EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD

第6話前編
by しぃさぁ

「ねえ、変なニュースがはいったわ。ヨコハマ沖で20メートルもあるサメが、
 キズだらけになって浮かんでたんですって」
事の起こりは科特隊にもたらされた一本の怪情報だった。

情報をキャッチしたのはフジ隊員であった。
「おおかた船にでも撥ねられたんだろう?」
アラシ隊員は構うでもなく一蹴するが、
「それが違うのよ。何かに咬まれたキズなんですって」
フジ隊員は更に説明を続けた。

「ちょっと引っかかるな」
疑問を感じたのはハヤタ隊員だった。
「どうして?」
自分の感が否定されたようで少々不機嫌になるアラシ隊員。いぶかしげにハヤタ隊員を見る。

そんなアラシ隊員に向き直り、自分の考えを説明するハヤタ隊員。
「いや問題はふたつだよ。ひとつはどうしてそのサメが20メートルにも成長したか。
 もうひとつはそのサメにキズを負わしたのは一体何者か、ってことだ」
「ウン、このごろトウキョウ湾ではよく船が沈んでるでしょ。」
フジ隊員もハヤタ隊員の言葉に、最近頻発している船舶事故を連想した。

「ウン、何か事件が起きる前触れのような気がするな」
深く考え込むハヤタ隊員。思い出したようにフジ隊員が言う。
「ホシノ君友達と一緒にヨコハマへ行ってるのよ。大丈夫かしら」

「ねえ、見せて、ねえ見せてってば!」
そのホシノ少年たちは港の船を見るために、公園で双眼鏡の取り合いだ。



「向こうのあの船、ナンベイ航路のコロンビア丸だわ。あっ、あの降ろしてるのって、カカオビンズだ」
「カカオビンズってなにさ?」
「カカオビンズ、つまりチョコレートの原料さ」
「フーン早く僕にも見せてよ」
船の荷揚げとカカオビンズに興味津々のチロ少年が双眼鏡を奪い取る。

「どこにあるの?」
期待を膨らませ、双眼鏡を覗き込んだチロ少年。
しかし彼には荷揚げ中のカカオビンズが見当たらない。
「何いってるの、こっちよ!」
「カカオビンズ見えないよ」

ふて腐れながらも再び双眼鏡を目にあてるチロ少年。
しかしもう一度双眼鏡を覗き込んだ彼の視線の先には、とんでもないものが映ったのだ。
「ああっ!」
チロ少年は驚きの声。ホシノ少年がびっくりして近づく。
「どうしたんだ?チロ」
「怪物だよ!あやしいやつ。見たんだぼく!見たよ!見た!」
「ふーん、怪物だって?どれどれ?」
怪物となれば黙ってはいられない。今度はホシノ少年が双眼鏡を手に取った。

 

「うんなるほど、こいつは確かに怪しい。」
だがホシノ少年の見ていたものは、チロ少年とは全く違うものだったのだ。
「怪しいやつは怪しいヤツだが、人間だよ。この顔、どっかで見た顔だけど、思い出せないなあ」
ホシノ少年が覗く双眼鏡の中には、いかにも怪しい二人組の男たちの姿が映し出されていた。
記憶をたどり思い出そうとするが、ホシノ少年はどうしても思い出すことができない。



「ね、怪物いたでしょう?」
「うーん」
「ね、本当の怪物だよね」
「思い出せないなぁ」
チロ少年とホシノ少年の会話は全くかみ合わない。
ホシノ少年は、今見た二人組が誰なのか、ということで頭がいっぱいだったのだ。
「とにかく、4号埠頭に行ってみよう」
ホシノ少年は見覚えの有る二人組が入っていった倉庫へ駆けつけた。

「ちぇ、見失ったか」
悔しがるホシノ少年。しかしチロ少年はそんなホシノ少年に不満顔。
「そっちじゃないよ。海の中にちゃんといるってば」
一生懸命海を指差し怪物の存在をアピールするのだが・・・ホシノ少年にその声は届かない。

「逃げたな!」
「逃げないよ!ちゃんといるってば!早く電話してよ!ぼく見たんだってば!」
「電話?」
「そうだよ。怪物みたら、科学特捜隊に電話することになってるんだろ!」
話は食い違っているものの、科特隊に電話、と言うのはいいアイデアだ。
「うん!電話だ!」
科特隊に話を聞いてもらうため、ホシノ少年は電話ボックスに駆け込んだ。

しかし、電話ボックスに入り、科特隊に連絡しようと思ったその時、ホシノ少年の疑問が解けた。
「あっ!ダイヤモンドキック。この男だ!」
電話ボックスに張ってあった指名手配書に、さっき彼が見た二人組の顔写真があったのだ。
ホシノ少年が見た2人組。それはダイヤモンドキックという、恐ろしい宝石密輸団だった。

科特隊本部では最近頻繁に起こっている船舶事故の検証の最中だった。
東京湾海図を元に、ムラマツキャップが事件の経緯を説明していた。

「最初の沈没現場はこの地点だ。次は、ここ・・・」
ムラマツキャップの事故現場説明中に、電話のベルが鳴り響いた。

「はい、特捜隊本部。ああ、なんだホシノ君か。
 ええっ!ダイヤモンドキックが港にいた?ハハハハハッ!それはお門違いの事件だよ。
 当本部の扱う問題じゃない。警察へ連絡したまえ、110番にね。あ〜!?ダメダメ。早く帰ってらっしゃい!」
電話に応対したアラシ隊員はホシノ少年の報告を一笑に付した。

「何事かね」
ムラマツキャップが不審顔で尋ねる。
「ええ、ホシノ君が港で、宝石密輸団を見つけたっていうんですがね」
アラシ隊員の報告に、フジ隊員が笑顔になる。
「あら、ホシノ探偵なかなかやるじゃない」
「おい、無責任なこと言うなよ。怪我でもしたら危ないじゃないか」
無邪気に笑うフジ隊員をハヤタ隊員がたしなめた。

「あとを追うっていうから、早く帰って来いって言ったんですがね」
アラシ隊員も全く本気にしていない。
「では、先の問題に戻る。過去2ヶ月間に、トウキョウ湾で原因不明の沈没をした船舶が4隻あり、これは・・・」
ムラマツキャップは何事もなかったかのように船舶事故の説明を再開した。
ムラマツキャップもまた、ホシノ少年の報告など気にもとめなかったのであった。

「アラシさんのバカ!バカ!」
大好きなアラシ隊員に相手にされず、ホシノ少年はおかんむりだ。
「ねえ、どうして僕の言うこと聞いてくれないのさ」
チロ少年は、そのホシノ少年が自分の言うことを信じてくれなくてご機嫌ナナメ。

「ぼく見たんだよお!怪獣だぜ。なぜ信用しないのさ!」
「怪獣だって!?本当に怪獣見たのかよ」
チロ少年の必死の訴え。ここで初めて、ホシノ少年が、怪獣、の言葉に反応したのだった。
「うん。背中にこんなトゲトゲがいっぱいあって、こんな角が生えてて、モコモコモコモコ・・・あっ、イテッ」
身振り手振りで自分が見た怪獣の姿かたちを説明するチロ少年は、
勢い余って近くにいた一人の男に頭からぶつかってしまった。

「これこれ、怪獣ごっこは向こうの公園でやんなさい」
男は笑いながらチロ少年をたしなめる。
「怪獣ごっこじゃないよ。ぼく怪獣見たんだよ。本物だよ」
男に笑われたチロ少年はムキになって反論する。



「イヤー、坊やの話が本当だとすると、それは、ゲスラじゃな」
男はどうやらチロ少年の話に思い当たる節があるらしい。
その場に座り込み、ゲスラ、という怪物の正体を説明してくれたのだ。



「そうじゃ。ゲスラはナンベイに住んでいるトカゲの一種で、カカオの実が大好きなんだ。
 それにカカオの実にたかる害虫まで退治するいいトカゲなんだ」
「つまりゲスラは、チョコレートの原料を守ってるってわけか」
「そういうわけじゃ。君たちがチョコレートを食べられるのも、ゲスラのおかげなのさ」
子供好きなのだろうか。男は笑顔を絶やすことなくゲスラの話を
おもしろおかしくホシノ少年たちに話して聞かせてくれた。

「おじさんゲスラのことよく知ってるんだね」
「わしは、あのカカオ船の船員だからな」
男が指差した先には、一隻の大きな船が浮かんでいた。

「しかしゲスラがそんなに大きくなってるなんて、考えられんな」
この時初めて男の顔から笑顔が消えた。
不意に疑問が沸いたのだろうか、不思議そうに男=船乗りは首をかしげる。

「それよりおじさん、なぜ、トウキョウ湾にゲスラがいるんだい?」
「うーん、船で運ばれてくるカカオの中に、卵が紛れ込んでいたんだろうきっと。
 ゲスラは水の中にも住むことの出来る両生類じゃからな」
「ああっ!」
チロ少年が海に起きた異変に気付いた。
いきなり立ち上がり、彼が指差したところ。そこには白くて高い波が立ち、
その中心からは、巨大な怪物が姿を現したのだ。

船乗りはあわてて立ち上がった。
「ゲスラじゃ!」
船乗りと少年たちの目の前には、強大な、毒々しい色の体をしたゲスラがその全身を現した。
そしてカカオの香りにつられてか、
ゲスラは、ついさっきホシノ少年たちが見ていたコロンビア丸に向かった。

「行こう!」
「ああいかんいかん!君たちは危ない、いっちゃいかん」
あわてて子供たちを抑え、非難させる船乗りたち。
ついにゲスラはコロンビア丸に到着。これを破壊し、海に引きずり込もうとした。



この情報はいち早く科特隊に報告された。
隊員たちは即座集合し、ムラマツキャップの顔を見る。
「よし!出動する!」
ムラマツキャップの命令で科特隊基地からジェットビートルが飛び立った。
ゲスラ退治に向け緊急出動である。

この間にもゲスラはコロンビア丸破壊を止めることなく、
ついにはその怪力で、海中に沈めてしまった。
船を沈め、好物のカカオにありつくため、ゲスラ自身も海の中に姿を消した。

「すごいなあ」
あまりの迫力に驚くチロ少年だったが、ホシノ少年は不満そうだ。
「ちぇ、ゲスラもダイヤモンドキックにも逃げられちゃったよ」
この時チロ少年に名案が浮かんだ。

「そうだ!ゲスラはカカオの実が好きなんだろう。
 だったらさ、さっき荷揚げしたカカオの実の有る倉庫へ行ってみようよ。居るかもしれないぜ」
「あんな大きなゲスラが、倉庫に入るわけないでしょ」
「そうか・・・でもさ、ゲスラの赤ちゃんなら居るかもしれないだろう?」
「なるほど、もしかしたらいるかもしれないな。いい感だ」
少年たちは、船乗りには内緒で荷揚げ倉庫へと向かっていった。

ところがその倉庫では、例の、ダイヤモンドキック、が密輸したはずのダイヤを探している真っ最中だったのだ。

カカオの入った麻袋にナイフを突き立て、ダイヤを探す2人組。
「無い!」
「そっちを開けろ、早くしろ!」
「これでもねえや!確かに運ばれて来てるんですかい」
「ああ。ダイヤを隠したのはコロンビア丸に積み込んだカカオビンズの袋の中だと連絡があったんだ」
どうやら密輸したはずのダイヤが見つからないようだ。ダイヤモンドキックはあせっていた。

「ゲスラちゃん」
不意に子供の声がした。ホシノ少年たちだ。
ダイヤモンドキックはあわてて身を隠し、物陰から子供たちの様子をうかがう。

「ああ、ひどいわ、こんなことをして」
「チョコレートの原料が泥まみれになっちゃうじゃないか」
ホシノ少年たちはつい先ほどまでダイヤモンドキックが密輸ダイヤ探しをしていた場所に。
あたり一面に散乱しているカカオビンズを見て大ショックだ。
まさかここにダイヤモンドキックがいるとは考えもしなかったホシノ少年。
それどころか、ゲスラ騒ぎですっかりダイヤモンドキックのことなど頭から抜けていたのだ。

そして更に倉庫の奥に入っていくホシノ少年たち。いけない!そっちにはダイヤモンドキックが!

チロ少年が大きな古いタイヤの中を覗き込む。
その時背後に人影が。すぐに気付いたのはホシノ少年だ。
「ダイヤモンドキック!」
そう、ダイヤモンドキックが少年たちを捕らえようと、隙を見て近づいてきたのだ。



「そうと知ったらただじゃすまねえぜ」
少年たちは逃げようとするが、大人の足にはかなわない。
すぐに麻袋をかぶせられ、身動きできないようにされてしまったのだ。

ホシノ少年たちを捕獲し、アジトへと移動するダイヤモンドキック。
その頭上を科特隊のビートルが空過していった。



現場に到着した科特隊は、港の事務所で事情聴取を開始した。
「では、ゲスラはカカオの実を食べたくて、カカオを積んだ船を襲うんですか?」
「そう考えられます」
時を同じくして駆けつけてきた警官の質問に答えるムラマツキャップ。
キャップも有る程度の情報は持ってきているようだった。



「どうしたらゲスラの攻撃を防げるんです?」
「ゲスラの性質、弱点については、国際科学警察のブラジル支部に目下照会中です。まもなく返事があるはずです」
ムラマツキャップの回答に、船舶管理の担当者がかみついた。
「そ、そんな!返事を待ってる暇なんかないんですよ!
 次のカカオ船はすでにこのトウキョウ湾に入り、まもなくこの港に入るんです。
 もしゲスラに襲われたら、一体どうしたらいいんですか!」
事態は急を争うようだ。ハヤタ隊員は船の現在地点を確認した。

「キャップ、船を止めましょう」
イデ隊員の意見に少しばかりの間があった、が、、
「もう船は湾内に入っている。今止めても危険であることは同じだ」
ムラマツキャップは自らの考えを述べてイデ隊員を制止し、船舶担当者の方に向き直った。
「カカオの実がありますか?」
「ええ。倉庫に。でも、どうして」
「それを飛行機で海にまいて、ゲスラをおびき寄せ、その間に荷揚げをさせるんです」
ムラマツキャップのこの作戦にはみんな納得だった。そうと決まれば急がねばならない。
科特隊は警察からパトカーを借り受け、指定された倉庫に急行した。

その倉庫は偶然にも、先ほどホシノ少年たちがダイヤモンドキックに遭遇し、捕らえられたところだった。
床にはダイヤモンドキックが荒らしたカカオの実が散乱していた。

「ゲスラにやられたのかな?」
「違う、刃物で切った跡だ」
イデ隊員とハヤタ隊員が原因分析しようとするが、ムラマツキャップがこれを遮った。
「ハヤタ、アラシ、急げ!船には大勢の人の命がかかってるんだ」
事の重大さはここに散乱しているカカオの実よりゲスラのほうが上だった。

アラシ隊員は破れたカカオの麻袋を運ぼうと持ち上げた。その時、中からなにやら怪しい小さな包みがこぼれ出た。
「密輸ダイヤだ」
開封し中身を確認したアラシ隊員は、怒りの表情でムラマツキャップにダイヤを渡した。

「キャップ、これ、チロってネームが入ってます。やっぱりホシノ君たちはダイヤモンドキックに」
フジ隊員がチロ少年の靴を発見。ダイヤモンドキックともみ合っている時に脱げたものらしい。
「じゃあホシノ君の電話は、ありゃあ本当だったのか」



今更ながら悔やむアラシ隊員だったが、事態は更に科特隊に追い討ちをかけた。
「ダメです、間に合いません。ゲスラです」
船舶担当者が駆け込んできた。ゲスラ再び出現である。

湾内を好き勝手に蹂躙し、カカオ船を襲撃するゲスラに対し、科特隊はなす術がない。
我が物顔で暴れまくるゲスラ。科特隊は完全に出遅れたのだ。



「ちきしょう!」
悔しがるアラシ隊員を横目に、目的のカカオを調達したゲスラは
もう用はない、とばかりに悠々と海中に姿を消していったのだった。

(後編に続く)

このページのトップへ