ステップ5 「バリエーションを広げようT」

家系ラーメン編

 麺やスープなど、基本となる要素に目途がたったところで、得られたノウハウを基にして、更にバリエーションを広げたいと思います。 

 先ず、豚骨醤油のバリエーションの一つである、家系ラーメン。数的にも、独立した一つのジャンルと言えなくもないですが、広い意味では豚骨醤油の中に含まれます。
 第一弾以来、豚骨醤油は最も経験のあるジャンルですし、個人的にも好きな家系は、是非ともやっておきたいラーメンです。

 家系ラーメンを作るにあたり、得られたノウハウを生かして、自分に合った家系を作りたいです。家系ラーメン「我が家」、と言ったところでしょうか?

 麺作りからになりますが、家系の麺と言えば太麺で、ややもちっとした食感が特徴。調べてみると家系の製麺所で有名な酒井製麺は、元々うどんを得意としていたらしく、その辺りのノウハウが生かされているようです。
 前回、麺の製作過程を再検討した折、奇しくもうどんを研究しているので、好都合と言えます。

 そこで家系仕様の試作麺は、重曹を減らし、塩を増やして、うどんの要素を取り入れる。という方向性に設定。うどんと中華麺の違いは、かん水(重曹で代用)の有無が大きく、中華麺特有の食感はこれに由来する事は、前回書きました。
 更に、塩の割合を変えた2タイプを作り、比較してみる事にしました。

[家系仕様試作麺](一人前約160g) 
・強力粉 85g
・薄力粉 30g
・水   46cc
・重曹   1g
・塩   2.5g/5g 

 うどんは強力粉100%ではなく、中力粉などを使用して、ややグルテンの量を減らしています。そこで強力粉に薄力粉を3割弱混ぜてブレンドする事で、もっちりとした食感を出す事を狙いました。

 そして、もう一つの違いは塩の割合です。今回は、重曹の割合は同じにして、塩の割合を変えて、その違いを見てみるのも、目的の一つです。
 前者は、中華麺にしてはやや多めと言った感じ、後者は、ほぼうどんに近い比率となっています。

  

 次にスープですが、固有の店を模倣するのが目的ではないので、ある程度はオリジナル色を出して行きます。基本コンセプトとしては、やや豚骨を抑え目にして、鶏ガラの比率を高くする。また、野菜や果実を足す事で、ライトな家系を目指す。と言った感じに設定しました。

 豚骨の下処理などは従来通りで、前回の手法で豚骨から出る油を取り除く為に、時間差で素材を入れていました。

 材料は、豚骨1/2本(約200g)、鶏ガラ1羽(約300g)、手羽先の先の部分8本分、大蒜2欠片、生姜スライスしたもの2枚、葱の青い部分15cm程度、キャベツの芯2枚分、人参のクズ(1本分から捨てる部分)、リンゴ1切れ、です。 

 前回も書きましたが、業務用の大きな寸胴と家庭用の圧力鍋とでは、サイズが違い過ぎます。寸胴に、リンゴが丸ごと一個入っているからと言って、そのまま真似しては、明らかに過剰となってしまいます。
 足りなければ後から入れれば良いが、入れて過ぎは取り返しがつかないので、少なめで調整していく事にしました。

 ちなみに生姜は、1〜2oの薄さで、10円玉程度の大きさですが、これでも香りが強くて、途中で取り出しました。

 前回同様、多めの水で炊いてゆき、最終的には3回分、1L程度のスープを取りました。

 材料のうち、手羽先の先の部分は、油が欲しかった為です。鶏皮は、近所のスーパーでも売っていますが、常に店頭にある訳ではないので、もし買えなかった場合に、ある程度はスープから鶏油を供給してもらう為です。

 右上の写真は、3回分のスープを取り分けて、1回分を、鍋に戻した状態です。豚骨以外は、全て崩壊しており、見ない方が幸せです…。

 左横は、ほぼ1回分のスープをビンに取り分けた物です。オリジナルレシピのかえしと、仲良く並んで次の出番を待っています。

 

[オリジナル・レシピ かえし](醤油味) 

 醤油300cc、味醂風調味料100t、酒100t、砂糖2g、塩3g、干椎茸1枚、カツオダシ(顆粒3g)、昆布ダシ(顆粒5g)、貝柱ダシ(顆粒3g)、オイスターソース2g、大蒜1/2欠片、生姜スライス1枚、八角1切れ、葱5p分、山椒少々。 

 醤油に、干椎茸を一晩漬けて旨味を出しておきます。鍋に、酒を入れて(味醂の場合は味醂も)、煮切ってアルコール分を飛ばします。
 これに醤油などを合せて、馴染ませます。塩と砂糖は、味を見ながら、加減して入れるようにします。

 八角は、香りが強いので、入れて直ぐに出さないと、特有の香りに支配されてしまいます。ただ、ないと寂しいので、本当に隔し要素の感覚で使います。

 顆粒ダシを多く使っていますが、可能であれば鰹節や昆布から、直接ダシを取った方が良いと思います。これは主に費用と手軽さの関係で、特別な理由はありません。

 かえし作りのポイントは、味見をした時、「美味いけど、味が濃い」と感じれば、OKだと思います。(個人的な尺度ですが…)

  

 いよいよ調理ですが、自家製麺なので、太さも自由に出来ます。家系と言う事で、自宅から最も近くに在った「濱辰家」の極太麺が懐かしくなり、一方は超極太麺にしてみました。
 また、結果的に鶏皮が調達できたので、自家製の鶏油も作りましたが、スープに手羽先から出た油が多いだけに、少なめにしておきました。 

 オリジナル・レシピ 家系ラーメン
 

 注目の極太麺ですが、もっちり感はバッチリ! コシの強さや歯応えは、十分です。うどんではなく、あくまで中華麺と言える、ギリギリのところだと思います。
 一方、何時も通りの太麺にした方は、重曹を減らして、塩分濃度をうどん並に上げた物ですが、食感としては大きな違いはありませんでした。やはり、ある程度の太さがないと、あの食感は得られないのでしょう。
 また、うどんにしても、冷しで食べれると強いコシや歯応えのある店でも、かけ(温)では、それ程でもありません。つけ麺など、一度冷水で締めれば違いは大きいかも知れませんが、ラーメンの麺として違いを出すのは、難しそうです。

 スープがライト系なので、やや麺の存在感が勝ち過ぎていますが(極太麺の場合)、個別の要素は悪くありません。製麺した時点で、ある程度は予想していましたし、右の通常の太麺では相性は良かったので、問題ありません。
 そして、家系のスープには欠かせないですが、やはり鶏油が効いています。見た目は油が多いようにも見えますが、下処理を確りしているので雑味もなく、クリアーで、意外にすっきりとした味わいです。
 確かに、豚骨が少ないので、ガツンとくる旨味や重量感はありませんが、もともと意図も違いますし、今回の狙いはライトな家系ラーメンです。

 個人的な好みもあり、醤油味は、普通の家系に比べて薄めです。家系と言う事でトッピングは定番のトリオにしましたが、この味ならば、箸休めのホーレン草は無くても大丈夫です。(勿論、あっても美味しいけど) 

 総括としては、かなりライトな家系ラーメンで、家系好きの人によっては「美味しいけど、家系では、ない」、と言われそうな感じです。自作の利点として、自分好みに出来るのもありますから、自己評価ではかなり満足度は高いです。
 豚骨のガツンとくる旨味と強めの醤油味、と言う家系ラーメンを出す店は多いですが、こう言うライトでありながらも美味しい家系は、意外と少ないです。

 この味のラーメンを出している店があったら、結構、通っちゃうかも知れませんね。一杯が600円〜650円だと仮定して、スープは文句無しで三つ星クラスです。ラーメン全体の評価としても、十分に星二つは行けますね。三つと言わないのは、ここで三ツ星を付けてしまったら、終わってしまいそうだからです。

 オリジナル・レシピによる家系ラーメン。ライトテイストならば、これで完成形と言っても、過言ではありません。「川模廠オリジナメレシピラーメン 第三号 家系ラーメン」完成です!

 

 

 

塩ラーメン編   

 さて、家系ラーメンを作った時、約3回分の出汁を取りましたので、残り一回分は、新たなるジャンルとして、塩ラーメンに挑戦してみる事にしました。

 自分にとって塩ラーメンと言えば、「サッポロ一番・塩ラーメン」「日高屋のタンメン」と言った程度で、店で食べる回数は、最も少ない類のラーメンです。

 実食の回数も少なく、研究が最も遅れている塩ですが、やはり作ってみなければ、始まりません。

 先ず、かえし(塩ダレ)ですが、塩ラーメンとは言っても、本当に塩味を出している店は、皆無と言って良いでしょう。純粋な塩は、しょっぱい(塩辛い)だけで、風味も、旨味もありません。

 ですから様々な風味、旨味を足して、塩ダレを作る訳ですが、それ故に店の個性なども出易いと言えます。

 とりあえず旨味と風味の素になりそうな物として、干し貝柱、鰹、昆布などのスープ、オイスターソース、干し海老の戻し汁など、色々と入れてみました。

 で、完成したのが、右の写真ですが、色が濃くなってしまい、あまり塩ダレっぽくありません。出汁と並べても色がほぼ同じで、この時点で、もう完成した時の色合いが分かります…。

 試作した塩ダレに使い回しの出汁では、流石に「仕事してないだろ!」と言われそうなので、トッピング用として鶏ハムも作ってみました。あくまでイメージなのですが、塩ラーメンと言うと白っぽい色(或いは透明)、そして鶏肉が合いそうな気がします。
 ただ、同時に澄んだあっさり系のスープと言う印象もありますが、使い回しの家系仕様の出汁ですから、純粋な塩ラーメンと言うよりかは、塩豚骨といった感じになるのは、否めません。

 自家製のセージとローズマリーを使い、風味をつけて、仕上げました。(完成は下写真)

 

 セージは殺菌作用が強く、加工肉との相性が良いハーブです。加工肉の代表格であるソーセーゾですが、その名前の半分は、このハーブに由来してます。
 作り方その物は、よく知られた鶏ハムの作り方と同じです。成形、過熱する際にラップでくるみましたので、ややしっとりとした仕上がりになっています。

 また、麺の方も、今まで加水率を下げる方は色々と試してきましたが、上げる方はあまり研究してこなかったので、今回は多加水麺を作り、使ってみました。

 で、完成したのが、下の写真です。見た目は、それっぽく出来ていますが…

試製 豚骨塩ラーメン
 

 実食!

 してみたのですが、失敗と言わざるを得ません。

 先ず、塩その物の味がせず、塩味ではなく、旨味あじになってしまいました。既に、十分な旨味を出汁が持っているのに、更に塩ダレからも旨味が供給され、結果として旨味過多なスープになってしまいました。
 塩は調節が難しいので、辛味を足して食べてみましたが、正直そこそこと言ったレベルです…。

 実食の回数も多く、明確なビジョンを持って臨んだ家系とは異なり、単に塩味にすると言う以外は、コンセプトもはっきり定めないまま、作った結果でしょう。

 

 

 

 

味噌ラーメン編

 塩で失敗したから、次は、味噌。と言う、安易な発想ではありませんが、少なくても前回の失敗は生かすつもりでいます。

 自分の中でベストな味噌ラーメンと言うと、赤味噌なら「蘭々」、白味噌なら「青葉」です。
 共に地元沼津市のラーメン屋で、「蘭々」は80年代、「青葉」でも90年代に、それぞれ閉店しています。 

 当時としては、他にあまり知らなかったと言う事もあるし、思い出として美化されているところもありますが、自分にとっての二大味噌ラーメンなだけに、自作するにあたっては、その要素を採り入れたいと思っています。

 さて、この二店に共通して言えるのは、ラーメン専門店ではなく、何処にでも在る街の中華屋である事。
 よって、醤油や味噌など、各種ラーメンの出汁は共通で、かえし(味噌ダレ)のみで、味を変えています。

 そこで先ずはオーソドックスな中華の清湯を作ります。材料も、一般的な物を選び動物系は、鶏ガラと豚骨。海産物は鰹節、昆布、煮干。野菜は干し椎茸、葱、玉葱、キャベツの芯、人参。果実はリンゴ。香味野菜としては生姜とニンニクです。

 これを静かに炊きます。

 絶対に沸騰させないよう注意して、数時間後、先ずは基本的な清湯を取りました。一杯分にプラスして研究用も合わせて、約450tを、分けます。

 

 この清湯は、醤油ラーメンや中華料理のベースとしては良いですが、味噌ラーメンの出汁としては、やや弱いです。
 また、目指す味噌ラーメン用としても、ちょっとイメージからは離れています。

 もう少し強い動物系の旨味と香りが欲しいので、寸胴から鶏ガラと豚骨以外を取り出し、強火で炊き上げます。

 先程までは見事な透明度でしたが、わずか数分で、白濁とした出汁に変わりました。取り出してビンに移した物を見ると、一目瞭然です。
 それにしても、右は、見事に乳白色です。いっそ、長浜系の豚骨ラーメンに切替ようか?、と思ってしまいます。

 次に味噌ダレの方ですが、赤味噌と白味噌で、ベースとなる味噌が違います。今回は、個人的に好きな白味噌仕立にして、「青葉」のような味噌ラーメンを目指します。

 さて、味噌に限らず、醤油や塩にしても、調味料をそのまま使用している訳では、ありません。色々な旨味や風味の素となる材料を、タレの中に入れる訳です。

 白味噌仕立てと言う事で、出来る限り色を薄く仕上げたい、と思っていると、良い素材がありました。前回、旨味過多になり過ぎて失敗した、塩ダレです。
 確かに塩味に乏しく、塩ダレその物としては、失敗でした。しかし、味噌は、調味料の中でも、味が濃いものです。それに、通常の量で使えば旨味過多ですが、残った量を、味噌と合わせて使う分には、ちょうど良いと考えました。

 白味噌大サジ2杯半に、甘味として砂糖を加え、塩ダレの残りで伸ばします。また、隔し味として、コチュジャンを、ちょっと。味見してみると、多少の物足りなさもありますが、感じは悪くありません。

 出汁と味噌ダレが出来ましたので、これに市販の麺を合わせて、完成です。 

試製 味噌ラーメン

 実食!

 先ずはスープですが、良く出来ていると思います。味噌ダレの段階で、物足りなさがありましたし、その原因も分かっていましたが、今回その点には目を瞑る事にしました。
 それ以外は、ほぼ思い通りに仕上がったと言えます。味噌の味と香りは確りとしていながらも、それ単独の味に染まる事なく、出汁もちゃんと立っています。白味噌特有の甘味もありながらも、嫌味な甘さになる事なく、全体的に優しい感じで纏めています。 

 物足りなさについてですが、一点は肉の旨味。味噌ダレを作る時に、挽肉などで旨味を足せば済む事なのですが、一杯分に使う味噌ダレの為に、挽肉を1パック買うのは、コストで見送る事にしました。
 もう一点は、ニンニクの味と香りです。「青葉」は、味噌に限らず、結構ニンニクが味と香りのポイントになっていたのですが、これを食べた後で仕事に行く事を考えると、ニンニクの使用は控えざるを得ませんでした。

 この二点については、ある程度事前に結果が予測できたので、大きなマイナスとは思っていません。

 もう一つ「青葉」の味噌ラーメンの再現度合いですが、如何せん最後に食べたのが22年前の事ですから、「確かに、こんな感じだったと思う」、と言う表現になってしまいます。

 自分好みに仕上げたと言うのもありますが、商業レベルで見ても、普通に美味しい味噌ラーメンだとは思います。ただ、普通に美味しいだけで、これと言って光るものもなく、平凡と言えば平凡です。
 ただ、塩や味噌は特にその傾向が強いですが、美味しい、或いは有名な店のラーメンになると、独創的過ぎて「確かに塩かも知れないけれど」、「これって味噌なの?」と言った感じになります。
 この辺りは、普通や平凡を逸脱しようとすると、どうしても差別化を計るが故に、疑問符が付く感じなるは、否めません。

 さて、総括になりますが、味噌味の試作としては、十分な結果が得られたと思います。次に味噌ラーメンを作る時は、赤味噌をベースに、「蘭々」の味噌ラーメンを目指したいです。

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