EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD
第21話後編
by しぃさぁ

離陸直前に怪獣ケムラーの毒霧に襲われ、
意識を失ったフジ隊員とホシノ少年。

先に気がついたのはホシノ少年だった。
まだ意識が朦朧としているホシノ少年は、

それでも無線を握り締めて本部に救援を求めた。
「本部、本部、こちらホシノ。返事してください」
ムラマツキャップをはじめとする本部のメンバーが
すぐ近くに来ていることなど知るはずもないホシノ少年は、
無線に向かって必死に叫ぶが当然ながら応答はない。

「ダメかあ・・・」
無線が使えないと判断したホシノ少年の落胆は大きい。
だがぐずぐずしていられない。
いつまたケムラーが襲ってくるかわからないのだ。

「フジ隊員、お姉ちゃん、起きてくれよ!」
フジ隊員をゆすり起こそうとするが、フジ隊員の意識は戻らない。
そして恐れていたことが起こった。
「あ、怪獣だ!」
とうとうきた。再びケムラーが小型ビートルの前に姿を現したのだ。



ケムラーは今にも小型ビートルを踏み潰しそうなくらいに接近してきた。
もうやるしかない。
ホシノ少年は慣れない手つきで小型ビートルを離陸させるべくエンジンを点火した。



だがそれが幸いした。
一時退却し、本部に戻ろうと離陸寸前のジェットビートルに
小型ビートルのエンジン音が届いたのだ。

「発進準備OK」
今にも期待を浮き上がらせようとしているハヤタ隊員を、イデ隊員が制止した。
「ちょ、ちょっと待った!」
「どうしたイデ」
「あの音」
真剣なイデ隊員の表情。
ハヤタ隊員も耳をすませた。



「小型ビートルの音だ」
その音はハヤタ隊員の耳にも達した。
ムラマツキャップが大急ぎで無線に手を伸ばす。
「フジ隊員、ムラマツだ。無事だったか」
「キャップ、ホシノですフジ隊員も一緒にいます」
無線から流れてきたホシノ少年の声に、
アラシ、イデの両隊員は安堵の表情を浮かべた。



そしてムラマツキャップは、ホシノ少年のその声で、
現状を全て読みきった。
アクシデントでフジ隊員は戦闘不能になっていること。
ケムラーに襲われ、ホシノ少年が小型ビートルを操縦し、脱出しようとしていること。
ムラマツキャップは無線を握りなおし、
即座にホシノ少年に指示を送った。

「ホシノ君、落ち着くんだ。私の言うとおりにやれ。
 まず、酸素ボンベを開け」
その声は確かにホシノ少年に伝わった。
「よし、操縦席に座ったらスタンバイ1を押せ」
聞きなれたムラマツキャップの声。
ホシノ少年が一番尊敬しているムラマツキャップ。
絶体絶命のこの危機に、ホシノ少年は落ち着きを取り戻した。



「サイドレバーを上げろ。よく音を聞け」
ホシノ少年の額に大粒の汗が浮かぶ。
「音が変わったらジェットスイッチを入れろ」
機首が起き上がった。
「ジェットキーを押せ」
ケムラーが接近してくる。
「続いてレバー2」
焦るな!ホシノ隊員!!
「スロットルバルブ全開!」
あと少し!
「操縦桿を引け!」
力いっぱい操縦桿を自分の胸に近づける。
「発進!!」
その声と同時にケムラーの破壊光線が小型ビートルを襲った。
間一髪!小型ビートルは破壊光線を避け、大地を蹴って大空へと舞い上がった。

ジェットビートルは歓喜に包まれた。
「あとは自動操縦に切り替えるんだ。よくやったホシノ君」
「了解了解」
ムラマツキャップの激励にホシノ少年は笑顔で答える。

助かった。額に浮かぶ大粒の汗を拭ったその顔は、
少年ではなく、立派な科特隊員の顔になっていた。
「さあ、こっちも出発だ」
安堵の声で出発命令を下すムラマツキャップ。
ハヤタ隊員の操縦で、ジェットビートルもホシノ機の後を追い本部へと帰還した。

しかし科特隊が退却した後、オオム市では最悪の事態を迎えていた。
ケムラーが町へ降りてきたのだった。
オオム市内に撒き散らされたケムラーの毒ガスで倒れる人々。
早急に手を打たなければ大惨事になる。

「ちきしょう、オオム市まであと5キロもないぞ」
モニターを見ていたアラシ隊員の声が本部室内に響く。
ぞノ横で、そっとモニターから離れるムラマツキャップ。
ハヤタ隊員が追いかけた。
「キャップ、手をこまねいて見てなくちゃいけないんですか」
しかしムラマツキャップは逸るハヤタ隊員を抑えるように言った。



「もう少し待て。すぐ防衛隊の攻撃が始まる。その様子を見てからだ」
しかしハヤタ隊員も黙っていられない。
「ナパームやロケットじゃちょっと通用しそうもありませんが」
「イデが、いいアイデアが浮かんだと言って、新兵器を作ってるらしいんだが」
どうやらムラマツキャップはイデ隊員のアイデアに相当の期待を寄せているようだ。

研究室のイデ隊員のところにホシノ少年がやってきた。
「イデさん、もう出来た?」
「待った待った、そんなに早くできるはずがないでしょう。
 あれだけの毒ガスを中和する薬なんていうのは」
オレンジのユニフォームから白衣に着替え、試験管を両手に持ったイデ隊員。

しかしホシノ少年の考えはイデ隊員とは全く異なっていた。
「毒ガスを中和するなんて間に合わないよ。怪獣をやっつける方法を考えなきゃ」
「それが分かれば苦労はない」
「どんな怪獣だって、泣き所があるでしょ。そこをただの一撃でやっつけるんだよ」
「う〜ん・・・泣き所を、ただの一発でねえ・・・」
「そうだよ。あの怪獣の背中を狙うんだ」
ホシノ少年はケムラーの弱点を見抜いていたのだ。
いつもはホシノ少年を子ども扱いしているイデ隊員だが、
今回ばかりは彼の言葉に耳を傾けたのだった。



一方オオム市内を所狭しと暴れまくるケムラーの前に防衛隊が到着。
戦車部隊が布陣を敷き、ケムラーが射程圏内に入るのを待ち構えていた。
「怪獣接近、距離500!450!!400!!」
「撃て!」
防衛隊戦車の砲弾が次々とケムラーに命中。

ケムラーは背中にある2枚の羽を広げ、怒りをあらわにする。
怒り狂ったケムラーは尻尾から破壊光線を発射し、
自分を狙う戦車を次々と破壊していった。



最前列の戦車数台が火に飲まれ、後列の戦車が後退していく。
そしてお次は例の毒ガスだ。
「撤収!」
たまらず退却する防衛隊。
戦局を見守っていたムラマツキャップとハヤタ、アラシ両隊員は唸り声を上げた。

「ハヤタ、ビートルでナパーム弾を直接ヤツの頭にぶつけられないか」
「やってみます」
ムラマツキャップの作戦を遂行すべく、ハヤタ隊員はビートルに乗り込んだ。
上空からケムラーの頭部を狙うハヤタ機。
その眼下ではケムラーが破壊の限りを尽くしている。
もはや一刻の猶予もならない。



上空からはハヤタ機のナパームが、
地上からはムラマツキャップがスーパーガンで、
アラシ隊員がスパイダーで応戦。
しかしよほど皮膚が硬いのか、ケムラーには全く通用しないのだ。



ケムラーは破壊光線と毒ガスを使い、手当たり次第にあたりのものを破壊していく。
これを見たハヤタ隊員は、ビートルから雨あられとナパームを投下。
しかし彼は、焦りから判断を誤った。
ケムラーに接近しすぎたのだ。

ケムラーが再び背中の羽を広げた。
そこはビートルの進行方向。避けるには距離がなさすぎた。
ビートルはケムラーの硬い羽に激突し、爆発、炎上。
ハヤタ隊員は空中に投げ出された。

「ハヤタ!」
地上で見ていたムラマツキャップが叫ぶ。
だがハヤタ隊員は空中で、ポケットから取り出したベータカプセルを高々と振りかざした。
ウルトラマンの登場だ!



ケムラーの前に着地したウルトラマンは、
挨拶代わりにウルトラキックをお見舞いする。
吹っ飛び裏返しになるケムラー。
今度はケムラーの番だ。怒りのケムラーは毒ガスをお返しする。

かろうじて横っ飛びで避けたウルトラマンは腕を十字に組んだ。
とどめのスペシウム光線だ!
しかし、効かない!
やはりケムラーの皮膚は硬いのだ。



「チキショウ、スペシウム光線も通用しません」
難を逃れたアラシ隊員が愕然とする。
その時だった。
「キャップ!」
イデ隊員だ。イデ隊員がジープで戦線にやってきた。

「キャップ出来ました。このマッドバズーカで、ヤツの背中に一発食らわしてやります」
出来たばかりのマッドバズーカを大事そうになでるイデ隊員。
「よし、イデアラシ、やってみよう。出来るだけ接近するんだ」
早速攻撃態勢が整えられ、アラシ隊員がマッドバズーカを自らの肩にしっかりと固定した。
「頼むぞ」
弾を込めるイデ隊員。まさに祈る気持ちだ。

だが戦局は科特隊に不利だった。
ウルトラマンが苦戦している。
毒ガスに破壊光線。それだけではない。ケムラーは力も強かった。



ウルトラマンが押されている。
スペシウム光線も効き目がなく、ケムラーの進撃を抑えるのがやっとのウルトラマン。
今のウルトラマンにケムラーを倒す術はない。
「うっかり撃てばウルトラマンに当たってしまう」
「困ったなあ。弾は一発しかないし、ケムラーの急所に命中させないと効果がないんですよ」
アラシ、イデ両隊員の嘆きにも似た悲鳴。
「しかし、これではどうすることも出来ないじゃないか」
ムラマツキャップも悲痛の叫び。

科特隊とウルトラマン、ケムラーの前に打つ手なし!
するとホシノ少年が前に出て、大声でウルトラマンに向かって叫んだ。
「ウルトラマーン!頼むよ!ケムラーを撃ちたいんだ!」



ケムラーとの激しい戦いの中、ウルトラマンにはホシノ少年の声がはっきりと聞こえた。
ウルトラマンは四足のケムラーのあごを持ち、持ち上げ、立ち上がらせようとした。
そうはさせるかとばかりに抵抗するケムラー。

立ち上がらせればいい。立ち上がらせるだけでいい。あとは科特隊が。
ウルトラマンはそれだけを考え、渾身の力を込めてケムラーを持ち上げる。
そしてついにケムラーを立たせることに成功。



ケムラーの背中のウィークポイントがマッドバズーカの前にさらけ出された。
それを逃すアラシ隊員ではない。
ウルトラマンが作ってくれた千載一遇のこのチャンス。はずしてなるものか。
アラシ怒りのマッドバズーカがケムラーの背中に炸裂した。

急所をやられ、もはやケムラーはそこまでだ。
今まで大暴れしていたのがウソのように、力なくウルトラマンの足元に崩れ落ちたのだった。
「やーい!ついにやったぞこのマッドバズーカで!」
飛び上がって喜ぶイデ隊員の袖を引っ張るホシノ少年。
「イデさん、ボクのヒントもだいぶ入ってるんだよ」
「分かってる分かってる。帰ったら飴玉買ってやるからな」
「ちぇ、肝心な時に子ども扱いなんだから」
喉元過ぎれば暑さ忘れる。ホシノ少年はいつもの扱いに逆戻りだ。

ぐったりと倒れこんだケムラーは、最後の力を振り絞って噴火口へ向かう。
弱々しい鳴き声を発しながら、ただ力なく噴火口を目指す。
最後は自分の巣で、という思いなのだろうか。
やがてケムラーの姿は火口に落ち、大音響とともに爆発した。
凶悪怪獣の最後だった。

帰還後即入院したフジ隊員を見舞うため、
科特隊メンバーは病院へ。
「考えてみると、フジ隊員はずっと気絶のしっぱなしでしたね」
呆れたように言うイデ隊員をアラシ隊員がたしなめた。

「おい、病室に入ったらそんなこと言うな。気を悪くするからな」
フジ隊員の病室。入る前に今一度ムラマツキャップが口裏を合わせる。
「いいか、ハヤタはパリの本部に連絡に行ってるので見舞いに来られない。分かってるな」

そう、ハヤタ隊員はケムラーにぶつかって行方不明になったままだった。
「了解」
隊員たちは小さな声で答える。
厳しい戦いだった。

ムラマツキャップがおもむろにドアを開ける。
そして次の瞬間、キャップの顔が驚きの表情に変わった。
フジ隊員の横に付き添っていたのは、行方不明になったと思っていたハヤタ隊員だった。



「おいハヤタ!やっぱり無事だったのか」
「もう背広にまで着替えちゃって」
アラシ、イデ両隊員が、フジ隊員にではなく、ハヤタ隊員に駆け寄った。



笑顔で迎えるハヤタ隊員はムラマツキャップの前に進み出た。
「キャップ、ご心配かけました」
「なに、ハヤタのことだ。きっとこんな具合だろうと思ってたがね」
みんなの笑顔がここに集結。

おっと、一人だけ笑顔じゃない人が・・・
「あら、みんな私のお見舞いに来てくれたんじゃなかったの?」
フジ隊員の一言で、
「あ・・・こりゃあ失礼しました」
「いやあ、そうだったそうだった」
頭をかきながら花束とケーキを渡すメンバー達。

そして最後にホシノ少年が、
「分かる分かる、女子供は結局相手にされないもんね」
今度こそ、全員の笑い声が響いた病室だった。

さて今回は毒ガス怪獣ケムラーが活躍してくれました。
ここのところのウルトラマンは、人間模様がテーマになっていましたが、
今回は久々に特撮らしい内容だったと思いますし、
大暴れしてくれたケムラーも、怪獣らしい怪獣だったのではないでしょうか。

このケムラーという怪獣は結構有名ですが、お話の内容は意外と知られていないかもしれません。
しかしこの怪獣、毒ガスは吐く、破壊光線は持ってる、しかも力も強い。
さすがのウルトラマンも苦戦でしたが、
科特隊との見事な連携でこの凶悪怪獣を倒しました。

後編、ホシノ少年が小型ビートルを離陸させるシーンは手に汗ものでした。
しっかり書かねば、と何度も書き直しては見たものの、
結局「シンプルイズベスト」という結論に達し、簡単になりましたけど(笑)。

しかしあの小型ビートル、どうやって基地に着艦したんでしょう??
離陸だけであんなに苦労したホシノ少年が、
基地に着艦させられる技術があるとは思えないのですが・・

今回の悩みはそれが一番でした。
なんだか空想科学小説になってきそうなので、
今回のあとがきはこの辺にしておきましょう(笑)

さて次回は、
地底人の魔の手がハヤタ隊員を襲う。
こんなのが大暴れしてくれます。



次回もまたおつきあいください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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