EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD

第18話前編
by しぃさぁ

それはいつもと変わらぬ夜だった。
空高くから灰色の霧がそっと舞い降り、地上に降り注いだ。



何事かと見上げる地上の人々。
霧はそんな人々を静かに包み込む。そして、地上に惨劇がもたらされた。
霧をかぶった人はみな、喉をかきむしり苦しみもだえ倒れこんだのである。



突然東京の街を地獄と化した恐ろしい霧。
この異変はただちに科学センターに報告され、モリタ博士のグループが調査に乗り出した。
そして我が科学特捜隊本部では、
「街は今大変らしい。アラシとイデは市内のパトロール」
「はい!」
「ハヤタは東京上空一帯の調査を頼む」
「はい!」

いつもながら的確に指示を出すムラマツキャップ。
隊員たちはいっせいにパトロールに出ようとするが・・・
「う〜ん・・・・・」
ムラマツキャップのうなり声に思わず振り向く隊員たち。
見ればそこには隊員服を身にまとったホシノ少年がムラマツキャップに詰め寄っていた。



自分もパトロールに出動したい。ムラマツキャップにアピールするホシノ少年。
ムラマツキャップはしばしホシノ少年を見つめていたが、
「ハヤタ隊員の邪魔をするんじゃないぞ」
「はい!」
キャップの決定に、笑顔でホシノ少年に寄り添うハヤタ隊員。

「よし、出動!」
ムラマツキャップの号令が響く。敬礼し、出動しようとする隊員たち。
その時、
「待って!」
フジ隊員が大声で隊員たちを引きとめた。
「キャップ、霧の中から放射能が検出されたそうです」



最新の情報を読み上げるフジ隊員。放射能となれば通常装備では出て行けない。
「放射能?」
アラシ隊員が聞き返す。フジ隊員は情報の詳細を説明をはじめた。
「400レントゲ。致死量の放射能だわ」
心配そうにみんなを見るフジ隊員だったが、
ムラマツキャップは自信有りげに胸を張った。
「放射能防御バリアを使用するように。これでなら宇宙へでも飛んでいける。いいな」
ムラマツキャップの自慢の装備なのだろう。自信満々に隊員たちに命令を下した。

「出動!」
改めて敬礼し、隊員たちはパトロールに向かう。
だがムラマツキャップはホシノ少年の前に歩み寄り、行く手を押さえるべく彼の肩に手を置いた。
「残念だが今日はダメだ。本部でアキコ隊員の助手。いいね」
寂しげに、悔しそうにうなだれるホシノ少年。

「あらホシノ君、私の助手が嫌なの?」
フジ隊員がなぐさめに入っても、その気持ちは割り切れない。

「キャップの命令だぞ、ホシノ君」
今度はハヤタ隊員が強い口調でホシノ少年に迫る。
キャップの命令。科特隊の大原則だ。



大好きなハヤタ隊員の言葉。それはホシノ少年にとっては絶対の言葉だった。
「はい、わかりました、キャップ」
全てを飲み込み、顔をあげ、
目を見てはっきりとした口調で返事をするホシノ少年を、
頼もしげに見つめ笑顔でうなずくムラマツキャップだった。

モリタ博士が姿を現したのは、隊員たちが出動した直後だった。
「あ、モリタ博士。今そちらに連絡を取ろうと・・・」
「ムラマツ君!」
ムラマツキャップに全てを言わせず、モリタ博士はムラマツキャップの肩を掴み耳打ちを始めた。

「なんですって?この放射能が宇宙から!?
 地球上の原爆実験がもたらしたものじゃないんですか?」
モリタ博士のもたらした一般常識を覆す情報。
ムラマツキャップの顔に緊張が広がる。



「信頼できる筋に調べてもらったんだが、ここ数ヶ月、各国とも、実験は行ってないんだ」
宇宙からきた放射能。単なる自然の現象か、はたまた意図されたものなのか。
フジ隊員がモリタ博士に詰め寄った。
「でも博士、空気のないところに霧は発生しないはずですわ
 それが宇宙の放射能をどうやって?」

モリタ博士はフジ隊員に正対し、自らの説を話して聞かせた。
「宇宙の塵が、大量に降ってきたとも考えられるんだ。
 単なる自然現象だとはどうしても思えない。
 いずれにせよ、このままいけば東京は、数時間以内に、死の街になる」
原因は今だ不明だが結果はわかる。
モリタ博士が口にしたあまりにも恐ろしい結論は、フジ隊員の口をも封じた。

現場に到着した科特隊は早速調査と救助に乗り出していた。
そして、異変はすぐに姿を現した。
霧がもたらした放射能が充満する夜の市街を、
なんの装備もせず、ただフード付きのコートで身を隠した怪しい人影が、
アラシ隊員とイデ隊員の前を素通りしていったのだ。



「おい!」
アラシ隊員が呼び止めたのだが静止する気配なく、人影は先を急いだ。
「おい!そんな格好で外出すると放射能にやられるぞ」
イデ隊員が駆け寄り、肩に手をかけ呼び止めた。
おもむろに振り向く怪しい人影。
その顔を見たイデ隊員は思わず悲鳴をあげた。



地球人の顔ではなかった。
ただ怯えるばかりのイデ隊員。
「どうしたんだ!」
イデ隊員の悲鳴でアラシ隊員が駆け寄ってきた。
「怪獣だ!」

だがアラシ隊員は怪獣と聞いたくらいで臆することはない。
「よし、追ってみよう。挟み撃ちにするんだ」
度胸十分のアラシ隊員に促され、イデ隊員は恐々怪人の後を追う。

アラシ隊員は先回りし、怪人の前に立ちはだかった。
そしてイデ隊員と二人で見事怪人を挟み撃ちにし、捉えた・・・かに見えたのだが・・・
捕まえたのは怪人の着ていたコートだけ。中身は忽然と姿を消していた。

「おい、アラシ!」
イデ隊員が指差した、ビルの壁面はるか上部にその怪人はいた。
まるで吸い付くように垂直の壁を伝い歩きしているのだ。
「ちきしょう!逃げるな!!」
アラシ隊員はスパイダーを発射。
ピンクの閃光が怪人を捕らえた。
すると、今度は本当に怪人の姿が消滅したのである。
アラシ隊員は即座に本部に連絡、事のいきさつを報告した。



「はい、こちら本部」
本部で通信を受けるフジ隊員。スピーカーからはアラシ隊員の報告が本部内に流れる。
「こちらアラシ、宇宙人らしき怪人を発見。スパイダーを発射したところ消滅しました」
「消えた!?アラシ!なぜ撃ったんだ!!」
フジ隊員からマイクを取り上げ、
興奮気味のムラマツキャップがアラシ隊員を怒鳴りつける。

「いやあの・・・うわー!」
アラシ隊員の突然の叫び声とともに、聞くに堪えないノイズが入った。
そして、ノイズがおさまった時、スピーカーから聞きなれない声が響いてきたのである。
「ソノオトコヲセメルナ。ワタシガワルカッタノダ」
突然のことにあっけにとられるムラマツキャップ。
何者?本部にいる一同はみな顔を見合わせた。

「誰だ?君は誰だ!?」
すぐさま不振な声に呼びかけるムラマツキャップ。
しかしその呼びかけにこたえた声は、
「キャップ、アラシですよ」
「アラシ!君には今の声が聞こえなかったのか?今の声が?」
「いえ、ただキリキリ不快な音がしただけです」
アラシ隊員に今の声は聞こえていない。一体どういうことだ。

「あっ!」
ホシノ少年が叫び声をあげ、モニターを指差した。。
「どうしたの?」
フジ隊員に答えもせず、黙ってモニターを見つめるホシノ少年。
彼の見つめるモニターには、そう、はっきりと怪人の顔が映し出されていたのである。

「誰だ!」
こわばった表情でモリタ博士が呼びかけた。
するとモニターに映る怪人は、小さく笑い声をあげながらモリタ博士達に話しかけてきた。
「ハハ、そんな怖い顔で私を見ないで欲しい。ご推察のとおり私は宇宙人だ。」
「宇宙人!?」
「さよう。第8銀河系の中に在るザラブ星人」
「ザラブ!?」
「うん、我々の言葉で『兄弟』という意味だ。
 仲良く平和に暮らしていくことが我々のモットーだ。
 だから、地球の諸君とも兄弟同士というわけだ。
 もっとも・・・私の方が兄で、君たちはまだ幼い弟だがね」



いきなり自分は宇宙人と名乗るザラブ星人。
よほど自分たちの科学に自信があるのか、いきなり上段に立った話し方だ。
もっとも科特隊の電子頭脳に平然と割り込めるくらいなのだから相当な科学力なのだろう。

モリタ博士は続けてザラブ星人に問いかける。
「なぜ我々と話が出来るんだ」
「ああ失敬。私の意志を君たちのその電子頭脳に送っている。
 そうしなければ君たちと話し合えない」
こわばった顔つきのモリタ博士に対し、平然と答えるザラブ星人。
「地球に来た目的は?」
ムラマツキャップも続けざまに切り込んだ。だが、
「今にわかる」
これにはなにも答えず煙に巻く。

「キャップ、こいつだよ。きっとコイツが霧を降らしたんだ」
ホシノ少年がムラマツキャップに訴える。がしかし、
「地球は我々の兄弟だと言ったはずだ。兄弟がそんなひどいことをすると思うかね」
その言葉をどうやって信じろというのだ。ムラマツキャップの顔がゆがむ。
そんな迷いと不安をあざ笑うかのように、ザラブ星人は高笑いを残してモニターから消えた。

ビートルで上空パトロール中のハヤタ隊員から、
またしても奇怪な報告が入ってきたのは、ザラブ星人がモニターから姿を消したすぐ後だった。
「ハヤタより本部へ、ハヤタより本部へ」
「どうした?」
ムラマツキャップが応答する
「土星探検ロケットらしきものを発見」
「土星ロケット?」
顔を見合わせるムラマツキャップとモリタ博士。



「ハヤタ君、何かの間違いじゃないのか!?
 一月前に出発したロケットがどうして地球の近くに?」
先のザラブ星人の件で冷静さを失いつつあるモリタ博士は、
八つ当たり気味にハヤタ隊員に呼びかける。

「ハヤタ、接近してもう一度確かめてみろ」
ムラマツキャップも同様だ。
ザラブ星人の突然の出現に、まだ頭の中が整理できずにいる二人である。
「了解接近します」
ハヤタ機はそのまま未確認飛行物体に接近していった。

夜の市街にパトロールに行ったアラシ、イデの両隊員が戻ってきた。
「いや〜ひどい霧だ。表はまるで戦場ですよ」
「我々には手のつけようがありませんよ」
手の打ちようがないとあきらめ顔の二人である。
「熱いコーヒーを頼む」
アラシ隊員に請われ、ホシノ少年はコーヒールームへ。

通信ランプが光った。ビートルのハヤタ隊員からだ。
「はい、こちら本部」
「キャップ、土星ロケットを呼び出してますが応答がありません」
くわえていたパイプを思わず手に握り締め、
ムラマツキャップは立ち上がり、通信マイクを手にした。
「そうか・・・さっきレーダーサイドのモリタ博士からの連絡では
 基地からの遠隔操縦には反応を示さないらしい。よし、そのまま追跡を続けろ」
「了解」

通信を終えたムラマツキャップにアラシ、イデ両隊員が駆け寄る。
「キャップ、どうしていまごろ土星ロケットが。
 しかも、なぜ搭乗員が連絡を取らないんですか」
パトロールに出ていた二人は、まだこの出来事を知らないでいた。
だがその質問に答えたのは、ムラマツキャップではなかった。

「私が地球まで誘導してきたのだ」
その言葉が終わるとすぐ、アラシ隊員の背後にある自動ドアが開き、
事もあろうかザラブ星人が本部の中に侵入してきたのである。
ちょうどコーヒーを持って入ってきたホシノ少年がその姿を発見し、
手にしたコーヒーを床に落とす。



その音にあわてて振り向いた時、
ムラマツキャップたちは初めてザラブ星人の侵入に気がついた。
「いや〜諸君。我々の兄弟。」
至極当然のように挨拶をするザラブ星人。
あわててキャップを守ろうと前に出るイデ、アラシ両隊員。
「やめろ!」
ムラマツキャップはそれを押し留める。
そして混乱と動揺を押さえ込み、ザラブ星人に質問をぶつけたのだった。



「君に尋ねたい。土星ロケットを誘導してきた理由は?」
「兄弟が、道端で倒れてるのを見て、知らんふりができるかね?
 軌道をどう間違えたのか、木星の周りを回っていたんだ。
 もし私が発見しなかったら、ロケットはあやうく宇宙の藻屑と消えるところだった」
唇を震わせ、必至に動揺を隠すムラマツキャップと対照的に、
ザラブ星人はこともなげに質問に答える。

「こいつぅ!嘘っぱちを並べやがって。お前が邪魔したんだろう」
勇猛果敢なアラシ隊員は早くも戦闘態勢で真っ向からザラブ星人と対峙するが、
しかしザラブ星人は、それをも軽く受け流す。
フジ隊員がホシノ少年をかばうべく体を寄せた。

「私が信用できないらしいな。どうやれば信じてもらえるのかね、兄弟」
ザラブ星人は、まるで指名するかのようにムラマツキャップを指差した。
これまでの会話で、ムラマツキャップが一番話の分かる人物と見抜いたようだった。



「君はさっき我々をまだ幼い弟だと言った。
 ということは、君たちは我々より全ての点で優れているという意味なのか」
「そのとおりだ」
「では、我々を今苦しめているこの霧が消せるか」

なんとムラマツキャップはこの緊迫した局面で、
例の殺人霧を持ち出したのだった。
ザラブ星人がほくそえむ。
「それが出来たら、信用してもらえるかね?」
「うん、信用しよう」

本部内でのギリギリの局面で、一発逆転を狙ったムラマツキャップの提示条件にさえ、
なんだ、そんなことかと、あざ笑うかのように二つ返事で受け入れるザラブ星人であった。

(中編に続く)

このページのTOPへ