EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD

第20話前編
by しぃさぁ

深夜、人の気配のまるでない、虫の声しか響かない公園内を、
懐中電灯片手に見回る一人の警備員。
片手に持った懐中電灯を頭の上にかざすと、
ライトに映ったのは大きな、そして不気味な石像。



この公園のシンボルのようだ。
しかしながら夜見ると、なかなか不気味なものがある。
警備員は思わず身震いした。

背後で急に動物たちの鳴き声と、鳥の羽ばたく音がした。
警備員はあわてて駆けつける。
「何をそんなに怯えてるんだ!?」
確かに、怯えるように騒ぎ暴れる深夜の動物たち。
警備員はそれらをなだめようと躍起になるが、
動物達は落ち着くどころか、ますます騒ぎ立てる一方である。

「おい、静かにしろ!コラ!」
警備員が動物達を押さえつけようとしたその時だった。
山の方から稲妻のような青白い、まばゆいばかりのフラッシュのような光があたり一面に反射した。
警備員は何事かと山頂付近を見上げると、山の頂きは青白く光り輝き、
今にも爆発しそうなくらいに激しく、そしてまばゆくフラッシュしていた。
さすがの警備員もこれには恐れをなし、一目散に公園事務所に逃げ帰っていった。



イズ、オオムロ山公園の異変はただちに科学特捜隊に急報され、
ムラマツ、ハヤタ、アラシの3隊員が現場に向かった。



現場に到着したムラマツキャップたちを出迎えてくれたのは、
昨夜、山頂の怪光を目撃した警備員だった。



「まるで山全体が、電気を帯びたようにピカッと光ったんです」
早速とばかりに昨夜の恐ろしい出来事を説明する警備員。
「昨夜は満月でしたね。夜露が月光を浴びて光ったんじゃありませんか」
とても信じられんとばかりに疑いをかけるアラシ隊員だが、
「いやいや違います。山が蛍光灯のようにはっきりと光ったんです」
警備員はきっぱりと言い切った。

一概には信じられない話であるが、目撃者がいるとなれば一応の調査はしなければならない。
「アラシ、ハヤタ、山腹を調べてみろ」
ムラマツキャップの指示で二人は足早に山へと向かった。

そのころ本部では、留守番のフジ隊員が日ごろ煩雑になっていた事務仕事に追われていた。
それでも手際よく書類を整理するフジ隊員。
机の上の伝票ももうなくなろうかという時、不意にドアが開き、一人の少年が入ってきた。

「あら、坊やどこから来たの?ホシノ君のお友達?」
フジ隊員が尋ねるが、少年は答えようともしない。
「どうしたの?ここは無断で入ってきてはいけないのよ」
すると少年は、意味不明なことを口にした。
「オオムロ公園の、高原竜ヒドラが暴れるよ」



けげんそうな顔つきでフジ隊員は聞き返す。
「何が暴れるって?」
「高原竜ヒドラ」
突拍子もない少年の言葉に面食らうフジ隊員。
高原竜ヒドラ、とは一体何者なのだろう。

「早くしないと大変なことになるよ」
それだけ言うと少年はフジ隊員に背を向け、部屋から出て行こうとする。
「待って、坊やの名前は?」
あわてて呼び止めるフジ隊員だったが、少年はそれに答えず、
ドアの前でもう一度フジ隊員を見つめ、外へ出て行ってしまった。

「待って!」
少年を追いかけようとドアのところまで来たフジ隊員だったが、
さっきの意味深な言葉を思い出し、足を止めた。

ちょうどそこにイデ隊員が、書類を読みながら入室してきた。
イデ隊員はフジ隊員の姿に気付かずに危うくぶつかりそうになる。
「おうおう、ビックリした。そんなとこに立ってて交通妨害ですよ」
しかしフジ隊員はそんなことはおかまいなしだった。
「おかしな子だわ」
今出て行ったばかりの少年のことが気にかかる。



「へ?何が?」
イデ隊員が不思議そうに尋ねる。
「イデ隊員。今出てった少年が変な事言うのよ」
「今出てった?僕は誰にも会わなかったけどなあ・・・」
今度はフジ隊員が驚く番だった。
少年が出て行ってからイデ隊員が部屋に入ってくるまで数秒の間しかなかった。
それなのにイデ隊員は少年の姿を目撃していないというのだ。

念のため、と言わんばかりにイデ隊員は受話器を取った。
「守衛室かね。科特隊本部は子供の遊び場じゃないぞ。
 許可なく入れたりしちゃいかんじゃないか。居眠りでもしていたのかね?」
「イデ隊員!寝ぼけてらっしゃるのはあなたでしょう!
 子供どころかネコの子一匹入れちゃいませんよ」
電話の向こうからは少々不機嫌そうな声が聞こえてくる。



「とぼけたってダメ。アキコ隊員がちゃんと見てるんだ」
強気に言うイデ隊員の横で、深くうなずくフジ隊員。
だが守衛室から返ってきた返事は、ごく一般的なものだった。
「何かの間違いでしょう。無断で侵入したら非常ベルが鳴るはずです!」
「ごもっとも・・・」
すっかり守衛室の怒りを買ってしまったイデ隊員は、しょんぼりと受話器を置いた。
しかし、だとしたらあの少年は一体・・・

「この山は元々禿山だったんですか」
オオムロ山公園付近を調査中のムラマツキャップは、とにかく気になったことを警備員に尋ねていた。
「いや・・・以前はうっそうとした森だったんですが、
 どうしたわけか半年くらい前から急に木が枯れ始めましてね」
「半年前・・・原因は?」
「トウキョウから学者を呼んで調べてもらったんだが、
 どうもはっきりしたことは・・・」
警備員もお手上げのようだったので、ムラマツキャップもそれ以上深く聞くことはなかった。

先に調査に出ていたハヤタ、アラシの両隊員が戻ってきた。
「キャップ!」
ムラマツキャップが二人の方を振り向く。
「異常はないです」
ムラマツキャップの両腕であるハヤタ、アラシ両隊員の目にも異常は認められない。



しかしムラマツキャップの勘は警戒信号を発していた。
この土地には何かがある。
ムラマツキャップはいまだに警戒を解こうとしなかった。

そのムラマツキャップの通信機が受信反応を示した。
本部のフジ隊員からだった。
「本部よりキャップへ。オオムロ公園の高原竜ヒドラが暴れだすと言ってきた少年がいます
 念のため調査願います」
「高原竜ヒドラ?」
フジ隊員のいきなりの通報に、3人は顔を見合せた。

だが高原竜ヒドラのことは警備員が知っていた。
3人は警備員の案内で、高原竜ヒドラの元へと案内された。
「これが、高原竜ヒドラ」
それは昨晩警備員が懐中電灯で映し出した、あの巨大な石像だった。



「ほお・・まるで、鳥と恐竜の合いの子ですね」
イヌワシのような姿をした高原竜ヒドラ。
アラシ隊員は逆光の中に浮かぶ巨大な石像を眩しそうに見上げた
「しかしこのヒドラが暴れだすなんて、こりゃただの石ですよ。
 しかも、この公園の設立を記念して、全国の子供たちから、
 デザインを募集して作った架空の怪獣なんです」

警備員の言葉にハヤタ隊員が厳しい顔で振り向いた。
「子供たちからデザインを募集した?」
「ええ、確か当選したのは、トウキョウの小学生ですよ」
「その子の名前と住所がわかりますか?」
ハヤタ隊員の要望で当選者の身元を調べるべく、公園事務所に案内された科特隊は、
警備員の持ってきた資料から、少年の氏名を割り出した。

「お待たせしました。ムトウアキラという少年です」
「ムトウアキラ、何年生ですか」
「ええ、小学校3年。もっともこれは2年前ですから、もう5年生になってるはずです」
「住所は?」
次々と飛び出すムラマツキャップの質問に、よどみなく答える警備員。



これらの情報はそのまま本部のフジ隊員に送られた。
「トウキョウ都スギナミ区○×△町アケボノ少年ホーム」
「すぐ調べてくれ」
「了解」
通信を受けたフジ隊員は間髪いれずにイデ隊員に調査を要請する。
「イデ隊員、アケボノ少年ホームよ」
「了解!」
笑顔で答えるイデ隊員。2人は即座にアケボノ少年ホームへと車を走らせたのだった。

通信を切った直後、
ムラマツキャップたちのいるオオムロ山公園では、再び異常が認められていた。
「大変だ!ラクダが暴れだしたぞ!」
飛び込んでくる飼育員を見たムラマツキャップは勢いよく立ち上がった。

「行くぞ!」
3人は外へ飛び出すと、飼育員を先頭に、異常発生現場へと向かった。
現場では負傷者が一人、担架に乗せられ運ばれていくところだった。

「どうしたんですか?」
早速状況を調査するムラマツキャップに当たるかのようにラクダ飼育員は言い放った。
「最近どうもおかしいんですよ。このバカやろうが」
自分の持ち場に戻ろうと歩き出す飼育員の後を、
ムラマツキャップは追いかけ、聞き込みを続ける。

見れば園内では、ラクダだけではなく、
馬、カバ、メガネザル、像、孔雀やダチョウや小鳥達みな落ち着きなく鳴き、暴れているのだった。
「実を言うとあのラクダだけじゃないんです。
 どいつもコイツも気が狂ったように叫んだり暴れだしたり、
 さっぱりわからん。私まで気が狂いそうですよ」
飼育員は半ばパニック状態でムラマツキャップに現状を訴えた。



そのころフジ、イデの両隊員は、ムトウ少年のいるアケボノ少年ホームに向かっていた。
そして少年ホームで2人は意外な事実に直面したのである。

「死んだ!?」
驚愕のフジ、イデ両隊員を前に、ホームの先生はゆっくりとうなずいた。
「もう半年になりますわ。山鳥の好きなあの子は、夏休みに一人で山へ行って、
 その帰り、国道87号線でトラックにぶつかって・・・
 しかもひき逃げだったんです」
先生から出た意外な言葉に、イデ隊員もフジ隊員も怒りで顔を真っ赤にし、
唇をかみしめ、話に聞き入っていた。



「いまだに犯人がわからないままなんですよ」
二人は先生の話を聞きながら、その案内の下、ある一室に通された。
「どうぞ」
そこにはたくさんの怪獣の絵が壁に貼ってあった。
「ほう、これがアキラ君が考えた怪獣たちか」
壁に貼られた、ムトウ少年が書いたたくさんの怪獣たちを見回しながら、イデ隊員が笑顔になる。

「ああ、これがヒドラですね」
フジ隊員が指差した一枚の絵。そこには大きな鳥のような怪獣が描かれていた。



「はい、あの子の一番好きな絵でした。
 ヒドラは本当にいるんだよ、って、しょっちゅう言ってましたわ」
亡くなった少年のことを思い出しながらなのだろう。
先生は感慨深げに当時のムトウ少年の話をする。
「夢に見たことを、そんな風に思い込んだんじゃないかな」
イデ隊員も思わず感情がこぼれ、壁の絵をもう一度見回してみた。



「誰も信じてくれないけど、ボク本当に見たんだ、って、
 鳥や獣だけがあの子の生きがいでしたからね。
 ヒドラの絵が当選して、石像が完成した時は、それはもう大変な喜びようでしたわ
 今でもその時のあの子の顔が忘れられません。
 子供たちみんなの希望でしたのに」
3人の顔から先ほどの怒りは消え、穏やかに微笑みながら少年の描いた絵に見入っている。

しかし、そこに置かれていた一枚の写真、
ムトウ少年の遺影を目にしたとき、フジ隊員の顔つきが硬直した。
「あ!」
「どうしたフジ君」
「この子だわ。本部へ現れたのはこの子なのよ!」



すっかり日も暮れ、あたり一面闇に包まれたオオムロ山公園では、
ムラマツキャップ以下3名が園内のパトロールに出ていた。
ほとんど1周見回り終え、例のヒドラの石像まで来た3人。
「今夜は大丈夫だったな」
異常は認められず、一応の安心を得たことで、ムラマツキャップも警戒を解いた。



「ホテルへ帰って、一休みしますか」
アラシ隊員の意見にハヤタ隊員も相槌を打ち、3人はホテルへ引き上げようとする。
異常はその時起こった。ヒドラの石像が青白く光ったのである。
「あ、おい!」
ムラマツキャップが先頭切って走り出した。光の出どこはどうやら山頂だ。

山頂がよく見える丘まで3人が来た時、大きく地面が揺れ、激しい地割れが起こった。
3人は立っていることもままならず、思わず地面に伏せ、様子をうかがう。
山頂は青白くフラッシュし、その光はだんだん大きく、そして強くなっていく。

「わあー!」
恐れ知らずのアラシ隊員が叫び声を上げた。
アラシ隊員が見たものは、
山頂を木っ端微塵に破壊し、そこから姿を現した巨大な怪獣、ヒドラだった。
山は完全に二つに裂け、ヒドラが今、全身をあらわにした。
そのでかさ、、凶暴さ、並ではない。

「退避!」
危険を感じたムラマツキャップは即座に退避命令を出し、
今だ大揺れする大地を這うように歩き、安全と思われる場所まで避難した。
キャップの勘もまた、この怪獣は危険なヤツ、と感じ取っていたのだ。

ヒドラが羽ばたいた。強烈な風圧が科特隊主力メンバーを襲った。
山ひとつ潰し、その上に敢然と立つヒドラ。それは闇に浮かんだ悪魔のような姿。
「退け!」
強烈な風圧を喰らった科特隊は更なる撤退を余儀なくされた。

しかし逃げてばかりもいられない。
岩陰を見つけ身を隠すと、そこから3人は反撃に出た。
「砲撃!」
砲撃命令と共に、スーパーガンとスパイダーでヒドラを狙い打つ。
しかしヒドラの皮膚はそれらを全く寄せ付けない。
しかも攻撃したことでヒドラに自分たちの存在を知らせてしまったのである。



寝覚め早々攻撃を受けたヒドラは怒り心頭で、
大きく羽ばたくと空へ舞い上がり、一直線に科特隊に向かってくる。
恐怖で体が引きつる科特隊。ヒドラが上空から3人を睨みつける。



次の瞬間、ヒドラが口から火炎を放射した。
すんでのところで身をかわす科特隊メンバー。
いち早く体制を立て直したアラシ隊員が上空のヒドラにスパイダーを発射。
見事にヒドラの腹を捕えた。



「ビートルで追うんだ」
ムラマツキャップの命令でビートルに戻る科特隊。
しかしヒドラは再度科特隊を攻撃することはなく、
闇夜に溶け込むかのように、その姿を消したのであった。


(後編に続く)

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