EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD

第7話前編
by しぃさぁ

中近東に巨大な隕石が落下し、それ以来不思議な事件が次々と起こっていた。
科学特捜隊パリ本部から連絡員のジムがやってきた。
その話によれば、パリ本部もトルコ、インド両支部も調査隊を派遣したが
いずれも行方不明となったという。
遂にパリ本部は、日本支部の出動を要請してきたのである。

「遂にパリ本部から出動要請が出たか!よ〜し、アラビアでも砂漠でもどこでも行ってやるぞ!」
気合十分のイデ隊員。無理もない。科特隊日本支部初の海外遠征である
しかし・・・。
「イデ!これはなまやさしい事件ではないぞ!」
一番に張り切るイデ隊員だったが、あまりにはしゃぎすぎ、ムラマツキャップに一喝されてしまった。

「パリ本部調査隊も、完全な装備で出動したんだが、消えてしまった・・・」
パリ本部からきたスーツ姿のジムが流暢な日本語で、
今まで出動した各国科特隊支部のいきさつを説明した。
「それだけの犠牲を払って、まだ原因を掴めないなんて」
よほど難解な事件なのだろう。ハヤタ隊員も困惑気味だった。



「ジム、隕石の落下地点は?」
ムラマツキャップの質問を受けたジムは、アタッシュケースから一枚の地図を取り出した。
事件の起こった中東が詳しく書き込まれた地図だった。



「ここだ。ここが、魔の地点だ。人跡未踏、謎の町、バラージがあると言われてるところだ」
ジムはみんなが覗きこむ地図の上を指差し、事件発生現場を教える。
「よし、出動だ!」
ムラマツキャップの決断により号令が響く。全員すぐさま出動準備にかかる。

しかし・・・
「フジ隊員、君は残ってくれ」
本部が空になっては困る。ムラマツキャップは留守役にフジ隊員を指名した。
「でも!・・・・・」
複雑な表情になるフジ隊員。初の海外出動に彼女も張り切っていたのである。

しかし彼女は聡明な隊員だ。
すぐさまキャップの意図を理解し、自分に言い聞かせるように留守役の任務を受け入れたのである。

「ミスタームラマツ、私も一緒に行く。本部からそう言われてきた」
「ジム、ありがとう。頼む!」
ジムの申し出にムラマツキャップの顔がほころぶ。中東に強いジム。強い味方が加わった。



「準備OK!」
隊員たちが駆け込んできた。これで出動準備は完了だ。
かくして基地の格納庫から飛び立つジェットビートルは
隊員たちを乗せ、謎の事件現場へ向かったのである。



「魔の地点まで、あと100キロ」
インド上空を飛行するジェットビートル。その機内、ジムが地図を指で追いながら現在位置を報告する。

「フジ隊員フジ隊員、こちらビートル。いよいよ魔の地点へ突入する。・・・とは言っても天気晴朗にして・・・」
「イデ!実況放送より、あたりに注意してろ!」
相変わらずハイキング気分のイデ隊員と、それをたしなめるアラシ隊員。もはや名コンビである。
「こちらアキコ。成功を祈ってます」
フジ隊員からも応援の通信だ。

ところがその通信が切れないうちに、ジェットビートルはひとつの事件に遭遇した。
「キャップ、あれは!?」
ハヤタ隊員の指差す方向には、まるで巨大な竜巻のような光の壁が、ものすごい勢いで渦巻いていたのだった。
「イデ、無線を切れ」
「ハヤタ、光の壁から離れろ!」
とっさに、しかし的確に指示を出すムラマツキャップ。



しかし遅かった。ジェットビートルはすでに光の壁の影響を受けていたのだ。
「操縦不能!」
操縦桿を必死で左右に動かそうとするハヤタ隊員だったがびくとも動かない。
ジェットビートルは真っ直ぐ吸い寄せられるように光の壁に突っ込んでいく。

その時、鬼のような形相で光の壁をにらみつけていたムラマツキャップがとんでもない指示を出したのだ。
「ハヤタ、光の壁に突っ込んでみろ」
思わずハヤタ隊員がムラマツキャップの顔を見る。

「キャップ!気でも狂ったんですか!!」
あまりの常識はずれなムラマツキャップの指示に、さすがの肝っ玉のアラシ隊員もビックリだ。



しかしムラマツキャップは狂ったわけではない。
一番冷静に目の前に起こった事態を分析していたのだった。
「見ろ!光の壁は下から来ている。脱出するには上昇するしか方法が無い。ハヤタ、急げ!」
ここまで来たらやるしかない。
ハヤタ隊員は操縦桿を力いっぱい手前に引くと、ジェットビートルは急上昇。
かろうじて光の壁の上端を乗り越えた。

事なきを得た。安堵する隊員たち。
「逃げようとしたから操縦桿がきかなかったんですね。」
大汗をかきながら事の成り行きを振り返るハヤタ隊員。
「あれは強力な磁力光線だ。吸い寄せられる力を利用して上昇するしか助かる道は無いと思ったのだが、うまくいった」
瞬時にこれだけのことを理解、決断したムラマツキャップ。見ればキャップの額にも大汗が浮かんでいた。

難関をクリアしたジェットビートルと科特隊。
しかし、ジェットビートルの不幸はここが始まりだったのだ。
「ウン!?・・・しまった!磁力線にエンジンをやられたようです!」
エンジンの不調音に気付いたハヤタ隊員が叫ぶ。
だが時すでに遅く、ジェットビートルのエンジンは
自らの機体を宙に浮かせるだけのパワーを維持できなくなっていたのだった。

みるみるうちに降下していく、そして胴体着陸で砂漠に突っ込むジェットビートル。
やがてバランスを失い、砂の上に駒のようにクルクルと回り停止。
全隊員はその機内で強く体を打ちつけ意識を失った。



「ジェットビートル、ジェットビートル、応答せよ!応答せよ!こちら本部。ジェットビートル、応答せよ!」
非常事態と知ったフジ隊員の通信だけが機内に空しく響く。

「どうしたの?なにが起こったの?キャップ!ハヤタ隊員。ハヤタさん、ハヤタさん!」
やがてハヤタ隊員だけが、フジ隊員の通信に意識を取り戻した。
「これは・・・」
あまりの機内の惨状に、言葉を失うハヤタ隊員。

「聞こえないの?ジェットビートル、応答せよ。応答せよ。こちら本部・・・」
「こちらビートル。フジ隊員!おい!聞こえるか!フジ隊員!」
思い出したかのようにフジ隊員の呼びかけに応え、通信機を握るハヤタ隊員。
しかし、その声はフジ隊員に届かない。

無線がやられたのだ。

フジ隊員に通信しようと叫ぶハヤタ隊員の声で、後部にいたアラシ隊員が目を覚ました。
ハヤタ隊員はイデ隊員とムラマツキャップの、アラシ隊員はジムの安否を確かめる。
「大丈夫か?」
みな外傷はなかったが、イデ隊員だけは頭から出血していた。
「アラシ、イデの手当てをしてやれ」
ムラマツキャップの指示が出た。救急箱から薬品を取り出しイデ隊員の止血をするアラシ隊員。

ハヤタ隊員はジェットビートルの損傷具合をチェック中だった。
「エンジンの一部と無線機が故障してます」
「無線が故障じゃ、俺たちも行方不明の仲間入りだな」
さすがのムラマツキャップも打つ手が見つからないようだ。

だがジムは違った。
「バラージの町は近いはずだ。歩いていこう」
「え!歩いて!?」
そうとうこのあたりの地理に自信があるのだろう。ジムの顔に悲壮感はなかった。

「とにかくこの近くを調べてみよう。何か分かるかもしれません」
ハヤタ隊員もジムの考えに賛同する。
ムラマツキャップは決断した。

「よし。イデは歩くのは無理だ。無線機の修理。ジム、アラシ、ハヤタ。オレと一緒に来い」
「そんな殺生な。僕も一緒に連れてってくださいよ」
駄々をこねるイデ隊員だったが、ムラマツキャップはイデ隊員の両肩をがっちり掴み、自らの考えを伝えた。
「イデ。このビートルがオレ達の本部になるんだ。調査報告を送るためには無線機を是非直さなければならん。
 そのためには君の腕が必要なんだ」
「はい!」

こうしてイデ隊員一人をジェットビートルに残してあたりを探索する科特隊メンバー。
「あっ、ガイアーカウンター反応あり!」
アラシ隊員の持つ調査機器が磁気反応をキャッチした。すぐさま反応のある方向に走る。

「キャップ、あれは!」
アラシ隊員の指差す方行には大きな赤い塊が転がっていた。
「これが落下した隕石だ。」
隕石のそばまで駆けつけたメンバーたち。
ムラマツキャップが隕石の磁気反応を調べる。
「いや、この隕石に磁気光線を出す機能はないはずだ」
分析結果が思ったものと違い、首をひねるムラマツキャップ。
「するとあの光の壁は・・・?」
「ウーン・・分からんな」
ハヤタ隊員の質問も、ムラマツキャップには見当すらつかない。



その時だった。丘の向こうあたりか、何者かの雄たけびのような不気味な咆哮が聞こえてきた。
緊張が走る。メンバーは声のする方角に走った。

時同じく、ジェットビートルで無線修理中のイデ隊員もこの声を聞いていた。
しかし、
「ウン・・・?くっそお!脳みそが吠えてやがらあ」
先ほどのショックで耳鳴りでもするのか、イデ隊員は正体不明の声には無関心で無線修理に取り組む。
しかし声の主は砂漠の中からその姿を現し、ジェットビートルに迫っていたのだった。
「ヒヤー!おおおおおっ!」
怪物の姿を目の当たりにしたイデ隊員。もう無線修理どころではない。

「キャップぅぅぅぅ!怪物でぇぇす!!」
あわててジェットビートルから脱出したイデ隊員は、ムラマツキャップに連絡を取る。

「了解。行くぞ!」
イデ隊員からの通信に、大至急ジェットビートルに戻るムラマツキャップたち。
「怪物だあい!」
途中で慌てふためくイデ隊員と遭遇した。
「おい、イデ!怪物はどこだ!」
「あっち!」
「なんだ、何も見えないじゃないか」
すでに砂に姿を隠してしまった怪物。しかしアラシ隊員はイデ隊員を疑った。

「いたんですよ、本当に。耳鳴りだと思ったら、怪物だったんだ!」
必死の弁明はイデ隊員。だがハヤタ隊員はイデ隊員の証言を証明する証拠を見つけていた。
「キャップ!」
ハヤタ隊員は丘の上からあわててムラマツキャップを呼ぶ。
「キャップ、あそこ!」
ハヤタ隊員の指の先には、すり鉢上にくぼんだ大きな砂の穴の中、
粉々に破壊されたジェットビートルが埋まっていたのだった。

無残な姿に変わり果てたジェットビートルを、一同はただ見つめるしかなかった。
「ちょっと調べてきます」
アラシ隊員が飛び出し、すり鉢上の大穴に降りていく。



その時だった。穴の中心から、さっきイデ隊員とジェットビートルを襲った怪物が姿を現し、
アラシ隊員に襲い掛かってきた。
「おい!早く上がって来い!!」
ハヤタ隊員の投げたロープにつかまり必死でよじ登るアラシ隊員。
ムラマツキャップはスパイダーで援護する。



「早くしろ!」
アラシ隊員は無事に脱出。
しかし怪物は、この地に来る途中ジェットビートルを危険に遭遇させたあの磁気光線を噴出したのだ。
「こいつだ。光の壁は、こいつのせいだったんだ」
この時始めてムラマツキャップには事件の原因が掴めた。
しかし今はそんなことをのんびり考慮している場合ではない。
「危ない!退け!退け!!」
ムラマツキャップは全隊員に退却命令を発令した。

闇雲に走るムラマツヤキャップと科特隊員。
「よし、こっちへ行こう」
ムラマツキャップの感に頼り、やっとのことで窮地を脱した。
しかし、怪物の声も聞こえなくなり、一息ついてはみたものの、
そこは、あたり一面にうっすらと霧がかかる不思議な場所に迷い込んでいたのだった。



その霧が風に流され、ほど遠くないところに古い町並みが見て取れた。
「あれは・・?」
ムラマツキャップが疑問の声を上げるのとほぼ同時にジムが叫んだ。
「あっ、バラージだ。謎の町、バラージだ!」

なんとそこは、シルクロードの謎の町、バラージだったのだ。

他に行く当てもない。とにかく町ならばと、メンバーはバラージの町目指して歩き出した。
やがて町の入り口にたどり着いた科特隊メンバー達。
「やっぱりバラージだ」
町の入り口にある古い門。そこに刻まれた刻印を見てジムは確信した。
「よし、入ってみよう」
ムラマツキャップが先頭でバラージに足を踏み入れた。



〜バラージは、古い言い伝えの中に出てくる町です。
 この町はかつて大いに栄えた町だったのですが、今では地図にも名前が載っていないゴーストタウンになってしまいました。
 学者の中には、実在の町ではないとさえいう人がいるぐらいです〜

「しかし見たまえ。あの山は、アララット山だ」
そういうと、ジムは目の前にそびえる、まだ雪の残る高く青い山を指差した。



「アララット山?ああ、ノアの箱舟が流れ着いたと言われているところだ」
そう、アラシ隊員のいうとり、そこは伝説の「ノアの箱舟」で知られる、アララット山。
バラージはまさにそのアララット山の膝元に位置する小さな町だったのだ。

(後編に続く)