EPISODE GUIDE
ULTRA WOLD

第15話前編
by しぃさぁ

子供たちの夢は無限にふくらむもの。
そして楽しい事を見つけると、たとえそれが悪いことと分かってはいても、
歯止めが効かずに突っ走ってしまうもの。

行き着くとこまで行かねば収まりがつかなくなるもの。
今回はそんな子供たちの夢が暴走してしまった、というお話。

「これが怪獣ネロンガ。感じ出てるだろ」
「わ、すごい!」



「レッドキングだよ、いいだろう」
「オレのカネゴン見てみろ」



「この怪獣なんて名前だ?」
「ベートーベンよ」
「そんな怪獣いたっけ?」
「あんたたちよっぽどバカね。ベートーベンって、ドイツの有名な作曲家じゃない」
「ああ、道理で人間に似てると思った」

とある学校の教室内。
白い画用紙に好きな怪獣の絵を描き、口々に自慢しあう子供たち。
どの子も目をきらきらと輝かせ、自分のお気に入りの怪獣に夢中である。
中にはピントのずれた子もいるが・・・

今までウルトラマンや科特隊を悩ませた凶悪怪獣たちも、
子供にとってはある意味ヒーローなのだろう。

しかし、その中でひときわ目立つシンプルな、そして見たことのない怪獣の絵が・・
「これなんだあ?」
「ええ??」
「誰よこれ書いた人」
口々にはやし立てる子供たち。
その後方から、決まり悪そうに進み出てきた一人の少年。



「おれ・・・」
下を向き、頭をかきながら小声で少年は名乗り出た。
「なんだいこれ、おたまじゃくしかい?」
みんなから質問攻めに遭いながら、少年=ムシバは申し訳なさそうに答えた。

「怪獣、ガヴァドン・・・」

放課後、みんなの輪から離れ一人土管置き場にたたずむムシバ少年の姿が。
「あ〜あ、おれってダメだなあ・・・」
土管に向かって一人つぶやく。
その土管には、たった今ムシバ少年が描いたガヴァドンの絵。

「お〜い!ムシバ〜!」
みんながやってきた。
「お前、まだやってんのかあ?」
少年達は土管の前にたたずむムシバ少年を見つけると、
またしても口々にはやし立てるのだった。



「あんたこんなとこに落書きして怒られるわよ。ここんちのおじさん怖いんだから」
「おまえさあ、ここの親父にもうボール20個も取り上げられたの、忘れたのかよ」
土管にガヴァドンの落書きを見つけ、みんなはムシバ少年をたしなめる。

「でもさあ、でかくなりゃ怖いかと思ってさあ・・・」
どうやらムシバ少年の頭の中にはガヴァドンのことしかないようだ。
土管の持ち主に怒られる、ということは彼の意識の中には全くない。

「これがか!?」
呆れたように言う他の少年達。
そして・・・
「じゃあいっそこうしたらどうだ」
そう言うと子供たちはムシバ少年の描いたガヴァドンに更に色を書き加えていく。
あわてたのはムシバ少年だ。
「ああ!よせ、よせよ〜!」
これからこのガヴァドンの絵が恐ろしいことになるとも知らずに・・・

その夜。
「はい、科学特捜隊本部。
 ハイ、ハイ・・・なんですって!?ハイ、了解!」
「どこからです、キャップ」
こわばった顔つきで電話を切るムラマツキャップ。
アラシ隊員が不安そうに相手先を尋ねる。



「東大の宇宙線研究所からだ」
「宇宙線研究所?何か突発事故ですか?」
フジ隊員の質問をそのままに、ムラマツキャップは電話の内容を話し始めた。
「みんな聞いてくれ。東大宇宙線研究所では、地球へ降り注いでいる宇宙線の中に
 奇妙な変動があった事実をキャッチしたというんだ」

宇宙線の変動。さして影響力のないものなのか、はたまた事件の前触れか・・・

朝・・・
「なんだよ」
「真っ白だなあ」
朝早くから公園に集まり騒ぐ子供たち。
その中にはもちろん、昨日のムシバ少年グループも参加していた。
「どうしたのよ?」
「あそこに変なのがいるんだよ」
一人の少年が指をさすその方向からは、
なんともはや、不気味な、うなるような音が聞こえてくるではないか。

「なんだこの声」
「モーターボートがうなってるのかなあ?」
確かに似ている。そんなような音だ。
「ちゃうちゃう、いびきだ!」
「誰だこんな時に寝てるやつは!」



しかし、その声の主に気付いたものが一人。
「わーい怪獣ガヴァドンだ!おれの書いたガヴァドンだ!行け!!行け!!!」
ムシバ少年だ。
彼は、このうなるような音が、
自分が作った怪獣ガヴァドンのいびきだということにすぐ気づいたのだった。
土管に書いた落書きが実体化?そんなことが・・・

早速ムシバ少年を先頭に、土管置き場に向かって走る子供たち。
わいわいがやがや土管の間を通り抜け、ガヴァドンの元へと一目散。

だが、事はそううまくは運ばなかった。
「こら〜!!!」
突然土管の間から出てきたのは、
野球のボール20個も取り上げた、ここの土管の持ち主だった。



土管屋のオヤジは血相を変えて少年達をつまみ上げる。
「この土管に落書きをしたのはお前達か!」
「なんだよ!」
「ちょっとくらいいいじゃないか!」
子供たちは抵抗をみせるが、社会はそんなに甘いものではない。

「さあ、さあ、元通りきれいにしてもらおう!」
子供たちを引きずるように、落書きの場所まで連れて行く土管オヤジ。

しかし、いざ土管の前まで来てみると、
「ありゃ、!?こりゃあどういうことだ?」
そう、落書きがなくなっている。ガヴァドンが消えて、いなくなっている。
愕然とする土管オヤジ。
ガヴァドンは本当に実体化したのか?

対照的に笑顔がはちきれそうなのはムシバ少年と子供たち。
「やっぱり!」
「なあ!」
ムシバ少年は、土管の落書きがなくなったことで、
やはり自分の書いたガヴァドンが実体となったことを確信したのだった。
宇宙線の変動により絵に描いた怪獣ここに生き返る。その名はガヴァドン!

怪獣現る!
となればもちろん我らが科特隊の出動だ。
さっそくジェットビートルが現場に急行。怪獣ガヴァドンの姿を発見した。



「攻撃用意」
「準備完了」
「撃て!」
ムラマツキャップの命令の下、ビートルの両翼に閃光が走り、
多弾頭ミサイルがガヴァドンめがけて発射された。

突然の攻撃に、ガヴァドンは大慌て・・・?ウン!?
なんとこいつ、寝やがった!
大きないびきをかいて、ビートルの前で眠りこける怪獣ガヴァドン!

「いくぞ!」
再びビートルの攻撃がガヴァドンを襲う。
だが攻撃の合間が少しでも空くと、その間、ガヴァドンは、寝るのである!
なんだ、この怪獣は!?

「撃て!撃て!!」
さすがのムラマツキャップもムキになって命令を下す。
間断ない攻撃。ガヴァドンを寝かすな!
しかし、いくら撃っても同じこと。ガヴァドンは戦意がないどころか、
隙あらば寝ようと試みる。

「チキショウ!キャップ、尻尾をやらなければ」
やはりムキになっているイデ隊員の進言にうなずくムラマツキャップ。
ビートルの攻撃はガヴァドンの尻尾に照準をあわせた。

大音響ともにビートルから飛び出す多弾頭ミサイルは、
今度は見事、ガヴァドンの尻尾切断に成功した。
「やった!」
ガッツポーズのイデ隊員。
さすがの?ガヴァドンもこれには参ったのか、
その場で寝ることを断念。場所を移動し始めた。
「ヤツは逃げ始めたぞ」
操縦桿を握るアラシ隊員が叫ぶ。当然、追跡だ。

夕刻、尻尾を切られたガヴァドンは・・・・・

寝ていた。

科特隊が追跡のため攻撃を一時中断したその隙に、ガヴァドンは寝た。
だが科特隊も今度は防衛軍に協力を要請し、
寝ているガヴァドンの周りを戦車部隊で取り囲み、
ガヴァドンがいつ暴れても対処できるよう配置したのだった。



夕陽差し込む電車の車庫。
ガヴァドンは寝ていた。

「悔しいわね、呑気そうに昼寝なんかして」
やる気のないガヴァドンにキレるフジ隊員。

「こっちが攻めてなきゃ、やつはただ寝ているだけだ」
驚きの声はイデ隊員。一体なんなんだ、この怪獣は?
「そんな怠け者な怪獣初めてだわ」
フジ隊員の怒りは沸点に。



怠けているかどうかはさておき、ガヴァドンが怪獣である限りいつ暴れだすかわからないのだ。
となれば科特隊はガヴァドンがいる限り現場を離れるわけにはいかない。

さすがのムラマツキャップも、やる気のないガヴァドンに打つ手なし。
寝ているガヴァドンを監視するしか今の科特隊にはすることがない。
科特隊も防衛軍もただ黙って、夕陽に照らされ眠りこけるガヴァドンを見つめているのだった。



「呑気ねえ。いつまで寝ている気なんでしょう!」
フジ隊員の怒りは収まらず、
「もう夕方だ。チクショウ。こんなやつに付き合ってて・・・
 あ〜あ、腹減ったなあ・・・」
イデ隊員はいまにも大あくびしそうだ。



しかし、その大あくびが出そうになった瞬間、
ガヴァドンが突然目を覚まし、移動を始めたのだった。
「うひゃ〜!」
突然のことにビックリしてフジ隊員にしがみつき、あっけなく振り払われるイデ隊員。

「攻撃用意!」
待ちに待ったムラマツキャップの号令発動!
しかしガヴァドンは暴れるでもなく、科特隊と防衛軍に目もくれず、
ただおとなしく夕陽に背を向け静かに移動していく。



「どこへ行く気だ、やつは?」
不振顔のアラシ隊員をムラマツキャップがせかせた。
「追うんだ!ビートルへ乗ろう」
だが科特隊のメンバーがビートルに乗り込む前に、
ガヴァドンは夕陽の中に姿を消していったのである。
まるで子供が夕飯を食べに家に帰るように・・・

「消えた・・・どういうわけなんだこりゃあ?」
メカニックのプロ、イデ隊員でも理解不能の現象だった。
空には宵の明星が。
するとガヴァドンの姿が消えたあたりから、子供の歌声が・・・
「一番星見つけた。一番星見つけた。一番星見つけた・・・」

「ヤツは星になったのかなあ?」
ハヤタ隊員がぼそりとつぶやいた。
「怪獣が星に?バカな・・・そんなバカな・・・・・」
思考回路がパンクしそうなムラマツキャップだった。



本部に戻った科特隊メンバー。
フジ隊員が早速情報収集に全力を注いでいた。

「キャップ、パリの科特隊本部からの通信です」
「ウン」
「通信によると、昨夜の宇宙線の異変はスイスと南アフリカでもあったそうです」
「それで?」
「その結果、宇宙線に含まれたある種の新元素を含有する放射線と太陽光線が融合すると、
 二次元のものが三次元の物体に変動するという・・・」
「なにい〜?じゃあ絵に描いたものが現実に現れるってわけか」
フジ隊員の言葉を全て待たずしてアラシ隊員が叫び声を上げた。
「ええ。そう知らせてきてます」



「宇宙線に含まれた放射線と、太陽光線が融合して・・・」
フジ隊員の報告に頭を抱えるムラマツキャップ。
その時ハヤタ隊員があることを思い出した。
「キャップ、そういえばタダシ君たちが変なことを言ってましたね。あれはムシバの書いた絵だって」
フジ隊員が不安そうにハヤタ隊員を見た。
「じゃあ、ムシバが怪獣の絵を・・?」



そのころ例の土管置き場では、ムシバ少年を中心に子供たちが集まっていた。
「ムシバおめでとう!」
「やったねムシバ!」
「ありがとう。みんなのおかげだよ」

ガヴァドンの落書きを前に、みんなに祝福されるムシバ少年。
自分の描いた絵が実物になってみんなに注目される。
ムシバ少年と子供たちは有頂天だ。

「でもさ、白っぽいだけじゃつまんないわ。ねえ、これからみんなでもっとかっこよくしない?」
「よし、やろう。第一、寝てるだけじゃ泣けてくるよ」
夜だというのに子供たちによる「ガヴァドン改造計画」が始まってしまった。
夢中で土管に落書きする子供たち。



しかし、社会はそんなに甘くはないぞ。
「こら〜!」
やっぱり!土管オヤジの出現だ。夜だというのに張り込んでいたのだ。
クモの子を散らすように逃げる子供たちに向かい、土管オヤジは捨て台詞を吐く。
「チクショウ!明日こそ土下座さして、謝らしてやるぞ!」



時同じ頃、科特隊本部ではガヴァドン消失の謎が今まさに解き明かされようとしていた。
「そうか、タダシ君たちの書いた怪獣の絵が、現実に三次元の生命を得たというわけか」
ムラマツキャップは、ハヤタ、アラシ、両隊員に確認を求めた。

「どうりで太陽光線がなくなると同時に消えたわけだ」
ハヤタ隊員もガヴァドン出現の原因が解明され、納得の表情だが、
アラシ隊員は反対に不安な面持ちになっていた。
「ということは、明日も太陽が上がるとともに現れる・・・」

イデ隊員が割って入ってきた。
「ねえキャップ、ひとつ気がついたんですけどね、
 あの怪獣はこっちがなにか手出しをしなければ怠けて寝ていつだけでしょ。
 下手に手出しして暴れられるより、ひとつ我々も怠けてみたら・・・」
いつもながらイデ隊員の作戦は突拍子もない。

「バカモノ!我々科学特捜隊の任務はだな、そういう宇宙の暴れ者と戦い、
 人類の永遠の平和と繁栄のために・・」
案の定イデ隊員の頭にカミナリが落ちた。

しかし珍しくアラシ隊員がイデ隊員の案に賛成の意を示した。
「でもねキャップ、ひょっとしたらイデの言うとおりかも知れませんよ。
 こっちがなにかやればやるほど、やつは暴れるだけですからね」



二人にそう言われると、さすがに考えざるをえなくなったムラマツキャップ。
ウーン、とうなり、しばし沈黙のあった後、キャップはある決断した。
「こっちが攻撃をかければ被害が大きくなる。
 よし、明日一日、様子を見るか」

暴れない、ただ寝るだけの怪獣ガヴァドン・・・なんとも厄介な怪獣である。
科特隊にとっても、作者にとっても・・・

(後編に続く)

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