ULTRA WORLD
ウルトラマン


第32話後編

「建設のために次々と緑が失われていく現在、
 ああして森林を焼失してしまうのは全く残念だなあ」
地図を覗き込みながらムラマツキャップはつぶやき、
その場をはずして椅子に座りこんだ。

「まるで、追い詰められた怪獣が復讐を始めたようですね」
フジ隊員もちょっと切なそうにムラマツキャップの顔を見る。
確かにフジ隊員の言うように、
都市開発によって森林が削られ、
住家を失ったザンボラーが出てきたのだとしたら、
これはザンボラーの復讐であり、人間は自らの手によって
危機を招いたことになる。

「考えてみりゃあパティもかわいそうだなあ」
「せっかくの休暇が丸つぶれだ」
つぶやき、とも、ぼやき、ともとれるイデ、アラシ両隊員も気が重そうな顔つき。
そんな二人にフジ隊員が、
「でもハヤタさんもインチキくじを作ったバツね」
笑顔で話すが、ムラマツキャップはその笑顔をたしなめた。

「イデ、アラシ、我々の仕事はまだ終わっちゃおらん。
 一時怪獣が姿を消したというだけなんだからな」
しかしイデ隊員は次の策を考えていた。
「キャップ、熱さましを作ってイチコロにしてやりますよ」
ムラマツキャップはイデ隊員の言葉にうなずくと、
「フジ君、防衛軍に出動を要請してくれたまえ。
 なんとしてもイケノサワで守るんだ。
 そうでないと東京は火の海になる」

ムラマツキャップは、人口の少ないこのイケノサワを最終防衛ラインと考えていた。
熱波を自在に操る恐ろしい怪獣を万一トウキョウに入れたら、
それこそトウキョウは地獄絵図と化す。
それだけは絶対に避けなければならない。
ムラマツキャップはすぐさま次の一手を考え始めた。



科特隊の要請を受け、防衛軍の戦車がイケノサワへ向かった。
そしてハヤタ隊員とパティの乗る車も、イケノサワへと急行した。
「パティ、パティ!」
車を止めたハヤタ隊員は、助手席で眠るパティをゆすり起こした。
「パティ、君はこのままイケノサワを通って東京へ帰ってください」
「ハヤタ・・・」
虚ろな目でハヤタ隊員の顔を覗き込むパティ。
「ボクはこのまま怪獣を見張ります。
 イケノサワから東京へ出たら大変ですからね。
 少しでも早く発見するために、ボクはここでがんばります」

ハヤタ隊員は車をパティに預け、自らは山の頂目指して走り出した。
「ハヤタ」
朦朧とする意識の中で、走り去るハヤタ隊員の背中を目で追うパティ。



ハヤタ隊員は見晴らしのいい高台に立ち、周りの山々を見渡した。
今は静かだ。
しかし彼の感は、怪獣接近を敏感に感じ取っていた。
(ヤツはきっとここに現れる)
そんな感がハヤタ隊員の体を支配していた。

そして、ハヤタ隊員の思ったとおり、ザンボラーは正面の谷間から姿を現した。
熱波を発し、すぐさまあたりを火で焼きつくし、
その中をザンボラーは得意になって進撃してくる。

ハヤタ隊員はすぐさま本部に無線を飛ばした。
「科特隊本部、応答せよ」
「はい、フジです」
「怪獣はイケノサワから5キロの地点に現れました。
 警戒態勢を引いてください」
「了解」

本部に通信し、万一に備えて防衛ライン強化をすればあとはもう大丈夫だ。
あとは自分がウルトラマンに変身し、ザンボラーを倒すだけなのである。
ハヤタ隊員は胸ポケットからベータカプセルを取り出した。

その時だった。
「ハヤタ!」
後ろからハヤタ隊員を呼ぶ声がする。
あわてて振り向くハヤタ隊員。
するとそこにはパティの姿が。
「ハヤタ」
まだ完全に意識が戻っていないパティは
フラフラしながらもハヤタ隊員を追ってここまできたのだった。

「パティ、どうして行かなかったんだ」
「たとえ休暇中でも、私は科特隊員よ」
強い使命感が彼女を前線に呼んだ。
ハヤタ隊員は返す言葉もなく、ベータカプセルをそっと胸のポケットにしまいこんだ。



時同じく、ビートルがイケノサワに到着。ザンボラー殲滅に参戦した。
防衛軍の戦車と協力し、ザンボラー総攻撃が始まった。
激しい噴煙の中、暴れ狂うザンボラー。
防衛軍もビートルも、雨あられとミサイルを繰り出し、ザンボラーを攻撃する。

ついにザンボラーが怒った。
背中の発光体が赤く発色し、熱波が防衛軍の戦車に襲いかかった。
熱波は鋼鉄の戦車を簡単に溶かし、防衛軍は戦闘不能に陥る。
怒った時のザンボラーの熱波は、その温度を更に上昇させるようだ。
防衛軍の撤退で、ザンボラーに立ち向かうのはビートルただ1機になってしまった。

だがビートルには秘策があった。
「ようし、いよいよイデさん特製の、熱さましを撃ってやろうか。
言葉とは裏腹に、顔を真っ赤に紅潮させ、怒り露わなイデ隊員は
ザンボラーの真上、背中の発光体に狙いを定める。



「冷凍弾、発射!」
イデ隊員の力作、熱さまし冷凍弾がザンボラーの背中に着弾した。
その効き目はすごいものだ。
ザンボラーは冷凍弾により熱波を封じられ、ビートルのミサイル攻撃の餌食となる。
勢いのままにミサイルを浴びせるビートルに、
ザンボラーはただ暴れることしかできなくなった。



そのころハヤタ隊員とパティは、
ザンボラーとビートルの戦いを地上から見ていた。
だがパティの体力はもはや限界で、
立っていることもままならない。

「パティ、大丈夫か、パティ!」
ぐったりと横になるパティに叫ぶが、
パティの意識ははっきりとはしない。
ビートルからの通信が入る。
「はいハヤタ」
「おい、冷凍弾が効きだした。今から全員地上攻撃をかける」
「了解」
ムラマツキャップの指示だ。本隊と合流しなければ。
ハヤタ隊員はパティをゆすり起こした。

地上に降りた科特隊本隊は、スパイダーを握りしめたアラシ隊員を先頭に、
一気にザンボラーめがけて突撃した。

アラシ隊員がザンボラーにスパイダーの照準を合わせる。
その時ザンボラーの背中が発光した。

熱波だ。
冷凍弾に抑えられながらも、怒りで発したその熱波は、
アラシ隊員一人を倒すには十分な熱を帯びていた。

目を押さえ倒れこむアラシ隊員。
「おいアラシ!しっかりしろ!」
イデ隊員があわてて駆け寄る。
科特隊はザンボラーをなめてかかっていた。
冷凍弾の効き目を過信していたのだ。
作戦の甘さに気付いたムラマツキャップは即座に退却命令を出し、
科特隊は一時ザンボラーと距離を置いた。

ハヤタ隊員の呼びかけにようやくパティが目を覚ました。
パティはハヤタ隊員の顔を見ると、全てを察した
「ハヤタ、行ってちょうだい」
「パティ・・・」
「人間引き際が大事ですから。私は別の方法で協力します」

ハヤタ隊員は大きくうなずくと、パティを安全圏に避難させ、自分は最前線に突入していった。
そして、人の姿がないことを確認すると、
胸ポケットからベータカプセルを取り出し、天高く突き上げたのである。
ウルトラマンの登場だ。



上空からいきなり現れたウルトラマンは、ザンボラーに正面から蹴りを見舞う。
いきなりその蹴りを食らったザンボラーは山の頂から転げ落ちた。
何事か、とザンボラーがあたりを見れば、その正面にはウルトラマンが立っている。
お前か、とばかりザンボラーは怒りの熱波をウルトラマンに向ける。



だが科特隊の冷凍弾のおかげで、ザンボラーの熱波は弱っている。
まともに食らったものの、ウルトラマンはすぐに回復し、
ザンボラーを右に左に投げ飛ばす。
ザンボラーは尻尾でウルトラマンの足を払い、倒して馬乗りになろうとするが、
動きが遅く、ウルトラマンは余裕でかわし、戦いを有利に持っていく。
熱波がなければザンボラーはウルトラマンの敵ではないようだ。

ウルトラマンに頭をつかまれ、地面にたたきつけられて、
次には両手で高く持ち上げられて、体ごと台地に叩きつけられる。
たいした戦いもないままに、ザンボラーはグロッキー状態になる。



地上でその戦いを見ていた科特隊のもとにパティがやっと合流した。
「ムラマツ君!」
「パティ!」
パティは意識も回復し、ムラマツキャップたちと戦況を見守った。

ザンボラーにはもはや逃げる力も残っていない。
これでとどめだ。
ウルトラマンは腕を十字に組み、ザンボラーにスペシウム光線をお見舞いした。
まともに受けたザンボラーの体は大爆発、四散し、
戦いはここに終結した。



「いやあ、今の東京は自然を失うことの代償で、世界の都会になったんだ」
ビートルで東京上空を飛ぶ。その景色を見ながらムラマツキャップは
何気なく思った言葉を口にした。
そういう気持ちを持ちながらも、
その犠牲の上に出来た今の平和を守らねばならない。
ムラマツキャップの胸中は複雑だった。

「あの怪獣もかわいそうな事をしたよ」
「我々人間の犠牲者だもんな」
アラシ隊員とイデ隊員が思い起こすように言葉をつなげた。
しかし・・・
「私も犠牲者の一人よ」
得意満面の笑みで言うのはパティだ。
確かに、彼女は一番の犠牲者だったかもしれない。
フジ隊員が笑いながらパティの肩をたたいた。

「パティ、その代りこれから数日間の休暇はたっぷりお楽しみください」
しかしパティは得意気にみんなの顔を見渡した。
「でも、私もう日本の名物を3つも見ましたから」
「えっ?日本の名物?」
イデ隊員が驚いて振り向くと、パティは胸を張って言いきった。
「地震、怪獣、ウルトラマン」



ザンボラーとの死闘を終え、平和が戻った。
そして、パティの言葉に笑いが生まれたビートルは、
イケノサワを後に、本部へと帰還していった。

またしても久々のウルトラワールド、みなさんお待たせしてすみません<m(__)m>
さて、今回はザンボラーが活躍してくれました。
この怪獣、私は記憶になかったのですが、
特にすごい光線を持ってるわけでもない、ただ熱波を巻き起こすだけ。
ということはやはり火山帯出生の怪獣だったのでしょうか?

後編の初めでフジ隊員が、
「まるで、追い詰められた怪獣が復讐を始めたようですね」
と言っています。
このセリフが今回のタイトル「果てしなき逆襲」になっているような気がします。
開発のために森や田畑をどんどん潰していく人間のせいで、
たくさんの動物が住家を失う。
そういう動物を怪獣に見立ててできた物語、というイメージは、
みなさんもお感じになったことと思います。

それと、特筆すべきは今回のゲスト。
若かりし日のマリアンヌがパティ隊員として登場しましたね。
インド支部から休暇でやってきたのに事件に巻き込まれてしまう、
という設定でしたが、ハヤタ隊員とはとてもいい感じで、
まさに美男美女隊員。見応え十分でした。

さあ、次回ですが、
ついにあの大物が登場!
「地球を私にくれないかね?」
あなたの心に挑戦する「あいつ」が活躍してくれます



次回もぜひお付き合いください。
今回も長文におつきあいいただき、ありがとうございました。

このページのTOPへ