| ULTRA WORLD ウルトラマン 第31話前編 |
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| 科特隊本部はその日、一人の来客を迎えていた。 ムラマツキャップとその横に立つ、外人風の顔立ちをした男。 ムラマツキャップは隊員たちに彼のことを紹介し始めた。 ![]() 「諸君も知っての通り、科特隊南アメリカ支部に 特派員として加わっていたゴトウ君が20年ぶりで帰還した。 しばらく静養したら、今度は日本で、諸君と一緒に働いてもらう。 ま、仲良くやってくれ」 笑顔で話すムラマツキャップだが、 「いや、ちょっと待ってくださいよキャップ」 アラシ隊員が少々焦り顔で手を挙げた。 「20年ぶりに帰ってきたんでしょ!? だって、ゴトウ隊員はどう見たって、なあ」 アラシ隊員はイデ隊員の顔を見る。 イデ隊員が一歩進み出た。 「30そこそこの年に見受けられますが」 そう、このゴトウ隊員。勤続20年にしては年が若いのだ。 ムラマツキャップは含み笑いをしながらゴトウ隊員を促した。 「ゴトウ隊員。君の年齢は?」 「30です」 ゴトウ隊員は事もなげに答える。 しかし、それでは逆算すると・・・ 「ええっ!?す、すると、あのお・・・」 イデ隊員は驚きの余り言葉が出ない。 代わりにハヤタ隊員がみんなの気持ちを代弁した。 「もう10の頃から科特隊で働いていたんですか?」 ムラマツキャップは、今度は声をあげて笑いだすと、 「ゴトウ隊員、君から説明してやってくれんか」 と再びゴトウ隊員に説明を促した。 ゴトウ隊員はゆっくりと経歴を話し始める。 「私が、科特隊員である父と、南米ボリビアに渡ったのは、 今から20年前、私が10になった時です。 父は、仕事中にそこで亡くなり、一人ぼっちの私は、 特に許されて、科特隊南アメリカ支部の見習いとして働き、 認められて正隊員になったのです」 「じゃあ、私たちの大先輩ってわけですね」 笑顔がはじけるフジ隊員。 「しかし、よく日本語を忘れなかったですね」 感心しきりのアラシ隊員。 まだ緊張しているのか、ゴトウ隊員は表情を崩すことなく、 その不安を口にした。 「もう忘れそうです。日本のことも、ほとんど分かりません」 その言葉を聞いてしゃしゃり出たのはイデ隊員だ。 「そうでしょうそうでしょう。無理もないです。 トウキョウタワー、高速道路、高層ビル、競技場。 20年間にはなんと大きな変化と成長があったことでしょう。 よろしい!私ことイデ隊員が、 大トウキョウの新名所をゆっくりご案内いたしましょう!ねっ!!」 いつもの調子で軽くゴトウ隊員の肩を叩くイデ隊員だが、 「おいイデ」 「はっ?」 「科特隊員はガイドもやるのかね」 「あっ、いや、あのお、そのお・・・はぁ・・」 これまたいつものようにムラマツキャップに出すぎた頭を押さえこまれ、 ガイド役はあっさりあきらめる始末である。 「キャップ、ゴトウ隊員の泊まる場所ですが」 「うん、それなんだがね」 ひとり冷静なハヤタ隊員の言葉に答えを返そうとしたムラマツキャップが、 パイプをくわえ火をつけようとした時だった。 ムラマツキャップの出したライターに、ゴトウ隊員の視線が走った。 無論誰も気づかない。 ![]() 「キャップ、ガスが切れてるんじゃないですか?」 ムラマツキャップのライターは全く発火しない。 フジ隊員が持ってきたマッチをムラマツキャップの前で擦る。 「あら、おかしいわ」 マッチも発火しない。 ついてもすぐに消えてしまうのだ。 「エアコンディションが壊れたかな」 ハヤタ隊員もいぶかしげだ。 「イデ、ちょっと調べてきてくれ」 「はい」 ムラマツキャップの命令に走るイデ隊員。 その時ゴトウ隊員が話しかけた。 「キャップ、私疲れてます。早く休みたいのですが」 「おう、すまんすまん。うっかりしていた」 パイプの火に気を取られていたムラマツキャップは、 ゴトウ隊員に頭を下げた。 「科特隊のレストルームに入ってもらったらどうでしょう。 あそこならホテル並みだし」 ハヤタ隊員は最初からそう考えていたのだろう。 すぐさまムラマツキャップに進言した。 ムラマツキャップも他に考えもなく、即座にハヤタ隊員の考えを採用した。 「うん。フジ君。案内してやってくれんか」 「はい」 フジ隊員を案内に、ゴトウ隊員はレストルームへ向かう。 しかしその途中、彼は奇妙なことをフジ隊員に聞き始めた。 「フジ隊員。この建物は何製ですか、なんで出来てます?この建物」 「ああ、普通の鉄筋コンクリートよ」 「いや、その鉄筋の中に特殊な合金が加えてある。 あなたはそれを知りませんか?」 「知らないわ。 でも、そんなことはごく一部の人しか知らない、秘密事項でしょ」 「秘密事項・・ね・・・」 「どうかしましたか?」 「いや・・・」 突然意味不明な事を聞かれ、いぶかしげなフジ隊員。 ![]() 「キャップ、コントロールチェンバーの方は何も異常を認めていません」 「うーん、そうか」 イデ隊員からの報告を受け、途方に暮れるかのようにつぶやくムラマツキャップ。 だがこの一連の小さな異変を、イデ隊員は敏感に感じ取っていた。 「なんとなく奇妙ですね」 「何が!?」 「いや、今のゴトウ隊員ですよ」 「またまた、イデの勘ぐりが始まったな」 素直に感じたことを話すイデ隊員に、アラシ隊員がかみついた。 「20年も日本から遠ざかっていたんだし、記憶だって子供の時のままだ。 チグハグなことだって出てくるさ」 ハヤタ隊員もゴトウ隊員の弁護をする。 しかしイデ隊員は一度勘ぐり始めたらおさまりがつかない。 「いやいあや、ボクの言わんとしていることはそういうことじゃないんだなあ。 つまりその、なんて言いますかね、生理的って言うか、 あるいはこの、本能的と言うか・・・」 ハヤタ、アラシ両隊員はあきれ顔でイデ隊員を見るが、 ひとりムラマツキャップだけは腕組みをして考え込んでしまった。 そのころ、レストルームに到着したフジ隊員は、 ゴトウ隊員を部屋へ招きいれ、 「どうぞ、ゆっくりお休みください」 彼が部屋に入ったことを見届けると、自分はさっさと引き揚げた。 その後部屋の中でゴトウ隊員が奇妙な行動を取ることなど知る由もなく・・・ 「キャップ、イデの言うことも分かるような気がしますね」 「うーむ・・・」 あまり真剣に話すイデ隊員に、アラシ隊員が同調しはじめた。 そうなるとムラマツキャップも捨ててはおけない。 腕を組み、下を向き、益々もって考え込むムラマツキャップ。 「じゃあ君たちは、あのゴトウ氏が謎の怪人物だといいうのかね」 ハヤタ隊員が一人、ゴトウ隊員を弁護した。 「どうしたんだみんな!ゴトウ氏の顔写真もちゃんとリストの中にあるし、 経歴だってさっき彼がしゃべった通りだ。 疑う余地はないじゃないか。うん?」 高笑いをし、ハヤタ隊員は皆の顔を見回す。 確かにそうだ。ハヤタ隊員の言う通りだ。 しかしそれでも納得いかないイデ隊員は、 ムラマツキャップに確認を求めた。 「キャップ、ゴトウ氏に、光線による身体検査はしたんですか?」 イデ隊員に問われ、ムラマツキャップはいつになく狼狽した。 「いや、突然の来訪だったし、珍客だったんで、 すっかりその方に気を取られてしまって、ちょっと、それだけが気がかりなんだがね」 らしくない歯切れの悪さでつぶやくムラマツキャップ。 そこへフジ隊員が戻ってきた。 「あっ、どうだったフジ君、彼の様子は」 「失礼な男よ。態度にデリカシーってものがないわね。 向こうではあんなのが流行ってるのかしら」 アラシ隊員が声をかけるが、それに答えるのもわずらわしいといった顔つきだ。 こちらもいつになくおかんむりの様子である。 執拗にゴトウ隊員を疑うイデ隊員が、その様子を聞いた。 「あの何かその、何か変わったことはなかったかい? そおっとおしりを見たら、こう、しっぽが生えていたとか」 「分からなかったけど、ちょっと変なこと言ってたわ。 科特隊本部は何で出来てるかって」 「決まってますよ。鉄筋コンクリート」 「いや、その鉄筋の中に、特殊な合金が加えてある」 嫌みのつもりなのか、フジ隊員はゴトウ隊員のモノマネで答える。 ムラマツキャップが急にどなり声を張り上げた。 「待て!フジ君、ゴトウがそう言ったのか!?」 「はい」 「イデ!ボリビア支部と連絡を取って彼の身元を洗え!!」 「了解」 ![]() キャップの態度の急変にハヤタ隊員があわてて近寄った。 「キャップ、やっぱり怪しんですか?」 「この建物には、外部からの不意の攻撃に備えて、 あらゆる熱線光線を阻止する特殊な合金が加えてある。 その合金の組織と成分が敵に漏れた場合、 科特隊の防備は紙よりも薄くなってしまうんだ ゴトウ隊員が科特隊の極秘事項を知っていても不思議はないが、 軽々しく口にする所はちょっとクサいな」 イデ隊員の直感にフジ隊員が確証を与えた。 ムラマツキャップの頭の中は、ゴトウ=不審者の考えで埋め尽くされた。 「キャップ、ダメです」 イデ隊員が叫んだ。 「ダメ!?」 「ボリビア支部との連絡が取れません」 「ハヤタ、調べてくれ」 「はい」 次々と指令を飛ばすムラマツキャップは、 自らも通信機の前に立ち、その異変を目で確認する。 「不思議だ・・・電波磁気圧も全く異常ありません」 計器を調べたハヤタ隊員も納得できないという顔つきだ。 「それで受信されないということは、電波が途中で消えてしまったということか!?」 こんなことは初めてだ。一体何が原因なんだ。 さすがのムラマツキャップも打つ手が思い浮かばない。 そこへ別の通信をキャッチしたフジ隊員がムラマツキャップにメモを渡した。 「キャップ、こんな通信が入りました」 「タカラ市において、奇妙な植物の発生を見る。 青緑色の、キノコに似た形態で、発芽後12時間を経過し、 その全長五十数センチ、24時間後に約2メートルとなる」 確かに奇妙だ。通報があった以上調べなくてはならない。 科特隊本部はゴトウ隊員を一時後回しに、タカラ市へと急行した。 ![]() 「こいつはすげえや」 呆れたように見上げるイデ隊員。 小学校の校庭のど真ん中に、確かにとてつもなくドでかい、 キノコのような緑の物体が根を生やし生えている。 それはこの校庭だけでなく、タカラ市の何箇所かに点在し生えていた。 「ほら見てください。せっかくの庭園がメチャメチャです。 これはきっと、この美しい庭をねたんだ者の仕業です」 庭に生えたキノコに景観を害され、怒りをぶつける主。 「ほら、下がって下がって、近寄っちゃダメだ!」 珍しいキノコを一目見ようと集まった子供たちを、アラシ隊員が抑えていた。 とにかくこのままじゃらちが明かない。 科特隊は植物学者の権威であるニノミヤ博士に分析を要請した。 一通りの調査を終えたニノミヤ博士と科特隊は、博士の研究所に向かった。 「キノコはご存じのように、胞子から発生するものですが、 あの植物には、その証拠が見当たりません」 ニノミヤ博士はまず分析の結果を説明しはじめた。 「すると、単なる植物ってわけですね」 単なる、でかたずけようとするアラシ隊員に、ニノミヤ博士は釘をさした。 「さあ、単なると言えるかどうか。 いやまあ、植物には間違いありませんね」 ![]() ハヤタ隊員が一番心配なことを尋ねる。 「ほっとくと、人間に危害を加えるようなことはあるでしょうか」 「皆さんは食虫植物のことをご存知ですか」 「ええ知ってます。 ハエトリ草やモウセンゴケのように、虫を食べて生きてる植物のことです」 「そう、マレー産のウツボカズラ。北アメリカ産のサラセニアなどもそうです。 これらはいずれも、じっと虫の寄ってくるのを待ち構えていて、 花や葉に触れた虫から、栄養を吸収するわけですが」 そこまで言うとニノミヤ博士はすっと立ち上がり、 書棚にある何冊かの資料を手に取った。 「今からざっと20年前、南米アマゾンの奥深く踏み入って、 恐ろしい植物を発見した人がいます。 人は信じないかもしれませんが、この植物は歩くんです」 「歩くぅ???」 ハヤタ、アラシ、イデ隊員は同時に驚きの声を上げた。 ニノミヤ博士はその反応を予測していたかのように笑いを浮かべ、 資料を開いて3人の前に差し出した。 「信じてもらえるように言い直すなら、 移動することができるんですよ。 そして、ある強力な力で動物を抹殺し、その血を吸って栄養源にしています」 「そんな!そんなバカな!?」 あまりに常識はずれなニノミヤ博士の説明に、イデ隊員は驚愕の表情だ。 「いや、信じてもらえるとは思いません。今までもそうでした。 だが、今度タカラ市に出現した怪奇植物は、 そのアマゾンに住む吸血植物ケロニアに、非常によく似ています」 「ケロ、ケロ、ケロニア!?」 イデ隊員はすでにパニック状態。 代わってアラシ隊員がニノミヤ博士に聞いた。 「一体、そのケロニアっていうドラキュラみたいなやつが、 本当に居たっていう証拠はあるんですか」 「これが、私の恩師でもある、ケロニアの発見者、ゴトウジロウ先生の残された、 貴重な資料の中から生まれた、吸血植物の想像図です」 ニノミヤ博士はケロニアの想像図を3人に見せる。 ケロニアの絵をのぞきこむアラシ、イデ両隊員。 だがハヤタ隊員はさっきの話に出てきたニノミヤ博士の一言が頭に引っかかった。 「待ってくださいニノミヤ博士。 20年前アマゾンでこの植物を発見した人は」 「私の一生を通じてただ一人の恩師、ゴトウジロウ先生です」 「ゴトウ!?」 ![]() そのころゴトウ隊員の部屋にはフジ隊員が潜り込んでいた。 フジ隊員はゴトウ隊員をすっかり疑い、なにか尻尾をつかんでやろうと息巻き、 ゴトウ隊員の留守を狙って潜入したのである。 部屋を見渡せば、何やら変な機材、計器が並べられてある。 「変だわこの機械。コードもなくて、電気はいらないのかしら」 フジ隊員は小型カメラで手当たり次第に写真を撮った。 しかしゴトウ隊員はどこへ行ったんだろう。 そんなことを考えながらフジ隊員がクローゼットの前に立った時、 クローゼットがいきなり開いたかと思うと、 その中から、なんとケロニアが姿を現したのだ。 丸腰のフジ隊員はすぐに追い詰められ、ケロニアの麻酔光線を浴び、意識を失った。 ![]() ニノミヤ研究所を後に本部へ戻る車中、 ハヤタ隊員がムラマツキャップに一通りのことを報告していた。 「ニノミヤ博士の言うことを信じれば、吸血植物ケロニアは、 より多くの動物と、よりうまい食べ物を求めて、 世界各地へさまよいだしたと言うのですが」 「容易ならんヤツだ。ケロニアの発生がタカラ市だけのうちになんとか手を打たなければ」 「そのとおりです。 あっ、それからキャップ、 例のゴトウ隊員のことですが、やっぱり怪しいですね」 「どうやらケロニアと関係がありそうだ。 しばらく自由にして様子を見よう。 そのうち尻尾を出すだろう」 通信を切ったムラマツキャップは、まずはゴトウ隊員の監視を強化することにした。 「フジ君、ゴトウ隊員の部屋・・ フジ君。フジ君!!」 フジ隊員がいない。 ムラマツキャップはあたりを見回すがその姿はない。 まさかフジ隊員が単独でレストルームに潜入したことなど知るはずもないムラマツキャップは、 姿の見えないフジ隊員の名を叫び続けていた。 (後編に続く) |