イラク戦争から見た のアメリカ・ろな日本
−平和を守るための「整憲論」(第九条考え直し論)-



■4、ブッシュ個人の問題■



E:
実は、僕はブッシュ個人が軍需産業と具体的にどの程度関わっているかあまりよく知らないんだ。それでも新興のカーライル・グループを介して関わっているのは間違いないだろう。

 カーライル・グループというのは、1987年創業の投資会社だが、設立後数年して起きた湾岸戦争のときに、軍事産業によって巨大な利益を挙げ、アメリカの軍事関係の投資で絶対的な地位を占めるようになった。

 ところで息子ブッシュは父のコネクションで、1989年、カーライル・グループの理事に就任し、1994年までその地位にいたらしい。と言うことは、理事をしていた期間に当の湾岸戦争が起こっているから、かなり深く軍需産業に関係しているように思うよ。

 それに、ブッシュの父親はCIAの長官を勤めたこともあって、彼には強いコネクションがあるのは疑いない。アメリカの資本主義は「人脈資本主義」とも言うからね。  

H:軍需産業はもういいよ。ブッシュも深く関係していることは想像がつくさ。もう一度イラク戦争に戻ってみないか?



●イラク戦争への道●



H:ところで、前回の大統領選(2000)の演説でブッシュは「米国が世界でリーダーシップを発揮することが求められる。わが国は、いまや世界で唯一の超大国であり、われわれは平和を維持し自由の拡大を促進するため、持てる力を強力かつ思いやりのある方法で使わなければならない…」「わが国は繁栄しなければならない。…繁栄の目的は、除外される者、取り残される者がないようにすることである」と語り、選挙戦術として共和党中道の「思いやりのある保守主義」を国の内外に宣言している。

 確かに覇権主義の論調も強いが、ともかく、この「思いやりのある保守主義」という優しい思想?の持ち主が何故イラク攻撃を始めたのか、ちょっと不思議だろう?

E:
別に不思議じゃないよ。勝つための選挙の公約だからね。状況が変われば中身も変わるさ。

 民主党に対抗するのに、こわもて一本では票は集まらない。民主党の得意分野、社会保障や教育問題にも目配りして…。  

H:ということは、ブッシュの本心は保守右派なんだが、選挙戦術として中道を装ったってことか?

E:
いや、そうともいえないよ。もしかしたら本気でその頃「思いやりのある保守主義」を考えていて公約したのかもしれない。

 ブッシュはもともと草の根保守派なんて言われていたんだ。今でも結構な額を社会福祉に出しているんだぜ。これは財政赤字が膨らむ一つの原因にもなっている。もっとも財政赤字の中心は軍事費だし、減税の影響もあるには違いないが。ともあれ、そういうわけで矛盾しているとばかりはいえないよ。
 まあ、それでも政権獲得時から強引に政策を推進し、共和党穏健派からもかなり批判されていて、人気も低下していたが。   

H:ともかく人気が低迷しているとき、2001年9月11日に「無差別テロ」が…。そこで共和党極右のように一気に発言が過激になり、戦争論をぶった。

E:
形としてはそうだし、事実、無差別テロはブッシュにとっても国家存亡の危機に映ったのは否定できないだろう。猛烈なショックだったと思うよ。

 でも、政治家は人気が第一だから、それを支持率につなげたかったのも事実だろう。そして先にも言ったが、2001年10月7日のアフガニスタン空爆を介して経済が上向きになるんだ。つまり、「軍産複合体」の効用、軍需産業の活発化と、ミサイル生産などのためにそれまで沈滞化していた半導体産業(IT産業)が活気を見せ始めたわけだ。そこへ不祥事の発覚、支持率の低下…。
 そこで突如イラク戦争へ…。対イラク強硬姿勢を示して以降のブッシュの支持率が一気に90%にまで上がることになる。

H:今、お前は突如と言ったが、突如というよりは、ブッシュは、2002年1月29日「一般教書演説」で “イラク、イラン、北朝鮮は悪の枢軸国”発言をし、2002年9月20日には「アメリカの国家安全保障戦略」報告(ブッシュ・ドクトリン)を発表し “先制攻撃も辞さない”と語り、ついに2003年3月19日には「イラク戦争」へ突入だろう?

E:
そうそうその通り。それに、大統領のスピーチライターであるネオコンのデヴィド・フラムによって悪の枢軸国にはイラク・イラン・北朝鮮が名指しされるんだが「イラク、イランだけだと何でもアラブ(イスラーム社会)は悪だ」とアメリカが見ているという印象が残り、それを避けるため北朝鮮を加えた、なんて裏話もある。まあ、かなり苦慮した形跡は窺(うかが)えるけれどね。

 ともかく、イラク攻撃のシナリオはすでに作られていた…。 そして、イラク攻撃は大統領就任前から提起されていたらしいということは、これまでの話にもあったわけで、もしかしたら、同時多発テロはイラク攻撃のための絶好のチャンスを提供したともいえる。だから、攻撃理由は何でもよかった!

H:それに人気上昇は今年の大統領選(2004・11)に向けてとりあえず弾みをつけた。人気を落とさないためにもアメリカ主導でイラク戦争に見事に勝利しなければならなかった。今となっては「大義の喪失」で結局は失敗に終わったわけだが…

E:
そうだね。それはともかくとして、政界には政界の相対的自立性があるわけで…。選挙に勝つためにどう動くか、ということ。共和党の最大勢力であるユダヤ票、キリスト教右派票を取り込まなくてはならないわけだ。
 ちょっと古いが、1995年に「アメリカ人の18%が『あなたは宗教右派か』に『イエス』と答えている」という調査結果が出ているらしい。大統領にとっては人気の問題はことのほか重要だから、彼らをどうやって自分の人気(票)に取り込むか、これがイラク戦争への道を拓いた一つの理由ではあるだろう。

 とはいえ、その他にもブッシュにとっての個人的経験がイラク戦争の「遠因」ではないかという意見もある。

H:へえー、それは何だい?



●ブッシュと石油産業●



E:
先にも触れたが、ブッシュの故郷はテキサスだ。そしてそこテキサスでブッシュは石油会社を経営していたことがある。

 ところが1986年に彼が経営する石油会社(スペクトラム社)が破綻してハークン・エナジー・コーポレーションに合併されるという事態が起こったんだ。その後ブッシュはハークンのコンサルタント(1986〜1990)になったが、自社の破綻はブッシュ個人にとって強烈だったのではないかと…。

 経営破綻後のブッシュは、酒びたりになり、アル中寸前でキリスト教原理主義の宣教師、ビリー・グラハムの救いによって危うく立ち直ることができたという話もある。まあ、それだけショックが大きかったということなのさ。

 それはともかく、会社破綻の原因は、1980年代初めから石油価格が下がり始め、1985年にサウジアラビアだったか、中東のどこかの国が突然、原油増産をした結果、原油価格の急落、アメリカ石油会社の危機へと繋がっていったことによるらしい。

 しかし僕の言いたいのは、経営破綻への個人的恨みってことじゃないよ。いくらオバカなブッシュだって、自分が関わってきたフィールド(石油産業)が如何に脆いかということは気にかかっていたんじゃないかと思うんだ。これはただの推測なんだが。

H:つまり、イラクの政情不安定がアメリカの石油産業の混乱要因になりうると…? 石油産業だけじゃない。石油は今ではどんな産業にも絶対必要なものだからな。 

E:
まあ、今の話ではちょっとブッシュを買いかぶりすぎているかもね? ブッシュはそこまで深く考えていないだろう。もっといえば、ブッシュ家は石油産業とは直接利害関係があるってことさ。父ブッシュはロックフェラー財閥と関係を持ちザパタ石油経営者として私財を蓄えたらしい。

 それに、ブッシュだけじゃない、ネオコンの他の連中も同根だよ。チェイニー副大統領はテキサスの石油関連装備会社ハリバートン社長(1995〜2000)だったし、ライス大統領補佐官はシェブロンの監査役(1991〜2000)、エヴァンズ通商大臣は石油会社トム・ブラウン社長(1979〜2000)だったし、ノートン内務大臣は複数のエネルギー会社の顧問弁護士やコンサルタントをしている。こうしてみんな蝿のように甘い汁(利益)に群がっているんだ。


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