EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD

第9話前編
by しぃさぁ

台風13号は本日午後3時14分イズ半島に上陸北上中。
中心付近の気圧は913ミリバール。最大風速45メートル。暴風圏は、半径50キロ。



当然我らが科特隊でも万一の事件に備え、その情報は逐一収集していた。

そのころ、イズ半島でキャンプしていた高原少年団たちは、この台風の暴風圏に巻き込まれ、
身の安全を確保すべく必死に活動していた。



しかし台風の勢力は彼らの予想以上に大きく、被害は甚大なものとなってしまった。

「おい。予備の食料も全部流されたぞ」
「えっ!?」
引率の先生が団長補佐のタケシ君に現状を伝える。
強風で小屋が揺れ、部屋の電球も頼りなくまばたきし、
小さな子達はみな、不安げな視線をタケシ君に向けていた。

タケシ君は少年団では最年長。みんなから慕われる、人望ある少年だった。
彼はこの局面に立ち、まず小さい子供たちを不安にさせてはいけないと考えた。

「さあビクビクするな。そんなことじゃあ一人前のアルピニストになれないぞ」
先生の言葉に、おびえていた子供達は少しだけ元気を取り戻す。

そのときタケシ君に名案が浮かんだ。
「よし、みんな歌、歌おう」
子供達に笑顔を見せるタケシ君。



おお牧場は緑〜♪

小屋の中に子供達の元気な歌声が響く。

しかし台風は、そんな子供達の歌声さえも吹き飛ばそうとせんばかりに荒れ狂った。
先生はそっと窓から外の様子をうかがっていた。
外ではしきりに警鐘が鳴っている。
「橋も洪水に流されたらしい・・・」


「ただの台風じゃ、こちとらお呼びじゃないか。は〜あ・・力を持て余しちゃうなあ」
科特隊本部ではイデ隊員がどっかりとイスに座って大あくびだ。
「そんな事言うもんじゃないわ。通過地点ではあちこち洪水や大水で大変だってニュースなのよ」
通信を受け持っていたフジ隊員が呆れ顔で、イデ隊員の呑気さをとがめている。

入り口のドアが開き、ムラマツキャップとハヤタ隊員が入ってきた。
台風情報の確認にやってきたのだった。

「おいイデ、台風の被害状況はまとまっているか」
ハヤタ隊員はイデ隊員の呑気な態度を見て、厳しい顔つきで咎めるように言い放った。
イデ隊員はあわててイスから飛び上がった。

「何が起こるか分からんから至急まとめておけよ」
ムラマツキャップもハヤタ隊員同様、こわばった顔でイデ隊員に指令を出す。

「ハイ!ハイハイハイ!」
二人に同時に怒られてしまったイデ隊員は、あわてて電話の受話器を掴み台風情報を問い合わせるが、
先方は忙しいのか応答がない。
「もしもし、もしもし、どうしたんだこんな大事な嵐の時に。嵐だよ嵐、嵐!」

しかし、この時イデ隊員より更にお気楽だった隊員がいたことが発覚したのだ。
アラシ隊員だ。



イスで腕組みをしたままうたた寝をしていたアラシ隊員は、
イデ隊員が電話に向かって叫ぶ、嵐!嵐!の声に、すわ事件か、と跳ね起きた。

「おい、事件か?場所はどこだ!」
驚いたのはイデ隊員だった。
だがイデ隊員はアラシ隊員が寝ぼけていることに気付き、にんまりと笑う。

その笑い方でアラシ隊員も正気になった。
「は〜・・・またやったかあ」
思わず頭をかくアラシ隊員。先ほどイデ隊員を叱りつけたムラマツキャップもこれには苦笑いだ。

「どうも事件発生にしちゃあ様子がおかしいと思ったんだよ。
 事件が起こるちゅう時に、必ず現れるホシノ君の姿が見えんもんな」
そうはいいながらもアラシ隊員はホシノ少年がお気に入りなのだ。
ホシノ少年の姿が見えないと気になるのか、アラシ隊員は室内をぐるりと見渡した。

「そういえば今日はまだ来ないわね」
言われて気になったのか、通信を終えたフジ隊員も会話に入ってきた。
「この嵐だ、さすがのホシノ君もおじけずいて、うちでちぢこまっとるんだろう」
ムラマツキャップのひとことにみな、そうに違いない、と大笑いだ。

その時不意にドアが開き、たくさんの資料を手にしたホシノ少年が部屋に入ってきた。
「失礼しちゃうな!ボクは最新の台風情報がいると思ったから、○○方面を回ってきたんだぜ」
さすがは科特隊入隊を夢見るホシノ少年。誰よりも先に現場を見回りに行っていたとは。



「おお!こりゃホシノ君に先を越されたな」
さすがのムラマツキャップもかたなしだ。

「カワグチ付近の町は、洪水でメチャメチャらしいですよ。
 でも、もう台風の中心は通過したので、住民は復旧に立ち上がってるそうです」
ホシノ少年の情報は最新且つ有力なものだった。

さっきまで寝ぼけまなこだったアラシ隊員も、満足そうにホシノ少年に笑顔を向けた。
「というところで、はい、最新の資料」
得意げにムラマツキャップに資料を手渡すホシノ少年であった。


台風一過で、次の日は素晴らしいお天気だった。
けれどこの湖畔にキャンプしていた山岳少年団の団長補佐のタケシ君とトシオ君は、
昨日の心配が本当になってちょっとショックだったんです。



「おーい!」
湖畔にたたずむタケシ君に、トシオ君が駆け寄ってきた。
「とうとう救助もこなかったな」
駆け寄るトシオ君にタケシ君は残念そうに話す。
「うん・・・今ラジオで分かったけど、ここへ来る橋が洪水で流されたそうだ」
「本当か、おい!」
トシオ君の報告に愕然とするタケシ君。

そこへ団員の少年達が駆け寄ってきた。
「焚き火の用意できたよ。カンズメは?お米は?ねえ、どうしたの?おなかすいちゃったよ」
口々に食事をねだる少年達。タケシ君とトシオ君は顔を見合わせた。

「朝の食事、どうして作らないの?」
食料は昨夜の台風で全部流された。
もはや取るべき手段は一つしかない。
トシオ君が切り出した。
「おとなしく待ってるんだ。すぐ町まで取りに行って来るからな」

タケシ君は隣でトシオ君の決断を聞いていた。
そうなれば自分もくよくよなどしてはいられない。タケシ君も覚悟を決めた。
「もう少し我慢できる者、手を上げて」
みんな素直で我慢強い子供達ばかりだ。全員が手を上げ、二人は顔を合わせてホッとした表情を浮かべた。

「じゃ、頼むよ」
「ハイ!行って来ます」
こうして先生に見送られ、タケシくんとトシオ君は自転車を引き、町まで食料調達に出かけたのだった。

「ああ、だいぶやられてるなあ。橋も流されてる」
二人の歩く山道は、昨夜の台風の爪あとがどれだけひどかったかを物語っていた。
道は落石と崖崩れで、自転車はもとより徒歩でもまともに通れない状態になっていたのだ。

「この道はダメだ。間道を行こう」
「ウン、早くしないと、昼までに戻れないからな」
トシオ君の発案で二人は間道に入る。立ち止まってはいられない。
お腹をすかせて待つ子供達のため、二人は道なき道を町に向かって進んでいった。


そのころ、ウナリ町では町を上げて復旧作業が続けられていました。
「なにをぼやぼやしてるんだ!復旧予定時間をすでに2時間も経過してるんだぞ」
予定通りに復旧作業が進まないらしく、いらだった現場監督が作業員をどやしつけた。

しかし現場の作業員は意外な反論をしてきたのだ。
「ですからさっきも報告したとおり2度もちゃんと直したのに、
 地下で異常な振動が起こって壊されてしまったんです」
「地下で・・・?」
「そうです。地面の下で、激しい地盤沈下が発生してるとしか考えられんのです」
作業員の真剣な面持ちに、現場監督も怒鳴るのをやめ、腕組みをして考え込んでしまった。

だが、次に彼らの目の前で起きた現象が、復旧作業を妨害していた原因だということを、
監督も作業員も、察するのにさほどの時間を要しなかった。

不可解な音と共に突然山の一部が盛り上がったかと思ったら、その中から不気味な怪獣が現れたのだ。
「あっ!」
「が、ガボラだあ!」
「逃げろ!」
作業員達はクモの子を散らすように逃げ散った。



あわてて事務所に戻った現場監督は、すがりつくように電話を手にした。
「科学特捜本部を早く!早く!ガボ、ガボラだあ!!」




ガボラ現る、の報はすぐさま科特隊本部にいるムラマツキャップに伝えられた。
科特隊では早速、ガボラ対策の協議に入った。

「ガボラが現れたのは、ウナリ町にあるウラン鉱山付近の地点。
 ガボラはこのウナリ町をメチャメチャにした上、今度は隣のアベ町に向かって進行中なんだ」
ムラマツキャップが現場周辺地図を指差し、現状を説明していた。

コンピューターに通信データが入った。ハヤタ隊員がそのデータを手にし、読み上げた。
「キャップ、ガボラは放射能光線を吐く怪物ですね」
ガボラの能力を調べたデータが転送されてきたのだ。

無論ムラマツキャップはその豊富な知識の中にガボラのことも記憶していた。
「ウン。しかもやっこさんの好物はウラン235だ。今ガボラが狙っているアベ町にはウラン貯蔵庫がある」
ガボラがその貯蔵庫を狙っているのは確かなようだ。

ムラマツキャップが説明を続けた。
「アベ町がやられたらその一帯が放射能に汚染される危険がある。
 なんとかアベ町への侵入を食い止めなきゃならん」
全てを伝え、隊員たちの顔を見たムラマツキャップ。誰も臆している者はいなかった。

それを見たムラマツキャップは胸を張り、隊員たちに次なる命令を下した。
「さあ、出動準備!」
規律を正す科特隊員たち。すぐさま隊員服に着替え出動だ。

「早く早く!早くしないとアベ町もやられちゃうよ」
科特隊専用車ではすでにホシノ少年がスタンバイしていた。
隊員たちを今か今かと待ちわびているホシノ少年。
「さあ急ごう」
ハヤタ隊員の掛け声で出発する科特隊。向かうはガボラが暴れるウナリ町だ。


キャンプ場から町へ食料調達に向かっていたタケシ君とトシオ君は間道を進んだものの、
大きな岩の崩落により行く手を阻まれていた。
「道がない!ダメだ!」
しかし何としてでもお昼までには子供達に食料を届けなければならない。

「大丈夫、大丈夫!二人で押せば、行けるよ」
元気をなくしかけたタケシ君をトシオ君が励ます。
二人はあきらめることなく、励ましあい、力を合わせて難所を突破しようとがんばっていたのだった。


現場に到着した科学特捜隊は、ガボラの進行を阻むべく作戦を立て、
それを実行に移すため役場での会議に出席。町長と話し合いをしている最中だった。

「この町にはウランの貯蔵庫があるんだ。そこを、ガボラに襲われたら一体どういうことになると思う?
 えっ!?台風の復旧作業にみんなが立ち上がったばかりなんだ。
 それなのに君達は、ただ手をこまねいて眺めているだけなのかね!」

ガボラ進行にウラン貯蔵庫。町長の苛立ちはピークに達し、警察署長に食って掛かっていた。
「まあまあ、ここのところでガボラを町に入れないための防止工作を進めているところなんだから」
「そんなことでガボラが食い止められると思うのか!」
「それは・・・」

町長の剣幕に所長もお手上げだった。
だがムラマツキャップだけはこの二人の会話を冷静に聞いていた。
ムラマツキャップはスッと立ち上がり、町長を見た。

「町長、相手は放射能光線を持った怪獣です。迂闊に攻撃して光線を吐かれると、町は全滅してしまう!
 だからまず、なんとしてでもガボラを町から遠ざけなければならないんです!」
有無を言わさぬムラマツキャップの迫力に、町長もすっかり押され、沈黙してしまった。



その時だった。役場会議室にアラシ、イデ両隊員が駆け込んできたのだ。
「キャップ!準備完了しました!」
「ガボラが接近してきます」
「よし、ガボラ防止工作開始!」
二人の報告を聞き、自信満々に命令を伝えるムラマツキャップ。

なんとしても町は守る。
ムラマツキャップのその意気込みが、町長にも隊員にも強く伝わっていた。


これからガボラが進行してくるであろう現場には、
すでに防衛軍と、防衛軍所有の火炎砲車数台が待機していた。

やってくるガボラに一斉に火炎を浴びせ、
その熱で進行方向を変えようというのがムラマツキャップの作戦だったのだ。

その予想通り、火炎砲車の待ち受ける地点にガボラがやってきた。
はたしてムラマツキャップの作戦はうまくいくのだろうか。
町長も、隊員たちも、そしてムラマツキャップも、事の成り行きを見守る。



ムラマツキャップが右手を大きく振り上げた。
それを合図に防衛軍が一斉火炎放射を始めた。

ウラン欲しさに、それでも火炎に突っ込んでこようとするガボラ。
ムラマツキャップは更に両手を振り上げた。



すると火炎は更に威力を増し、ガボラを直撃した。かなりの高温だ。
さすがのガボラもこれには敵わず、あわてて進路を変更。山中に逃げ込んでいった。
ムラマツキャップの作戦は大成功。皆、胸をなでおろした。

「ガボラが向きを変えたぞ。よかったよかった」
町長が安堵の表情を浮かべる。隊員たちもしてやったりだ。

だがガボラの逃げた方向を見つめていた警察署長だけは、あることに気がついたのだった。
「いかん!あの方向には少年団のバンガローがある!」
「ええ!?」
一難去ってまた一難だ。

「クッソー、ガボラのヤツ、もう我慢できない!キャップ、行かしてください!」
子供の危機と聞いては黙っていられない。子供好きのアラシ隊員が名乗りを挙げる。
しかし、
「焦るなアラシ」
無謀、と判断したムラマツキャップはいきり立つアラシ隊員を制止した。

「射撃には自信があります。急所を一撃すれば、ヤツだって倒れるはずです」
子供達の窮地を救いたい一心で、アラシ隊員はそれでも出撃を志願する。

「ガボラの皮膚は鋼鉄の5倍も硬いのよ。一発で仕損じたらどうするの?」
見かねたフジ隊員も、心配そうにアラシ隊員に言い寄った。
それでもアラシ隊員の怒りは納まらない。



その時、ハヤタ隊員がムラマツキャップとアラシ隊員の前に進み出た。
「待てアラシ。ひとつだけ方法がある」
ハヤタ隊員の顔は自信に満ちていた。

「ひとつだけ?」
アラシ隊員がハヤタ隊員の顔を見る。
「ガボラの大好物、ウラン入りのカプセルをヘリコプターにつる提げて、
 ガボラを30キロ離れた山の中に誘い出すのだ」

しかしこの策にはムラマツキャップが反対した。
「それは返って危険だ。ウランを見たらキチガイみたいに暴れだす。ヘリも狙われるぞ」
リスクの大きい作戦で、隊員を危険な目に遭わせたくない。

だが、ハヤタ隊員も引かなかった。
「しかし、他に方法がありません」
きっちりと言葉を返すハヤタ隊員に、さすがのムラマツキャップも言葉が見つからなかった。

「そうと決まったら、キャップ、そのヘリにはボクが・・・」
出撃できる。喜び勇んでムラマツキャップの前に踊り出たアラシ隊員だったが、
後ろからハヤタ隊員がアラシ隊員の肩に手を置いた。
「待てアラシ、全ての計画は発案者に優先権ありだ」
苦い顔で振り向くアラシ隊員を見てニヤリと笑うハヤタ隊員だった。


ひたすら落石だらけの間道を行くタケシ君とトシオ君であったが、町まではまだかなりの距離があった。
そしてその間道で、タケシ君は突然、災難に見舞われた。
「ああっ!」
「タケシ!タケシ!!」
突然タケシ君の足元が崩落したのだ。
突然足場をなくしたタケシ君は20メートル下まで転落し、足を抱えてうずくまってしまった。

トシオ君が自転車をそのままに、あわてて崖を降りてきた。
「大丈夫か?」
タケシ君を気遣うトシオ君。しかしタケシ君はくじけなかった。
「何のこれしきの事。あの子達が待ってるんだもんな」

痛みをこらえ、懸命に立ち上がろうとするタケシ君。
だが彼は足首を捻挫し、自力で立ち上がることすらも困難になっていたのだ。

「よし、オレの肩につかまれ!」
痛みに耐えるタケシ君を自分の肩に抱え、トシオ君は崖を上がって行く。

町に行かなければ。
その使命感のもと、二人は力を合わせて町への道を進んでいくのだった。



(後編に続く)

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