EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD
第19話後編
by しぃさぁ

フクヤマ博士の研究所で解読結果が出るのを待ち続けるハヤタ隊員の元に
ムラマツキャップからの通信が入ったのは、夜も白々と明けはじめたころだった。

「ハヤタ、赤い怪獣は強敵だ。そちらの用事はまだ終わらんのか!」
夜中に出撃したアラシ隊員は赤い怪獣を持て余していた。
事ここに及び、赤い怪獣の力は強大だと知ったムラマツキャップは、
研究所に詰めるハヤタ隊員とイデ隊員に帰還命令を出したのだった。



だがハヤタ隊員は、
「私はフクヤマ博士の答えが解かるまでここにいたいんですが」
あくまで解読の結果にこだわり続ける。

「よし、イデ、」
ハヤタ隊員の考えを汲み取ったムラマツキャップは、
ならばとばかりにイデ隊員の名を叫ぶ。
「はい!了解!すぐに行動します!」
寝ぼけ眼だったイデ隊員だが、出動命令となれば体が張る。
「では、一足お先に」
ハヤタ隊員に敬礼し、ムラマツキャップの待つ本部へと急行した。

そのころ、青いカプセルを開けようと、
これまた夜を徹して実験を繰り返してきた鉱物研究所では
実験に使った雷撃のせいで恐ろしいことになろうとしていた。
「よし、電圧を倍に上げてやってみよう」
「10万ボルトです」
一気に激しいし雷撃のショックを受ける青いカプセルは、
イシオカ先生の見守る中、青白く発光し始めたのである。



本部に戻ったイデ隊員はムラマツキャップと共にビートルで現場に出撃していた。
アラシ隊員の報告どおり、赤い怪獣が所狭しと暴れまわっている。



その姿を目撃したムラマツキャップはすぐさま攻撃命令を下した。
「ロケット弾発射用意」
「用意よし」
「発射!」
イデ機とアラシ機のロケット弾が次々に赤い怪獣に命中する。

怪獣すれすれを飛び、反転する2機のビートル。
だが赤い怪獣は弱るどころか返って凶暴になり、
手当たり次第に目の前の建物を破壊しまくる。
ロケット弾が効かない。
ムラマツキャップの応援空しく、赤い怪獣の前に全くなす術のない科特隊だった。



フクヤマ博士の研究所では、ついに金属板の古代文字解読に成功した。
しかしハヤタ隊員の前に現れたフクヤマ博士は顔面蒼白で、額には汗すらにじんでいる。
「ハヤタ君、君の心配が当たった。この記録には恐ろしいことが書いてある」
「恐ろしいこと?」
フクヤマ博士はたった今解読を終えた文章を、ハヤタ隊員の前で読み上げた。



「我々はやっと、悪魔の怪獣赤いバニラと青いアボラスを捕え、液体に変えて地中深く埋める。
 決して開けてはならない。再びこの怪獣に生を与えたなら人類は滅亡するであろう」

あのカプセルはタイムカプセルなどではなかったのだ。
あれは古代人が苦しめられた凶暴な怪獣を封印した、開けてはならないカプセルだったのである。
「やっぱりそうだったのか」
ハヤタ隊員の悪い予感が当たってしまった。

すでに赤い怪獣、バニラは復活してしまったのだ。
では鉱物試験場で調査している青いカプセルは一体どうなっているのだ。

キムラ助手が二人の間に走りこんできた。
「大変です、鉱物試験場は電話不通です」
「えっ!?」
蒼白な顔でお互いに顔を見合わせるフクヤマ博士とハヤタ隊員であった。



その鉱物試験場では、10万ボルトの雷撃を受けカプセルが大爆発。
そして青い怪獣アボラスが復活していたのだった。

アボラスはいとも簡単に鉱物試験場を破壊し、市街に向け進撃を開始してしまった。
アボラスが口から白い溶液を吐き出した。
するとその溶液を浴びた市街の建物が溶け出したではないか。
溶解液!アボラスは溶解液を吐いているのだ。

2機のビートルは赤い怪獣バニラに苦戦中だった。
そこへ追い討ちをかけるようにハヤタ隊員から古代文字解読内容がもたらされた。
「何!?青い怪獣アボラスと赤い怪獣バニラ?
 じゃあ我々は、昔の人々が閉じ込めた悪魔を、再び甦らせたのか!?」
ハヤタ隊員の報告に、絶望感に打ちひしがれるムラマツキャップ。

ハヤタ隊員の報告は続く。
「そうです。青い怪獣アボラスは今、前進を始めました」
バニラだけでも手を焼いているというのに、
更に青い怪獣アボラスまで相手にしなければならないとは、
一体どこまで戦えるのか。

「キャップ、ロケット弾がなくなりました」
全弾打ち尽くした。
「こちらアラシ、ロケット弾がありません」
2機とも丸腰になった。それでもバニラは一向に弱る様子はない。
それどころか、凶暴性を増すばかりである。
恐ろしい悪魔だ。

その時イデ隊員が正面を指差し叫んだ。
「キャップ、あれを」
見ればそこには防衛軍の戦闘機が、編隊を組んでやってきたところだった。

「よし、あとは任せて本部へ戻ろう。アラシハヤタ、本部に集合せよ」
一時撤退だ。出直して策を練り直さねば、このままでは無駄に命を落としかねない。
ムラマツキャップ率いる科学特捜隊は、防衛軍に後を任せ、赤いバニラに背を向けた。

科特隊の後を受けた防衛軍はすさまじい数のロケット弾をバニラに打ち込んだ。
しかし結果は科特隊同様、バニラを凶暴にするだけだった。
小ざかしいとばかりにバニラは戦闘機を見据えた。
そして近づく戦闘機に向かって口から高熱火炎を放射した。
防衛軍の戦闘機は、1機、また1機と、バニラの前に散っていった。

科特隊が退却し、防衛軍がバニラに手こずっている中、
アボラスは悠々と市街を進撃してゆく。
行く手を阻むものは何もなかった。
時折溶解液をビル群に吹きつけ、邪魔なものを溶かし、
撤去し、破壊して、アボラスは前進していく。
古代人の悲劇が今ここに繰り返されるのであろうか。



本部に戻り、体勢立て直しを計ろうとする科特隊を待っていたのは、
今回の研究を中心になって行ったフクヤマ博士だった。
ムラマツキャップはフクヤマ博士の顔を見て会釈をすると、
すがるように近況を話した。

「手強い相手だ。フクヤマ博士、あの怪獣の弱点の事は、何か書かれてないんですか」
「ええ、その点については、何も・・・」
言葉を濁し、うつむくフクヤマ博士。
「1匹ならまだしも、2匹一緒に現れたんじゃ、手の打ちようがありませんよ」
先陣を切ったアラシ隊員は、バニラの強さを身を持って感じていた。



フクヤマ博士は唇を噛んだ。
「私が軽率でした。私が文字の解読を終えてから、アボラスの容器を開けさせれば、
 1匹の怪獣で済んでいたのです」
フクヤマ博士は太古の研究に夢中になるあまり、警戒を怠った自分の行為を悔やんでいた。
それに気付いたムラマツキャップが博士に声をかける。
「いや、博士の責任じゃありません。
 それより、どうすればこの危機から人類を救えるか、それを考えましょう」

フクヤマ博士はひとつ小さなため息をつき、それから自分の考えをムラマツキャップに話した。
「私は野獣の闘争本能で、2匹が戦いあってくれることを祈っています」
「2匹が戦う?」
ムラマツキャップが不思議そうに復唱するその横で、ハヤタ隊員が頭を巡らせていた。
「可能性がありますよ。あの2匹は互いに引き合うように進んでますからね」
そう言うハヤタ隊員の顔には、わずかながらも希望が見える。

「しかし、2匹が協力して我々に向かってくる場合も考えられるわけだ」
最悪の事態を検討するムラマツキャップだったが、
その顔を見たイデ隊員が進み出た。
「今度はマルス133も使えます。きっと怪獣はやっつけてみせますよ」
「キャップ、出動しましょう」
アラシ隊員もイデ隊員に同調する。
二人の顔を見ながら深く考え込むムラマツキャップ。



電話のベルが鳴り響いた。
「はい、科特隊本部。え!?了解!」
電話を切ったと同時、フジ隊員はムラマツキャップに向かって叫んだ。
「赤い怪獣とアボラスが、オリンピック競技場に近づいてます」
もたらされた怪獣の情報に、ムラマツキャップ迷いを振り切った。
もはや猶予はならない。
「よし、出動だ」

その声を待っていたかのように隊員たちはヘルメットを小脇に抱えた。
イデ、アラシ、そしてハヤタ隊員。
そして、もう一人、ムラマツキャップの声で立ち上がった人物がいた。
フクヤマ博士だ。

「私もお供さしてください」
フクヤマ博士の申し出に、驚き動きが止まる科特隊メンバー。
ムラマツキャップが博士の前に進み出る。
「しかし、博士に万一の事があったら日本の損失です」
必至に押し留めようとするが、フクヤマ博士の意思は固かった。
「いや行かしてください。私にもお手伝いできることがあるかもしれない」
研究者のしての軽率な行動を悔いても悔やみきれないフクヤマ博士は、
せめて戦場で何かをしなければ気がすまなかった。
自分もまた危険な目に遭わねば気がすまなかったのだ。



「お願いします」
その強い決意を感じたムラマツキャップは、装備一式を博士に手渡し、
アボラストバニラが向かうオリンピック競技場へと急行した。
いざと言う時は自分が楯になればいい。
ムラマツキャップもまた悲壮な思いで、現場に向かう車に乗り込んだのだった。

科特隊が競技場に到着した時、そこはすでに地獄絵図と化していた。
アボラストバニラがぶつかり合い、格闘を繰り広げていたのである。
ここまではフクヤマ博士の思惑どおりであった。



しかしバニラとアボラスの格闘はあまりにも激しい。
アボラスが放つ溶解液を紙一重で避けるバニラ。
バニラの放つ高熱火炎を浴びてもびくともしないアボラス。
古代人を散々苦しめた2匹の怪獣の戦いは惨劇を極め、
百戦錬磨の科特隊もしばし呆然と見ているだけであった。



「よし、攻撃」
真っ先に我に返ったムラマツキャップの号令で、競技場内に侵入する科特隊。
「私はアボラスをやります」
「イデはハヤタと。行け!」
咄嗟の判断で隊をふたつに分け、
2匹の怪獣に立ち向かう作戦を執った。



「フクヤマ博士は私と行動してください」
ムラマツキャップは、その覚悟のごとく自分の隊に博士を置き、
競技場内に入っていく。

すさまじい雄たけびを上げ、組み合うバニラとアボラス。
ムラマツキャップ、アラシ隊員、そしてフクヤマ博士がスーパーガンでバニラを狙った。
アボラストの死闘に夢中のバニラは、背中にスーパーガンが当たったことなど気付かない。
「行くぞ!」
ムラマツキャップは更に競技場の中に切り込んだ。
すばやく場所を変え、居場所を絞らせない。
3人はひたすら走り、バニラ攻撃に都合のいい場所を捜し求めた。



一方のハヤタ、イデコンビ。
イデ隊員の手に握られているのは必殺光線銃マルス133。
二人の銃口がアボラスを狙う。
しかし狙い通りに命中したものの、アボラスもびくともしない。
よほど硬い皮膚なのだろう。あのマルス133ですら及びもしないのだ。

科特隊には目もくれず、アボラスとバニラは死闘を繰り広げる。
組み合い、噛み付き、殴り倒し、2匹はどちらかが死ぬまで戦いを止めないだろう。
だがわずかに力に勝るアボラスがバニラを突き飛ばした。
バニラはバランスを崩し、競技場観客席にたたきつけられた。

バニラに隙が出来た。
それを見逃すムラマツキャップではなかった。
「アラシ、原子弾(超小型核弾頭)を打ち込んでみろ」
すかさず叫び、指示を出す。
「目を狙った方がいいでしょう」
自らの命も危ういこの局面で、フクヤマ博士も必至に知恵を絞る。
原子弾をスーパーガンにセットし、バニラに目標を定めるアラシ隊員。



倒れていたアボラが起き上がった。
その瞬間、アラシ隊員はアボラに目に原子弾を叩き込む。
「やったぞ!」
見事命中だ。

起き上がりかけていたバニラは原子弾の威力で再び倒れこんだ。
そして、バニラにとどめを刺したのは、アボラスだ。
倒れこみ、のた打ち回るバニラめがけて溶解液を吹きかけた。
アボラすの強力な溶解液に、さすがのバニラもこれまでだった。
数分もしないうち、バニラの赤い体は溶解液に飲み込まれ、
ついにこの地上から姿を消した。

残るはアボラスただ1匹。
邪魔者をかたづけたアボラスは、再び街に向かって進撃を開始しようとしている。
そうはさせるものか。競技場から出すわけにはいかない。
科特隊は意気込んだ。

だが・・・
「キャップ、エネルギーがありません」
アラシ隊員のスーパーガンはエネルギー切れ。
見ればムラマツキャップも、フクヤマ博士も同様である。
「アラシ!退け!退け!」
緊急退避だ。ムラマツキャップはフクヤマ博士をかばいながら安全圏まで退却しようと試みた。

ハヤタ隊でも同様のトラブルが起こっていた。
「ハヤタ、エネルギーがなくなった!どうしよう!?」
慌てふためくイデ隊員。もう策が無い。

ハヤタ隊員はイデ隊員の背中を押した。
「イデ、キャップに合流しろ!」
「しかしハヤタ!」
「いいんだ。早く行くんだ!」
自分を気にするイデ隊員を無理やり階段下に押しやり、場外に走らせると、
自らは競技場内をアボラスの方向に走りだし、
胸から取り出したベータカプセルを天高く突き上げたのだ。
ウルトラマンの登場だ。



さっそうと競技場内に立つウルトラマン。アボラスと対峙する。
なんだお前は。いきなり現れたウルトラマンを睨みつけるアボラス。対峙する両者。
先制攻撃はアボラス。ウルトラマンめがけて溶解液を噴射した。
ウルトラマンは軽々と避ける。
そして勢いそのままにウルトラキックをアボラスにお見舞いした。



しかしアボラスはびくともしない。倒れこんだのはキックを繰り出したウルトラマンだった。
強靭な体のアボラスは倒れこむウルトラマンに馬乗りになり、一気に叩き潰そうとしている。
かろうじてアボラスの体を跳ね飛ばし、やっとのことで立ち上がったウルトラマンは、
間合いを取り、スペシウム光線を叩き込もうと身構えた。

しかしアボラスが早かった。ウルトラマンのスペシウム光線より早く、
アボラスの溶解液がウルトラマンを襲ったのだった。
まともに溶解液をかぶるウルトラマン。まさか、ウルトラマンが溶けてしまう!
カラータイマーが点滅を始めた。もはやここまでなのか。

すると点滅と同時にウルトラマンの体についていた溶解液が全て吹き飛ばされ、
ウルトラマンが復活したではないか。
勝利を確信していたアボラスは怒り心頭でウルトラマンめがけて突っ込んでくる。
しかし今度はがっちり受け止めるウルトラマン。

ウルトラチョップをお見舞いし、アボラスの角を持って投げ飛ばす。
青い巨体をしこたま競技場に打ち付けるアボラス。
目の前には立ちはだかるウルトラマンの姿が。



起き上がるまでもない。アボラスは再びウルトラマンめがけて溶解液を吹きつける。
もう手の内は読めているウルトラマンは軽々とかわす。
そして、ついに出た!スペシウム光線だ!
見事にアボラスの喉元に命中。



だが皮膚の硬いアボラスはまだ弱らない。再び溶解液を吹きつけてきた。
しかしこの攻撃はもうウルトラマンには効かない。
またしても軽くかわし、再びスペシウム光線をお見舞いするウルトラマン。
今度はアボラスの右肩に命中。



のけぞりながらアボラスが三度溶解液を吹きかける。
しつこい!ウルトラマンは横っ飛び。三度腕を十字に組んでアボラスを捕えた。
スペシウム光線3連発!



2発のスペシウム光線でグロッキーだったアボラスは最後の一撃で大爆発、炎上した。

2匹の悪魔に破壊された競技場に立つ勝者。その名は、ウルトラマン。
今、競技場にはウルトラマンのカラータイマーの音だけが響いていた。

あとがき
今回のウルトラワールドは、赤い怪獣バニラと青い怪獣アボラスが活躍してくれました。
3億年以上前に生存していたこの悪魔たちが現代に甦ると言う、
なんとも気の長い(笑)お話です。

古代超文明説。
今から4億年前には地球には現代よりはるかに進んだ
文明を持った種族が住んでいた、と言われています。
(ちなみに本編では3億5千年前、と言っていますが、
3億5千万年前、の間違いではないかと思います)

それが本当かどうかはさておいて、
この古代超文明説というのは、特撮においてかなり魅力のある説のようで、
1999年ウルトラセブン6部作、
超星神グランセイザー、
などでメインテーマとして取り上げられ、
更にはウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」でも取り上げられています。

私自身も古代超文明説は大好きで、
そういうことからか、今回はとても楽しんで書くことができました。
やはり夢がありますよね。

もっともオーパーツの発見でしたら夢がありますが、
こんな恐ろしいカプセルだったら・・・
ちょっと勘弁ですね(笑)

さて次回のお話は、
少年の無念を背に荒れ狂う高原の守護神
こんなヤツが大暴れします。



ぜひお付き合いください。
今回も長文にお付き合いいただきありがとうございました。

ちなみに・・・
スペシウム光線3連発、の3発目で、
ウルトラマンのカラータイマーが青くなっているんですよね〜
これは画像の挿し違いではなくて、円谷さんの間違いです。
DVDでご確認を(笑)

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