EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD

第13話前編
by しぃさぁ

イランを始め中近東の国々で原因不明の油田火事が起こり、
航行中のタンカーが炎上、あるいは爆発するという事件が相次いで起こった。
科学特捜隊中近東支部は原因の調査に乗り出したが、正体を掴む事は出来なかった・・・



「おっととっととぉぉ〜♪」
深夜の港、一人の酔っ払いが千鳥足で埠頭を歩いていた。
かなり飲んだのか、呂律も回らないほどに酔っている。
足元はふらついて、今にも海に落ちそうだ。気をつけろよ。



その時、男の目に海の水が青白く光るのが見えた。
錯覚かと思い海面をそっと除きこんでみるが、確かに青白くフラッシュしている。
「ハッハアァ!光る水だね〜」
酔って幻覚を見たのではない。
青白い光は一瞬フラッシュしたかと思うと、今度は位置を変えてまたフラッシュする。
まるで何者かが移動しているかのようだった。



「どっこまでぇ〜続くぅ〜てか」
酔っ払った男は海面の怪光を追いかけ始めた。
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつとぉ。錯覚じゃない。おらあ確かに見たよな。
 あ〜、見た見た、確かに見たよぉ〜」

怪光を指差し、光ったことを確認する男。
「それにしてもよぉ、ありゃあいったい!?ああ?」
酔っているからこの程度の不思議顔で済んでいるのかも知れぬ。
一瞬の光はそれほど眩しい。

1台のタンクローリーが暗闇から姿を現し、男のそばを走りぬけようとした。
「お〜い!お〜い!!我が友よぉ!!」
酔っ払いは前から来たタンクローリーに手を振って道の真ん中にふらりと飛び出した。



急停止するタンクローリー。
「バカやろう!危ねえじゃねえか!!」
助手席から男が身を乗り出して怒鳴りつける。
しかし酔った男はそんなことは意に介さない。
「よお、しかしねえ、あんた今、変な光見なかったですかっぁ?」
「何だよ」
「あ〜、青い光が、トトト〜ンと向こうの方によ」
「酔っ払いに関わりあってる暇はねえんだよ、さあ、どいたどいた!」

助手席の男は酔っ払いを突き飛ばし、車の前からどかせると、
車は再び走り出し、再び闇の中に吸い込まれた。

「人が親切に言ってやってるのになんなんだ」
突き飛ばされ、倒れこんだ酔っ払いの男。
ブツブツと文句を言うが仕方がない。
誰だって酔っ払いのたわごとと思うのが関の山だ。

酔っ払いは立ち上がり、そして家に向かうのか、よろよろと歩き始めた。
ところがその背中をいきなり青白い怪光が包み込んだかと思うと、男の背中で大音響が炸裂し、
男があわてて振り返った時は先ほどのタンクローリーが火だるまになっていたのだった。



更にはすぐ近くの海面が大きく波立ったかと思うと、
そこからはおぞましい鳴き声と共に、なんとも恐ろしい姿の怪物が姿を現したのだった。



「ヴァ〜!!こりゃ大変だぁ!!!」
先ほどまでの千鳥足は演技だったかのようにあわてて逃げ出す酔っ払い。
怪物はそんなことには目もくれず、大炎上するタンクローリーを海中に引きずり込み、
そして自らも海中に姿を消していった。

連絡を受けた科学特捜隊は事件現場一帯の調査に乗り出した。
だが一夜明けたトウキョウ湾内は、うそのように静まり返っていた。
アラシ隊員とイデ隊員はビートルで空から海上を調査中。
事故のあった現場ではムラマツキャップとハヤタ隊員が
警察とともに事情聴取を行っていた。

「アラシ隊員、ぼちぼち引き上げようか」
異常の見られない湾内上空。イデ隊員は飽きがきたようだ。
「いかん!キャップの指令があるまでがんばるんだ」
アラシ隊員がたしなめるが、
「あらあ酔っ払いの錯覚だと思うね」
どうやらイデ隊員ははなから乗り気の調査ではないらしい。



しかし責任感の強いアラシ隊員は、
「たとえ錯覚だろうと、要請があれば一応調べる。
 科特隊法規第3条を忘れたのか!」
「分かりましたよ分かりましたよ」
科特隊法規まで持ち出されてはイデ隊員もお手上げだ。
渋々海面に目を向け、異常がないか確かめる。

「ムラマツだ。そっちの様子はどうだ」
地上のムラマツキャップから通信だ。即座にアラシ隊員が無線を握った。
「異常なし!キャップ、何かの間違いだったんじゃありませんか?
 海は波も穏やかだし、怪物のいる気配は全くありません」
アラシ隊員も昨夜の事件を疑っていたのか、それほどまでに湾内は静かで穏やかだった。
地上では、厳しい表情のムラマツキャップが上空を空過するするビートルを見上げている。



「目撃者の男は、その後何といってるんですか?」
「相変わらず自分の証言に間違いはないとがんばってる」
アラシ隊員の通信に、そう答えるしかない、といった顔つきのムラマツキャップ。
その視線は上空のビートルから証言者の男=昨夜の酔っ払いへと向けられていた。

「何度言えばわかるんだ!オレは昨夜確かに酒は飲んでた。
 しかし怪物がタンクローリーを襲ったのを見たのも確かなんですよ!」
男は刑事の袖を掴み、懸命に昨夜の話を信じてもらおうと叫んでいた。

しかし海上は至って穏やか。
そんな酔っ払った時の、信じがたい証言をまともに聞く者などいない。
「海上を科学特捜隊が調査しているが、以上はどこにもないそうだ」
「そんなこと知るもんか!」
刑事が突き放すように言うが、男は断じて引き下がらない。

警察では、タンクローリーが爆発し、海中に没したという事実しか認識しようとしていない。
「タンクローリーが爆発したのは、あんたが火のついたタバコを投げたからじゃないのかね?
 それを得たいの知れない怪物のせいにして」
「おれがやった!?勝手なことを!!」
「違うのかね?」
「それなら警察にわざわざ連絡なぞするものか!!!」
男の言うことももっともではあるが、これを信じろと言うのは警察でなくともかなりの無理がある。
回りで押さえつける人がいなければ、男は刑事に組み付いていたかもしれない。
それほど必死で昨夜の事件の真相を訴えていたのだった。

「刑事さん、少し休ましてはどうですか?
 昨夜の出来事が真実か錯覚か、冷静に考えてもらうんです」
見かねたハヤタ隊員が刑事と男の間に割って入った。
しかしハヤタ隊員のその言葉が男の癇癪をさらに破裂させることになってしまった。
「君までオレを疑ってるのか?あれは錯覚なんかじゃないよ!
 いくら頭を休めたって冷静に考えたってオレの答えはひとつなんだ!!
 タンクローリーは海から現れた怪物にやられたんですよ!!!」
男は今にも泣き出しそうな顔つきでハヤタ隊員に訴えた。
震えた両手は、それでもしっかりとハヤタ隊員の両の腕を掴んでいる。



「ハヤタ、ちょっと来い」
一部始終を見ていたムラマツキャップがハヤタ隊員を呼びつけた。
「どう思いますあの男の証言を」
ハヤタ隊員はすっかり困り顔でムラマツキャップの指示を求めたが、
ムラマツキャップは厳しい表情を崩すことなく自分の考えを口にした。

「う〜ん・・・・・
 気になることがあるんだ」
もったいぶった言い方をするムラマツキャップ。
ハヤタ隊員がキャップの顔を覗き込む。



「数週間前、中近東で油田やタンカーが
 相次いで爆発すると言う事件があったことを君も知っているだろう」
「はい、パリの本部からも連絡があった例の原因不明の事件ですね」
「その犯人が日本にやってきたんじゃないかと思ってね!」
「なんですって!?」
ムラマツキャップの推理にハヤタ隊員は仰天だった。
そんなことが本当に起こっていたとしら、石油大国の日本は大変なことになる。

時同じく湾内偵察中のビートルでは、
イデ隊員が海面の異常をすぐさま察知し、アラシ隊員に指差して伝えていた。



イデ隊員の指差す方向、そこは例の青白い怪光がフラッシュしながら移動を続けていたのである。
アラシ隊員はすぐに無線を掴み、ムラマツキャップへ報告を飛ばした。
「アラシよりキャップへ!青い怪光を発見!!」
「あっ!大変だ!」
同時にイデ隊員が叫んだ。
青い怪光は湾内を航行するタンカーにまっしぐらに向かっていたのだ。

やがてタンカーのすぐそばまでやってきた怪光は白い波しぶきとなり、
次の瞬間、タンカーは爆発炎上。

上空のビートルでは何が起こったのか全く分からない。

地上でもこの爆発音が聞こえ、即座に皆、埠頭へと駆け寄ってきた。
突然のタンカー爆発に目を疑うムラマツキャップと刑事たち。
しかし現に目の前のタンカーは炎上しているのだ。

「あれだよオレの見たのは!刑事さん!!」
とっさに叫ぶ男。だが気が動転している刑事達の耳には入らない。
いきなり海上で大炎上を起こした大型タンカー。
刑事達は、信じられないという顔つきでその光景を見つめている。



タンカーから立ち上る火炎の間をビートルが空過する。
するとタンカーのすぐそばで起きた大きな波しぶきの中から
昨夜出現した、酔った男が目撃した、あの怪物=ペスターが姿を現した。

「あの怪獣だよ!」
男は必死に刑事の体をゆすり、信じてもらおうと訴える。
刑事は苦虫を噛み潰したようにムラマツキャップを見る。
だがムラマツキャップはただじっと、
炎上するタンカーを叩き潰し、海中に引きずり込もうとするペスターの姿を観察していたのだった。
今は何も出来ない。ならばせめて・・・



タンカーを我が物にしようと息巻くペスター。
怒りを抑え、ペスターを睨みつけるムラマツキャップ。

やがてタンカーはペスターの手によって完全に海中に没し、
ペスター自身も得意気に海中に姿を消したのだった。

とんでもない事件が起きた現場では、新聞記者たちが殺到し、
刑事達はそれらの対応に追われていた。

そこから少しばかり離れたところに停泊しているヨットのデッキには、
ムラマツキャップと、もう一人、スーツ姿の人物がいた。
イワモト博士だ。



今回の怪物、ペスターが本当に中近東からやってきたものなのか、
どういう性質をしているのか、
そのことを解明するためにムラマツキャップの要請に応え、現場まで出向いてくれたのであった。

ムラマツキャップから詳しい情報を得たイワモト博士は早速持論を展開した。
「タンクローリーやタンカー、それに、中近東の油田。
 これらを襲っていることから考えると、怪物は間違いなく、オイルを喰って生きてるね」
「オイルを喰う!?」
さすがのムラマツキャップもイワモト博士の言葉に困惑気味だった。

だがイワモト博士はさも当然と言わんばかりに話を続けた。
「驚くことはないさ。メタニカやモーナス菌のように、油を喰って生きてる微生物だって無数にいるくらいだ。
 石油時代といわれる現代文明の裏側で、オイルを喰う怪物が現れても不思議はないだろう」
「オイルを喰う怪物・・・」
ムラマツキャップの表情が曇った。なんて厄介な怪物なのだろう・・・

二人の横をアラシ隊員がすり抜けていく。
その先ではハヤタ隊員とイデ隊員が海上の見張りを続けていた。
「チキショウ・・・どこへ姿を消しやがったんだ」
悔しがるアラシ隊員。タンカー一隻目の前で叩き壊され、何も出来なかったのが悔しくて仕方ない。

ハヤタ隊員が振り返った。
「きっと海の中だ」
「するとまた、タンカーやタンクローリーがやられるっていうわけか」
イデ隊員が次なる被害を予測する。
その会話を聞いていたムラマツキャップが3人のところへやってきて対岸を指差した。
「その怪物が次に襲うのは・・・製油所だ」

東京湾一帯に緊急非常体制が発令され、工場は活動を停止し、湾内は船の入港が禁止された。
そして我が科学特捜隊本部では、怪獣を撃滅すべく作戦会議が開かれた。

「そうだ、中近東からのリポートがある」
イワモト博士の用意したリポートの前に集まる科特隊員。

フジ隊員が大きなパネルを抱え、入室してきた。
「怪物の想像図です」
フジ隊員の出したパネルには、ペスターの姿が描かれていた。



ムラマツキャップがパネルの一部を指差した。
「特徴はこの大きな腹だ」
キャップのその言葉で、イデ隊員があることに気がついた。
「キャップ、オイルが詰まってるんじゃないですか?」
「おいおい、まさか」
現実離れしたイデ隊員の考えに、アラシ隊員は否定的だったが、
イワモト博士はその考えを支持した。
「いや、イデ隊員の説が当たってるかもしれない。
 そうでなければ到底日本まで来ることは出来んだろう。大量のエネルギーを必要とするからね」
ぺすたーの腹は、いわばらくだのこぶ。燃料貯蔵庫のようなものなのか?

「はあ?だとしたら、やっつけるのは簡単ですよ」
アラシ隊員が笑顔になる。
「簡単!?」
不審に思いムラマツキャップが振り向く。



「ええ。つまりですね、怪物自体が爆弾みたいなものだ。
 これで一発お見舞いすれば、ドカ〜ンと自爆しちまうってわけですよ」
「それは危険だよ。ヤツはタンカーを一瞬に爆破出来る怪光線を持ってるんだ。
 もし攻撃に失敗して上陸したらどうする」
「うん・・・・・」
ハヤタ隊員にたしなめられ、意気消沈のアラシ隊員をそのままに、
ムラマツキャップは作戦指令を発令する。
「イデ隊員は怪獣の攻撃を。ただし、発射の指令は私が出す」

再び全員がペスターのパネルの前に集まった。
「やつは爆弾そのものです。万一のことがあってはいけません。
 みんないいな!」
イワモト博士に作戦を慎重に進める旨を伝え、いよいよ科特隊出動だ。
「出動!!」
ムラマツキャップの号令が響く。
科特隊本部からジェットビートルが飛び立った。

現場上空に近づいたころ、ハヤタ隊員がビートルの前を飛ぶ2機のヘリを発見した。
「キャップ、空挺隊です」
この空挺隊はムラマツキャップが今回の作戦遂行にあたり、要請したものだった。

「投下準備いいか?」
「こちら106号機、投下準備完了」
「203号機、投下準備完了」
「投下開始!」
ムラマツキャップの合図と共に空挺隊のヘリが海上に投下したもの、
それはオイルが満タンに詰まったドラム缶だった。



これでペスターをトウキョウ湾の外に誘い出し、
安全なところで仕留めようというのがムラマツキャップの作戦だったのだ。

2機のヘリから投下され、海上に無数に散らばるドラム缶。
はたしてムラマツキャップの思惑通り、ペスターは誘い出されてくるのだろうか。
祈る思いで海上を旋回するビートルだった。



(後編に続く)

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