ULTRA WORLD
ウルトラマン


第34話後編

スカイドンを退治すべく満を持して現れたウルトラマンであったが、
彼の力をもってしてもスカイドンの重さいかんともし難く、
一時退散する羽目になってしまった。

「ウルトラマンも歯が立たなかった・・・
 キャップ・・どうすればいいんですか」
呆然とするフジ隊員。
ムラマツキャップも悔しげにスカイドンを睨みつける。

その時テトラポットの間を縫って
フラフラになったハヤタ隊員が合流した。
「ハヤタ」
いち早く気づいたイデ隊員が駆け寄り、
後を追って皆もハヤタ隊員を取り囲む。

「すいません、ビートル2号はちょっと修理困難ですね」
ムラマツキャップに抱えられながら、ハヤタ隊員が報告する。
その時イデ隊員が一計を案じた。
「キャップ、こんな時こそ、
 オートジャイロ作戦を使ってみたらどうでしょうか」
「オートジャイロ!?」
アラシ隊員が甲高い声で叫んだ。
「うん!」
力強く答えるイデ隊員。
どうやらイデ隊員には自信があるようだ。

オートジャイロ作戦
大きなモーター式プロペラをスカイドンの胴に装着し、
ヘリコプターのように上空に飛ばし、宇宙の彼方へ送ってしまうという作戦。

2機のビートルが大きなオートジャイロを空輸してきた。
スカイドンはちょうどお目ざめになり、
行動を開始したところである。



とはいえ街を破壊するわけでもなく、
特にスカイドンに目的があるとも思えない。
「麻酔弾用意。ヤツの鼻つらを狙うんだ」
地上に降りた科特隊は、まずスカイドンの動きを止める作戦に出た。
スカイドンが寝なければオートジャイロ装着なんて土台無理な話だ。
「撃て!」
ムラマツキャップの号令でアラシ隊員は麻酔弾を放つ。

狙いは正確。麻酔弾は見事スカイドンの鼻先に命中。
スカイドンは大あくび一つ、そのまま夢の中へ。
「イデ、ハヤタはビートルに搭乗。怪獣の上へ飛べ。
 麻酔の効き目は10分しかない」
「了解」
さあいよいよスカイドン追放だ。
「オートジャイロ作戦開始!」
ムラマツキャップの命令により、
イデ、ハヤタ両隊員が操縦する2機のビートルはスカイドンの真上にホバリング。
ゆっくり慎重にオートジャイロのベルトをスカイドンの胴に装着する。



スカイドンを起こしてはならない。
ヤツが寝ているうちに全てを終わらせなければ。
2機のビートルは慎重かつ迅速に事を運ぶ。

そして見事オートジャイロ装着に成功。
「リモコン、準備よし」
装着完了後、イデ隊員はムラマツキャップに無線を飛ばす。
それを受け取ったムラマツキャップはいよいよ最終命令を下した。
「よし、スイッチを入れろ!」
スイッチオン!
巨大なプロペラが回転し始め、あたりは風圧で砂塵が舞う。
そして超重量スカイドンがついに空に浮かび始めた。

その様子を見守る科特隊。
スカイドンの体はみるみるうちに小さくなり、
やがてはるか上空に消えていったのだった。



「やったぁ」
イデ隊員が歓喜の叫び。
地上から見守っていたムラマツキャップは、
2機のビートルへねぎらいの言葉を贈った。
「よくやった。直ちに帰島せよ」
「了解」
イデ、ハヤタ両隊員も安堵の表情である。
スカイドンの脅威は去った。
任務を完了した2機のビートルは意気揚々と本部へと帰還していった。

本部に集まった科特隊メンバー。
こんなに怪獣に手を焼かされたのは初めてだ。
ただ重い、というだけで、打つ手が全くなかった。
とんでもない厄介者だった。

だが、全ては終わった。
今やスカイドンは宇宙の藻屑と化したのである。
いくらスカイドンが重いとはいえ、
それは大宇宙から比較したら、塵より小さい物体にすぎない。

ムラマツキャップの計らいで、
本部ではスカイドン退治成功の御祝いが行われた。
「では、スカイドン退治を祝って、乾杯!」
皆が手にビールグラスを持ち、
ムラマツキャップの音頭で、乾杯!とグラスをぶつけ合った。
勝利の美酒。
科特隊の至福の時。



だが、その時だった!
大音響とともに本部は大きな揺れに見舞われ、
テーブルの上にあった料理やビールが四散した。
隊員たちはいち早く机の下にもぐり難をのがれたが、
突然の大地震に一同呆然自失。

イデ隊員が、アラシ隊員が、フジ隊員が、恐る恐るあたりの様子をうかがう。
そして、その揺れの原因が何か、一早く気づいたハヤタ隊員がムラマツキャップを見る。
ムラマツキャップもその振動の原因がなんであるか、すぐに理解していた。
「しまった。無重力地帯に着く前にプロペラの推進力が弱ったんだ」



そう、スカイドンがまたしても地上に落下してきてしまったのだ。
空気があって初めてプロペラが生きる。
だが上空に上がり、空気が薄くなってプロペラの推進力が弱ったところでスカイドンの体重が勝った。
一度落下し始めたスカイドンを再び上昇させるだけの力は
オートジャイロには備わっていなかったのだ。

はるか地上に叩きつけられたスカイドンは怒り狂っていた。
スカイドンの立場に立てば、怒るのは当たり前だろう。
それにしても成層圏から落下し、地面に叩きつけられても
ダメージ一つ与えられないとは、
このスカイドン、どれだけタフな怪獣なのだろうか。

スカイドンは火炎を吐き散らし、あたりをのしのしと進撃し始めた。
科特隊はまたしてもスカイドン退治に頭をひねらなければならなくなった。
無言で考え込むメンバー。
だが今度はフジ隊員がひらめいた。
「キャップ、いつかガマクジラを退治したロケット弾を、
 スカイドンにも利用したらどうでしょうか」

「なるほど!ロケット弾をガマクジラにたたき込んで、
 宇宙に吹っ飛ばしたことがあったね」
アラシ隊員が興奮して甲高い声で叫び、ムラマツキャップの前に進み出た。
「キャップ、やりましょう!」
「顔が・・近い・・・」
興奮してしゃべるアラシ隊員の唾をまともに顔に受け、
ムラマツキャップはロケット弾作戦を遂行すべく命令を発動した。



ロケット弾作戦
スカイドンの尻尾に強力なロケット弾を撃ち込み、
その推進力を利用し、スカイドンの体をロケットと化し、宇宙まで吹っ飛ばしてしまう作戦。
以前、対ガマクジラ戦に使用。

2機のビートルが巨大なロケット弾を空輸してきた。
スカイドンは市街地に入り込み、わがもの顔に暴れている。
ビートルはスカイドンの真後ろにロケット弾を配置する。
科特隊はビートルを降り、
スカイドンの正面に回った。

「ロケット弾発射!」
命令と同時にロケット弾が撃ち込まれ、見事スカイドンの尻尾に命中した。
これでスカイドンはロケットと化し、宇宙の彼方まですっ飛んで行く。
・・・・・
はずだったのだが・・・

重い!ヤツはとにかく重いのだ。
かつてガマクジラをすっ飛ばしたくらいパワーのあるロケット弾ではあるが、
その程度のパワーではスカイドンを浮かび上がらせることは不可能だった。

「ヤツはこっちへやってくるぞ!」
アラシ隊員が叫ぶ。
ロケット弾の勢いをもらい、後ろ足2本で立ち上がったスカイドンは、
すごい勢いで科特隊めがけて走ってくる。
ロケット弾が仇になった。

科特隊はあわてて逃げだした。
「ちきしょう、軽やかに踊ってらあ」
イデ隊員の言うとおり、まさにスカイドンは楽しげに踊るように科特隊を追いかける。
これ、別にスカイドンの意思ではない。
「ヤツは重すぎてロケット弾では持ち上がらないんですよ」
ハヤタ隊員の言うことに耳を貸す暇なく、
ムラマツキャップも全力で走る。
「キャップ、このままでは東京はメチャメチャです」
「とにかく麻酔弾をもう一度撃ってヤツを眠らせましょう」
フジ、アラシ両隊員も叫ぶが、
「街の中で眠られちゃ迷惑だよ!」
さすがのムラマツキャップも、どうしたらいいかわからない。
いや、それどころではない。とにかく逃げなくては。



止りたいのに止まれないスカイドン。
ひたすら走り続ける科特隊。
この追いかけっこ、一体どこまで続くのか。
「いったいボクタチは、どこまで走ればいいんだろう!」
「そんなのスカイドンに聞いてくれ!」
「おい待ってくれ!」
口々に愚痴りながらも科特隊は走る!
先頭を走るアラシ隊員の袖をムラマツキャップが掴む。
「アラシ、アラシ、スパイダーを撃て!」
ムラマツキャップとハヤタ隊員はアラシ隊員を後方に置き去り、
我先にと逃げる。
一度はスパイダーを構えたものの、
スカイドンの迫力に押されたアラシ隊員は、
スパイダーを放つことなくメンバーの後を追いかける。



やがて物陰を見つけ隠れる科特隊。
「逃げ切ったか?」
「ヤツはここへやってきます」
最後に到着したアラシ隊員が報告する。
「伏せろ」
物陰に伏せ、スカイドンが行き過ぎるのを待つ。
別にスカイドンは科特隊を追いかけているわけではないのだが・・・

スカイドンをやり過ごし、再び顔を集める科特隊。
「よし、新型麻酔弾を撃て!」
ムラマツキャップの命令で、麻酔弾が次々とスカイドンに打ち込まれる。
ロケット弾のおかげで盆踊り状態だったスカイドンは再び夢の中へと眠りにつき、
無駄な追いかけっこもここで終了した。

「諸君、
 今こそ我々はスカイドンを永久に宇宙へ追放する手段を考えなければならない」
深刻、というか、ムキになったムラマツキャップが
我を忘れたように隊員たちに言い放つ。
だがムラマツキャップには一つの案が浮かんでいた。
「アラシ、ただちに水素供給車を出来るだけたくさん集めてくれ」
「水素供給車?」
ハヤタ隊員がムラマツキャップの作戦を理解した。
「なるほど、怪獣風船化作戦というわけですね」
「そうだ。さあ、全員作戦開始!今のうちだぞ」

怪獣風船化作戦
スカイドンの体内に大量の水素を送り込み、
気球と化して宇宙の彼方へ送ってしまうという作戦。

大いびきで寝込むスカイドン。
その前に科特隊が整列した。
「ではアラシ、頼むぞ。ヤツの尻の穴をねらえ」
スカイドンが寝ている間が勝負だ。

「撃て!」
アラシ隊員は狙いを過たず、スカイドンの尻に水素注入口を撃ち込んだ。
スカイドンは起きない。今がチャンスだ!
「水素注入開始」
ハヤタ隊員とイデ隊員が協力し、水素注入車のバルブを開ける。
かくて水素は、次々とスカイドンの体に注入されていった。
「ようし!どんどんやれ!!」
作戦は順調。ムラマツキャップの顔は喜色に満ちていた。



そして・・・
ついにスカイドンが浮かび上がった!
今度こそ、今度こそ作戦成功だ!!
「やったぁ!」
歓喜の輪に包まれる科特隊。
ハヤタ隊員が駆け寄る。
「キャップ、おめでとうございます」
ムラマツキャップは笑顔でハヤタ隊員の肩を叩く。

「まあ、もうあんなに小さくなっていくわ」
フジ隊員が指差す先には、
米粒ほどになったスカイドンがどんどん上空に舞い上がる姿が。
ついにやった。ついに勝った!
つらく苦しい戦いを制した科学特捜隊は
意気揚々と本部へ引き揚げていったのだった。



だが、安心するのはまだ早かった。
ちょうどそのころ、航空自衛隊基地から演習のために飛び立った戦闘機があった。
怪獣風船化作戦の事は、自衛隊にまで連絡が届いていなかった。
そのため隊員は、空を上昇する奇怪な風船を警戒した。
そして、ついに・・・

「キャップ、大変です!
 航空自衛隊が演習中に間違えてスカイドンを撃ったそうです!」
空自の連絡を受けたフジ隊員が声高に報告したとき、
隊員たちはスプーンの音けたたましく、
お昼ごはんのカレーライスを頬張っている最中だった。

「ふぁひ!?(何!?)」
口の中いっぱいカレーライスが詰まったまま、ムラマツキャップが聞き返す。
「水素が抜け始めた怪獣は、現在トウキョウ上空へ落下中!」
「ふぃふぁん(いかん)!」
フジ隊員の報告を聞いたハヤタ隊員が、スプーン片手に本部を飛び出す。
「ふぉいふぁやふぁ(おいハヤタ)ふぉこふぇふぃふ(どこへ行く)!?
 ふぁやふぁ(ハヤタ)!
 ふぁっふぇふぁふぉーふぉふぁふるふぁ(勝手な行動はするな)!
 ふぉいふぁやふぁ(おい、ハヤタ)!!」
カレーライス口いっぱいのムラマツキャップの言葉を無視し、
屋上へ上がったハヤタ隊員は、
しっかりと手にしたスプーンを、天高く突き上げたのである。



ウルトラマンの登場だ!・・・・って・・・
えっ?スプーン??
ハヤタ隊員はしっかり握ったスプーンを目の前でにらみつけ、地面に叩きつけ、



では改めて、

ハヤタ隊員は胸ポケットからベータカプセルを取り出し、
天高くつきあげたのである。
ウルトラマンの登場だ。



すぐさまウルトラマンは飛び上がり、落下してくるスカイドンの真下に入ると、
そのままスカイドンの体にぶつかっていった。
ウルトラ体当たりだ。
水素で膨らみ、柔らかくなったスカイドンの体は、
木っ端みじんに四散した。
今度こそ本当にスカイドンの最後だ。
科特隊とウルトラマンの勝利だ。

戦い終えて・・・
とある庭園で梅の花を楽しむ科特隊メンバー。
「まあきれい。空から降ってくるのは、こんなにきれいな花びらばっかりだといいのに」
和服姿でお茶をたて、メンバーに振る舞うフジ隊員。
そっとお茶を手に取るイデ隊員も優雅に庭園を見つめた。
「そうだよなあ、あんなスカイドンみたいなヤツが・・
 あ、ありゃあ??なんだいこりゃあ」
優雅を装うイデ隊員の額には、
「ウグイスのフンだ」
「ひえー。とんでもねえのが落ちやがる」

「春ねえもうすぐ」
フジ隊員が今一度庭園を見回した。



春ねえ、もうすぐ。フジ隊員はもう一度心の中でつぶやいた。
そう、トウキョウの春はもうすぐだ。
春になったら、もう嫌なものは絶対空から降ってほしくない。
なぜって??
だって春だもん!
そう、春は、人の心を明るくさせる季節だからである。

あとがき
今回はスカイドンが活躍してくれました。
本編は春先のお話で、今と時期は異なりますが(笑)

このお話はウルトラマンの中でもかなり有名で、
知らない人はいないんじゃないでしょうか。
特にハヤタ隊員がベータカプセルと間違えてスプーンを掲げるシーンは
名場面と言っていいでしょう。
この時の瞬間視聴率はウルトラマンシリーズでは最大だったそうです。

とはいえウルトラマンが間違える、ということは、
当時円谷プロではかなり批判があったようで、
それでも実行に移した実相寺監督はやはり異端児?
いや、この名作を残してくれた名監督ということになるでしょう。

さてスカイドンですが、
この怪獣、火炎を吐くくらいで特になんの芸もない、
ただ重いだけの怪獣なのですが、
その重さが半端じゃない。
ウルトラマンでも持ち上げられないくらいですから。

重さが武器になる。これも実相寺監督のアイデアなのですから、
やはり彼は天才監督ですね。

今回のお話、特にスプーンの場面は有名なので。
私の文章では納得できない方がかなりおられると思います。
私も今回はかなりプレッシャーでしたが、
納得いかないとおっしゃる方、なにとぞご容赦ください。

では次回予告です。
怪獣墓場からやってきた、
見た目はグロテスクでも心は優しい、
こんなやつが活躍してくれます。



次回もぜひお付き合いください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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