EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD
第8話後編
by しぃさぁ

西のジャングル地帯を探索するアラシ、イデ、フジ各隊員はすでに相当の距離を歩き回り、
加えて、スフランに襲われたこともあり体力的に限界にきていた。

それでも先を急ごうとするアラシ隊員。
しかし、その行動は強引過ぎたのか、ここでフジ隊員が遅れた。

「待って!」
遂にフジ隊員の足が止まった。木にもたれかかり、大きく息を切らせている。
「フジ隊員、しっかりしろ!」
後戻りしてきたイデ隊員が叱責する。
「だって、あんなに走るんですもの」
久々の現場でフジ隊員は憔悴しきっていた。

そんな二人を見ていたアラシ隊員が、フジ隊員に近寄ってきた。
「いや、昼間のうちに探し出さなくては、こんな地獄みたいな島で野宿はごめんだぜ。さあ、行こう」
確かにアラシ隊員のいうとおり。こんな恐ろしいところで夜を明かすわけにはいかなかった。

仕方なく前に進もうと立ち上がるフジ隊員がふと横見をすると、
そこにはなんと、きれいな水をたたえた沼があるではないか。
フジ隊員はすがりつくように沼のほとりまで走り寄る。
「お願い!5分でいいから休憩にして」
女性にここまで懇願されてはいたしかたない。
それに、考えてみれば朝からずっと食事も摂らずに歩き通しだ。
「じゃあ、一休みするか」
イデ隊員の言葉にホッとしたように笑顔になるフジ隊員であった。
沼の水はきれいだ。3人はは手で水をすくって喉を潤した。



不意に近くで木々のざわめきが聞こえてきた。何かがいる。
アラシ隊員があたりをうかがう。3人はすぐに一ヶ所に固まってスパイダーとスーパーガンで応戦体制をとった。

木々を揺らし、草むらから姿を現したのは、赤い、小さい怪獣=ピグモンだった。
ピグモンは戦闘態勢をとるわけでもなく、じっとアラシ隊員たちをみつめている。



アラシ隊員がスパイダーで応戦すると、ピグモンはあわてて科特隊に背を向け、逃げ出した。
「ちきしょう!おい!待て!」
あわててピグモンのあとを追いかけるアラシ隊員。
イデ、フジ両隊員も仕方なく従う。

沼の対岸、先ほどピグモンが姿を現した場所にアラシ隊員が到着した時、
すでにそこにはピグモンの姿はなかった。気配を探すアラシ隊員。
だがアラシ隊員が見つけたのはピグモンではなく、
木の枝に引っかかっていた白い小さなハンカチだった。

「あ、マツイ。マツイ所員のものだ。
 ひょっとするとあのちびっ子怪獣、マツイ所員のいるところを知ってるのかもしれない」
アラシ隊員は直感的に感じた。

「確かかね?おつむは」
あまりに突拍子もないアラシ隊員の発言に、イデ隊員は薄ら笑いだ。
しかしアラシ隊員は真剣だった。
「おれの推理とスパイダーは、当たるので有名だってことを忘れたのかい」
自信満々でイデ隊員を一蹴する。

「でも相手は怪獣よ」
「いや、この帽子もこのハンカチも、我々をマツイ所員の所へ案内するために、わざと落としたんだぜ」
イデ隊員同様、あまり乗り気ではないフジ隊員だったが、アラシ隊員はもう、そうと決め付けて譲らない。
「都合のいい解釈」
フジ隊員も呆れ顔。
「さっきのスパイダーがはずれたところをみると、その推理とやらもアテにならないね」
イデ隊員も全く信用していない。だが、
「とにかくあとを追ってみる」
もう止まらない。否定的な二人をその場に残し、アラシ隊員はピグモンのあとを追った。

「やめてアラシさん!」
フジ隊員は必死で引き止める。
「どうしてだい?」
「小さいからって油断は出来ないわ。怪獣は所詮怪獣よ。それより合流地点へ急ぎましょうよ」
疲れも重なり不安が募るフジ隊員は、まずは合流して隊を立て直し、
それから出直そうという考えであったのだが、
「我々には、マツイ所員を助け出すという任務があるんだ。おれは行くぜ!」
アラシ隊員にはもうマツイ所員救出の事しか頭になかった。

イデ、フジ両隊員を置き去りに、一人ズンズンジャングルの奥へ入っていく。
残されたのはからっきし度胸のない二人。
リーダー格のアラシ隊員に行かれてしまうとどうすることも出来ない。
「行こうか・・・」
結局は渋々、アラシ隊員のあとを追うことと相成った。

東溶岩地帯のムラマツキャップは、崖下に転落したハヤタ隊員救出のため、
急斜面を下っているところだった。



一歩間違えば自らも命を落としかねない危険な場所だったが、
ムラマツキャップの目には、崖下で気を失っているハヤタ隊員の姿しか見えていなかった。



「ハヤタ、今行くぞ!」
しかし、あまりにも足場が悪かった。ムラマツキャップが足を掛けた岩が突然崩落したのだ。
その落石がハヤタ隊員めがけて落下していった。
思わず目をそむけるムラマツキャップ。まともに落石を浴びるハヤタ隊員。
急がねば。ムラマツキャップの額には汗の粒がにじんでいた。

「ちくしょう、逃げ足の速いヤツだ。どこ行きやがったんだ」
ピグモンを追ってジャングルをさまようアラシ隊員たちは、それでもようやく赤い体に追いつこうとしていた。
いや、ピグモンが待っていてくれた、というほうが的確かもしれない。

木々の向こうに姿が見えたことで勇気百倍。
再び走り出そうとするアラシ隊員を、しかしイデ隊員が呼び止めた。
「待て、相手は怪獣だ。万が一のために特殊風船爆弾を使おう」
「よし。目印にもなるしな。早く」
イデ隊員の放った特殊風船爆弾は、見事ピグモンの背中に命中。
膨らんだピンクの風船がピグモンの頭上で揺れた。

にんまりと笑うイデ隊員。これでピグモンを見失うことはないだろう。
またピグモンが走り出した。3人も風船を目印に追跡を再開した。

切り立った崖を命がけで下るムラマツキャップは、
もうこれ以上崩落を起こさないよう最大限神経をとぎすました。
「ハヤタ!ハヤタ!今行くぞ!しっかりしろ!!」
ハヤタ隊員の倒れているところまであと少しだ。
ムラマツキャップは少しの間だけ立ち止まり、倒れこんでいるハヤタ隊員を見た。
そして危険を恐れることなく、ハヤタ救出に全力をそそいだのだった。

特殊風船爆弾のおかげでピグモンの背中から長い糸で結ばれたピンクの風船が揺れるのが見える。
「あっちだ。」
すばしっこいピグモンだったが、走っていさえすれば見失うことはなかった。
アラシ隊員たちはいくつもの難所を乗り越え、ピグモンを追った。

やがてジャングルが開け、切りだった溶岩地帯に足を踏み入れたアラシ隊員たち。
見るとピグモンは、少し先の溶岩の壁を足場伝いに歩いている。

アラシ隊員はピグモンの行動を先読みした。
そして、ピグモンが歩く足場の先の溶岩壁のくぼみに目をやると、
なんとそこには人が横たわっているではないか!
「待て、誰か人が倒れている」
倒れている人の元にあわてて駆け寄るアラシ、イデ、フジ隊員。



「マツイさんだ。マツイさん。しっかりしてください」
アラシ隊員が抱き起こした。
眠っていたマツイ所員はアラシ隊員の声で目を覚ました。
「あなた、マツイさんでしょ」
マツイ所員がアラシ隊員におびえた表情を見せたのは、ほんの少しの間だった。
「あなたを助けに来たんですよ」
「科学特捜隊の隊員です」
口々に自分達の身分と任務を説明する隊員たちに、
マツイ所員はやっと、事の成り行きを理解したようであった。

「カワダは見つかりましたか?ササキはダメですか?」
矢継ぎ早に質問をぶつけるマツイ所員。自分が第一発見者だとは思っていないようだ。
「カワダは?」
アラシ隊員が逆に聞き返す。
「4日前測候所に食料を取りに行ったまま、帰ってこないんです」
マツイ所員がこれまでのいきさつを簡単に説明してくれた。

「やつもやられたんですね」
体力も限界に来ているが、大岩を背に起き上がろうとするマツイ所員。
「じゃあ、他の人たちも」
フジ隊員の言葉に小さくうなずきながら、マツイ所員はこの島について説明を始めた。
「地震と火山が、この島の自然を狂わせたんです。
 2年半ぶりに帰ってみたら、まるで恐竜時代にまいもどったような、怪獣たちの弱肉強食の舞台になっていたんですよ」

「なぜ早く本庁に連絡を入れなかったんです」
アラシ隊員は聞くが、マツイ所員はすぐさま首を横に振り、即答した。
「とんでもない。島について1時間もしないうちに測候所は怪獣たちに襲われたんです。
 通信機の修理中、いきなり・・・」
これでやっとこの事件の真相が明らかになった。しかし、だからといって打開策があるわけではない。
隊員たちは事の大きさに静まりかえってしまった。

やがてフジ隊員が、マツイ所員のそばを離れようとしないピグモンの姿に気がついた。
「このガイドさんがいなかったら、とてもあなたを発見できなかったわ」
「怪獣たちの中にも、あんな善良なやつを作った神を、私は信じるようになりました。
 カワダがいなくなって以来、今日までジャングルの中から食べ物や水を運んでくれたんですからね。命の恩人ですよ」
マツイ所員と隊員たちの横で、安心したかのようにおどけるピグモン。
ピグモンがいなかったら、観測員は全滅し、事件も謎のままだったのだ。

「ごめんよ」
イデ隊員がピグモンに謝ろうと近寄る。その時だった。
恐ろしい怪獣の鳴き声が、あたり一面にこだましたのだ。
即座にアラシ隊員が飛び出した。
レッドキングだ。暴れる気十分でこちらに向かってくる。
「おい、怪獣だ。みんなもっと奥へ」
岩場に戻ったアラシ隊員は危険を知らせ、マツイ所員に非難を促した。



イデ、フジ両隊員がマツイ所員に付き添って、近くの洞穴に避難するのを確認すると、
アラシ隊員はスーパーガンを握り締め、レッドキングの進撃を食い止めるべく前線に向かっていった。

しかし、アラシ隊員よりも先に最前線に飛び込んでいったものがいた。
ピグモンだ。

体の小さいピグモンは、レッドキングの注意をマツイ所員のいる洞穴から逸らそうとして、
いち早くレッドキングの真正面に飛び込んできたのだった。



目の前でおどけるピグモンをレッドキングが見下ろした。なんだお前は。



マツイ所員をフジ隊員に任せ、イデ隊員がアラシ隊員に合流した
二人は、スーパーガンでレッドキングに応戦する。
だがレッドキングにはスーパーガン程度では太刀打ちができなかった。
レッドキングはその怪力を披露するかのように大岩を持ち上げた。
そして、小ざかしいとばかりに自分の足元に大岩をたたきつけたのだ。

大岩は砕け、あたり一面に飛び散った。
その衝撃をまともに受けたのは、最前線でレッドキングの注意を逸らそうとしていたピグモンだった。
砕けて飛んできた、自分の体ほどある大岩がピグモンを襲った。
そしてピグモンは、そのまま岩の下敷きになってしまったのである。



「あ、ピグモンが!」
ピグモンがやられた!怒りのイデ隊員がスーパーガンで必死にピグモンを援護する。



しかしレッドキングには全く効き目がない。それどころかレッドキングを逆上させる結果になってしまったのだ。
再び大岩を持ち上げ、地面に叩きつけるレッドキング。
無数に飛び散る、砕け散った岩が、倒れていたピグモンを襲った。

体の小さいピグモンにはもう、立ち上がる体力は残されていなかった。
目印につけていたピンク色の風船が、音もなくピグモンの体から離れ、空へと舞った。
そして風船は、まるでピグモンの意思であるかのように、レッドキングの目の前に。

「イデ、あの風船を狙うんだ」
これはただの風船ではない。風船爆弾だ。ピグモンが命がけでくれた最後のチャンスだ!
アラシ隊員とイデ隊員は、レッドキングの前で揺れる風船爆弾にしっかりと狙いを定めた。
風船は見事レッドキングの目の前で大爆発。
その衝撃でレッドキングは持っていた大岩を自分のつま先に落としてしまったのだ。
痛がり、暴れるレッドキング。

だが、かすむ意識でレッドキングのその姿を最後に見たピグモンは、
誰にも気付かれぬまま、この時、静かに目を閉じた。



怒り狂ったレッドキングはあたりの大岩を蹴散らし始めた。
もう二人では手に負えない。アラシ隊員は決断した。
「キャップに救援を要請しろ」
「待ってました!」
イデ隊員はSOS信号弾を放つ。

やっとの思いでハヤタ隊員を崖下から救出したムラマツキャップは、
ハヤタ隊員に自らの肩を貸し、再び崖をよじ登っていた。
この時ムラマツキャップとハヤタ隊員は、イデ隊員の放った信号弾を確認した。

「SOS信号弾だ」
ハヤタ隊員がムラマツキャップの顔を見た。
「キャップ、行ってください」
一瞬ためらうムラマツキャップだったが、すぐに最善の決断を下す。
「よし、じっとしてろよ。すぐ迎えに来る」
負傷したハヤタ隊員をその場に残し、アラシ隊員たちの援護に向かうムラマツキャップ。

ハヤタ隊員はその姿が見えなくなると、胸のポケットに手を差し入れた。
ウルトラマンに変身するのだ。

しかし・・・ない!ベータカプセルがない!!

怪我した体を引きずるように、あわてて崖下に戻るハヤタ隊員。どこに落としたのだ!
ムラマツキャップはナパームで仕留めたマグラーの横を、注意深く通りすぎようとしている。
早くしなければ。

やがてハヤタ隊員は崖下に転がっているベータカプセルを発見した。
しかしそこには大きな岩が邪魔をして、とても行き着けない。

 

岩の隙間から必死の形相で手を伸ばすハヤタ隊員。
あと少し。あと少しでカプセルに手が届く。がんばれハヤタ隊員!

届いた!大きく息を切らせるハヤタ隊員は、それでもしっかりその手に掴んだベータカプセルを
しっかりと、そして高々と天に向かって突き上げたのだ。



ウルトラマンの登場だ!

ウルトラマンの登場にまだ気付かないレッドキングは、相変わらず我が物顔で暴れまくっている。
背後から挨拶代わりにウルトラキックのお見舞いだ。
頭から吹っ飛ぶレッドキング。目の前の大岩にしこたま頭を打ち付けた。な、何事だ!?

見ればそこには、見たこともない赤いやつが余裕しゃくしゃくで立っている。
レッドキングは怒り心頭。すぐさま起き上がると、ウルトラマンめがけて頭から突っ込んでいった。
これを軽くかわすウルトラマン。レッドキングは再び大岩に頭を打ち付けてしまった。



レッドキングの怒りは頂点に達した。
自慢の怪力でまたしても大岩を持ち上げ、ウルトラマンに投げつけようとする。

しかし我らがウルトラマンにはそんなことくらいお見通しだ。
レッドキングが大岩を投げる直前に、スペシウム光線で大岩に衝撃を与える。
あまりの衝撃にビックリしたレッドキングは、またしても大岩を自分の足に落としてしまった。
何度同じ事をやれば気が済むのだ!?

ウルトラマンはその隙を逃さない。
レッドキングの首を絞め、そのまま宙に持ち上げた。ネックハンギングツリーだ。
苦しがるレッドキング。しかしウルトラマンは攻撃の手を休めることなく、
そのままレッドキングを大車輪で振り回し、思い切り岩に叩きつけた。ピグモンの敵だ!

さすがの怪力レッドキングもこれには戦意喪失。グロッキー状態でふらふらと立ち上がる。
これでとどめだ!ウルトラマンはレッドキングの首を持ち、
ウルトラ一本背負いで豪快に地面に叩きつけた。
自らの体重がそのまま衝撃となり、レッドキングは完全に沈黙した。



島には再び平和が戻った。しかし、犠牲者は戻ってこない。



陽が暮れる。夕陽に照らされた丘に集う科特隊とマツイ所員。
「ササキ、カワダ、フジタ。みんな、静かに眠ってくれ。
 恐ろしい怪獣たちも、怪奇植物も、みんなこの人たちが退治してくれた」
海の良く見える丘に犠牲者達の墓をたて、弔うマツイ所員。
科特隊もみな、マツイ所員にならい、悲しき犠牲者たちの霊を弔った。



黄金色の夕陽が、そんなマツイ所員と科特隊を包む。
「これでこの島も、南海のの楽園に返るだろう。
 だが自然はこの夕焼けのようにいつも美しいとは限らないということを、忘れてはならないね」
静かに墓標を見つめていたムラマツキャップの言葉だけが、
なぜか深く心に残るハヤタ隊員だった。

あとがき
今回はたくさんの怪獣たちが活躍してくれました。
特にピグモンは、子供心に、かわいそう、と思って見ていたものでした。
いまでも彼の印象が強く残っています。

ところで、今回のお話を書いていて、ひとつのテーマみたいなものに気付きました。
それは、自己犠牲、といっては聞こえが悪いのですが、
他人のために、人を思いやる心、というものがクローズアップされているように感じたのです。

まずひとつめは、アラシ隊員です。
行方不明になった所員たちを、積極的に捜索する姿。
それと、レッドキングに襲われた時、マツイ所員とフジ隊員の非難を優先し、
自分は危険をかえりみず、前線に飛び出していく。
アラシ隊員ならではの猪突猛進ですが、
結果的にはそれがいい方向に結びつき、マツイ所員を無事保護しました。

ふたつめはムラマツキャップ。
転落したハヤタ隊員を、これまた危険をかえりみずに救助する。
ハヤタ隊員が転落した時「ハヤタ!」と叫んだ声は、
とても耳に残っていて、このシーンはなんとしてでも作り上げようとがんばりました。

そしてみっつめは、もちろんピグモンです。
あんな大きなレッドキングの前に臆することなく立ち向かう姿。
もう少し早くウルトラマンが来てくれれば、と思わずにはいられませんでした。

私達は知らないうちにウルトラマンにこういったことを教えてもらっていたのかもしれません。

さて、ウルトラワールドはこの第8話が年内最終となります。
皆様、こんな駄文にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

来年は、もっともっと勉強して、読みやすく、わかりやすい文章が書けるようがんばります。
ぜひともお付き合いください。

新年第一弾は第9話。この怪獣が登場です。1月7日ごろUPを予定しています。
来年も、ウルトラワールド、よろしくお願いします。

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