ULTRA WORLD
ウルトラマン


第34話前編

空からは絶えず地球上へ何かが降り注いでいる。
目には見えないが無数の宇宙線。そして流れ星となった隕石。
そして、科特隊本部の窓を覆った白い雪。



「雪・・・ハヤタさん、きれいよ」
「ああ、近頃のトウキョウにしてはめずらしいな」
うっとりと窓の景色に見とれるフジ隊員につられ、
ハヤタ隊員も席を立ち、窓下の雪景色を見渡した。

「ねっ、雪ってとっても美しい空の贈り物だと思わない?」
降りしきる雪。空を見上げるフジ隊員はなんだかとても嬉しそうだ。
雪はやがてみぞれに変わり雨となる。
これだって空からの贈り物。

そんな贈り物のために足止めを食ってしまった者一名。
「こちらムラマツ、本部応答せよ。本部応答せよ」
喫茶店でコーヒーを傾け、雨が止むのを待っていたムラマツキャップは、
なぜか本部に緊急通信。事件か!?

だが、通信を受けたフジ隊員はいたってのんき。
「了解、ただちに・・・急行します」
アンマンを頬張ったそのままでムラマツキャップに返事を返すと、
「ハヤタさん!」
「なんだい」
「キャップが、アカサカまでこうもり傘持ってきてって」
ムラマツキャップの緊急指令(?)に、ビートルで飛び出すハヤタ隊員。

そしてアカサカ上空で、地上にいるムラマツキャップの姿を発見すると、
ビートル機内からコウモリ傘を投下する。
ムラマツキャップはこれをナイスキャッチ。
雨の日、傘も空から降ってきたらどんなにいいだろう。

だがしかし、空からはとんでもないものも降ってくる。
「自殺はよせ!たったひとつの命だぞ!!」
イデ隊員がビルの屋上に向かって叫ぶ。
この時代、高度急成長の波に乗り切れず、
悩みを抱え、ノイローゼになり、飛び降り自殺をする者また多数。
「ナブアミダブ・・・成仏しろよ・・・」

人間だって降ってくる。とかく、トウキョウの空は危険である。
いつ何時何が降ってくるかわからないのだ。

その夜、トウキョウの空に怪しい火の玉が降った。
その落下の衝撃はすさまじく、
トウキョウの台地は大地震のように揺れた。
「うわ!地震だ!!!」
「うわーーー」
2段ベッドの下段で仮眠をとっていたアラシ隊員はすぐさまベッドから跳ね起きたが、
上段で寝ていたイデ隊員は寝ぼけ眼でアラシ隊員の上に布団ごと落下。
「コノヤロー!なにモタモタしてやがる!」
アラシ隊員が一喝!
着替えもせずに、とにかく二人は本部室へ向かう。



本部では、パジャマにガウン姿のフジ隊員が通信に応じていた。
「はい、こちら科特隊本部。
 えっ?なんですって??晴海の埋め立て地に、
 赤い火の玉が?了解」

そこへきちんと制服を着こなしたハヤタ隊員が入室してきた。
ハヤタ隊員は、パジャマで枕を抱えたままのイデ隊員を叱りつける。
「おいイデ、起きろよ!」
イデ隊員も多少は目を覚ましたようだが、
まだ寝ぼけているのがフジ隊員。
通信を切り、イデ隊員の前に立ち、
「キャップぅぅ・・・」
イデ隊員をキャップと間違える始末。
科特隊、パニック状態。

「わかった!直ちに出動だ!」
報告の全てを聞いたムラマツキャップは、すぐさま行動を開始した。
さすがはムラマツキャップだ。
いかなる時も冷静である。
「ありがてえ!出動ですね」
イデ隊員も気合が入るが、
ムラマツキャップは浮かれ気味のイデ隊員を睨みつけた。
「ありがてえはいいがまくらをちゃんと返してこい!」

パジャマのまま枕を抱いて飛び出してきたイデ隊員。
いつもならここで落ち込むイデ隊員。
だが、なぜかムラマツキャップの前に歩み寄ると、
キャップのユニフォームの袖を引っ張り、
「そりゃないんじゃない?」

あっと、ムラマツキャップ、なんとなんと、制服を後ろ前に着用!
真夜中に起こった大音響。
さすがのムラマツキャップも寝ぼけ眼での出動であった。



夜が明け、あたりも明るくなったころ、
さっそうと現場に到着した科特隊はすぐさま調査を開始した。
「相当深いな。
 かなりの重量のものが降ってきたとみえる」
ムラマツキャップがうめく。
「放射能の心配はないようですね」
計器を手にしているアラシ隊員にうなずくムラマツキャップ。

やがて不審物落下地点に到達。
その穴の大きさにフジ隊員が顔をしかめた。
「ずいぶん大きな穴ねえ。隕石じゃないかしら」
その時だった。穴の最深部がごそごそとうごめき、
何かの存在を示したのだった。
「後退!」
即座に危機を判断したムラマツキャップは緊急避難を命じ、
隊員たちは一目散に退避した。

穴の中から一体の四足怪獣が姿を現した。
怪獣は雄たけびを上げ、ついに穴から大地へとのし上がってきた。
科特隊は物陰に隠れ、戦闘態勢を整える。

だがこの怪獣、とんでもないヤツだった。
一歩進むごとに、轟音とも言える足音が響き渡り、
台地に重心を乗せたその足は、なんと地面にめり込んでいくではないか!

「すげえ、すげえ重いヤツだぞ!」
科特隊専用車の陰からそれを見たイデ隊員が驚愕する。
とてつもなく重いこの怪獣。ムラマツキャップの頭脳は
早くも対怪獣作戦を考え始めていた。

しかしこの怪獣、ただ重いわけではなかった。
完全に穴から這い上がり、全身を科特隊に披露すると、
口から火炎を吐き、あっという間にあたりを火の海にしてしまったのだ。

炎の中を悠々と進撃する四足怪獣。



上空から爆音が響いた。
ハヤタ隊員がビートルで援護に来たのだ。

ハヤタ隊員は怪獣の頭部にロケット弾を撃ち込む。
怪獣もビートルを火炎で威嚇。
怪獣の吐くすさまじい火炎と、ロケット弾の着弾煙で、
まともに怪獣の姿が見えなくなった。

ハヤタ隊員は攻撃の手を緩めない。
次々とロケット弾を怪獣に打ち込んでいく。
しかし、効き目がない。
この怪獣、重いだけではなく、やたらと皮膚が硬い。

ビートルの攻撃は激しさを増す一方だが、
怪獣は全く弱る気配もない。
やがてビートルはロケット弾を全弾撃ち尽くした。
一時帰還するハヤタ機。
あたりはただ火か燃えているだけ。

すると怪獣は、その場に腹這いになり、
すっと目を閉じたのである。
ハヤタ機の打ちこんだロケット弾が利いたのか?

だがそれは違った。
「寝てるんだわ。すごいいびき」
フジ隊員があきれたように言う。
あたり一面の火の海を全く気にせず、怪獣は爆睡の体制に入ってしまった。

怪獣がまいた火を消し終わったころ、
日はすっかり落ち、あたりは夕闇になっていた。
怪獣はそれでも何事もなかったかのように爆睡中。
「こっちは夜の目も眠れねえってのになあ」
「とにかく、大変な空からの贈り物だ」
イデ隊員も、アラシ隊員も、あきれた顔でただ寝ている怪獣を眺めている。

空から来た怪獣は、その夜スカイドンと名付けられた。
そして、科学特捜隊によってスカイドン攻撃作戦が練られたのである。

「スカイドンに対する作戦はただひとつ!
 ヤツを遠く宇宙の彼方へ捨てるということのみである!」
ムラマツキャップはムキになって叫ぶ。
「しかし、どうやって空まで運ぶんですか?あんな重たいヤツを」
アラシ隊員の疑問にハヤタ隊員が答える。
「大丈夫!科学特捜隊のワイヤーロック作戦を使えば」
その声に、イデ隊員はニンマリ。
「攻撃態勢は万全!」
恐らくイデ隊員はワイヤーロック作戦の下準備をしていたのだろう。
最後にムラマツキャップが締めくくった。
「うん。明日の夜明けと共に、ワイヤーロック作戦を開始する」



ワイヤーロック作戦
3機のビートルに各々ワイヤーを吊るす。
ワイヤーの先は輪になっており、その輪をスカイドンの両前足と尻尾に引っかけ、
そのまま宇宙まで運んでしまうという作戦。

3機のビートルがスカイドン上空に来た時、
ちょうどスカイドンはお目ざめになった。
スカイドンは青空を見上げ、雄たけび一声、機嫌も上々。

そんなスカイドンを睨みつけたムラマツキャップは、
「ワイヤーロック作戦開始!」
作戦開始の指示を発動。
各機から復唱。いよいよスカイドン追放だ。

まずはスカイドンの鼻先にロケット弾をお見舞いし、
スカイドンを立ち上がらせる。
朝のすがすがしい空気を妨害されたスカイドンは、
科特隊の作戦通り、怒りに狂って暴れ始めた。
3機のビートルは下降し、
ワイヤーの先を作戦通りスカイドンの両前足と尻尾に引っかけた。
「よし!ロックしろ!」
「ロック開始!!」
ムラマツキャップの作戦通りに事は運んで行く。
そしてついに、
「上昇開始!」
さあ、いよいよスカイドンともおさらばだ!
そう、こんな人迷惑な怪獣は、さっさと宇宙へ捨てなければ。

しかし・・・

「キャップ、重くてダメだ!」
悲痛の叫びはイデ隊員。
「このままではビートルが振り回されます!」
ムラマツ機に同乗するフジ隊員もムラマツキャップに進言するが、
「弱音を吐くな!もう一度試みるんだ!上昇開始!!」
隊員たちを叱りつけ、ムラマツキャップは作戦を遂行しようとする。

しかし重い!
3機のビートルではスカイドンを運ぶどころか、
体を浮かせることすらできないのだ。
しかもスカイドンだってじっとしていてくれるわけではない。
訳も分からずワイヤーで引っ張られ、
これをはずそう、ちぎろうと暴れまくるのだから大変。



これ以上無理に作戦を強行すれば、ビートルが地面に叩きつけられてしまう。
「キャップ!」
フジ隊員が叫ぶ。
「なんて重いヤツなんだ」
さすがのムラマツキャップも、スカイドンがここまで重いとは思っていなかった。
「キャップ、助けてください」
イデ隊員からの通信で、ムラマツキャップは作戦中止を決断した。
「止むを得ん、ワイヤーを切れ」
「了解!」

ムラマツ機、アラシ機はスカイドンの足元からワイヤーを切断。
そのまま上空に飛び去る。
しかし、ハヤタ機がワイヤーを切ろうとした時、
スカイドンがそのワイヤーを口にくわえ、ハヤタ機を振り回し始めた。

朝の寝ざめを思い切り害してくれた科特隊に、スカイドンの怒りは絶好調。
ハヤタ機を凧のように振り回し、そのまま地面めがけて叩きつけた。
「あっ!ハヤタ!!」
ムラマツキャップが叫ぶがどうにもならない。
墜落するハヤタ機。
だがハヤタ隊員は、ビートルが地面にぶつかる直前、
胸ポケットから出したベータカプセルと頭上高く突き上げたのだ。
ウルトラマンの登場だ!
「ウルトラマン!」



早くも真打登場。

スカイドンの前に仁王立ちするウルトラマンは、
まず顔に蹴りを見舞いし、馬乗りになる。
そしてスカイドンの首に雨あられとウルトラパンチをお見舞いした。



これでスカイドンもグロッキーだ!!
と思いきや・・・
スカイドンは、なんと目を細め、気持ち良さそうに、
そう、まるでマッサージを受けているがごとくに眠そうに目を閉じようとしているではないか。

なんて頑丈な奴なんだ!
さすがのウルトラマンもパンチを撃ち続け、疲労が出た。
スカイドンがちょっと体を揺さぶっただけで、
ウルトラマンはスカイドンの背中から放り出されてしまう。

それでもウルトラマンはあきらめない。
なんとかスカイドンをひっくり返し、仰向けにしようと試みる。
スカイドンは全く戦意がない。
まるでウルトラマンを蚊かハエくらいにしか思っていないようだ。
軽くウルトラマンを振り払うと、ウルトラマンの体はあっという間に吹っ飛ばされる。
スカイドン、恐るべき怪力だ。



ウルトラマンのカラータイマーが赤く点滅を始めた。
尻尾をつかみ、顎を持ち、さまざまな作戦でスカイドンを持ち上げようとするウルトラマン。
そしてついに、
ウルトラマンは渾身の力を込め、スカイドンの上体を持ち上げて
ウルトラ一本背負いの体制に入った。
しかし・・・ウルトラマンはスカイドンを投げることなく、
そのままスカイドンに押しつぶされてしまった。

「見ろ!ウルトラマンもダメだ」
イデ隊員が驚きの叫び。
「ヤツは重いのよ!あきれ返るほど重いのよ!」
フジ隊員も顔面蒼白。
スカイドンに押しつぶされたウルトラマンは万事休す。

しかし相変わらずスカイドンに戦意はなく、
自分の腹の下にいるウルトラマンを、ただ邪魔だ、としか思っておらず、
場所を平地に移動すると、そのままよだれを垂らして寝込んでしまった。

意識朦朧のウルトラマン。
さすがのウルトラマンも持ち上げることができないスカイドン。

一時退却。
ウルトラマンは大いびきのスカイドンをそのままに、大空の彼方へと飛び去った。

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