EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD
第13話後編
by しぃさぁ

「遅いなあ・・」
海上にばらまかれた無数のドラム缶を見つめながらイデ隊員がつぶやいた。

ビートルで上空を旋回し、ペスターの出現を待つが、
ペスターは一向に現れる気配がない。
「太平洋に逃げちゃったのかしら?」
フジ隊員も首をかしげる。

海面ではドラム缶がゴンゴンと音を立て、波にただようばかりである。
ムラマツキャップはそのドラム缶を見つめ、渋い表情を浮かべていた。
「あっ、キャップ、燃料が少なくなりました。一旦引き上げましょうか?」
操縦桿を握るアラシ隊員がムラマツキャップに報告した。
かなりの時間旋回していたが、ペスターの姿はどこにも見つけることは出来ない。

「う〜む、私の作戦が甘かったようだ」
ムラマツキャップも多少のあきらめがあるようだった。
このまま一時退却して作戦を立て直すか・・・
ムラマツキャップの思考回路が回転を始めた矢先だった。
「キャップ!あれを!!」
イデ隊員が叫んだ。指差す方向には例の青い怪光が光っていた。

ペスターだ。間違いない。
青い怪光は真っ直ぐにドラム缶目指して突き進んでくる。
やがて波に漂うドラム缶の中央に大きな波しぶきが立ったかと思うと、
そこにはついにペスターが、そのおぞましい姿を現したのだった。



ペスターの頭上をビートルが駆け抜ける。
だがペスターはそんなことはお構いなしに、
次々とオイルの入ったドラム缶を食べ始めた。
やはりイワモト博士の推測どおり、ペスターはオイルを食べて生きていたのだった。
ビートル機内が緊張に包まれた。



ぺすたーの姿を確認したムラマツキャップは即座に指令を飛ばした。
「アラシ、イデ、怪獣にできるだけガソリンを喰わせるんだ。
 私が合図するまでは絶対に発砲してはいかん。いいな」
「ハッ、わかってます」
イデ隊員がしっかりとミサイル発射レバーを握り締めた。



罠とは知らないペスターは、片っ端から大好物を平らげようと夢中だ。
全くの無防備状態である。
「よし、今だ。攻撃開始!」
ムラマツキャップの命令と同時にイデ隊員がミサイルを撃つ。
だがミサイルはペスターの手前の海上に着弾。

はずした。絶好の機会を逃してしまった。

いきなりの攻撃であわてたのはペスターだった。
もともと注意深い性質なのか、
身の危険を感じると好物のオイルをそのままに、さっと海中に姿を消してしまった。

「ちきしょう、なんてすばやいヤツだ」
操縦桿を握り締め悔しがるイデ隊員。
ペスターは再び青い怪光となり、海中を移動し始めた。

「あ、湾内に侵入しました」
青い怪光の進路に気付いたアラシ隊員が叫んだ。
ペスターは再びトウキョウ湾内に逆戻りしてしまったのだった。

「クソー!」
「イデ、湾内では絶対に発砲してはいかんぞ」
先制攻撃に失敗し、悔しがるイデ隊員をムラマツキャップがたしなめる。
そう、もし湾内でペスターを攻撃して大爆発すれば、それこそトウキョウは火の海となるのだ。
今はただ事の成り行きを見守るしかなかった。

やがてペスターは、製油所に程近いところで再び海中から姿を現した。
「あっ!」
ペスターの姿を見たイデ隊員が反射的に身を乗り出した。
「撃っちゃいかん!」
あわててイデ隊員の腕を押さえつけるムラマツキャップ。
だが遅かった。
ビートルに搭載されたミサイルは、ペスターに向けて発射されてしまった。



「しまった!!」
ムラマツキャップが悲痛の叫びを上げ、顔をゆがめた。
しかし時すでに遅し。
腹部にミサイル直撃を受け、手負いとなったペスターは
怒りに任せ、口から火炎をはき海上一面を火の海にすると、
ついには製油所のある地点に上陸してしまったのだった。

「見ろ!最悪の事態になった!あれほど湾内の攻撃はいかんと注意したのに!!」
「申し訳ありません・・・いきなり飛び出してきたので、つい反射的に撃ってしまったんです」
ムラマツキャップの怒声に顔面蒼白で声を絞り出すイデ隊員。



「言い訳は無用だ!一人の過失は科学特捜隊全員の責任だ。
 アラシ、イデ、我々の面目にかけて怪獣を始末するんだ。これ以上の犠牲は出せん!!」
事態は急を要する。まずはペスターをなんとかしなければ。

手負いのペスターはもうオイルなど食べてはいない。
あたり一面のオイルタンクに火炎をはきつけ、製油所を火だるまにして暴れ狂っている。
製油所のタンクは次々と爆発。もはや手のつけられない状態になっていた。



ビートルがペスターに追いついた。
そのまま頭上を旋回し、ペスターの正面へ回る。
「よし、腹を狙え!」
ムラマツキャップの指示が飛ぶ。



しかしイデ隊員の反応がない。
「イデ!なにをボンヤリしてるんだ!」
ムラマツキャップの再びの怒声でハッと我にかえるイデ隊員。
自分のミスが大きな被害を呼んだ。イデ隊員はすっかり意気消沈していたのだった。

再びペスターの正面に回りこんだビートルは低空を飛んだ。
ペスターの腹に照準を合わせるためだ。
「撃て!」
ムラマツキャップの号令とともにミサイルが飛ぶ。

見事ペスターの腹に命中。
弱点である腹に2度の衝撃を受けたペスターは、
最後の力を振り絞り目の前にあるタンクに火炎をはきつけると、
そのまま地面に崩れ落ちていった

ペスターは倒した。だがそれ以上に大きな問題が残ってしまった。
「火だ!あの製油所の火を我々の手で消すんだ。アラシ、着陸!」
常に冷静沈着なムラマツキャップがいきり立つ。
それほど事態は深刻なのだ。

消火作業に当たるべく、科特隊は地上に降り立つ。
しかし火は次々に製油タンクを襲い、爆発させていく。
消火作業が間に合わない。このままでは全焼だ。

「火はすでに2号タンクに燃え移ってるんだぞ!
 科学消防車を総動員しても間に合わないんだ!!」
「君!管内の消防隊を全部呼ぶんだ!トウキョウから応援を頼め!!」
「社長!2号タンクももう、手の施しようがありません!」
製油所事務所では職員たちが大混乱に陥っていた。

製油所の社長は悲鳴にも似た声で指示を飛ばし、
そして消火作業を手伝うべく事務所に来た科特隊を睨みつけた。
「君!湾内では怪物に、発砲しない計画だったそうじゃないか!
 この事態を一体どうしてくれるんだ!この製油所には何十万リッターという原油があるんだ!
 もしも全滅したら・・・わが社は・・・・」



「全て、科学特捜隊の責任です」
ムラマツキャップは深々と頭を下げた。しかし謝ってすむ問題ではない。
「何とかしてくれ、頼む!」
「火の手から遠いタンクに、オイルを移すことは出来ませんか?」
「一個空にするのに、30時間はかかるんだ!とても間に合わん!!」
「湾内で発砲したらどんなことになるか、素人だって分かりそうなものじゃないか!何が科学特捜隊だ!!」
口々にムラマツキャップを罵倒する職員達。
ムラマツキャップはただ頭を下げるしかなかった。

ムラマツキャップのその姿を、イデ隊員は見ることが出来なかった。
自分のミスで取り返しのつかない大災害が起きてしまった。
許されるべきことではない。
いたたまれなくなったイデ隊員は、何もいわずに事務所を飛び出していった。



「おい!イデ!!」
気付いたアラシ隊員が後を追う。
だがイデ隊員は事務所を出ると、
火柱立ち上る製油タンクへまっしぐらに向かっていったのだった。

「あぶない、やめろ!」
「うるさい!ほっといてくれ!!」
非難してくる消防士がイデ隊員を止めるが、
それらを突き飛ばしてイデ隊員はタンクへと向かう。
自責の念がイデ隊員を火の中へと走らせていた。



「イデ!イデ!!」
科特隊のメンバーたちは飛び出していったイデ隊員を救出すべく、
あちこちで火の手の上がる製油所内を走り回る。
「ハヤタ、そっちはどうだ!」
「キャップ、イデはあのままほっといたら!」
燃え盛る炎。その熱風だけでもものすごい。
このままではイデ隊員の命に関わる。

「よし!アラシ、ハヤタ、手分けして彼の救出に全力を!早く!!」
命令を受けたハヤタ、アラシ両隊員はすぐさまイデ隊員の姿を求め、走り出した。
「我々は消化に努める!」
二人の背を見送ったムラマツキャップはフジ隊員を伴い、消火部隊の元へと向かった。

「アラシ、君はこっちだ」
「よし!」
手分けしてイデ隊員を探すハヤタ、アラシ両隊員。
「イデ!おい、イデ!」
無線でイデ隊員の名を叫ぶが応答はない。

「イデ!無茶なことをするな!イデ、勝手な行動はやめろ!我々に協力して消火に努めるんだ!!」
アラシ隊員は声をからしてイデ隊員の名を叫んだ。
しかし応答はない。
アラシ隊員はイデ隊員の姿を求め、走り回る。

もちろんイデ隊員には、アラシ隊員からの通信は聞こえていた。
だが今のイデ隊員には通信に応える余裕などない。
いや、通信の音は聞こえていても、イデ隊員の魂にまで届いていないのだ。

火が怖かった。
自分が死ぬことより、目の前で燃え盛る炎を見ることが怖かった。
消せるわけない、勝てるわけない大きな火柱に向かい、
イデ隊員はがむしゃらに、消火ホースから噴き出す水をぶつけていった。



しかしイデ隊員の持つホース程度の水では焼け石に水だった。
しかもイデ隊員の近くのタンクに炎が引火し突然爆発を起こす。
爆風でイデ隊員は吹っ飛ばされ、地面に体を強打、気を失ってしまった。

そのころムラマツキャップとフジ隊員は消火部隊と合流していた。
「全力を上げてください、お願いします」
なんとか火の手を抑えようとしてムラマツキャップは、
消火部隊にある要請をしていたところだった。

ハヤタ隊員が走りこんできた。
「キャップ、イデはあの火の中に」
ハヤタ隊員の指差す先には、ひときわ大きな火柱が立ち上がっている。
もはや火に囲まれている。急がねば、イデ隊員が危ない。

「ビートルに消火液を積み込んでもらった。
 用意が出来次第、ビートルからイデのいるあたりに消火液を撒く」
先ほどムラマツキャップが消火部隊に頼んでいたのはこのことだったのだ。
ムラマツキャップは祈る思いで、イデ隊員を囲んでいるであろう炎を見つめた。



再び大きな爆発が起こった。
「あっ!イデのいるあたりだ!!」
ハヤタ隊員はムラマツキャップの命令も待たずに
爆発の起きた方に向かって走り出した。
そして人気のなくなったところにくると、
胸ポケットからベータカプセルを取り出し、天高く突き上げたのである。



一面炎の海の中からウルトラマンが現れた。
燃え広がる炎の中で、ウルトラマンは冷静だった。
まず状況を確かめるように回りを見渡すと、
一番炎の強いところを見極めそこへ走りこんだ。



ところが意外なことが起こった。
もうとっくに死んだと思っていたペスターがまだ生きていたのだ。
すでに立ち上がる力は残っていなかったが、
それでもペスターは鎌首を持ち上げ、ウルトラマンの背中に火炎を放射したのである。



突然の背後からの攻撃にウルトラマンはのけぞる。
しかしウルトラマンに火炎程度の攻撃は効かなかった。
ペスターを睨みつけ、腕を十字に組むウルトラマン。
スペシウム光線がペスターの頭部を直撃した。今度こそペスターの最後だ。



しかしあたりを包む炎は依然として勢い衰えない。
ウルトラマンはその火柱に向け、手首を合わせるように組んだ。
ウルトラ水流だ。



ウルトラマンの手の先から、ものすごい量の水が噴射される。
見る見るうちに製油所を包んでいた火が消えていく。



一区画の消火が終わると、次の区画に向かい消火を続けるウルトラマン。
ウルトラ水流のその威力、消火部隊の比ではない。
そして、カラータイマーが点滅を始めたころ、
製油所を覆っていた炎は全て消火されていたのだった。



確実に鎮火したことを確かめ、ゆっくりとうなずくウルトラマン。
やがてはいつものように、空のかなたへと消えていった。

気を失っていたイデ隊員を無事救出したハヤタ、アラシ両隊員。
イデ隊員を抱え、ムラマツキャップの下へ帰って来た。
「おい、そこに下ろせ」
ムラマツキャップの膝元にイデ隊員を横たわらせる。
かなり無理をしたのだろう。イデ隊員の服もヘルメットもススだらけだった。



「イデは科学特捜隊の隊員として失格であります。今日限り、退職します・・・」
朦朧とする意識の中で、うわごとのようにイデ隊員はつぶやいた。
ムラマツキャップはイデ隊員の両肩を強く抱いた。
「イデ、何を言うか!君は立派な科学特捜隊員だ。我々の仲間だ」



その言葉がイデ隊員の心に届いた。イデ隊員に笑顔が戻った。
「キャップ・・・本当ですか?」
「本当だとも」
「ああ・・・・よかった・・・」
キャップの言葉に本当に安心したのだろう。
イデ隊員は今度は本当に気を失ってしまった。

「おい!・・しょうがねえなあ」
アラシ隊員の言葉にフジ隊員とハヤタ隊員が顔を見合わせて笑う。
ムラマツキャップもひと安心だ。

夕陽の中、垂直上昇するジェットビートル。
科学特捜隊は現場をあとに本部へと帰還していった。

今回に限り、ご意見、ご感想はこちらへお願いいたします。
http://blogs.yahoo.co.jp/king_seasar/9928539.html
<m(__)m>

さて今回は油獣ペスターが活躍してくれました。
オイルを腹に溜め込む厄介な奴で、それにしてはあっけなく倒されてしまうという、
今までにはなかったパターンでした。
今回の科特隊の敵は、ペスターというより火だったかもしれませんね。

きっかけはイデ隊員のミスから始まりました。
失敗して仲間に迷惑をかけ、何とか取り戻そうとしていきり立ち、
更なる迷惑をかけてしまう。
こんな経験はイデ隊員ならずとも、社会人なら誰にでも経験のあることと思います。
今回のイデ隊員がまさにそれでしたが、
社会のちょっとした出来事をうまく物語りに盛り込んだ、
とても面白いお話だったと感じました。

それともうひとつ、ウルトラ水流。
ウルトラマンがただ腕を組んだだけでなんで水が出るのでしょう?
(そんなことを言ったらスペシウム光線も謎ですが(>_<))
ちょっとこのウルトラ水流について解説してみましょう。

*ウルトラ水流*
空気中の水素と酸素を集めて融合させ、手の先から大量の水として放出する。
(参考文献、ウルトラマン画報)

なんという素晴らしい、そして便利な技なんでしょう!
さすがはウルトラマンです!!
(今回は消火活動に従事していました。書きづらかった〜(T_T))

さて、次回なんですが・・・
いよいよあの実相寺作品が登場です。
やはり異端児。撮り方も一風変わっています。
次回はこいつが暴れてくれます。



内容と共に画像もたくさん載せますので、ぜひお楽しみください。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

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