん子を見ていて「風の谷のナウシカ」とダブったのは私だけでしょうか???

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