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深夜、一般道を走行する1台の車。どうやら家路を急いでいるようだ。
車は市街地を走りぬけ、人気のないガード下へ差し掛かった。
その時だった。突然車はスリップして壁に激突。ドライバーはやっとの事で車中から脱出した。
衝撃で朦朧としているのか、車に寄りかかり、あたりを見回している。
どうやらスリップの原因が分からないようだった。
ドライバーはそのまま大破した車に手をかけうずくまった。
すると不意に大きな影がドライバーの背後に現れた。
「あっ・・・」
ドライバーはその影に気付きあわてて起き上がる。
そして振り向いたドライバーの視線の先には、大きな、緑色をした怪物がいたのだった。
あまりの恐怖に声を忘れるドライバー。
そんな凝固した無抵抗なドライバーに、怪物は緑の霧状の物質を浴びせた。
「うわー!助けてくれー!」
あわてて助けを求め、緑の怪物から逃げようとするが、おぼつかない足取りでは逃げようもない。
やがてドライバーの影は緑の怪物の影に飲み込まれ、消えていった。

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所変わって、ここはあるの研究所の一室。
科学者風の人物が机に向かって論文を書いている。
しかし、ドアの隙間から、緑色の、得体の知れない物体が侵入していることに気づいてはいなかった。
侵入者・・・緑色をした物体は、ドアの隙間から完全に部屋に入りきると、
音もなく緑の霧状の物質を科学者に浴びせた。
この時初めて科学者は侵入者の存在を知り、あわてて抵抗を見せるが、
なすすべなく緑の怪物に飲み込まれてしまったのだ。
東京のど真ん中で、新聞記者、地質学者が次々と窒息死するという事件が起こった。
二人の死因を調べた結果、特殊な事件として警視庁から科学特捜隊に調査が依頼された。
「イデ君」
「はぁい!」
「アラシ君」
「ハイッ!」
ムラマツキャップに呼ばれた両隊員。出動だ。元気よく立ち上がる。
しかしムラマツキャップの指令は二人の思いとは少々異なっていた。
「二人はただちに、オオムロ高原へ飛んでもらいたい」
「オオムロ高原?」
二人はけげんな顔をする。
「事故現場行くんじゃないんですか?」
てっきり現場に行くと思い込んでいたイデ隊員。思わずキャップに再確認する。
「3日前に変死したヤマダ博士の事件と、今度の事件と非常によく似てるんだ。
オオムロ高原には、博士の研究所がある」
ムラマツキャップの説明に、なるほど、と二人は納得したようだ。
「ヤマダ博士57歳。植物の品種改良で有名な人で、
80キロもある巨大なスイカを作ったこともあります。ハイ、これが資料」
電子コンピューターのはじき出したデータをフジ隊員が持ってきてくれた。
「OK!じゃ、行ってきます」
勇んで出動するアラシ、イデの両隊員。二人がドアの向こうに姿を消すと、
ムラマツキャップは今度はハヤタ隊員の方に向き直り、命令を下した。
「ハヤタ君、君は私と一緒に事故現場へ行ってもらいたい」

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第一の事件が起こったガード下へ到着したムラマツキャップとハヤタ隊員は、
スリップした跡に残された緑色に光る物質に注目した。
「スリップの跡ですね」
「ウーム」
現場に残されたタイヤの跡。その痕跡をたどると、
その先には見たこともない緑色の、液体状の物質があたり一面を覆っていた。
「なんでしょうね、これは?」
「光ってるな」
ムラマツキャップもハヤタ隊員も、見当すらつかない謎の物質だった。
「乗用車はあそこでスリップしたんですが、小林記者はあそこで襲われたと思われます」
事故のいきさつを再現するハヤタ隊員。
「ウーン、一体何に襲われたんだ?」
首をかしげるムラマツキャップ。
「ン!?」
事故を起こした車の窓の異変に気がついたハヤタ隊員。ゆっくりと事故車に近づいていく。
「キャップここをちょっと見てください。ここにも同じものがありますよ」
確かに、事故を起こした車の窓にも、先ほどと同じ緑の液体状物質が付着していたのだ。

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唯一の事件の手がかりとなりそうな緑の物質。
ムラマツキャップとハヤタ隊員は事件の難解さに頭をひねっていた。
一方、謎の窒息死事件の発端へ戻った、アラシ、イデの両隊員は、
植物学の権威ヤマダ博士の研究室に向かっていた。

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「ウワー、こりゃあすげえや」
「わあ、すごいなぁ!」
研究所を見るなり、二人は驚きの声を上げた。
前面ガラス張りで、最新技術を駆使した日本でも有数の植物園だ。

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更に、温室内に入るとその作りに圧倒されるアラシ、イデの両隊員。
「いやあ、これは立派な温室ですね」
「ええ、先生の研究室を兼ねていましたので」
職員に中を案内してもらうアラシ隊員とイデ隊員。すると、早速イデ隊員が不思議な植物を発見した。
「シェー!これはなんですか、これは!」
「先生の作りましたニンジンですわ」
そう、イデ隊員の目の前には、1本の巨大なニンジンが植わっていたのだ。
その大きさが尋常ではない。周囲5メートルはあろうかという巨大ニンジンだ。
「なんでこんなものを?」
「都会の人口が増加しすぎて野菜が足りなくなるのを助けたいとおっしゃっていました」
「へえ、これ一本ありゃ何日食えるかなあ。クウー」
まじまじと巨大にんじんを観察するイデ隊員。
しかしそんなイデ隊員を尻目にアラシ隊員は聞き込みを開始した。
「ヤマダ博士は最近何の研究をなされてました?」
「実は、先日調査団長として行って参りましたオイリス島からきれいな花を持って参りまして
それを品種改良してみるんだと申しておりましたが」
忠実に任務を遂行するアラシ隊員。しかしイデ隊員はもう、奇妙な植物に興味津々。
「ちょっとちょっと、こっち来てくださいよ、ねえ!」
またもお気に入りを見つけたのか、案内役の女性とアラシ隊員を呼び寄せる。
「ね、ね、ね、これはどうしたんですかこれは」
指差す場所は、なぜかそこだけ大きな穴が掘られ、土がむき出しになっているところだった。
「先生の倒れていたのがそこなんです」
「ええ!?」
驚くイデ隊員。
しかしアラシ隊員はその横で冷静に情報を分析していた。
「ところで、その、めずらしいきれいな花というのは?」
アラシ隊員はさっき聞いたばかりの、ヤマダ博士が持ち帰ったという珍しい花、の所在を確認した。
「あら、そういえばどうしたんでしょう?」
職員の女性も、その時初めて花が見当たらないことに気付いたようであった。
アラシ隊員は即座に本部に連絡を取った。
「本部、こちらアラシ。至急オイリス島調査団の資料を頼む」
直感的にオイリス島に秘密が隠されていると感じたアラシ隊員は、
その資料から調査団メンバーを調べようとしたのだった。
オイリス島調査団は5名だった。
そして交通事故死の新聞記者のコバヤシ、研究所で死んだ地質学者のマツオ博士もその団員であった。
電子頭脳は残る2人が動物学のサカイ博士、カメラマン、ハマグチセツコであると回答を出した。
そのころムラマツキャップとハヤタ隊員は、科特隊兵器設計開発者であるイワモト博士の元を訪れていた。

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「イワモト博士、それは?」
「犯人の動いた跡についていた物です」
「キャップ、それはさっきの現場で見たものと同じですよ」
イワモト博士が調べていた物質。それはハヤタ隊員の指摘どおり、
先ほどの事故現場に付着していた、あの緑の物質だった。
「ムチンといって粘液質なんですよ」
イワモト博士がその性質を説明する。
「カタツムリが歩いた跡が乾くと、キラキラしてますよね」
ハヤタ隊員もある程度の知識を持ち合わせていた。
「そう、あれと同じようなものだね」
「すると、この事件の犯人は、カタツムリに関係があるんですか?」
「さあ、一概にそうも言えませんな。問題はこの緑です。」
イワモト博士にもまだ全てが解明できたわけではなかった。
「葉緑素は植物のものですからね」
「葉緑素は植物性で、ムチンは動物性・・・」
謎は深まるばかり。考え込むムラマツキャップ。その時、本部のフジ隊員から通信が入る。
「キャップ、サカイ博士が襲われました」
「なんだって!?ハヤタ君、行くぞ!」
「ハイ!」
緊急事態だ。ムラマツキャップはイワモト博士に原因究明を頼むと、ハヤタ隊員を伴い事件現場へと急行した。
アラシ、イデ両隊員はヤマダ博士の研究所から持ち帰った資料を科特隊研究所に持ち込み分析を依頼していた。
「間違いなくクロロフィルです。だいぶ放射能も検出されてるな」
「すると、やはり犯人の正体は植物なのかな?」
「いや、一概にそうも言えませんな。ムチンは動物のものだし、クロロフィルは植物だし」
こちらでもやはり原因究明には時間が必要だった。
「実は博士、我々は今日、最初の被害者であるヤマダ博士のところを調べたんですが、
オイリス島で採取した植物が、温室から消えているんです」
「オイリス島のもの?」
「ハッ、これがその写真です」
アラシ隊員は植物園から借りてきた写真を手渡した。
「ミロガンダ!・・・いや、私も、見せてもらったことがある」
「ヤマダ博士はいろいろな放射線や何かを使って、品種改良の実験をやったそうですよ」
イデ隊員が聞き込んだ情報内容を説明した。
このイデ隊員の言葉を聞いた時、アラシ隊員がひらめいた。
「わかった!放射線を当てられたミロガンダの花が、突然・・・ブワー!!!」
「わーったったった」
何事だ!
実は勢い余ったアラシ隊員。掛け声とともに大きく、そして勢い欲広げた手の先が、
イデ隊員のほっぺたを直撃したのだった。
「お、おい、イデ、おい!大丈夫か、おい!」
不幸にもぶっ飛ばされてしまったイデ隊員。
「イタイイタイイタイ」
ほっぺたを押さえて泣き叫ぶ事しか出来なかった・・・

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本部に戻り、手当てを受けたイデ隊員。その顔は包帯ぐるぐる巻き。
「しかし、なんですねぇ、昔の人は、いいことを言ったなあ。過ぎたるは及ばざるが如し。
やっぱり、ニンジンはこのくらいがちょうどいいし、カボチャは、このくらい・・・
いや、野菜ばっかりじゃない、なんだってあまりありすぎると
返ってはた迷惑になることがあるんですねぇ」
そう言ってアラシ隊員の太い腕をチラリと見る。
「クッ、わかりましたよ!」
苦虫を潰したような顔のアラシ隊員は、返す言葉もない。
「とにかく犯人は調査団員の残った一人、女性カメラマンのハマグチさんを襲うに違いありませんな」
包帯グルグル巻きのイデ隊員の推理だった。
「そうだキャップ。我々もこれからハマグチさんのところへうかがったほうがいいんじゃありませんか?
ハヤタ一人じゃ安心してられませんよ」
アラシ隊員も次なる行動をキャップに進言する。
一連の二人の会話をパイプを加えたまま黙って聞いていたムラマツキャップだったが、
「ウーン、ほかに手がかりはないんだし、よし、行こう」
フジ隊員を留守役に残し、アラシ、イデ両隊員を伴って、
オイリス島調査団、最後の1人である、ハマグチキョウコの元へ向かったのだった。
(後編に続く)
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