□技術メモ - 熱力学 ※このページは熱力学について記述しています。 このページでは管理人が高校の物理および大学の教養課程において、 公式を暗記しただけで内容を理解していなかった熱力学について、 放送大学の講義の視聴、およびWebの参照により調べたことについて記述しています。 このページの内容は正確であることを保証しておりません。 ----------------------------------------------------------- ○熱力学について 熱力学は熱エネルギーから運動エネルギーへの変換、さらに運動エネルギーから電気エネルギーへの変換、 および変換効率について述べているので、産業革命と密接な関わりがある。 ニュートン力学および微分積分学は、ニュートンおよびライプニッツが構築した分野で理路整然とした印象があるが、 熱力学は研究者の数が多く、泥臭い議論も多いので、煩雑で分かり難い。 しかしエントロピーなどの物理学における重要な概念も熱力学から導出されるので正しく理解したい分野である。 -------- ○1モルとは? アボガドロ数とは? 12グラムの炭素12に含まれる元素の数をアボガドロ数といい、 アボガドロ数と等しい粒子(原子や分子)を持つ系の物質量を1モルという。 1969年にアボガドロ定数に名称が変更された。 Na = N(個数) / n(モル数) アボガドロ定数 : Na = 6.02214086 * 10^23 (単位 : 1/mol) -------- ○ボイルの法則 温度が一定の理想気体では、P(圧力)とV(体積)の積は一定になる。 ※注意:熱力学においては、熱、体積、圧力の変化は微小な変化の連続と考える。 P1 * V1 = P2 * V2 = 一定 -------- ○シャルルの法則 圧力が一定の理想気体では、V(体積)はT(温度)に正比例する。 V1 / T1 = V2 / T2 = 一定 -------- ○理想気体の状態方程式 熱力学において重要な式である理想気体の状態方程式は以下の通り。 PV = nRT (n:モル数) これはボイル・シャルルの法則より導出される。 理想気体において、温度は一定のまま、系が状態1から状態2に以下のように遷移するとする。 状態1(T1,P1,V1)→状態2(T1,P2,V2) このとき、ボイルの法則により P1 * V1 = P2 * V2 ----(1) また、圧力が一定のまま、系が状態2から状態3に以下のように遷移するとする。 状態2(T1,P2,V2) = 状態3(T3,P2,V3) このとき、シャルルの法則により V2 / T1 = V3 / T3 ----(2) (1)(2)の2式よりV2を算出して、V2を消すと以下の通り。 P1 * V1 / T1 = P2 * V3 / T3 状態3におけるP3は、P2と同じなので、 P1 * V1 / T1 = P3 * V3 / T3 = 一定 変換すると PV = nRT (n:モル数, R:モル気体定数) -------- ○熱力学に登場する人物 ※下記以外にも多く存在するので注意。 ※ブラック、ワット、ケルビンはグラスゴー大学出身。グラスゴーは産業革命と関わりが深い。 ボイル、ブラック、ワット、シャルル、ゲイ=リュサック、カルノー、ジュール、 ケルビン卿(ウィリアム・トムソンと同一人物)、クラウジウス、ボルツマン、マックスウェル -------- ○気体分子運動論 理想気体の状態方程式において、Vは体積なので幾何学的に定義でき、 P(圧力)は単位面積当たりに受ける力として力学的に説明できるが、 熱の正体が不明である。 熱の正体については古代から長年に渡って議論されてきた。 分子の実在性が確立されたのは1900年代前半であるが、1700年代前半にはすでにベルヌーイが、 気体は激しく運動している多数の粒子からなる、という仮説を立てて、気体分子運動論について述べている。 ここでは分子の運動について考察することで熱の正体について考察する。 辺の長さがa,b,c の直方体において、質量 m の分子が1つあるとする。 この分子は壁にぶつかると同じ速度で逆方向に反発するとする(完全弾性衝突) この分子の速度ベクトルをVec(U)とすると、 Vec(U) = Vec(Ux, Uy, Uz)となる。 速度の2乗は以下の通り。 U^2 = Ux^2 + Uy^2 + Uz^2 X方向のみに注目すると、運動量は mUx → -mUx と変化するので 運動量の変化 Δpxは Δpx = 2 * m * Ux 行って戻ってくるまでの時間、つまり周期をΔTxとすると、 Ux = 2a / ΔTx となる。書き換えると ΔTx = 2a / Ux 1つの分子が壁に加える力は、力の定義 f = m * a より f(1,x) = m * a = 時間あたりの運動量の変化 = Δpx / ΔTx = (2 * m * Ux) / (2a / Ux) = m * Ux^2 / a 分子が壁に与える圧力は、単位面積あたりの力なので、 P(1,x) = f(1,x) / bc = m * Ux^2 / abc = m * Ux^2 / V P(1,x) * V = m * Ux^2 ここで右辺は変化しないので、これはボイルの法則を示している。 つまりボイルの法則は粒子が1つの時にもあてはまることになる。 同じ直方体において、質量 m の分子が N 個ある場合を考える。 i番目の分子の速度のx成分を Uxi とすると、 N個の分子すべての圧力 Px は以下のとおり。 Px = Σ(i=1→N)( P(1,x)i ) = Σ(i=1→N)(m * Uxi^2 / V) = (m/V) * Σ(i=1→N)(Uxi^2) ここでX成分の速度の2乗の平均を以下とする。 ave(Ux^2) = Σ(i=1→N)(Uxi^2) / N これを適用して Px = m * N * ave(Ux^2) / V Px * V = m * N * ave(Ux^2) となる。 気体は等方的であり、分子の運動はx,y,z の各成分が独立しているとすると以下が成り立つ。  P=Px=Py=Pz  ave(Ux^2)=ave(Uy^2)=ave(Uz^2)  ave(U^2) = ave(Ux^2) + ave(Uy^2) + ave(Uz^2)  ave(Ux^2) = 1/3 * ave(U^2) これを適用すると Px * V = m * N * ave(Ux^2) は以下に変換できる。 P * V = m * N * ave(U^2) * 1/3 ----(4) 理想気体の状態方程式 PV = nRT と組み合わせると 1/3 * m * N * ave(U^2) = n * R * T ボルツマン定数 Kb = R / N0 とすると (N0 はアボガドロ数) N(分子数) / n(モル数) = アボガドロ数 = N0 なのでこれを適用して 1/3 * m * ave(U^2) * N0 = R * T 1/3 * m * ave(U^2) = Kb * T 両辺を3倍して2で割ると 1/2 * m * ave(U^2) = 3/2 * Kb * T ave(U^2) = ave(Ux^2) + ave(Uy^2) + ave(Uz^2) なので 1/2 * m * ave(Ux^2) = 1/2 * Kb * T ----(1) 上記は Uy, Uz についても同様である。 これより温度 T は分子の熱運動エネルギーに比例することが分かる。 1分子1方向(自由度)あたりの運動エネルギーの平均が同じになる関係を 「エネルギー等分配の法則」という。 -------- ○気体の内部エネルギーについて ここでは高校の物理で登場した公式、 気体の内部エネルギー Ui = 3/2 nRT を導出する。 系における内部エネルギー Ui = 系における力学エネルギー = 運動エネルギー + ポテンシャルエネルギー である。 (本当はポテンシャルエネルギーという概念について考慮するのが正しいらしい) ポテンシャルエネルギーは分子間の相互作用がある場合は考慮の必要があるが、 理想気体には相互作用はないと仮定するので考慮する必要はない。 ここで、1分子の運動エネルギーをx方向のみについて考える。 上記の(1)式は以下の通り。 1/2 * m * ave(Ux^2) = 1/2 * Kb * T 3方向について考慮して 1/2 * m * ave(U^2) = 3/2 * Kb * T 気体全体の運動エネルギーは分子数が N なので Ui = 1/2 * m * N * ave(U^2) = 3/2 * N * Kb * T となる。 ----(2) (4)式は以下のとおり。 P * V = 1/3 * m * N * ave(U^2) ここで気体の圧力は P = 1/3 * m * N * ave(U^2) / V ----(3) (2)(3)より m * N * ave(U^2) を消すと m * N * ave(U^2) = 2 * Ui = 3 * P * V PV = nRT を適用して Ui = 3/2 nRT となる。 -------- ○気体定数とは ボルツマン定数とは 理想気体1mol の状態方程式 pv = nRT に含まれる普遍定数 R を気体定数、もしくはモル気体定数という。 小数点以下第4桁以下は資料によってバラツキがあるようだ。 モル気体定数 : R = 8.314 (単位 : J / K*mol) 分子1個あたりの気体定数をボルツマン定数という。 ボルツマン定数は以下の通り。 k = 1.38041 * 10^(-23) (単位 : J / K) したがって、ボルツマン定数にアボガドロ定数を掛けるとモル気体定数になる。 モル気体定数 : R = Na * k -------- ※以下、熱力学について議論を続けます。 http://3rd.geocities.jp/tnoguchislg/math/thermodynamics2.txt