EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD

第22話前編
by しぃさぁ

たった今パリ本部から、特別の任務を負った隊員、アンヌが到着した。
大空から降り立つ一機の旅客機。
空港には科特隊のアラシ、イデ両隊員が出迎え、無事アンヌ隊員と合流した。



「特別の任務ってなんですか?教えてください」
本部へ向かうモノレールの中、イデ隊員が尋ねるが、
「ムラマツ君にお会いするまでは」
アンヌ隊員は窓の外を見たまま、答えようとはしなかった。




本部ではその到着を、今か今かと待ちわびていたムラマツキャップが、
アンヌ隊員の姿を見るなり笑顔で歩み寄った。
だがムラマツキャップが次の瞬間取った行動は、
アンヌ隊員の胸元にレーザーガンを打ち込むことだった。

しかしアンヌ隊員は避けようともせず、まともにその胸にレーザーエネルギーを受け止めてしまった。
だが、なんともない。その表情も微動だにしない。
無表情のままのアンヌ隊員は、胸元からそっと一枚のカードを取り出し、
ムラマツキャップに提示した。

身分証明だ。
ムラマツキャップはこれを狙ってレーザーガンを放ったのだった。



ムラマツキャップの顔がほころぶ。
正真正銘のアンヌ隊員と確認できたようだ。
「本部隊員、アンヌ・モーハイムです」
「お待ちしてました。ようこそ」
笑顔で握手を交わす両者。

ムラマツキャップはアンヌ隊員の手を取りフジ隊員の元へ。
「フジ隊員」
「ようこそ」
笑顔でおじぎするフジ隊員。

その時、非情召集ベルが鳴り響いた。
フジ隊員が驚き振り向く。
アラシ、イデ両隊員も駆け込んできた。
「キャップ!出動ですか?」
アラシ隊員が叫ぶが、ムラマツキャップは冷静にベルのわけを説明する。

「いや、出動ではない。君たちに集まってもらったのは・・・」
ムラマツキャップは一度言葉を切り、
そして、フジ隊員の横で通信業務を行っていたハヤタ隊員の方に向き直った。

「ハヤタ!」
「はい!」
「急に君をパリへ派遣することになった。本部からの要請だ」
寝耳に水のハヤタ隊員は驚きの表情を見せる。
アンヌ隊員来日の理由はここまで極秘だった。
科特隊極東支部でも、この理由を知るものはトップの数人とムラマツキャップのみ。
厳重な緘口令が布かれ、隊員たちも知らされていなかった。

「特別の任務だ。選ばれた者の栄光もある。
 君は、国際宇宙開発軍のロケット操縦の技術指導として、しばらくパリへ行ってもらう」
重大任務の通達に、だがハヤタ隊員は困惑の色を浮かべた。
「しかしキャップ・・・」
自分が日本を離れる間のことを気にかけるハヤタ隊員だが、
そんなハヤタ隊員の心配を察したムラマツキャップは彼の背中を押した。
「しっかり頼むぞ!極東支部の名誉にかけて」
ムラマツキャップはハヤタ隊員の目をしかと見つめ言い切った。
「すばらしいわ、ハヤタさん」
フジ隊員が羨望のまなざし。

「しかし・・・」
それでも渋るハヤタ隊員に、
「考えることはないさ」
「留守にはオレがいるよ」
「大体お前はあまり役立たんのだからな」
アラシ隊員、イデ隊員が口々にはやし立てた。

「がんばるんだぞハヤタ!」
ムラマツキャップに肩を叩かれ、ハヤタ隊員は迷いを振り切り決意を固めた。
「はい!」
歓喜に包まれる本部内。
皆がハヤタ隊員の栄誉を讃え笑顔を見せた。
だが・・・
そんなメンバーをよそにアンヌ隊員はひとりイスに腰掛け、
相変わらず無表情でそのいきさつを見つめていた。

即日ハヤタ隊員はアンヌ隊員とパリへ向け出発した。



飛び立つビートルに搭乗するハヤタ隊員とアンヌ隊員を見送る科特隊メンバー。
「さ、行こう」
ムラマツキャップの号令でで早足に本部へと戻る。

「キャップ、よかったですね」
イデ隊員は自分のことのように喜んでいる。
「うん。
 あ、フジ君。至急パリ本部へ当地を無事出発した旨、打電してくれたまえ」
連絡の指示を出すムラマツキャップも笑顔だ。

ところが、一番後ろを歩いていたアラシ隊員が異変に気付いた。
「あ・・・なんだいありゃ!?」
アラシ隊員が指差す空には、1本の黒い雲のような物体が浮いていた。



「こちら極東支部。パリ本部、応答願います。こちら極東支部・・・」
本部に戻った科特隊は大混乱に陥った。
トウキョウ一円の電波が乱れ狂っていたのだ。
科特隊本部には、電波障害の報告が次々ともたらされ、
隊員たちはみな、対応に追われていた。

「キャップ!東京テレビセンターからの緊急連絡です。
 世界衛星からの電波が完全に乱れてるそうです。
 故障したところもないのに電波が回復しないそうです」
イデ隊員の報告が終わらぬうち、今度はアラシ隊員が叫ぶように報告する。

「キャップ!インターナショナルテレフォンサービスから、
 国際電話の海底ケーブルが完全に混線してるそうです」
そうしているうちにも本部は、電話のベルが止むことを知らぬかのように鳴り響く。

「キャップ!パリ本部との通信が不通です。
 電波が妨害されてるんじゃないでしょうか!?」
フジ隊員が泣き出しそうな顔で叫ぶ。
「フジ君、テレビのスイッチを入れてくれ!」
ムラマツキャップはモニター前に移動し、仁王立ちで腕組みする。

なぜか、ハヤタが出発した直後に奇妙な事件が頻発した。
この混乱、そのままにしてはおけない。
ムラマツキャップは断を下した。
「アラシ、イデ、行動開始!至急テレビセンターへ行ってくれ!」
「はい!」



テレビセンターへ向かったアラシ、イデ両隊員は早速局員の説明を受けた。
「最初は全理層の変動だと思ったんですが、全理層には全く異常ありません。
 受信装置に故障はないし、人工衛星からの電波も受けることができません。
 衛星の故障かと思ったんですが、
 それにしては国内関係の電波も受けることが出来ないんですよ」

「こちらアラシ!こちら・・・」
本部のムラマツキャップに報告しようと
無線を飛ばしたアラシ隊員が顔をしかめ、通信機を切った。
「それも使えなくなってる」
科特隊の誇る高性能通信機でさえ傍受不能に陥っていた。

テレビセンターに、宇宙考古学、地質学の権威であるフクヤマ博士がやってきた。
「恐らく、何者かによって電波が妨害されてると思いますが」
早速アラシ隊員が状況を説明する。
「君たち科学特捜隊の方ではなにか手がかりがつかめたかね?」
「いえ、今、調査を開始したばかりですから」
アラシ隊員がそれに応えるが、
「うん・・そうだろう」
フクヤマ博士は納得しているようにうなずいた。
そして、博士は声を潜め、アラシ、イデ両隊員に自分の調査結果を話しはじめたのだが、
その内容は、実に驚くべきものだったのだ。



「灯台下暗しだよ」
「灯台下暗し?」
イデ隊員がフクヤマ博士の顔を覗き込む。
「大きな声では言えないが・・・原因は科学特捜隊だよ」
「なんですって!?」
アラシ隊員が足を止め、フクヤマ博士に詰め寄った。

「いや、正確に言うなら原因のひとつは、だな」
「というと、ボクには何か、強力な磁力による電波妨害だと考えられますが」
さすがというべきか、イデ隊員はある程度の理屈はわかっているようだ。
「そうだ、その通り。私の調査によると計器は、
 特捜隊のある場所でもっとも鋭敏な反応を示している」
「そんな!そんなバカな!?」
とても信じられないとばかりにフクヤマ博士にかみつくアラシ隊員だが、
フクヤマ博士はある種の確信を持っていた。

ひとまずテレビセンターを後に本部へ戻るアラシ、イデ両隊員。
フクヤマ博士もこれに同行し、本部で対策を練ることとなった。
その車中、
「おおっ?」
イデ隊員が叫び声をあげた。
「なんだ」
たしなめようとするアラシ隊員を制し、イデ隊員が指を指す。

「おい、あれを見ろ!アンヌじゃないか!」
見るとそこには確かにアンヌ隊員によく似た外人女性が一人歩いていた。
「ハヤタと一緒にパリへ発ったはずだが・・」
イデ隊員は首をひねるが、
「バカ、なにを言ってるんだ。
 人違いだよ、そんなわけがない。一緒に見送ったじゃないか!」
アラシ隊員は頭から請合おうとはしない。



「おかしいなあ・・確かにハヤタとパリへ・・・」
確かにここにアンヌ隊員がいるはずがない。
「しかし、よく似ていたなあ」
イデ隊員は首をかしげながらも、自分を納得させようとしていた。

本部に戻ったアラシ、イデ両隊員は、妨害電波の元を探るべく、
フクヤマ博士に渡された妨害電波発見器を使用し、根源を調査追跡していた。
「こっちだ、」
確かに近くに妨害電波の発信源がある。

「しかしおかしいな、これだけの磁力なのに金属には影響がない」
アラシ隊員の疑問にイデ隊員がうなずく。
「この奥だ」
イデ隊員が指差すと同時、アラシ隊員がその部屋に飛び込んだ。
「これだ!」
アラシ隊員が発見した、ライターほどの大きさの機械。
これがトウキョウ中の電波を狂わす発信源だった。
二人は早速、これをフクヤマ博士に渡し、解明してもらった。

時はいくらもかからなかった。
フクヤマ博士が分析を終了し、再び姿を現した。
「恐ろしい発明です。電波を狂わせるケリチウム磁力光波を出す機械です。
 この機械で、トウキョウ一円の電波は妨害されるのですから。
 しかし、もう回復したはずです」
分析結果を報告するフクヤマ博士。
博士ほどの人物でも驚きを隠せないようであった。
「フジ君、ハヤタのビートルと連絡を取ってくれ」
「はい!」
ムラマツキャップの指示でフジ隊員は無線を握る。

「しかし不思議だ」
フクヤマ博士は自分がばらした妨害電波発進装置の中の
一つの部品をピンセットでつまみつぶやいた。
「何がです?」
ムラマツキャップがその小さな部品を覗きこむ。



「このゲルマタント鉱石は、地下4万メートルにあると推定されているものなんですよ」
「それじゃあ、我々の世界で使われた事のないものなんですね」
「そうです。しかし一体誰がこれを特捜隊に・・・」
ムラマツキャップの顔が険しくなった。
深く思慮を巡らせているに違いない。
しかし現段階ではさすがのムラマツキャップも、この事件の真相は五里霧中である。

イデ隊員がふと疑問を口にした。
「キャップ、ひょっとしたら、あの本部からきたアンヌという女が」
「バカな!」
即座にアラシ隊員が否定するが、
イデ隊員は直感的にアンヌ隊員を信用できないようであった。

「しかし、最近科特隊に足を踏み入れたのは、あの女だけでしょう?」
確かにイデ隊員の言うとおりなのだが、
パリ本部の隊員を疑うのは突拍子もなく、またあまりにも証拠がなさすぎた。
「アンヌ隊員のことは、前もってパリ本部から連絡が来たし・・・」
ムラマツキャップもイデ隊員の意見は、にわかに受け入れられない様子である。

「第一、身分証明書のテストだってしたじゃないか!原因は他にあるよ。
 ひょっとすると、宇宙人の仕業かもしれない。
 ねえ博士、他の天体にもこのゲルマタント鉱石があるってことは考えられませんか?」
アラシ隊員も自分の説を強調する。
「それは大いにありうるでしょう」
フクヤマ博士もアラシ隊員説に納得するかのように自身有りげに答えた。

フジ隊員が険しい顔で振り向いた。
「キャップ、ビートルと連絡が取れません。
 こちらの電波は確かに送られてるんですけど、応答なしです」
「なに!?」
ムラマツキャップの全身に緊張が走った。

この、ライターほどの小型機械のおかげで、トウキョウの電波は一時混乱をきたした。
そして、電波が回復した時、ビートルとの連絡は途絶えていた。
ハヤタはどうなったのか?一体、何の目的で、この機械が置かれたのか?また、誰が置いたのか?
一切は謎のまま、科学特捜隊は宇宙パトロールに出発したのである。

アラシ隊員とイデ隊員を乗せたビートルは勢いよく宇宙へと飛び出す。
だが結局宇宙での異変は見つからず、
ビートルは何一つ手がかりをつかめないまま大気圏に突入した。

地上が見えた。本部も間近だ。
ところがその本部間近の人気のない地上で、イデ隊員が白い車を一台発見した。
「お!?」
ビートルから白い車を見つめるイデ隊員。
すると、車から降りてきたのは一人の外国人女性。
「アラシ隊員!アンヌだ!」

「またぁ、人違いだよ。錯覚だよ」
「いや、確かに!」
取り合おうとしないアラシ隊員だが、
イデ隊員のあまりの真剣さに根負けし、
ビートルを着陸させ確認することにした。

ビートルを降り、崖の上から白い車に接近し確認するアラシ、イデ両隊員。
そして・・・
女性は確かに、アンヌ隊員だった。
アンヌ隊員は何かの発信機のようなものを持ち、地面にしゃがみこんでいる。

更に接近しようと試みるアラシイデ両隊員だが、その時地面が大きくゆれた。
何事か?思わず叫び声を上げてしまったアラシ隊員。
アンヌ隊員が二人に気付いた。
あわてて車に乗り込み逃走するアンヌ隊員。

「待て!」
アラシ隊員が追いかけるが間に合わない。
「やはりアンヌだあいつは!」
今まで直感的にアンヌ隊員を疑っていたイデ隊員はこれで確信を得た。
「よし、ビートルで追うんだ!」
半信半疑ながらイデ隊員を促すアラシ隊員。
二人はビートルに戻り追跡を続行しようとするが、
「アッ!」
イデ隊員が叫び声をあげ、地面から何かを拾い上げた。
科特隊の通信バッジだ。
「ハヤタのじゃないか!」

本部に戻った二人は、ことの一部始終をムラマツキャップに報告し、
先ほど拾った通信バッジを手渡した。
「なに?ハヤタの!?」
ムラマツキャップもうめき声をあげる。
「絶対あの女です」
イデ隊員が一歩前に進み出た。

「キャップ、電送写真が送られてきました。
 パリ本部では、アンヌ隊員は絶対に間違いないと言ってきました。
 ただ、まだ二人ともパリに到着してないそうです」
フジ隊員から電送写真を手渡され、アンヌ隊員の顔を今一度確認するムラマツキャップ。

「何かの拍子で、ハヤタのヤツ、きっと落としたんでしょう」
アラシ隊員はいまだアンヌを認めようとしないが、
確信を持ったイデ隊員は必死の形相でムラマツキャップに訴えた。



「違う!キャップ、あの女は何かの目的で地上の電波を妨害しようとしてるんです。
 きっとまた現れます。あの女の正体を突き止めるのが先決です!」
ここまでくるとイデ隊員説はかなり信憑性を帯びてくる。
落ちていたハヤタ隊員のバッジ、白い車とアンヌ隊員らしき女性。
戯言、とスルーするわけにはいかない。



ついにムラマツキャップはイデ隊員の言い分を取り上げた。
「よし!手分けして今夜から張り込む。
 イデはテレビセンター。アラシは、インターナショナルテレフォンサービス。
 フジ君とオレは本部を張る。いいな!」
「はいっ!」

そのころ、行方をくらましたハヤタ隊員はどこにいたのか。
夢とも、幻ともつかぬ、怪しい現実の中に、ハヤタはさまよっていた。

後編に続く

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