ULTRA WORLD
ウルトラマン


第33話後編

地球をくれ、と迫るメフィラスに対し、
強い心できっぱりと拒絶したサトル少年。
だがそれは今度こそメフィラスの怒りを買う結果となってしまった。

≪聞き分けのない子だ。
 なぜ『地球をあなたにあげます』と言えないのだ。
 私は君が好きだ。私の星で永遠の命を与えようと言っているんだぞ≫
メフィラスは最後通告とも取れる言葉をサトル少年に浴びせた。

それでもサトル少年の心は揺るがない。
メフィラスと正対し、堂々と言い返す。
「ボク一人がどんなに長生きしたって、どんなにいい暮らしができたって、
 ちっとも嬉しくなんかないや!ボクは地球の人間なんだぞ!」

≪ほざくな!≫
メフィラスが叫び立ち上がり、両手を前に突き出すと、
サトル少年の姿はメフィラスの前から消え、
宇宙線内部の無重力室に転送された。

甘言を弄せばすぐにでもサトル少年が自分になびくと思っていたのに
思いのほか彼の心は強かった。
怒りと苦悩に満ちたメフィラス。

その姿を嘲笑するかのように高笑いが聞こえてきた。
メフィラスが両腕を突き出すと、
別室から転送されたハヤタ隊員が現れた。
ハヤタ隊員の高笑いがメフィラスの癇に障る。

≪ウルトラマン何がおかしいのだ≫
さも愉快とハヤタ隊員はメフィラスに言い放った。
「メフィラス、とんだ見当違いだったな。
 地球を売り渡すような人間はいない。
 サトル君のような子供でも、地球を良くしていこうと思うことすれ、
 地球を見捨てたりは絶対にしない!」

ハヤタ隊員の言うとおりだ。
姑息な策を弄するメフィラスなど、誰が相手にするものか。

痛いところを突かれ、怒り狂うメフィラスはハヤタ隊員に食ってかかる。
≪黙れウルトラマン!貴様は宇宙人なのか、人間なのか!≫
「両方さ。貴様のような宇宙の掟を破るヤツと戦うために生まれてきたんだ」
≪ほざくな!この手で必ずこの美しい星を手に入れてみせるぞ≫
「メフィラス、そうはさせんぞ!」
ハヤタ隊員は胸のポケットからベータカプセルと取り出し、頭上高くに突き上げた。
が、メフィラスが一瞬早かった。
メフィラスはハヤタ隊員に怪光線を浴びせ、金縛り状態にしてしまったのだ。
これではハヤタ隊員はウルトラマンに変身できない。



動けなくなったハヤタ隊員をそのままに、
メフィラスは再びサトル少年に語りかけた。
≪サトル君、気分はどうかね?
 地球をあなたにあげますってなぜ言えないんだ。
 死んでもいいのか?それでも地球がいいというのか?≫

だが何度言っても無駄だった。
無重力室に幽閉され、身動きもままならないサトル少年であったが、
その目は真っ直ぐにメフィラスを睨みつけていた。
ついにメフィラスがキレた。
≪暴れろ!!!≫

メフィラスの声と同時に、巨大フジ隊員が暴れ始めた。
やはりメフィラスが操っていたのだ。
地上では、今だに原因のわからない科特隊とヤマモト博士が
対応に追われている。
「フジ君、どうしたんだ!?人間らしい心は失ったのか!?」
「やめろ!やめろ!!」
ムラマツキャップが、イデ隊員が、口々に叫ぶが、
メフィラスの操り人形と化した巨大フジ隊員にその声は届かない。

それどころか、フジ隊員はこぶしを振り上げ、科特隊のいるビルに迫ってくる。
「ムラマツ君、退却しよう。フジ隊員は操られているんだ」
ヤマモト博士は巨大フジ隊員に近づこうとするムラマツキャップの体を抑えた。
一時退却止む無し。ムラマツキャップはフジ隊員説得をあきらめ、
ビルから避難した。



暴れ始めたフジ隊員に対し、地上の警官隊は発砲を開始した。
「撃たないでください」
イデ隊員があわてて警官隊を制止するが、
警官隊はもはや猶予がならないと判断した。
「怪獣も同然です!撃て!」
それでもイデ隊員は食い下がる。

「待ってくれ!フジ君はただのロボットなんだ。撃たないでくれ」
その時、あたり一面に、メフィラスの高笑いが響いた。
「誰だ?正体を見せろ!」
ムラマツキャップが叫ぶ。
すると巨大フジ隊員の姿が忽然と消え、代わりに現れたのは、
「バルタン星人!」



そして反対側には、
「ケムール人!」



更に科特隊と警官隊の正面には、
「ザラブ星人!?」



まるで科特隊を挑発するかのように3体の宇宙人は立っている。

アラシ隊員がスパイダーを構えた。
それを制止するかのように、またしてもメフィラスが話しかける。
≪やめたまえ、アラシ隊員。争いは止めよう。
 戦おうと思えば、私の命令で行動を開始する。
 しかし、私は争いは嫌いだ≫
相変わらず争いが嫌いだと言い切るメフィラス。

「姿を見せろ!」
ムラマツキャップが叫ぶが、
≪その必要はない。私には君たちが見えている。
 バルタンも、ザラブもケムール人も、みんな私の命令で地球を攻撃することができる≫
メフィラスはあくまでも陰に隠れる。
自分は血を流さず、おいしいところだけいただこうということか。

「嘘をつけ!みんな、我々科学特捜隊が退治したぞ!」
メフィラスに叫び返すムラマツキャップだが、
相手の姿が見えない以上打つ手がない。
優位に立っているメフィラスは余裕で科特隊に語りかけてくる。
≪君たちは、狭い庭を全世界だと思っている小さなアリだ。
 自分の力を過信しちゃいかんよ。
 私は連中のように暴力をふるうのは嫌いだ。
 私は人間の心に挑戦するためにやってきた≫

「心!?」
メフィラスの言葉をムラマツキャップは冷静に分析しようとしていた。
≪そう、サトル君がもうまもなく、私の頼みを受け入れてくれるだろう≫
「待て!私の頼みとはなんだ!?」
ムラマツキャップの問いには答えず、メフィラスの声は途絶え、
同時に3体の宇宙人も姿を消した。

宇宙船の無重力室では、サトル少年と、
元のサイズに戻ったフジ隊員が幽閉されていた。
ムラマツキャップたちとの話し合いを途中で打ち切ったメフィラスは、
再び、サトル少年に向き合った。

≪サトル君、よく考えるんだ。
 君は地球のような大きな星の支配者にだってなれるんだぞ。
 さあ、早く返事をするんだ≫
多少のいら立ちを覚えたメフィラスの言葉。
それでもサトル少年の心は動かない。
「イヤだ!地球は人間みんなのものなんだ!!」

防衛軍の通信班がムラマツキャップの元へ駆けつけてきた。
「ムラマツキャップ!各地の電波会社が怪電波をキャッチしました」
「なに!?発信地はどこなんだ」
「タキガサワ山中です。すでに空挺隊が攻撃に向かっております」

ついにメフィラスの居場所をつかんだ。
反撃に燃えるムラマツキャップはすぐさま本部へ帰還し、
ビートルでタキガサワ山中を目指した。

タキガサワ山中ではすでに空艇隊の攻撃が始まっていた。
無数に撃ちこまれるミサイル弾にメフィラスの宇宙船はあぶりだされ、
防衛軍の前にその姿を現した。
しかしメフィラスも黙ってはいない。
宇宙船から放つビーム光線で、次々と防衛軍の戦闘機を撃ち落としていく。
地対空でこの命中度。やはりメフィラスは優れた科学力を持っている。

2機のジェットビートルがタキガサワに到着した。
「アラシ!背後から総攻撃を開始する!」
「了解!」
徹底的にメフィラスにコケにされ、怒りに震えるムラマツキャップ。
メフィラスもビーム光線で応戦するが、そんなものがジェットビートルに当たるわけがない。
科学力は科特隊も負けてはいないのだ。

メフィラスとの応戦で、ある程度メフィラスの攻撃力を見極めたムラマツキャップは、
アラシ機に次なる作戦を伝えた。
「我々は宇宙線に侵入し、中の3人を救出する。
 連絡があるまで攻撃中止!」
「了解!」

ムラマツ機は着陸し、ムラマツキャップとイデ隊員は手際よくメフィラスの宇宙船に乗りこんだ。
すると、そこにはベータカプセルと突き上げたまま金縛りにあっているハヤタ隊員の姿があった。
「キャップ、ハヤタが!」
「宇宙人の魔術にかかったようだ」
呆然と動かないハヤタ隊員に近寄る二人。



その横からフジ隊員の叫び声が響く。
「キャップ!助けて!キャップ!!」
「フジ君!サトルくん!!」
ムラマツキャップが無重力室の窓に駆け寄った。
「キャップ、早く計器盤のスイッチを!」
「よし!」
ムラマツキャップがスイッチを切ると、
二人の体はすぐさまムラマツキャップの目の前に転送された。

救出完了。あとは脱出するだけだ。
と、その時船体が大きく揺れた。
メフィラスが退却するために宇宙船を浮上させようとしているのだ。
「フジ君逃げるんだ!早く脱出しよう」
フジ隊員とサトル少年の脱出を優先するムラマツキャップ。

「キャップ、しかしハヤタが!」
イデ隊員が叫ぶが、もう猶予がない。
「もう時間がない!さあ、早く!!」
金縛りのハヤタ隊員をそのままに、
ムラマツキャップとイデ隊員も船外に脱出した。
宇宙船が大きく揺れた。浮上したのだ。
その揺れで、金縛りのハヤタ隊員の体が倒れ込み、
その衝撃でベータカプセルがスパークした。
ウルトラマンの登場だ。
メフィラスは自らの手で、一番恐れていたウルトラマンを呼び起こしてしまったのだ。



「キャップ!イデ!無事だったか」
脱出してきた4人をアラシ隊員とヤマモト博士が救護した。
その時メフィラスの宇宙船が大爆発。
その中から深紅の体のウルトラマンが飛び出した。
「あっ、ウルトラマンだ!」
サトル少年の声に、一同はウルトラマンの雄姿を見る。

宇宙船を失ったメフィラスも巨大化していた。
タキガサワ山中に対峙する両雄。
<メフィラス星人、さっさと自分の星へ帰れ>
メフィラスは答えない。
睨みあうウルトラマンとメフィラス。
間合いを取った。
ウルトラマンは八つ裂き光輪を、メフィラスはクリップビームを繰り出す。
二つの光線は両雄の中央でぶつかり、スパークして消えた。



互角。

ウルトラマンが空へ飛んだ。メフィラスが追う。
空中戦だ。
まるでお互いがお互いの力を試しあっているかのように、
ウルトラマンとメフィラスは技を仕掛けあう。
ウルトラマンはスラッシュビームを繰り出す。
メフィラスはまたしてもクリップビームで迎撃。
またしても両者中央で2つの光線がぶつかり合う。

その閃光で目をやられたウルトラマンが地上に落下した。
勝ち誇るメフィラスは、目を抑えしゃがみこむウルトラマンに蹴りを見舞う。
体を立て直し、ウルトラマンはメフィラスと組み合う。
そして再び間合いを取った。



睨みあい。お互いのすきをうかがう。
勝負は一瞬で決まる。
緊迫した空気が両者を包む。

動に転じたのは両者同時だった。
ウルトラマンはスペシウム光線を、
メフィラスはクリップビームを。

しかしそれはお互いに構えただけだった。

≪よそう・・・
 ウルトラマン、宇宙人同士が戦っても仕様がない≫
メフィラスは静かに構えた腕を下げた。
もはやメフィラスにとってこの戦いは何の意味もなくなっていたのだ。

≪私が欲しいのは、地球の心だったのだ。
 だが、私は負けた。子供にさえ負けてしまった。
 しかし私はあきらめたわけではない。
 いつか、私に地球を売り渡す人間が必ずいるはずだ。
 必ず来るぞ!≫



捨て台詞を残し、メフィラスはテレポーテーションで姿を消した。
自分の星に戻ったのだろう。
静寂が戻った。
メフィラスの気配が消えたことを確認すると、
ウルトラマンも大空の向こうに飛び去った。

一部始終を見届けた科特隊。
しかしアラシ隊員が首をひねる。
「ウルトラマンは、なぜ戦わなかったんだろう」
「きっと、宇宙人同士の会話があったんだろう」
ヤマモト博士がその横で穏やかに答える。



メフィラスは本当に地球を、いや、地球人を征服しようとしたのかもしれない。
地球という星ではなく、地球人の心を欲したのかもしれない。
もしそうならば、それは今まで侵略に来た宇宙人とは全く違う、
新たな考えを持った宇宙人の存在を知らされたことになり、
それがもし実現してしまったら、地球は完全にメフィラスの支配下と成り下がる。

恐ろしい敵だった。
そんなことを考えながら、アラシ隊員はメフィラスの消えた空を見つめた。

すると、不意にサトル少年の肩を叩く者が。
サトル少年がビックリして振り向くと、
「あっ、ハヤタさん」
「サトル君、よくがんばったね」
「でもボク本当に苦しかったんだよ。死ぬかと思ったよ」
サトル少年の頑張りをしっかりと見届けたハヤタ隊員は
笑顔でサトル少年の顔を見詰めた。

「よかったよかった。みんな無事でよかった」
やっと緊張を解いたムラマツキャップが笑顔でみんなの顔を見る。。
「フジ君も普通の大きさになったことだし」
イデ隊員の言葉に、笑いあう一同。
ただ巨大化していた時の記憶がないフジ隊員だけが、
その笑いに取り残され、不機嫌になっていた。

青く美しい地球。我々はこの人類の故郷をあらゆる侵略から守らねばならないのだ。
まして、地球を売り渡すような人間になってはいけない。
メフィラス星人は今度は、あなたの心に挑戦してくるかもしれないのだ。

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あとがき
またしてもご無沙汰のウルトラワールドで申し訳ありません(o|o)
今回はメフィラス星人が活躍してくれました。

このメフィラス、「悪質宇宙人」といわれる通り、実に姑息、というか、陰険というか、
策を弄するのが得意な奴なんでしょう。
自分は全く前線には出ず、陰で糸引いて自分の思うように操る。

まあこういうやつって今でも結構いますよね(笑)

しかしその科学力、そしてケンカの強さは1級品。
宇宙人はケンカが弱い、というウルトラワールドの定説を根底から覆してくれました(笑)

まあさきほどはメフィラスの悪口を言いましたけど、
この容姿は子供心にインパクトが強かったようで、
ウルトラ怪獣はほとんど忘れている人でも、
メフィラスは覚えているようです。

更には数年前に放映された「ウルトラマンメビウス」にも登場し、
みんなの懐かしさを誘った、ある意味とても人気者だんですね。

特に「よそう。ウルトラマン、宇宙人同士が戦っても仕様がない」のセリフが
とても印象に残っていました。
変わった宇宙人だな、って思ったのかな?

最後に、特筆すべきはサトル少年です。
強い心を持った男の子。
彼の勇気で地球は救われました。
見習わなければいけませんね。

もし私のところへメフィラスが来たら・・・
自信ないですねえ・・・(苦笑)

さて次回は、
重い!とにかく重いんです!!
なんのとりえもない、ただ重くて固い、こんなのが大暴れです。



次回もぜひお付き合いください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。