「帝國川崎模型工廠別館附属・自作ラーメン研究所」が目指すラーメンとは?
先ず、一番美味しいラーメン、を言うのは目指しません。ここまで多様化したラーメンを1種類、1杯、に絞る事は出来ません。また、醤油、味噌、塩、と異なる味を、同じ尺度では測れません。出汁や麺の種類を取っても、好みも有りますし、それぞれの良さも有ります。ですから、これが一番とは言切らず、各種類毎にオリジナル・レシピを作成します。
そして、誰でも作れるラーメン、これを目指します。特別な道具や材料は使わず、個人が食道楽で作れる範囲、これが絶対条件です。食材は全てスーパーで購入出来る物を使い、如何に手軽に安く作れるかを重視します。ついでになるべく無駄を出さない、これも大切。
ステップ1 「先ずは、とにかく、作ってみた!」
今回チャレンジしたのは豚骨スープ。長浜豚骨に代表される豚骨100%の物ではなく、豚骨と鶏ガラをミックスしたスープで、家系から鶏油を抜いた感じの物。(ショップ系でありがちなヤツ、と言った方がイメージし易いでしょうか?)
その理由は、澄んだスープにする為には、絶対に沸騰させてはならず、ずっと見ていなければなりません。その様な手間はかけられないので、下処理と最初の灰汁さえ取ってしまえば、後はある程度目を放しても大丈夫な、コレに決定。
今回のスープの材料は、次の通りです。
・鶏ガラ1/2羽分
・豚足1袋
・葱(青い部分のみ2本分)
・人参1本
玉ネギやセロリなど、香野菜がもう少し欲しいところですが、今回は豚骨と鶏ガラをベースにしたパンチの効いたスープ、と言う事で香野菜は控えめにしました。
豚骨ではなく豚足なのは、豚骨が近所のスーパーでは調達出来なかったので、代わりに豚足を購入。
ある程度出汁を取った段階で、肉の部分はお腹に捨てました。また、人参も適当な段階で取り出して、温野菜として食用にしました。この辺りは「無駄を出さない」、と言う基本コンセプトに沿っての事です。
高校時代、進学の事をものともせず、選択科目で「食物」を取っていた、私。そこで学んだ知識から、野菜は全て皮を剥く(今回は人参だけですけど)。
何故かと言えば、スープを取る為に何時間も煮込む訳ですから、いくら洗ったとしても皮に染込んだ農薬まで、スープに出てしまいます。勿論、農薬は実の方にもかなり浸透していますが、それを言出したら食べる所が無くなってしまいます。
マジな話し、輸入物のグレープフルーツなんて、中心部まで農薬が染込んでいます。しかも米国本土向けには使用してはいけない危険な農薬も、輸出用の物には遠慮無く使っています。以前は割りと好きなフルーツでしたが、これを知ってからグレープフルーツを、あまり食べなくなりました…。
スープに良く入れる果実として、リンゴがありますが、これも見栄えを良くする為にワックスがかかっています。
そんな物をボコボコと入れる気にはなれません。
余談が長くなりましたが、次にかえし(醤油ダレ)です。
かえし(醤油ダレ)は、チャーシューを煮た煮汁を使うケースが多いですが、1回分のかえしを作るために、チャーシューを煮るのに足る醤油を使うのは、無駄が多いです。
そこで逆もまた真なり、肉屋から無料で配布している焼豚のタレを貰い、これを醤油ダレのベースにしようと思い立ちました。
しかし、そうそう上手くは行かず、このタレはかなり甘口で、かえし(醤油ダレ)には不向き。今回は市販の麺に附属してきた醤油ダレとこれをミックスして使用、醤油ダレ作りは今後の課題と言う事で、…保留。
また、麺も、市販品を使用。具は、…ありません。麺とスープをダイレクトに味わう為、あえて薬味の葱だけにした、と言う訳では有りません。単に予算上の都合と言うか、冷蔵庫に目ぼしい食材が無かったからです。
上記の材料で、概ね3杯分程度のスープを取りました。
実際に食べてみるとマイルドで、1回目のスープにしては上出来。…と言うのは、かなり甘口の評価ですが、何事もやってみなければ、わからないので、そんなところでしょう。
豚骨と鶏ガラの、どちらに偏る事もなく、この辺りは狙っていた以上の出来栄えです。思っていた通りと言えばそれまでになりますが、やはりショップ系っぽい感じでした。
家庭で普通に作るラーメンとしては、美味しいと言えるレベルだとは思います。ただ、これで「自作ラーメン」と言うのは、いくらなんでも図々しいと思っています。
普通に即席袋麺を作る時でも、豚コマや野菜などを入れたりしますから、今回のケースは、それをチョット大掛かりにした程度です。
店でも、麺は製麺所から購入している所が多いですから、麺の手作りは置いておくとしても、せめてスープを構成する出汁とかえし、トッピングのチャーシューくらいは、自作しないと話しになりません。
また、味に関しても、自己評価としては、上に一通りの具がのっているとして、1杯400円〜450円程度の値段でも、星は、難しいですね…。
これを叩き台にして、次は、自己評価で星一つは取れるラーメン、これを目指します。
さて、前回の反省点も踏まえて、ラーメン作りを考えて直してみます。
・出汁
前回は、スーパーで購入できる素材と言う事で、鶏ガラ、そして豚骨の代用として豚足をベースに据えました。豚足にも骨は付いていますが、割合は低く、肉と骨よりかも、皮の部分が多いです。
実際に出汁を取ってみても、その比率通りに豚骨や豚肉の出汁とは異なり、豚足特有の感じがします。
また、コスト面で見ても、豚足は意外と高く、出汁の素材としては、いささか不適切です。
あの、特有の風味や味に研究の余地はありますが、今回は無理に豚足を使う事はせずに、最も手軽な鶏ガラをベースに据えてみます。
もっとも、その鶏ガラにしても、何故か100gあたりの単価は、胸肉とそう変わりません。むしろ特売になると、胸肉の方が安かったりします。
何となく理不尽さも感じますが、とにかく鶏ガラを下処理して、出汁を取る事にします。
今回は、鶏ガラ1羽分をベースに、野菜は人参、キャベツの芯、玉葱、ニンニク、生姜、葱の青い部分などが、材料です。
更に、旨味としては干し椎茸とその戻し汁、果実はリンゴとバナナを、加えて入れてみました。
バナナは、ちょっと意外かも知れませんが、武蔵小杉の有名店「丸仙」がTVに出た時、スープの隠し味にバナナを使っているのを、思い出しての事です。
ある程度、出汁が取れた頃に(右上写真)、味見をしてみました。何と言いますが、材料が材料だけに、ベーシックな中華料理のスープです。上に料理がのる事を前提にした、中華料理の麺料理のスープとしては、クセがなく、使い易いでしょうが、ラーメン単品用としては、やや力不足と言うか、パンチがありません。
そこで、写真の状態からスープを分けて、二つの方向性で、ラーメンを試作してみる事にしました。
・かえし(醤油ダレ)
以前(80年代中頃)、ラーメン屋を開業するまでのTV番組を観ていた時、その番組の主人公が、チャーシューの煮汁をかえしに使おうと師匠に味見してもらうと、「これをかえしに使うなら、甘すぎる」と言われていました。
確かに、肉屋で無料配布されていた煮汁は、かえしに使うには、あまりに甘すぎました。
前述の番組では、かえしの材料として醤油、味醂、酒、ザラメ、八角などを入れていました。こうして見ますと、日本ソバのかえしと、重なる部分も多いです。
地元(沼津市)の「桃中軒」(沼津駅と三島駅の駅弁業者)が、駅の立食いソバで一時期ラーメンを出していたが、この時、そば汁に香油を足して、ラーメンのスープにしていました。
元々、ウチの地元はラーメンに限らず、そば(うどん)のかえしも、かなり甘口ですが、その分を差し引いても醤油ラーメンとしては、どうよ?といった感じでした。
味は別としても、これをヒントに、市販の麺汁ベースのかえし、と言うのも試作してみましたが、あまりメリットを見出せませんでした。「桃中軒」の場合は、既存の物を上手く利用しての事ですが、今回のケースでは無理に市販の麺汁を使う理由がありません。
チャーシューを煮るに足るかえしの量ともなると、ラーメン数杯分になります。そこでオーソドックスなかえしにして、次回以降のスープに合せて、その都度改良、調整していく事にしました。
・チャーシュー
ほとんどのラーメン屋では、中華料理本来の叉焼ではなく、煮豚に近い物を出しています。出汁を取る寸胴の中で煮て、更にかえしを使って味付けする訳です。長時間煮込んでしまうと、スープは美味しくなりますが、チャーシューその物は不味くなります。
幸い、調味料の配合は前述の理由で参考にし辛いですが、調理時間については、料理本の煮豚などを参考にする事ができます。
豚肩ロース肉(100g98円)を使用。市販のチャーシューを買ったと思えば安いですし、ラーメン以外にも、普通にご飯のおかずになるので、スープよりかは役立ちそうです。
麺は、今回も市販品を使いました。思い返してみれば、90年当時は、近所のスーパーで、中華麺、そば、うどん、きしめんなど、選り取り3袋100円で売られており、学生時代にはお世話になったものです…。
いつの間にか値上がりしていましたが、麺を自作できない以上は、素直に購入する事にしました。
あと、前回トッピングが皆無で、かなり寂しいラーメンになりましたので、今回は色々と用意。
家系ラーメンではありませんが、自分の地元のラーメンには、ホーレン草が、よく入っていました。それに練物はナルトより、蒲鉾の方が登場回数が多かった気がします。薬味の葱は、長ネギではなく、ワケギなのですが、自家栽培のワケギ成長が消費に追いつかず、今回は長ネギを使用しました。
その他にメンマ、ゆで玉子、海苔を揃えました。これだけ揃えば、とりあえず見た目は、それなりになります。
さて、話しは前後しますが、出汁を味見したところ、ラーメン単品としては、やや弱さを感じました。
そこで、現時点の総量が約1L(三杯分)ですので、1回分は、手っ取り早くコクと旨味をプラスする背脂を足して、シンプルな醤油ラーメンを目指す事にしました。
背脂が、普通のスーパーで手に入るか、と言う点ですが、店頭には置かれていません。少量でしたら、背脂とは違いますが、脂身の多いバラ肉などから、取る事も出来ます。
また、釣りをする人ならご存知だと思いますが、蛸釣用のエサとして、ブタの脂身は、釣具屋で入手する事が出来ます。
今回は、一杯分になりますので、コスト面を考慮して、ストックしてあった豚の脂身を使う事にしました。
また、もう少し違った旨味が欲しかったので、平凡かも知れませんが、昆布ダシを加えてみました。
さて、ここまできて、ようやく調理になる訳ですが、中華麺に限らず、茹でる麺全てに言える事は、口に入る瞬間まで、麺はのび続けると言う点です。
冷製パスタや冷し中華など、茹でた後に冷水で締める麺類を除けば、全てに共通した永遠の課題です。
この点をクリアーするには、方法は、一つしかありません。袋に記載されている調理時間から、トッピングをのせて、写真を撮り、口に入るまでの時間を引いて、茹でるしかありません。
そこで盛り付け易いように、写真のように、皿の上に全て揃えて準備。また、ドンブリにかえしと背脂を入れ、湯をはった鍋で温めておきます。
麺を投入してからは、F−1のピット作業のように手際良く、スピーディーにこなして行きます。
自作ラーメン第二段 完成

今回は出汁とかえし、それにチャーシューも自作したので、胸を張って「自作ラーメン」と言えます。
実食!
さて、味の方ですが、上の文でオーソドツクスとか、ベーシックなどと書いていましたが、個別の要素がそうであれば、合わさった味もまた、そうなります。実に無個性と言うか、普通の醤油ラーメンです。
味は別としても、個性的と言う要素に限ってみれば、前作の方が秀でていたかも知れません。
家庭で作るラーメンとしてハイレベルですが、商業レベルで見たら、普通だと思います。これより不味い醤油ラーメンも沢山ありますが、これ以上の醤油ラーメンも沢山あります。
そして、何より本当に普通過ぎて、自分で作る意義が見出せません。極端に自分好みの味など、そう言ったオリジナリティーがないのは、寂しいです。
強いて良い点を探すのであれば、何事も基本は大事です。基本ができて、初めて応用が効きます。それを考えれば、このラーメンを完成させた事で、初めてオリジナル・レシピのラーメンを製作する、そのスタートラインに立てたとも言えます。
ここで再び話しが元に戻ります。約三杯分のうち、一杯分は、上記の醤油ラーメンにつかいました。シンプル路線が故に、極めて平凡な醤油ラーメンが出来上がりました。
それを省みて、残りのスープは、個性的でインパクトのあるラーメン、これを目指す事にしました。
先ず、残った二杯分を再度鍋に戻して、徹底的に炊きました。途中で、骨、肉、皮(脂)のバランスが良い手羽元を8本ほど足し、更に炊き続けました。
数時間後には、見事に乳化した鶏ガラスープが出来上がりましたが、ここまで来たら徹底的にやろう!と思い立ちました。もはや肉などは、全てを出し切りパサパサで、味などまったくありません。
それでも出汁を搾り取るには?と考え、手早く出汁を取るには素材を小さくすれば良く、それを応用する事にしました。
鍋から、鶏ガラなどを引き上げ、フードプロセッサーにかけ、ペースト状に…。
長時間煮込まれた骨は脆くなっており、いとも簡単にペースト状になりましたが、見た目は最悪です。精一杯良く表現して、レバ(のパテ)のような感じです。正直、これを口に入れるのは、勇者と言えます。
折角、上手く乳化した鶏ガラスープに、この不気味な物体を入れるのは、かなり勇気が要りました。最後は、高校時代の先生が話した「河豚の毒」の例え話を思い出し、投入して、再度加熱。
すると、今までまったく出てこなかった灰汁が、一気に鍋の表面にわき立ちました。何か、開けてはいけないパンドラの箱を開けた、そんな感じです。
まぁ、今まで出てこなかった灰汁が出るのだから、旨味も出てくれるだろうと期待して、暫し静観。
流石に、上写真の物体が体内に入るのは抵抗があったので、茶漉しを使って、ダシ汁のみを抽出してみました。
すると、色は、混入する以前より、やや白濁としていますが、なかなか良い感じになっています。全体的に粘度が高くなり、重厚さが感じられます。試飲してみると、豚骨のようにズシンとくる旨味はありませんが、マイルドで甘味の強い、独特なスープになりました。
これで豚骨が加われば「横濱家」、もっと鶏の癖が強くなると「天下一品」、そんな感じです。スープに重量感や粘度が欲しい時は、この粉砕方法は、使える気がします。
そのままでも良いのですが、個人的には粘度がきつい気がしましたので、昆布ダシ割って使う事にしまた。
この出汁に合うかえしですが、旨味は十分ですから、あまり小細工をせずに、ストレートな醤油味に決定。トッピングは、薬味の葱を、やや多めに用意しました。
完成

さて、いよいよ実食!
先ずは、注目のスープですが、素直に「美味い!」と言えます。やはり昆布出汁で割ったのは正解でした。マイルドでクリーミーながらも、しつこさや重さはなく、ライトな味わいです。
基本的には前作のスープの形態が変わっただけなので、ベースが鶏ガラと野菜だけに、あっさりとしています。ただ、前作はそれで終わっていましたが、適度な濃度と粘度が、ちょうど良い加減になって舌に絡みます。
薬味の葱を多めにしましたが、これは蛇足でした。見た目に反して臭みは無いので、薬味の葱は、飾り程度で十分でした。
例えるなら「天下一品」を、もっと飲み易く、万人受けし易い味にした。そんな感じのスープです。
この味なら、贔屓目抜きにしても、商業レベルで通じます。自分で作ったのですから、味の濃さなどが好みに合っている、と言うのもありますが、掛値なしで星一つ以上は付けられます。価格や量、トッピングなど費用対効果が良ければ、星二つを付けても良いと思える味です。
このラーメンですが、スープの材料は鶏ガラ1羽分と手羽元8本、野菜、果実など、全て近所のスーパーで購入しています。麺も、市販品を使っており、基本コンセブトに沿った作り方をしています。
鶏ガラだけに、豚骨のように何時間も炊く必要もなく、最初からこのスープを目指して作れば、もっと時間も短縮できると思います。フードプロセッサーにしても、特別と言うほどの道具ではありませんし、擂鉢などでも代用できると思います。
材料の継足しや途中からの路線変更などもあり、作り方として明確なレシピが出せてはいませんが、今回のこのラーメンを「川模廠オリジナルレシピラーメン第一号」とする事にしました。
※ホームページ移転時に、更新した分を置き忘れてしまい、長らく古いままのページでした…。漸く、バックアップディスクの中から、更新後の原稿と写真を発掘、再度、アップしました。