EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD
第20話後編
by しぃさぁ

闇夜にまぎれて飛び去るヒドラを追跡したビートルだったが、
結局夜陰に乗じて逃げられてしまった。
一時本部に帰還したムラマツキャップはめずらしく顔を紅潮させ、怒りに打ち震えていた。



「とうとう逃がしてしまった。ヒドラは一体、どこへ行ったんだろう」
隊員たちの前、険しい表情で怒りをあらわにするムラマツキャップ。

「ボクのスパイダーに恐れをなして極地へでも逃げたんですよ。
 それとも、宇宙かな?」
アラシ隊員は冗談めかして自慢するが
ハヤタ隊員は厳しい顔つきで立ち上がった。
「ヒドラがもし、有史以前から日本に住み着いていた飛行鳥だとすると、逃げたりはしないと思う。
 たとえ一時は逃げたとしても、必ず舞い戻ってくる。
 帰巣本能があるからな」



なるほど、ハヤタ隊員の説は一理ある。居並ぶ隊員たちも黙ってうなずいた。
警戒を怠ってはならない。
そしてハヤタ隊員の推理どおり、ヒドラは舞い戻ってきたのであった。
国道87号線を走る車を求めて今、まっしぐらに空から舞い降りようとしていたのだった。



「キャップ、警視庁より緊急通報です」
通信データをメモに取り、フジ隊員が報告する。
「うん、読んでくれ」
「ヒドラは国道87号線に姿を現し、車を襲いながら、トウキョウに接近中」
「車を襲う?」
「はい、すでに数十台の車が被害を受けています」

やはりヒドラは舞い戻ってきた。
被害が出てしまった。事態は急を要する。
「出動準備」
出動命令と共にヘルメットに手を伸ばす隊員たち。
「ハヤタはアラシと行け。
 イデ、フジの両隊員は私と一緒だ」
かくしてハヤタ、アラシの両隊員は小型ビートルで、
ムラマツキャップ以下3名はジェットビートルに乗り込み、
全員そろって国道87号線を目指したのだった。



その機内、アラシ隊員がハヤタ隊員にヒドラに対する疑問を投げかけた。
「ヒドラが車を襲う理由だが・・・」
「少年と関係があるんじゃないかと思うんだ」
「やっぱり君もそう思うかい」
ハヤタ隊員も自分と同じ考えを持っていたことで、
アラシ隊員はある種の確信を得ていた。

「うん、きっとヒドラに少年の魂が乗り移ったんだ」
魂が乗り移った、と言い切るハヤタ隊員。
「呪われた、国道87号線か」
アラシ隊員は空しそうに眼下の国道に目をやった。

「ムラマツより、ハヤタ、アラシ両隊員へ。
 魂だの呪いだの言ってる場合じゃないぞ。
 日本には何百万台という車が走ってるんだ。
 我々の手でヒドラを始末しなければならんのだ」
すっかりキャップに会話を聞かれていた二人。
「了解」
少々ばつが悪そうにマイクに向かって返事をし、ビートル操縦に専念する。



昨夜ヒドラを取り逃がしたムラマツキャップの怒りはまだ収まっていなかった。
今度という今度は何が何でも、という決意がみなぎっている。
隊員たちも今一度気を入れなおし、現場へと急行するのだった。

そのころちょうど国道87号線を走行していた一台のトラックがいた。
車内ラジオから、アナウンサーが緊急ニュースを読み上げる声が聞こえる。
「繰り返します。運転手のみなさん、高原竜ヒドラが国道87号線に向かっています。
 ヒドラは、車を見ると襲いかかってきます。
 運転手のみなさん、車を捨てて早く退避してください」

だがニュースを聞いたドライバーは吐き捨てるように、
「ケッ、車を捨てろって!?冗談じゃないよ。
 命より大事な車だよ、そう簡単に捨てられるかってんだい」
たかをくくり、そのままトラックを走らせるドライバー。



しかし、ヒドラは来ていた。
トラックのすぐ傍まで来ていたのだ。
そして上空から舞い降りトラックの進路に立ちふさがると、
ドライバーはあわてて急ブレーキをかけ、間一髪で脱出した。
ヒドラは無人となったトラックを跳ね飛ばし、炎上させると、
勝ち誇ったように雄たけびをあげた。



その現場に科特隊が到着した。
コックピットから見える、いかにも凶暴そうな姿の高原竜ヒドラ。
しかしこの猛者たちが怪獣の姿くらいで臆するわけがない。



「ヒドラ発見。ウルトラ作戦第2号、砲撃開始!」
一方のヒドラもやる気満々だ。
なんだ、こいつらか、と言わんばかりにビートルに向かってファイティングポーズを取る。



先に攻撃を仕掛けたのはハヤタ機だ。
ハヤタ機から放たれたロケット弾がヒドラの頭部を直撃する。
しかし皮膚の厚いヒドラにダメージはなく、むしろそれが合図だったかのように
ヒドラも大空高く飛び上がった。

ビートル対ヒドラの空中戦が勃発。
今度はムラマツ機がヒドラを狙う。
しかし巨体の割りに空中ですばしっこいヒドラはロケット弾を軽く避け、
逆にムラマツ機めがけて体当たりしようと突っ込んできた。

「キャップ、危ない!」
フジ隊員の悲鳴と共に、かろうじて避けるムラマツ機。
ヒドラの巨体がビートルすれすれをすり抜ける。
その始終を冷静に見ていたハヤタ隊員は、ヒドラの正面に回りこみ、
肩口にロケット弾を叩き込んだ。
この一撃はダメージを与えたようで、ヒドラは失速下降する。

ムラマツ機も正面からヒドラを狙ってロケット弾を発射した。
またしてもダメージを与えた。地上めがけて墜落していくヒドラ。
「おお!やったやった!!」
ハヤタ、アラシの両隊員は勝利を確信し喜び合った。

しかし、これはヒドラの策だったのだ。
やられたと見せかけ、油断したビートルに向かって、
ヒドラは大きく反転、急速上昇して突っ込んできた。
しまった、と思うも時すでに遅し。
一瞬の油断が命取りになったハヤタ機は、あっけなくヒドラに叩き落され地上に墜落。
ヒドラはまたしても大空の彼方へと消えた。



「ハヤタ、アラシ、大丈夫か?ハヤタ、アラシ、応答せよ!」
地上に落下したビートル機内にムラマツキャップの声だけが響く。
幸いにも落下寸前で機体をコントロールし、不時着の体制が取れたため、
二人は一命を取り留めた。

アラシ隊員が気付き、隣で気を失ったままのハヤタ隊員を揺り起こした。
「おい!ハヤタ!ハヤタ!!」
ハヤタ隊員は左腕を負傷していた。
オレンジのユニフォームが血で染まり、真っ赤になっている。
「こちらムラマツ、こちらムラマツ、どうしたのか?何かあったのか」
必至に呼びかけるムラマツキャップの通信に、この時初めて気付いたアラシ隊員。
「キャップ、大丈夫です。ハヤタが腕に負傷しただけです」
「避難所でキズの手当てを受けろ」
「了解」
まだ気を失っているハヤタ隊員を抱え、アラシ隊員は避難所へ向かった。

ハヤタ隊員が意識を取り戻したのは、
アラシ隊員に担ぎこまれた避難所でキズの手当てを受けている最中だった。
「ああ、気がついたか」
目覚めたハヤタ隊員の目に飛び込むアラシ隊員の笑顔。

しかしハヤタ隊員は、手当てを受けながらもアラシ隊員に訴えた。
「ヒドラは?オレのことはいい。早くヒドラを」
「うん、じゃあ、後を頼みます」
ならばとばかりに、手当てをする医師にハヤタ隊員をまかせ、
スパイダー片手に避難所を飛び出すアラシ隊員。

ヒドラ襲撃に恐れをなし、全く車がいなくなった国道87号線を、
一台のタンクローリーが疾駆していた。
いつヒドラの襲撃があるかも分からない中、勇気あるドライバー。
それもそのはず、このタンクローリーの運転手は、アラシ隊員である。



「アラシ、無茶するな、ヒドラが狙ってるぞ」
上空からはムラマツキャップがビートルで見守る。
「キャップ、思うツボです」
どうやらアラシ隊員はなにか作戦があるらしい。



そうとは知らず、ヒドラはやってきた。
国道87号線をただ一台ひた走る黄色いタンクローリー。
あまりにも目立ちすぎている。
当然のごとく、ヒドラはアラシ隊員駆るタンクローリーの前に立ちはだかった。

それを予期していたアラシ隊員は、走行中のタンクローリーのドアを開け脱出し、草むらに飛び降りた。
転がりながら衝撃を和らげ、それでも命より大事なスパイダーは絶対に手放さない。

アラシ隊員は立ち上がった。そしてスパイダーの照準をしっかりとヒドラに合わせ、機会を待った。
ヒドラは無人となったタンクローリーを両の翼ではさみ、抱え上げた。
タンクローリーは今、ヒドラの胸元にある。
アラシ隊員の必殺スパイダーショットが火を噴いた。



スパイダーは見事、タンクローリーに命中、大爆発を起こし、
この爆風によりヒドラは胸元に大怪我を追った。
これがアラシ隊員の作戦だったのだ。

しかし手負いとなったヒドラはますます凶暴になり、
怒りに任せてアラシ隊員を踏み潰そうと向かってきたではないか。
ここは高原。身を隠す場所がない。
必至に逃げるアラシ隊員は、草に足をとられ、その場に倒れこむ。

応戦するしかない。アラシ隊員は再びスパイダーを構えた。
しかし、こんな時に燃料切れだ。
もはやアラシ隊員に反撃の余地はない。アラシ隊員が危ない。

だが、こっそりと避難所を抜け出した、
治療中のハヤタ隊員が応援に駆けつけていたのである。
そしてアラシ隊員の窮地を見て取ると、人影ない松林の中で、
胸ポケットから取り出したベータカプセルと高々と天に向かって突き上げた。



「アッ、ウルトラマンだわ」
はるか上空からやってくる赤いボディのウルトラマンにいち早く気付いたのは
ビートルに搭乗していたフジ隊員だった。
ヒドラの前にさっそうと現れたウルトラマン。
いきなり死闘が始まった。



しかし手負いのヒドラの凶暴さに、さすがのウルトラマンも押され気味だ。
ヒドラの、鋭く固いくちばしがウルトラマンを襲う。
頭突き一発、ヒドラはウルトラマンを浴びせ倒し、ウルトラマンの頭を狙ってくちばしを突き立てる。



「ああ、ウルトラマンが」
ヒドラに覆いかぶさられ、避けるのがやっとのウルトラマン。
ヒドラの腹部に蹴りを入れ、引き剥がした隙に立ち上がり、間合いを取ろうとするウルトラマンだが、
ヒドラはそんなことにはお構いナシに突っ込んでくる。

ヒドラのくちばし攻撃をまともに受けたウルトラマンは、
軽い脳震盪を起こし、倒れこんだまま動かない。
ヒドラが突っ込んでくる。
意識朦朧とする中、立ち上がりかろうじてヒドラの攻撃を避けるウルトラマン。



しかし戦局は圧倒的にヒドラ有利だった。
ヒドラの猛攻は続く。ウルトラマンは防戦一方だ。
今度はヒドラの鋭いくちばしがウルトラマンの頭を直撃した。
思わず頭を両手で押さえ、ウルトラマン一歩二歩と後ずさりする。

勝利を確信したのか、ヒドラは両翼を羽ばたかせ、
まるで高笑いをしているかのようなしぐさを見せる。

しかし、ここで間合いが取れた。
今まで間髪いれずに間合いを詰めていたヒドラが見せた一瞬の隙だった。
ウルトラマンは腕を十字に組んだ。
スペシウム光線だ。



だがヒドラはまるで予期していたかのように上空へ舞い上がり、
スペシウム光線を避けたのだった。

上空を飛ぶヒドラに再び狙いを定めるウルトラマン。
だがこの時、ビートル機内のフジ隊員が叫び声を上げた。
「ウルトラマン、ヒドラを殺してはいけないわ」




そう、フジ隊員の目にははっきりと映っていた。
悠々と空を飛ぶヒドラの背に、ムトウアキラの幻影がいたことを。
ムトウアキラがこちらを見てにっこり微笑んだのを。
まさに、ヒドラはムトウ少年の化身だったのである。



フジ隊員の声が聞こえたのか否か、ウルトラマンは十字に組んだ腕をそっと下ろした。
いつしかウルトラマンから戦意が消え、
大空の彼方へ飛び去るヒドラをいつまでも見送り、
やがて自らも空の彼方へと消えたのだった。

「あれ、ウルトラマンのヤツわざとヒドラを逃がしたぞ。
 なぜスペシウム光線を発射しなかったんだろう」
しきりに不思議がるイデ隊員を横目に、フジ隊員が話しかける
「ウルトラマンには分かってたんだわ。ウルトラマン、ありがとう」

戦いは終わった。
再びオオムロ山公園のヒドラ像の前にあつまる科特隊。
「白鷺は乙女の化身だという伝説があるが、
 このヒドラも、自動車事故で不幸な死をとげた、多くの少年達の化身なのかもしれない」
ムラマツキャップ。

「ひき逃げをした運転手も自首して、警察に捕まりましたよ」
ハヤタ隊員。

「これでアキラ君も天国へいけるわね」
フジ隊員。

「うん、よかった」
アラシ隊員

「キャップ、ヒドラは、子供たちの守り神だったのかもしれませんね。
 遠い遠い昔から」
イデ隊員。

隊員たちがそれぞれの思いを語りながら、ヒドラの像を見上げていた。

「それにしてもだ、なぜムトウ君の姿が、フジ隊員の目にだけしか映らなかったんだろう」
不意にアラシ隊員が疑問を口にすれば、
「それなんですよ。ボクもずっと疑問に思ってたんですけどね」
イデ隊員も不思議そうにムラマツキャップの顔を見た。

しかし、二人の間で得意満面のフジ隊員は、
「結局純真な心の持ち主には、
 普通の人には見えないものが見えるっていうことじゃないかしら。ね、キャップ」
「やられたやられた。なあみんな」
オオムロ山公園にも平和が戻り、科特隊にも笑顔が戻った。



「行こう」
キャップの声で公園を後に、本部へと帰還する科特隊。
戦いを終え、謎を解き、隊員たちは皆、晴れやかな笑顔でビートルに乗り込んでいった。

あとがき
今回は第20話。ウルトラマンもちょうど折り返し地点に差し掛かりました。
1年かかって半分ですが、自分ではよく続いたな、と感じています。

まあそんなことはいいとして、
今回のお話では、高原竜ヒドラが活躍してくれました。
交通事故で志半ばにして亡くなった少年の化身、という設定ですが、
これは当時も今も問題視されている交通戦争、車社会を取り上げたお話です。

トラックにひき逃げされた少年の化身がトラックに復讐する。
ちょっと逆恨み的要素も含んではいると思いますが、
それほどに少年の恨みが強かったのか、
はたまた、一度だけムトウ少年と出合ったことがあるという
ヒドラとの結びつきが強く、ヒドラの意思でこうなったのか、
その辺は見る人によって意見が異なるとは思いますが、
最後のシーンでヒドラの背中に幻影が映ったところに
原作者の重いが綴られているのでしょう。

しかしながらこのヒドラ、
恐らく今まで出てきた怪獣の中で最強だったのではないでしょうか。
なにせ格闘シーンでは、ウルトラマンは全く歯が立たなかったのですから。

もしこのまま戦いが続いていたら、
ひょっとしてウルトラマンは負けていたかもしれません。
あまり名の知られていない怪獣ではありましたが、
意外な強さを持ち合わせていたことに一番驚かされました。

まさに「怒りのパワー」炸裂でしたね。
事なきを得て私も安心いたしました(笑)

さて次回のお話は、
フジ隊員、ホシノ少年危機一髪!
毒ガス吐きまくる嫌なやつが大暴れです。



次回もお楽しみに。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

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