♂ アル・マディオ … 16歳。大国デルトリクで炭鉱夫(ディガー)の仕事をしている。まっすぐな性格。

♀ フィーナ … 14歳。気立ての良い娘でアルたちの住む街ファーレンでは人気者だったが、隣国ジオードの軍人に撃たれ死亡した。

♀ ジェミニ/??? … 16歳(?)明るく天真爛漫な性格、悪く言えば幼い。人工精霊と呼ばれる存在で、その意識はサテライターの中にある。主な役目は操縦者のサポート。

♀ ルティア・シュタイン … 16歳。デルトリク王都オーガンの技術者。まだ若いが技術・知識面ではオーガン随一との呼び声も高い。性格はいわゆるツンデレ。

♂ モール・ウルフ … 36歳。熟練のディガーで、アルに親方と呼ばれている。口調は乱暴だが面倒見の良い性格。

♂ ジロン・タル … 鑑定屋。高齢のため腰を痛めており、いつも店にいる。

♂ ヴィルヘルム・グラン … 年齢は30前後。ジオードの軍人。階級は大佐。紳士的な物腰だが裏表のありそうな人物。

♀ シエラ・ザード … 23歳。ジオードの軍人。階級は大尉。士官学校時代に優秀な成績を収めヴィルヘルムの右腕として働く。彼には幼い頃に恩があるらしい。

■キャラ・設定資料■



N 「その昔、人間の最も愚かな行為によって、地表の95パーセント以上が海に沈んだ。
   生き残った人々は、残された大地から過去の遺物を掘り起こし、糧とした。

   デルトリクで炭鉱夫(ディガー)を営む少年、アルは、ある日謎の巨大な卵を掘り当てる。
   卵の中身はロストテクノロジーの集合体、サテライターと呼ばれる機動兵器だった。

   だが発見の喜びも束の間、サテライターを奪取せんと、隣国ジオードの軍人が襲い掛かる。
   土壇場で謎の声に導かれたアルは、苦戦の末にこれを撃破することに成功した。
   だが勝利の代償は、少年にとってあまりにも大きすぎた」


---------鑑定屋店内---------


ルティア 「こんにちは」

ジロン 「いらっしゃい。あぁ、嬢ちゃんか。どうした?」

ルティア 「ちょっと部品を見に来たの」

ジロン 「おお、そうか。ゆっくり見てってくれよ。サテライター……とか言ったかの? あの機械。
     たまげたのぉ……まさか卵の中に、あんなシロモノが入っとるとは」

ルティア 「初めてなの?」

ジロン 「ん?」

ルティア 「この町からサテライターが発掘されたの」

ジロン 「ああ。ワシの知ってる限りでは、今回が初めてじゃな」

ルティア 「……」

ジロン 「なおりそうか?」

ルティア 「えっ?」

ジロン 「修理の方は進んどるのか?」

ルティア 「あ、ええ。もう少しなんだけど、部品が足りなくて」

ジロン 「そうか。ちょうどこないだ新しいガラクタを引き取ったんだ。何か使えるもんがあるかもしれん。どれ、ちょっと待っとれよ」

ルティア 「あぁ、いいわ。おじいさん腰が悪いんでしょ? 自分で探すから」

ジロン 「すまんな。じゃあ奥の棚の方にあるから好きに見てってくれ」

ルティア 「ありがとう」


 黙々と部品の選別を行うルティア。


ルティア 「これと、これと……これも使えそうね」

ジロン 「アルの方は、どうだ? 少しはマシになったか」

ルティア 「……ずっと閉じこもってるわ」

ジロン 「そうか。早く立ち直ってくれるといいんじゃが」

ルティア 「無理なんじゃない? アイツ、フィーナちゃんにべったりだったんでしょ?」

ジロン 「ああ、本当によくできたええ子じゃったからな……アルが可愛がるのも無理はないさ。
     ワシだって、あんな子が自分の孫じゃったらと何度思ったことか」

ルティア 「……」

ジロン 「あの子は皆の太陽じゃった。いつも笑顔で……。それがなんでこんな事になってしもうたんじゃ……」

ルティア 「おじいさん……」

ジロン 「いや、すまんな。トシを取ると涙もろくていかん」

ルティア 「彼女……空を飛びたいんだって言ってたわ」

ジロン 「案外、今頃は元気に飛び回っとるのかもしれんよ」

ルティア 「そうね……」


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ルティア 『双魂のジェミニ 第三話 影星(かげぼし)』


フィーナ 「はい、お兄ちゃん。今日のお弁当持ってきたよ」

アル 「あぁ、いつもありがとな」

フィーナ 「今日の出来はちょっと自信あるんだ。自己採点するとね……うーん、80点くらいかな?」

アル 「控えめだな。自信があるなら今日のは100点でいいじゃないか」

フィーナ 「お兄ちゃんがおいしいって言ってくれたら100点になるんだよ」

アル 「ははっ、俺がおいしいって言わないときなんかないだろ」

フィーナ 「えへへ」


 フィーナが居住まいを正し、うやうやしいしゃべり方をする。


フィーナ 「では、どうぞ、お開け下さい」

アル 「ははあーっ、では、失礼いたしまして、パカッと……おっ、ウマそーっ!」

フィーナ 「どうぞ、召し上がれ」

アル 「いっただきまーす!」


 突如、銃声が響く。弁当は地面に転がり、フィーナがぐらりと倒れる。


アル 「フィー……ナ……?」

フィーナ 「おにいちゃん……逃げて……」

アル 「フィーナ!! くそっ、くそォ……血が……血が止まらないっ……ああぁ」

フィーナ 「痛い、痛いよ……おにいちゃん……苦しいよ……」

アル 「どうしたらいいんだ!? どうしたら……! オイ、なんとか言えよポンコツ!」


 いつの間にか操縦席に座っているアル。
 誰かの声が機械的に応える。


??? 『胸部に被弾。ダメージレベル6(シックス)』

アル 「なんだよ、それ……」

??? 『心肺機能、完全に停止しました』

アル 「なんだよ……」

??? 『致死量の出血を確認。リカバリーの可能性は0(ゼロ)パーセント』

アル 「そんな言い方……フィーナは機械じゃない、人間だ! 生き物だぞ!」

??? 『いいえ。彼女はモウ、イキモノデハアリマセン』

アル 「嘘だぁアアアァァァッ!!」


 毛布をはねのけ飛び起きるアル。


アル 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ………………ちくしょう………フィーナ……」

??? 『大丈夫? マスター』

アル 「ッ!?」

??? 『ねえ、大丈夫?』

アル 「……」

??? 『おーい、マスター』

アル 「うるさい……静かにしろ」

??? 『だって、返事してくれなかったから……』

アル 「はぁっ……」


 アル、立ち上がって家を出ようとする。


??? 『あっ、どこ行くの?』

アル 「お前には関係ない」

??? 『あのね、ルティアがオニギリ置いてってくれたよ。マスターにって』

アル 「おにぎり……?」

??? 『うん』

アル 「……」


 にぎり飯を一瞥するが、すぐに顔を背けるアル。


アル 「くそっ……」


 アル、家を出る。


??? 『あっ! 私ここから出られないんだってばぁ! ねーえ! 遠くに行くの無しだよー!?』


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 町中を力なく歩くアル。姿勢も悪い。


モール 「アル!」

アル 「親方……」

モール 「良かった。炭鉱にもなかなか顔出さねえから心配してたんだぜ」

アル 「ごめん……仕事ほったらかしで」

モール 「いいってことよ! それよりお前、ハラ減ってねえか? 久しぶりにメシ奢ってやるよ」

アル 「いいよ」

モール 「遠慮すんなって」

アル 「いいって」

モール 「良くねえよ。ほら、何が食いてえんだ? 言ってみな」

アル 「……要らないんだ。ほんとに」

モール 「何言ってんだよ、フィーナちゃんが居なくなって、どうせロクなもん食べてねえんだろが」

アル 「……!」

モール 「あっ……と、悪い。いやその、あれだ。栄養とらねえと……ダメだろ? そうしねえと、元気も出ねえし良い堀りも出来ねえ。
     辛いのはわかる。けど、お前までどうにかなっちまったら……困るだろうが」

アル 「親方……ありがとう。でも、今は本当にそんな気分じゃないんだ。ごめん。もう少ししたら仕事も出れると思うから」

モール 「……わぁったよ。心配するな。お前のためにたっぷり仕事を残しといてやる。お前が来ねえ日が続くほど仕事が増えるって寸法だァ!
     な? だから、早く戻ってこいよ」

アル 「……うん」

モール 「じゃあな」


 モール、去る。


アル 「……ごめん、親方」


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 ジオード王国。首都マガン。どこかの室内に男と女がいる。


ヴィルヘルム 「──間違いないのか?」

シエラ 「はい、間違いありません。三日前の通信を最後に、ガルモート少佐は消息を絶ったまま行方不明です。
     目下調査中ですが、本日明朝、デルトリク王国辺境の町ファーレンの炭坑近くで、サテライターと思われる残骸を発見したとのことです。
     その損傷は著しく、操縦者が生存している可能性は……」


 シエラは目を伏せて首を横に振った。


ヴィルヘルム 「まさか、あのガルモートがやられるとはな。惜しいことをした」

シエラ 「……心中、お察し致します」

ヴィルヘルム 「勘違いするな、シエラ」

シエラ 「は……?」

ヴィルヘルム 「あのような下衆がどこで野垂れ死のうと、私の知ったことではない。むしろ、いずれこうなるだろうと思っていた。
        奴は単独行動をした挙句、敵の力を見誤り、自滅した。自業自得だよ。
        私が惜しいことをしたと言ったのは、貴重なサテライターが破壊されてしまったことに対してだ」

シエラ 「はっ、失礼致しました」

ヴィルヘルム 「それよりも、三日前の通信の内容が気になる」

シエラ 「はい。記録によると最後の通信は、我、コウノトリの卵を発見せり。これより回収に向かう……という内容だったようです」

ヴィルヘルム 「……ははははははは! これで確定したな。奴はサテライターにやられたのだ」

シエラ 「あの国にサテライターが?」

ヴィルヘルム 「そうとしか考えられまい? サテライターの装甲を破壊できるのは、同じ力を持ったサテライターのみ。
        コウノトリの卵が孵化したと思ったら、出てきたのは凶暴なヒクイドリだった……そんなところか」

シエラ 「そんな……しかし、そう都合よく起動できるものでしょうか」

ヴィルヘルム 「十二星座の相性(ゾディアックサイン)か?」

シエラ 「はい。操縦者とサテライターの星座が一致しなければ起動はできないはず。そう簡単には……」

ヴィルヘルム 「1/12の確率でサテライターを起動し、初戦で大金星。さらに残骸の損傷度合いから見て、相手はダブルキャストか……それとも、精霊の力を借りたか」

シエラ 「精霊の……? まさか」

ヴィルヘルム 「あり得ないことではないさ。サテライターより生まれいでるもう一人の自分……人工精霊だよ」

シエラ 「人工精霊……ただの言い伝えでは?」

ヴィルヘルム 「ふっ、私とて半信半疑だよ。だが用心に越したことはない。我々もヒクイドリを追うぞ。確かめねばならん。この目で」

シエラ 「はっ」

ヴィルヘルム 「もちろん、軍とは個別にな」

シエラ 「よいのですか?」

ヴィルヘルム 「我が計画の為にも、軍より先に見つけなければならん。
        シエラ。これよりお前にサテライター捜索の任を命じる。隠密ゆえ多くの部下はつけられんが……代わりにこれを使うがいい」

シエラ 「これは……!」


 そこには巨大な卵が鎮座していた。


ヴィルヘルム 「乙女座のサテライターだ。お前に預ける」

シエラ 「このサテライターを、私にですか……?」

ヴィルヘルム 「嫌か?」

シエラ 「い、嫌などと! そうではなく……わ、私などには勿体無く……!」

ヴィルヘルム 「お前と同じ乙女座の機体が見つかったのも、星の巡り合わせだ。それに大切な機体でもある。お前に任せたい」

シエラ 「大佐……。はっ! 身に余る光栄……このシエラ・ザード、必ずやヒクイドリを捕まえてご覧に入れます」

ヴィルヘルム 「ふ、頼もしいな。お前の活躍、期待しているぞ?」


 シエラの唇を奪うヴィルヘルム。


シエラ 「あぅっ……はい……大佐……」

ヴィルヘルム 「”大佐”は無粋だな」

シエラ 「は……ヴィルヘルム様……あっ……」


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??? 『マスターお帰りなさい! 遅かったね? どこ行ってたのー』

アル 「……」

??? 『あのねマスター、ルティアが足の関節も直してくれるって。ほら見てー、他の部分の故障も、もうほとんど直してくれたんだよ?』


 その声が聞こえないかのように、奥の部屋へ入っていくアル。


アル 「機械が喋るな」


 それだけ言ってピシャリとドアが閉められた。


??? 『あは……機械でも、傷つくんだけどなァ』


 そう呟いた途端、ドアが開きアルが出てきた。


??? 『マスター!』


 サテライターは喜びの声を上げるが、アルの様子がおかしい。その右手にはツルハシが握られている。


??? 『えっと、マスター……?』

アル 「こんなもの、動かすんじゃなかった」

??? 『!』

アル 「掘り起こすんじゃなかった、見つけるんじゃなかった……俺はただ平凡に、普通に暮らしていたかっただけだ。
    こんなものさえ見つけなければ、俺は……フィーナを失うこともなかったのに!!」

??? 『……私は機械だけど、マスターの気持ちわかるよ』

アル 「!?」

??? 『大切な人を失くした悲しみがどれほどのものか、想像はできる』

アル 「わかってたまるか! 機械なんかに、俺の気持ちがわかってたまるか!!」


 ルティアの作ったにぎり飯をサテライターに投げつける。ぐちゃりとはみ出た中身が機体に貼りついた。


??? 『わかるよ』

アル 「……鋼の装甲で、銃弾なんかビクともしない体のお前に? 俺たち人間の気持ちがわかるって? ふふっ……あっはっはっは……冗談じゃない」

??? 『本当だよ。だって私は……』

アル 「そういう風に作られたんだろ? 機械だから。でもそれは作り物だ。本当に人間の気持ちがわかってるわけじゃない」

??? 『違う!』

アル 「なにが違う!!」

ルティア 「!? ちょっとアル、何やってんのよ!」


 町から戻ってきたルティア。ツルハシを握ったアルを見て驚いている。


アル 「ルティアか……ちょうど良かった。コイツを解体して炭坑に埋めるんだ。お前も手伝ってくれ」

ルティア 「なんですって?」

??? 『……』

ルティア 「アル、よく考えて。サテライターを解体してどうするの? またジオードの奴らが襲ってこないとも限らないわ」

アル 「あいつらの狙いはこの機械だ。コイツさえ無くなれば襲ってこないさ」

ルティア 「でも……」

アル 「悪いのはジオードだ。わかってる。でも危険なんだよ! こいつは!
    俺はもう、危ない目に合わされるのは御免だ」

ルティア 「……わかったわよ。この子は私が預かる。村から出ていくわ。二度と近寄らない。……それならいいでしょ」

アル 「……。お前は、それでいいのかよ」

ルティア 「ええ。貴重なサテライターを壊されるよりマシよ」

アル  「…………わかった」

??? 『マスター……』

ルティア 「さてと……そうと決まったら、なんとか今晩中に直して、明日には発てるようにがんばらないとね」

アル 「ルティア……ごめんな」

ルティア 「え?」

アル 「おにぎり。せっかく作ってくれたのに、ごめん」

ルティア 「べ……べつにいいわよ。材料が余ったからついでに作っただけだし、別に深い意味はないし!」

アル 「フィーナもさ、よく作ってくれたんだ。塩加減が絶妙でさ……」

ルティア 「ふん、どうせ私はフィーナちゃんみたいに綺麗に握れないわよ」

アル 「誰もそんなこと言ってないだろ」

ルティア 「う、うるさい! あ、あんたも修理手伝いなさいよね! 今は猫の手も借りたいくらいなんだから!」

アル 「わかったよ」


 ランプの灯りの下、アルとルティアはサテライターの修理をしている。


ルティア 「工具を持ってきておいて良かったわ。これがなかったら修理に1ヶ月はかかってたところよ」

アル 「そういえばルティアは研究者なんだよな。具体的にどういう仕事をするんだ?」

ルティア 「ロストテクノロジーの解析と応用ね。発掘した用途不明な機械を調べたり……でも私の専門は、サテライター研究」

アル 「昔の人は、なんでこんなものが必要だったんだろうな」

ルティア 「愚かだったのよ。そうでなきゃ最終戦争(ラグナロク)なんか起きてない」

アル 「……そうだな」

??? 『ま、マスター』


 遠慮がちに声を発する。


アル 「なんだ?」

??? 『私のこと、嫌い?』

アル 「嫌いだ」

??? 『ううっ……』

ルティア 「ちょっとアル、いじめるのはやめなさいよ」

アル 「……兵器は嫌いだ。けど、人間のように振舞うお前が嫌いなわけじゃない。さっきは少し言い過ぎた」

??? 『マスター……』

アル 「不思議なもんだよな。機械と話せるなんて」

??? 『機械じゃないよ、人工精霊。マスターから生まれたアニマだもん』

アル 「人工精霊? アニマってなんだ?」

ルティア 「え、今更? そんなことも知らないでこの子と会話してたの?」

アル 「わ、悪いかよ」

ルティア 「はぁ……これだからイナカ者は」

アル 「うっさいな! いいからはやく説明してくれよ」

ルティア 「仕方ないわね。面倒だけど説明してあげる。人工精霊っていうのはね、言うなればもう一人のあなたなの」

アル 「もう一人の俺?」

ルティア 「そう。人間の心にはね、本人の性別とは関係なく男性的な心と女性的な心が存在するって言われてるの」

アル 「ふーん?」

ルティア 「あなたの中にも女性的な心があるのよ。もちろん、私の中にも男性的な心があることになる。
      そして女性的な心を”アニマ”、男性的な心を”アニムス”と呼ぶの」

アル 「なんだかややこしいな」

ルティア 「この子……えーと、名前はつけてないのよね」

アル 「ああ」

ルティア 「アル、星座は?」

アル 「星座? 俺の? ……ふたご座だけど」

ルティア 「ジェミニね」

アル 「あん?」

ルティア 「いにしえの言葉でふたご座のことをジェミニって言うのよ。うん、決定ね。なかなかカワイイ名前じゃない?」

ジェミニ 『ジェミニ……』

アル 「可愛いのか?」

ルテイア 「それじゃあ話を戻すけど、この子、ジェミニはアルのアニマなの。
      サテライターがあなたの精神パターンを読み取って形成したもう一人のあなた。それが人工精霊」

アル 「こいつが、もう一人の俺……?」

ジェミニ 『えへへ』

アル 「でも性格は俺とは全然似てないよな。図々しいし」

ジェミニ 『もしもマスターが女の子に生まれてたら、私みたいな性格だったのかもしれないよ!』

アル 「それはない」

ジェミニ 『えぇぇ』

ルティア 「アルから作られた人格ではあるけれど、完全に別物よ。人の性格は成長過程で形成されるものだしね。
      あの戦いの中でジェミニは生まれたんだから、まだ赤ん坊みたいなものなの。アルみたいにスレてないってこと」

アル 「失礼な」

ジェミニ 『ほんと失礼しちゃうなぁ。私これでも16だもん!』

アル 「は? 嘘つけ」

ジェミニ 『嘘じゃないよぉ! マスターのアニマだもん。だから同い年で当然なんですぅー』

アル 「言ってろ」

ジェミニ 『あっかんべー!』

アル 「ぐぬぬ……!」

ルティア 「ふふっ……。そういえば、ジェミニのアバターは出せないの?」

ジェミニ 『出せるよ。見たい?』

アル 「おい、さっきから難しいんだよ。バターがなんだって?」

ルティア 「バターじゃなくてアバター。ジェミニ自身の仮想イメージよ」

アル 「ごめん、意味不明」

ルティア 「これだから原始人は……百聞は一見にしかずよ。ジェミニ、見せてくれる?」

ジェミニ 『なんか恥ずかしいなぁ……でも、マスターがどうしても見たいって言うなら、仕方ないから見せてあげよっかなぁ』

アル 「言ってないって」

ルティア 「オカマみたいなアルが出てきたら、私、おかしくて笑いが止まらなくなるかも」

ジェミニ 『いくよー……ビジュアライズ!』


 サテライターの胸部レンズからホログラフィーが投影される。その姿はフィーナと瓜二つだった。


アル&ルティア 「……!」

ジェミニ 『どう? ……変かな?』

ルティア 「あ……」

アル 「フィーナ……」


 アルはフィーナ(?)に触れようと手を伸ばすが、その体をすり抜けてしまう。


アル 「っ……」

ジェミニ 『ホログラフィーだよマスター。それと私はフィーナじゃなくてジェミニ』

アル 「どうして……」

ルティア 「……そうなるのね。興味深いわ」

ジェミニ 『マスター?』

アル 「消してくれ。お前はフィーナじゃない。フィーナはもう、死んだんだ」

ジェミニ 『だったら、私がマスターの双子星になってあげる』

アル 「もういい、もうたくさんだ……!」

ジェミニ 『……わかったよ。じゃあ髪とか目の色なら変えられるから……これでどうかな』


 ジェミニがまばたきをすると瞬時に瞳の色がブルーに変わった。ダークブラウンだった髪は鮮やかなピンクに。


アル 「やめろ! 消せ!!」

ルティア 「ジェミニ、今は消して」

ジェミニ 『はぁい……』


 ジェミニの姿が消える。


アル 「……」

ルティア 「もしかしたらと思ったけど、あそこまでフィーナちゃんにそっくりになるなんてね」

アル 「……試したのかよ」

ルティア 「えっ?」

アル 「研究のために、双子のアニマはどんな見た目になるのかって、試したかったんだろう!」

ルティア 「ち、違う! 私は、アルが喜ぶかと思って……」

アル 「いくら似てたってフィーナじゃない。偽者なんだよ! フィーナはもう、居ないんだから」

ルティア 「悪かったわよ……」

アル 「……修理、続けよう」

ルティア 「ええ……」


 ジェミニの修理を続ける二人。いつの間にかアルは眠りに落ちる。
 一人で黙々と作業を続けるルティア。
 やがて修理を終えたルティアも毛布をかぶり眠りに付く。

 時計の針が何周かした頃、突然けたたましいアラーム音が鳴り響く。


アル 「んん……?」

ルティア 「うるさいわね……アル、早く止めてよ……」

ジェミニ 『二人とも起きて! 何かがここに近づいて来てる! これは……たぶんサテライターだよ!!』


 アラームは目覚まし時計の音ではなく、敵の接近を知らせる警告だった。飛び起きる二人。


ルティア 「まさか……!」

アル 「また、あいつらが……!?」




N 「次回予告」

シエラ 「今一度問います。デルトリクへの未練はありませんか?」

ルティア 「研究所には戻らない。今はまだ」

アル 「もう少しだけなら、ウチに居てもいいぞ」

ルティア 「次回、双魂のジェミニ 第四話 回る歯車、動き出す世界」

ジェミニ 『マスター強すぎるよぉ、もっと優しく……ね?』



つづく

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