EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD
第10話後編
by しぃさぁ

夜のキタヤマ湖畔のホテルでは、バーでのんびりとグラスをかたむけるハヤタ隊員とアラシ隊員の姿があった。

一夜限りの特別休暇だ。
二人は酒と料理をゆっくりと楽しみ、羽をのばしていた。

そこへ、一人の男が人を尋ねてやってきた。
昼間にモンスター博士ことナカムラ博士の屋敷に取材に行った、ハヤシカメラマンだった。
どうやらクボ記者を探しているようで、ハヤタ隊員に彼女を見かけたかどうかをを尋ねてきたのだった。

「ああ、その人だったらさっきうちのイデ君と一緒にキタヤマ湖へ夜釣りに出かけましたよ」
「夜釣り?」
「ええ」
「好きだなあクボちゃんも」
呆れたように言うハヤシカメラマンはそのままハヤタ隊員の横に座り、自分もグラスをひとつ、手に取った。

そのころ、クボ記者とイデ隊員はキタヤマ湖のほとりまで出向いていた。
二人は言葉もかわさず、ただ湖面を見つめるだけだった。
夜だというのに月明かりに照らされ、湖面はきらきらと輝きを放つ。



しかし二人の様子は見るからにおかしい。
見たところ釣りでもなければデートでもなさそうだ。
では一体何のために・・・

すると、二人が見つめる湖面では何がしかの生き物の鳴き声と、同時に大きな波しぶきが立ち上がった。
それはあの、ジラースの鳴き声だった。

「見たわね?」
クボ記者は驚く様子もなく、そばにいたイデ隊員に同意を求めた。
どうやらクボ記者はこの湖の秘密を知っているらしい。
イデ隊員を科特隊と知り、この証拠を確認させるために、彼を連れ立ってこの湖畔に来たのだ。

「見た!確かに!連絡を取らなければ」
そういいながらレシーバーに手をかけるイデ隊員。その目はすでに科特隊員の目だ。

しかし、クボ記者がそれを遮った。
「待って、あれ!」
クボ記者の指差す方、湖面の中央には、
先ほどの波しぶきがあったあたりから湖岸に向かう一艘のボートの陰がある。
乗っているのは白い白衣、ナカムラ博士だ。

「行って見ない?」
「ええ!?」
「追うのよあの男を」
あわてるイデ隊員をせかし、追跡をしようというクボ記者。

イデ隊員も興味が湧いたようだ。
二人はボートの着岸点めがけて走り始めた。

ナカムラ博士はボートを降りると人目を避けるかのように、湖畔の林を突っ走った。
急いで後を追うイデ隊員とクボ記者。

「待って!」
イデ隊員はクボ記者を止めた。
そして自らのブーツから科特隊の流星マークのワッペンをはがし、太い木に貼り付け目印にすると、
再びモンスター博士の追跡を開始した。



やがてモンスター博士の姿は洞窟の中に消えた。
それを確認したイデ隊員が、注意深く洞窟に入っていく。

するとその洞窟の中には、驚いたことに岩の形にカムフラージュされた扉があったのだった。
そっと扉を開け、中の様子をうかがう

部屋の中は明かりもなく真っ暗だった。
イデ隊員がライトを当てると、部屋の中が不気味に映し出された。
室内には恐竜の壁画が描かれ、机には、フラスコや地球儀、動物の剥製などが置かれてあった。

「ここはモンスター博士の研究室だわ」
やはり何かを知っているのか、クボ記者はそこがどこだかすぐに理解した。
だが、次の瞬間!
「キャー!」
イデ隊員の照らす懐中電灯に、その、恐ろしい形相をしたモンスター博士の顔が映し出されたのだった。

「見たな!ワシの秘密を知った以上は、このままでは帰すわけにはいかん!」
部屋の明かりをつけ二人に襲い掛かるモンスター博士。その手には拳銃が握られている。
「どうしようってんだ」
クボ記者を後ろに守り、イデ隊員が楯になる。



その時、イデ隊員の通信機が受信をキャッチした。
「こちらハヤタ、イデ君、いつまで夜釣りを楽しんでるんだ。もうそろそる帰ってこい」

ハヤタ隊員だった。なかなか戻らないイデ隊員に、帰還の命令だ。
しかしイデ隊員はそんな場合ではない。
目の前で拳銃をかまえるモンスター博士をなんとかしなければ、戻ることなど無理な相談だ。

「おいイデ、どうしたんだ!イデ!聞こえないのか!!」
無線で叫ぶハヤタ隊員の声。イデ隊員の窮地がハヤタ隊員に分かるはずもない。
モンスター博士はピストルを片手にゆっくりとイデ隊員に近づくと、
通信機を掴み取り、地面に叩きつけて踏み潰してしまった。

「おいイデ!どうしたんだ!」
いくら叫んでも応答のないイデ隊員。しかも途中で通信が切れてしまった。
異常あり。ハヤタ隊員とアラシ隊員は緊急体制に入った。

イデ隊員の無線を壊したモンスター博士は、拳銃を握り締めたまま隠し窓を開けた。
そして、イデ隊員とクボ記者に見せつけるかのようにその名を呼んだのだ。

「ジラース、ジラース。さあ出てきて、顔をお見せしろ」
モンスター博士の呼び声に、遂にジラースが姿を現した。

大きい。巨大な恐竜のような生き物だ。

湖面に姿を見せたジラースの恐ろしい姿に、イデ隊員は息を呑んだ。
「ワシが15年もかかってようやく育て上げたジラースだ。命よりも大事なジラースだ。
 15年もかかったんだ、15年も。ワシが、ワシが育てたジラースだ!」


イデ隊員クボ記者行方不明の知らせを受けたムラマツ隊長とフジ隊員は、謎の渦巻くキタヤマ湖へ急行した。
一方、ハヤタアラシの両隊員は二人の行方を探るため、早くも行動を開始していた。

ナカムラ博士により、すっかり洞窟内部に閉じ込められてしまったイデ隊員とクボ記者。
やがて夜が明け、洞窟内にも少しばかりの朝日が注ぎ込む。
その洞窟内では、イデ隊員が通信機の修理に全力を注いでいた。

「無駄だ、やめてくれ」
出口を探そうと躍起になるクボ記者をイデ隊員が制止した。
「修理できそう?」
「何とかやってみる。ヘアピンを貸してくれないか」
メカには精通しているイデ隊員。



クボ記者も出口探しはあきらめ、イデ隊員の申し出どおりヘアピンを差し出した。
「これさえ直れば・・・」
最後の望みを通信機の修理に託すイデ隊員。
クボ記者はもうイデ隊員を信じるより他、道がなかった。


そのころキタヤマ湖面では、湖にドライアイスを投げ込む二人の釣り人の姿があった。
キタヤマ湖の魚の異常発生を聞きつけ、昨日釣りに来てみたが、
あまりの大漁に、今度はドライアイスで一気に魚を浮かばせて獲ろうという魂胆のようだった。

「上がった!やったぞー!」
「うまくいったなあ!」
二日続きの大漁に両手放しで喜ぶ釣り人。しかし、このドライアイスがいけなかった。
湖底に眠るジラースまでも刺激してしまったのだ。

何も知らずに魚を集める二人の後ろから、あの恐ろしい鳴き声がしたかと思うと、
見る見るうちに湖面が割れ、朝だというのにジラースが姿を現してしまったのだった。

ジラースの姿を目の当たりにした釣り人は、あわてて湖岸へ逃げようとボートを漕いだ。
「助けてくれー!!」
だがジラースがおこした波によりボートは転覆し、
泳いで湖岸に逃げる釣り人二人。

ちょうどそこへハヤタ、アラシ両隊員が、
空にはジェットビートルでムラマツキャップとフジ隊員が到着。科学特捜隊集合だ。

ムラマツキャップとフジ隊員はビートル機内からジラースの姿を目撃した。
「キャップ!」
「よし、すぐ着陸だ」
ジェットビートルはすぐさま付近に着陸。ハヤタアラシの両隊員と合流した。



モンスター博士ことナカムラ博士は、大汗をにじませながら必死に湖面に向かって走っていた。
ドライアイスに刺激を受け、いきなりジラースが姿を現したことはナカムラ博士にとっても計算外だった。



湖岸では、科特隊とジラースの戦闘が開始されていた。
アラシ隊員がスパイダーショットでジラースを狙い撃つ。

必死に科特隊の攻撃拠点まで走ってきたナカムラ博士は、
その攻撃を阻止しようと、アラシ隊員めがけて飛びかかった。
「やめろ!オレのジラースに勝手な真似はさせんぞ!」
「何をする!」
思わずのけぞるアラシ隊員。ナカムラ博士はそのままアラシ隊員を突き飛ばした。



「オレの?」
ムラマツキャップがナカムラ博士の言葉尻を捉えた。
ナカムラ博士はその目を異様に光らせ、ムラマツキャップと対峙した。

「そうだ、オレのこの手で作り上げたんだ。傑作だろう。
 あのランランと光る目を見てみろ。あのたけび狂った口元を見てくれ。
 ジラースはオレの作り上げた芸術品だ。勝手な真似はさせんぞ!」

そう叫ぶナカムラ博士の科特隊を見る目は、もはや常人のそれではなかった。
「狂ってる・・・」
さすがのハヤタ隊員も恐怖に顔を引きつらせた。



「博士、あなたの恐竜に対する考えは間違っている!
 ニカイドウ教授のように学問として真剣に取り組めないんですか!」
ムラマツキャップは今一度だけ、ナカムラ博士に真っ当な研究をしてくれと訴えた。

ところが、ナカムラ博士はニヤリと笑うと、なんと、自分の顔の皮をはがしたのだった。
そう、ナカムラ博士の顔は、襦袢で出来たお面だったのだ。フジ隊員が悲鳴をあげる。



「ニカイドウ教授!あなたは、15年前ネス湖で行方不明になった、ニカイドウ教授!」
ムラマツキャップは愕然とした。ナカムラ博士が顔のお面を取り去ると、
その下から出てきた顔はなんと、ニカイドウ教授だったのだ。

ニカイドウ教授はムラマツキャップを一瞥し、ジラースの元に駆け寄っていった。
「ジラース!暴れろ!暴れろジラース!お前の強さを、見せてやるんだ!」
しかしドライアイスに狂わされたジラースはもうニカイドウ教授のかわいいペットではなくなっていた。
狂ったニカイドウ教授にはそれがわからない。

「ワ!ウワー!」
上陸してくるジラースに、ニカイドウ教授は簡単に踏み潰され、絶命した。
一部始終を見ていたムラマツキャップも思わず顔をそむける凄惨な光景だった。

そのころ洞窟の中では、やはりクボ記者が一部始終を目撃していた。
「大変よ、ジラースがこっちに向かってくるわ」
クボ記者はイデ隊員をせかせた時、イデ隊員の顔が笑顔になった。
通信機の修理が完了したのだった。

「さあ直ったぞ!こちらイデこちらイデ。
 モンスター博士の研究室に監禁されています。少年グラフのクボ記者も一緒です」
イデ隊員は早速、ムラマツキャップに連絡を取った。

「雑木林に秘密の通路があります。ワッペンで目印をつけときました」
「了解!アラシ、スパイダーショットでなんとか食い止めるんだ」
イデ隊員の通信を受け取ったムラマツキャップは早速救出に向け、行動を開始した。

「あっちだ」
湖畔の森を走る科特隊。イデ隊員が目印につけたワッペンを発見し、洞窟に向けて突き進む。
しかしこの時ハヤタ隊員だけが隊から離れ、洞窟とは別の方向に走り出したのだった。



「キャップ、スパイダーショットのエネルギーはもうありません。早く中の二人を助け出してください」
アラシ隊員も限界が近い。無線を聞いたムラマツキャップは発見した洞窟へ入り、
イデ隊員とクボ記者を救出すると、迅速に非難を促した。

ジラースの狂った魔の手が科特隊を襲う。危ない!

その時、別方向に分かれたハヤタ隊員の持つベータカプセルがまばゆいばかりの光を発し、
遂にウルトラマンが現れたのだった。



ニカイドウ教授の屋敷を破壊しようとするジラース。ウルトラマンは背後からその手を押さえつけた。
突然現れたウルトラマンにジラースは怒り心頭。すぐさま向き直りウルトラマント対峙する。

オレは強いんだぞ。ジラースはそう言いたげだ。
そのジラースをウルトラマンが挑発した。かかってこい。



にらみ合うウルトラマンとジラース。両者とも動かない。
先に動いたのはジラースだ。だが攻撃を仕掛けたわけではない。
足元にあった岩を両手で持ち上げて空中に投げたのだ。
そして口から白熱光線を吐き、空中に浮く岩を破壊したのだった。

どうだ、といわんばかりのジラース。得意満面だ。
なるほど、と言いたげなウルトラマン。今度はウルトラマンの番だ。
ウルトラマンも足元の岩を空中に投げた。そしてスペシウム光線で見事に破壊。
しかも、二つ同時に、だ。役者が違う!

頭にきたジラースは怒りに任せてウルトラマンに突っ込んでくる。
軽くジラースの頭を抑え、跳ね返すウルトラマン。
何度ジラースが突っ込んでも同じことだ。



ウルトラマンは全て簡単に跳ね返し、ジラースはもんどりうってしりもちをついてしまった。
余裕しゃくしゃくで高笑いするウルトラマンに、白熱光線をお見舞いするジラースだが、
これすらもしっかり見切り、余裕で避けるウルトラマン。

今度はウルトラマンがジラースに突っ込んだ。そして、ジラースの首にある大きなエリマキをむしり取った。
首に手をやり、エリマキがなくなったことを確認するジラース。怒りは頂点に達した。

ウルトラマンは奪い取ったエリマキを高々と上げ、自分の強さを誇示して見せた。
ジラースが三度突っ込んでくる。ウルトラマンは闘牛士さながらエリマキでかく乱する。



やがてジラースの動きが止まり、ウルトラマンを凝視した。決着をつけようじゃないか。

ウルトラマンもエリマキを捨て、ジラースと向き合う。いいだろう。勝負だ。

お互いにらみ合い、隙をうかがう。そして、両者同時に前への1歩を踏み出した。
両者がすれ違う。ジラースの腹部が一瞬青白く光った。ウルトラかすみ斬りだ。

再び向き合った両者。だが、ジラースの口からは赤い血が滴り落ち、
そのまま前のめりに倒れこんだ。ジラースの最後だ。

だが、勝利を収めたウルトラマンも、後味が悪いようだった。
(ジラースよ、お前も研究の犠牲者なのか・・・)
もぎ取ったエリマキをジラースの亡骸にそっとかけてやるウルトラマン。



とにかく平和は戻った。ウルトラマンは空へと帰っていった。

「自分で恐竜を育てちゃうなんて、本当に恐ろしい博士だわ」
恐ろしい目に遭ったクボ記者。
「カラスやヘビを育てる程度では我慢が出来なくなったんだよ、モンスター博士は」
窮地を脱したイデ隊員。
「よっぽど恐竜にしびれてたんだな」
二人の救出に協力したアラシ隊員。
みな口々にニカイドウ教授の狂乱ぶりを口にした。

だが、最愛のジラースに殺されたなら、ニカイドウ教授も本望だったのではあるまいか。
ニカイドウ教授はきっと、ジラースと共に湖の底に沈んだのだろう。



任務は終わった。後味の悪さを残しながらも、科特隊はキタヤマ湖を後にしたのだった。

あとがき
今回はジラースが活躍してくれました。
もう皆さんご存知でしょう。
あの、ゴジラのリサイクル怪獣です。

ウルトラマンがエリマキを取ってしまったため、
テレビで見ていた当時「あ、ゴジラになっちゃった!」と叫んだ記憶があるくらいです。

しかしこのジラースが、こんなに不気味でかわいそうな物語だったということは
全く記憶に残っていませんでした。

モンスター博士が何のためにこんな怪獣を作り上げたか。
やはりただ興味のためだけだったのでしょうか。

それだけであんなでかい怪物を育ててしまうというのですから、
想像の枠を超えた金城哲夫氏の脚本には脱帽です。
さすがは天才です。参りました。

ところでこのウルトラワールドもやっと第10話までたどり着きました。
始めてから3ヶ月ですからまずまずのペースだと自分では納得しています。

意外だったのは、思ったよりもアクセスが多いことでした。
やはり「ウルトラマン」という作品は、みんな好きなんだなあ、と実感し、
いい加減には出来ないぞ、と気を引き締めております。

これだけの名作を扱っているわけですから、
これからもよりいっそう、いい文を書けるようがんばります。

さて、次回はこいつが活躍してくれます。



・・・が・・
実は今から頭が痛いんです。
なぜ?それは、次回のあとがきでお話いたしましょう。

今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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