♂ アル・マディオ … 16歳。大国デルトリクで炭鉱夫(ディガー)の仕事をしている。まっすぐな性格。

♀ ルティア・シュタイン … 16歳。デルトリク王都オーガンの技術者。まだ若いが技術・知識面ではオーガン随一との呼び声も高い。性格はいわゆるツンデレ。

♀ ジェミニ … 16歳(?)明るく天真爛漫な性格。人工精霊と呼ばれる存在で、その意識はサテライターの中にある。主な役目は操縦者のサポート。

♂ ケイファー・ナースホルン … 20歳。ルティアと同じオーガンの研究所で働く技術者。ルティアに劣らず秀才だが天然なのか、不用意な言葉で相手の反感を買うことも少なくない。

♂ モール・ウルフ … 36歳。熟練のディガーで、アルに親方と呼ばれている。口調は乱暴だが面倒見の良い性格。今回はセリフが少ないためケイファーと兼役。

♂ ジロン・タル … 鑑定屋。高齢のため腰を痛めており、いつも店にいる。

♀ シエラ・ザード … 23歳。ジオードの軍人。常に優秀であろうとする美しき女性。ヒクイドリ(ジェミニ)捕獲の任を受け、ケイファーと手を組む。

■キャラ・設定資料■



N 「その昔、人間の最も愚かな行為によって、地表の95パーセント以上が海に沈んだ。
   生き残った人々は、残された大地から過去の遺物を掘り起こし、糧とした。

   デルトリクで炭鉱夫(ディガー)を営む少年、アルは、サテライターと呼ばれる機動兵器を掘り当てた。
   だが、強い力は災いを呼び寄せてしまう。

   最愛の妹フィーナを失ったアル。その妹に瓜二つな人工精霊、ジェミニ。

   心を持つ兵器、サテライターは戦いに何を感じるのか。
   彼女は、電気羊の夢を見るか?」


アル 「フィーナ!!」


 布団から飛び起きるアル。


アル 「はぁっ……またかよ、くそっ……」

ジェミニ 『マスター、大丈夫?』

アル 「ジェミニ……起こしたか?」

ジェミニ 『ううん、ずっと起きてたよ』

アル 『ずっとって、お前は眠らないのか?」

ジェミニ 『人工精霊だからね。メモリーのデフラグの為にスタンバイモードにはなるけど……それが眠るってことなのかな?』

アル 「俺に聞かれてもな。機械の事は全くわからん」

ジェミニ 『だよね。……マスター、またうなされてた』

アル 「ああ。いつも決まって、おんなじ場面だ」

ジェミニ 『同じ?』

アル 「夢の中で俺は必死にフィーナを助けようと、動こうとするんだけどさ、水の中みたいに足が遅いんだ。
    それで結局間に合わなくて、フィーナは死んじまう」

ジェミニ 『……』

アル 「俺、今思えば、兄貴らしいこと何一つしてやれなかった。……せめて、あいつの夢ぐらい叶えてやりたかった」

ジェミニ 『夢……?』

アル 「ああ。いつか大空を飛んでみたいって夢」

ジェミニ 『……』

アル 「……って、ハハ、んなことお前に言ったってな。なんかお前相手だと余計な事まで喋っちまう。
    ったく、お前の声がフィーナに似てるせいだぞ」

ジェミニ 『ご、ごめん……』

アル 「謝るなバカ。冗談だよ。
    さてと、それじゃ俺はもう一眠りするかな……ふあぁ……おやすみ」


 アルが布団に倒れこむ。以外とすぐに寝息が聞こえてきた。


ジェミニ 『おやすみ、マスター』

アル 「Zzz……」

ジェミニ 『……私も寝よう。スタンバイモード、オン……』


-------------------------------------------------------------


ルティア 『双魂のジェミニ 第五話 空に馳せる想い』

 朝。どこかから金属がかち合う音が聞こえてくる。


アル 「う〜〜ん……ふわあぁぁ。何の音だぁ…?」

ルティア 「おはよう、ねぼすけさん」

アル 「ルティア? こんな朝早くから何やってんだよ……ふあぁ…」

ルティア 「見て分かるでしょ。ジェミニの分解よ」

アル 「ああ、ジェミニの分解ね、うん……………え!? ちょっ、待てよ!! せっかく修理したんじゃないか!」

ルティア 「ちょっと待って、静かにして。いまややこしい箇所(ところ)なの」

アル 「お前が止めたんだろ!? 俺が壊そうとしたら、こいつは貴重な研究対象だとかなんとか言って!」

ルティア 「そうよ、だから壊したくないの。今慎重な作業をしてるんだから黙ってて」

アル 「はあ!? お前、言ってることとやってる事が正反対だって!」

ルティア 「よし、これでOK。通電問題なし…と」

アル 「ルティア!」

ルティア 「うるさいわねぇ。ジェミニ、聞こえる?」

ジェミニ 『はーい、ジェミニ再起動完了! 各部パラメーター問題なし。さっすがルティア☆』

ルティア 「このくらい当たり前よ」

アル 「じぇ、ジェミニ。大丈夫なの、か……?」

ジェミニ 『ん? なにが?』

アル 「いや、だってお前、背中のほう分解されて……」

ジェミニ 『あ、これ。私がルティアに頼んだの』

アル 「???」


 唐突にルティアがメモを差し出す。


ルティア 「アル。ここに書いてあるものを買ってきて」

アル 「なんだこりゃ? 人がふたり入れる位のカゴ、頑丈なロープ、ナイロン製の生地1700立方メートル…………せんななひゃく!?」

ルティア 「お金の事なら気にしないで。経費として落とすから。あ、領収書もらうの忘れないでよね」

アル 「いや、そうじゃなくて。なんなんだよこれ」

ルティア 「材料を見てわからない? 熱気球よ!」

アル 「は?」


---------------------------------------------------------------------


 鑑定屋、ジロンの店。


ジロン 「これで大体のものは揃えたぞい」

アル 「サンキューおっちゃん! 助かったよ」

ジロン 「なあに、その分のカネは貰っとるんじゃ、気にせんでええ。
     ただなぁ……肝心のどでかいナイロン生地が無くてのう」

アル 「いいよ。これは他で探すから」

ジロン 「うーむ。この町じゃあ手に入らんかもしれんぞい」

アル 「そりゃ困るなぁ! うーん……どうすりゃいいんだ」

ジロン 「ふうむ……んっ? そういえばさっきモールの奴が……」


 〜回想〜


モール 「オヤジ! 今日の成果だ。鑑定頼むぜ!」

ジロン 「どれどれ……今日は珍しいものはなさそうじゃのう」

モール 「おいおいどこに目ェつけてんだよ、ここにあるだろうが!」


 モールが指差す先には、幾重にも折りたたまれた大きな布があった。


ジロン 「汚い布じゃのー……こんなもん引き取れんぞ。持って帰るか捨てるかしてくれ」

モール 「何ぃっ!? このクソ重てぇ布きれをここまで運ぶのにどんだけ体力使ったと思ってんだ!」

ジロン 「知らんわい。大体なんなんじゃそれは」

モール 「それを鑑定するのがアンタの仕事だろ」

ジロン 「こんなもの、誰が見たって薄汚れた布でしかないわい。ウチだって商売なんじゃ。売れんモンを引き取るわけにはいかん」

モール 「っ……ああそうかよ! ったくケチくせージジイだぜ!」

ジロン 「なんじゃとォ!!? お前さんこそ、毎度毎度下らんガラクタばかり持ってきよって!
     たまにはマトモなものを持ってこんか!」

モール 「んだとぉ!? 黙って聞いてりゃこっちの足元ばっか見やがって、なんでも底値で安く買い叩きやがるドケチに言われたかねー!」

ジロン 「黙って聞いてりゃって、お前さんの口が閉まったことがあったかのォー!?」

モール 「そりゃ言葉のアヤってもんだろーがよ! んなことにいちいちツッコんでんじゃねえよクソジジイ!」

ジロン 「誰がクソジジイじゃあぁぁッ!!」


 売り言葉に買い言葉で、しばらく言い争いが続いた。
 〜回想終了〜


ジロン 「とまあ……そんな事があってな。ついさっき追い返してしまったんじゃが、あの時の布がもしかしたら使えるかもしれんのう。
     お? アル??」


 さっきまで隣に居たはずのアルが消えていた。


アル 「サンキューおっちゃん!! 親方追いかけてみるよーーー!!」


 店の玄関からアルの声がしたが、ジロンが目を向ける頃には誰も居なくなっていた。


ジロン 「ふっ……すっかり元気になりおって。心配して損したわい」


---------------------------------------------------------------------------


双眼鏡を覗きこみ、高台からアルの家を監視しているケイファー。


ケイファー 「……うん? 何をやってるんだ?」

シエラ 『──どうかしましたか?』


 シエラからの通信。


ケイファー 「サテライターを解体しているのか…?」

シエラ 『──こちらの存在に気付かれたのですか?』

ケイファー 「いえ、シグナルジャマーは正常に作動中。ヒクイドリがこちらを探知することはできないはずです」

シエラ 『──では一体なぜ』

ケイファー 「待ってください。あれは……ブースターを一基取り外しただけのようです」

シエラ 『──ブースターを?』

ケイファー 「ええ。おそらく先の戦闘で消耗した箇所のメンテナンスでしょう」

シエラ 『──これはヒクイドリを捕らえる絶好のチャンスかもしれません。引き続き監視を頼みます。何か変化があれば逐次報告を』

ケイファー 「了解です」


---------------------------------------------------------------------------


ジェミニ 『あっ、マスター帰ってきた〜』

ルティア 「ご苦労様。どう? ちゃんと集まった?」

アル 「ああ、バッチリだ。布が想像以上にでかくて大変だったけど。鑑定屋のおっちゃんが荷車を貸してくれて助かった」

ルティア 「どれどれ(荷物を見る) あらっ、これ球皮じゃない? よく見つかったわね!」

アル 「球皮ってなんだ?」

ルティア 「この大きな布のことよ。広げると袋状になっていて、中の空気をあたためることで浮力を得るの」

アル 「へぇ……」

ルティア 「思ったより早くできそうね。あとはジェミニのブースターと、私たちが乗るカゴを取り付ければ熱気球の完成よ。
      ブースターの調整もさっき終わったから、あと一息ね」

アル 「大したもんだな。ルティア」

ルティア 「う……あ、あたりまえでしょ。私を誰だと思ってるのよ」

ジェミニ 『よっ! 天才美少女サイエンティスト、ルティア・シュタイン!(※第2話参照)』

ルティア 「それは言わないで。あの時は必死だったの!」

ジェミニ 『えへへ』

アル 「ぷっ、ははははっ」

ルティア 「ふふ……さあ、完成までもう少しよ。頑張りましょう」

アル 「ああ!」

ジェミニ 『頑張ろー!』


---------------------------------------------------------------------------


ケイファー 「そういうことか。出力を抑えることでブースターをバーナー代わりに…。
       さすがルティア。面白い事を考えるね」


 ケイファー、ポケットから通信機を取り出す。


ケイファー 「ミス・シエラ。目標が動きます」

シエラ 『──了解です。あなたは追跡を。私もすぐに向かいます』

ケイファー 「了解」


---------------------------------------------------------------------------


ジェミニ 「えーーーっ!? そんなの聞いてないよ!」

ルティア 「仕方ないでしょ。熱気球程度の浮力じゃサテライター(あなた)を持ち上げるのは不可能なのよ」

アル 「つーかカゴの大きさからしてジェミニは乗らないだろ」

ジェミニ 『ロープで吊ってくれると思ってたんだもん!!』

ルティア 「申し訳ないけど、あなたには下でロープを持っててもらうわ。そうでないと風向きの関係で戻ってこれなくなるから」

ジェミニ 『ぶうう……やだー! そんなのつまんないよぉ!』

アル 「悪いな、ジェミニ。部品まで貸してくれたのに」

ジェミニ 『ううぅ………あっ! そうだ!! あれを使えば……!』

アル 「?」

ジェミニ 『マスター、ルティア、ちょっと後ろ向いてて』

アル 「あ?」

ルティア 「何をする気?」

ジェミニ 『いいからいいから。ハイそのままだよ〜……ジェミニ、ビジュアルデータ変換、モデリング開始。
      ハイパーテクスチャ生成、マッピング開始。レイトレーシング実行、四次元レンダラー起動……元素固定開始!』


 なにやら難しい言葉を呪文のように唱えるジェミニ。


アル 「???」

ジェミニ 「もうこっち向いていいよ」

アル 「なんなんだよいった………い?」

ルティア 「……!」

ジェミニ 「じゃーん! 人工精霊改め、人工生命ジェミニちゃんでーす!」


 振り向くとそこには、一人の少女が立っていた。外見はフィーナと瓜二つ。
 髪や瞳の色が多少違うが、それ以外はまったく同じと言っていいほどだった。


アル 「あ……ジェミニなのか? す、すごいな、そんなことまでできるのかよ……」

ルティア 「前に見せてもらったホログラフィーがそのまま…! これもロストテクノロジーの力なのね……驚きだわ」

アル 「マジで一瞬フィーナと見間違えたぜ。はは……」

ジェミニ 「ごめんねマスター! でも、今日だけ許して、お願いっ!」


 祈るように手を合わせるジェミニ。その姿が今は亡き妹とダブる。


アル 「別に……いいけどさ」

ジェミニ 「ホント!? やったーーーぁ! ねっつききゅう♪ ねっつききゅう♪」

---------------------------------------------------------------------------


 すぐ近くの海岸に移動したアルたち。
 完成したばかりの熱気球と、それにつながるロープを腕部にくくりつけられたサテライター。


ルティア 「準備はいいわね?」

アル 「いつでも」

ジェミニ 「わくわく! わくわく!」

ルティア 「いくわよー…バーナー点火!」


 出力を調整されたブースターがバーナーの役目を果たし、球皮内の温度を徐々に上げていく。


ジェミニ 「わっ、わっ! 膨らんでくよ〜!」

アル 「ははっ、すげえすげえ!」

ルティア 「エンベロープ内温度、順調に上昇中! 予想離陸温度まであと、10、9、8……」

アル 「風船の超巨大版だな」

ジェミニ 「球皮が完全に持ち上がったよ!」

ルティア 「3、2、1、ゼロ! テイクオフ!」


 カゴが浮きあがろうとしたその瞬間、突風がふきつける。


ルティア 「きゃあっ!?」

ジェミニ 「わぁっ!?」

アル 「手を離すな!!」


 風に流されたカゴの底が地面に擦れ、バウンドする。そして……離陸。


アル 「浮いた!」

ジェミニ 「すごい、すごいよ! ほんとに浮いてるっ!!」

ルティア 「浮くように設計してるんだから当然よ。今の風さえなければ完璧だったのになー」

ジェミニ 「さすがルティア! いよっ、超絶天才科学者!」

ルティア 「……ま、悪い気はしないわね」


 ルティアとジェミニ、笑いあう。
 その隣でしゃがみこんでいるアル。


ジェミニ 「マスター? どうしたの?」

ルティア 「アル? もしかして乗り物酔い?」

アル 「い、いや……」

ジェミニ 「マスターも一緒に景色見ようよ! うわー! ほら見て、あんなに遠くまで見えるよー」

アル 「お、俺はいいや……」

ルティア 「はっはーん。アルゥ? もしかしてあなた、高いところ苦手なんじゃないのォ?」

アル 「ばっ……そんなわけないだろ」

ルティア 「ふぅーん……ほらほらほら」(カゴを揺らす)

アル 「うわっ!! ちょっ、やめろって!! おぉ落ちる!!」

ルティア 「ぷーっ!! アルの弱点見つけたりだわ」

アル 「う、うるさい! こんな高いとこ初めてなんだ! 怖くて当たり前だろ!」

ジェミニ 「私、初めてだけど怖くないよ」

アル 「お前と比べるな!」

ジェミニ 「ぶうーっ」

ルティア 「でも……見といて損はないと思うわよ。これが、フィーナちゃんが見たかった景色なんだから」

アル 「……」

ジェミニ 「大丈夫だよマスター。私がしっかり掴んでてあげるから!」

アル 「……わかったよ」


 おそるおそる立ち上がるアル。固く閉じていた目をゆっくりと開く。


アル 「……! すっげ……広い……青い……!」

ルティア 「そのままじゃない。もっとマシな感想ないわけ?(笑)」

アル 「だ、だってさ! これが世界なのか……果てしない海と、ほんの少しの陸地……」

ルティア 「そうよ。デルトリクもジオードも、この果てしない海に比べたら米粒みたいなもの。
      そこに住んでいる私たちは、どれだけちっぽけな存在なのか……人間同士の諍いや争いなんて、どうでもよく思えるわね」

アル 「……」

ジェミニ 「ほら見て、海がきらきら光ってる」

アル 「ああ」

ジェミニ 「マスター、まだ怖い?」

アル 「いや……もう大丈夫だ」

ジェミニ 「良かったぁ。海って綺麗だねぇ……あれ? 空が綺麗だから、海も綺麗なのかな」

アル 「……ジェミニ、ルティア」

ジェミニ 「ふぇ?」

ルティア 「なによ? 改まって」

アル 「まだお礼を言ってなかっただろ? 二人のおかげだ。熱気球を作ってくれて、本当にありがとう」

ルティア 「べ、別に……あんたの為のじゃないわよ。私はフィーナちゃんの為に…」

アル 「それでも、ありがとう」

ルティア 「どう……いたしまして」

アル 「お前もありがとな。部品貸してくれて」

ジェミニ 「ううん、私も空からの景色が見れて大満足だよ。ありがとう、お兄ちゃん」

アル 「……!」

ジェミニ 「今だけ。今だけマスターのこと、お兄ちゃんって呼んでいい?」

アル 「…………別に、好きにしろ」


 気恥ずかしそうに、目を背けるアル。


ジェミニ 「……えへへ」


 二人のやりとりをほほえましそうに見ているルティア。
 その時、熱気球が大きく揺らいだ。


アル 「おわっ!?」

ジェミニ 「ひゃっ!」

ルティア 「今のは……まさか!?」


 下を覗き込むルティア。嫌な予感が当たった。
 地上のサテライターにつながっていたはずのロープが宙ぶらりんになっていた。


---------------------------------------------------------------------------


ケイファー 「ごめん、ルティア。計算ではそんなに遠くには飛ばされないはずなんだ」


 ナイフでロープを切断したケイファー。通信機からシエラの声が聞こえる。


シエラ 『──ヒクイドリの固定が完了しました。このままヴァルゴで牽引します』


---------------------------------------------------------------------------


ルティア 「やられたわ! 誰かにロープを切られた!」

アル&ジェミニ 「なにっ!?」「ええっ!?」

ルティア 「すぐに下降しないと風に流される!」

アル 「どっ、どうすんだよ! 気球ってどうやって降ろすんだ!?」

ルティア 「排気しなきゃ! アル、そこの紐をひっぱって!」

アル 「これか!」


 ルティアの指示どおり紐を引っ張ると、球皮上部の排気弁からどんどん空気が排出されていった。


ルティア 「着地にかかる時間と風向きから考えて……海上に着水するわね」

アル 「なにっ……それはマズイ!」

ルティア 「心配しないで。陸からはそれほど離れないはずよ。ズブ濡れ確定だけどね」

アル 「いや、そういうことじゃなくて……」

ルティア 「?」

アル 「俺……泳げないんだ……」

ルティア 「高所恐怖症のうえにカナヅチなの!? 呆れた……」

アル 「面目ない……」

ジェミニ 「あっ、私の体が!」

ルティア 「どうしたの!?」

ジェミニ 「こっちじゃなくてあっち! サテライター!」

アル 「あれは……サテライターがもう一機? ジオードの奴らか!」

ルティア 「私たちを遠ざけてジェミニをかっぱらうつもりね。なんて姑息な」

ジェミニ 「戻らなきゃ……」

アル 「……」

ジェミニ 「もう少しこの姿のままで居たかったけど……仕方ないね」

アル 「待ってくれ」

ジェミニ 「……」

アル 「一つだけ聞かせてくれ。………空は……どうだった?」

ジェミニ 「……そんなの、最高に決まってるよ」


 ジェミニの顔がフィーナと重なる。


ジェミニ 「バイバイ、お兄ちゃん。私の夢、叶えてくれてありがとう!」

アル 「……!」

ジェミニ 「元素固定………解除」

アル 「フィーナ!!」


 まばゆい光の粒になってジェミニの体が消失する。
 ジェミニの意識は本体のサテライターに戻った。


ジェミニ 『さっきのは、誰……? 私じゃない。バグ?
      なんだろう……これ。心が、痛い? これが、人間の悲しみ……?』


フィーナ? 【……あり…がとう……】 (ジェミニ役の人が読んでください)

ジェミニ 『…………?』


---------------------------------------------------------------------------


アル 「あれは…ジェミニだったんだよな?」

ルティア 「さあ? 私にはわからないけど、アルにならわかるんじゃないの?」

アル 「……」

ルティア 「着水するわよ! つかまって!」


 衝撃でカゴから放り出されるアルとルティア。


アル 「ぷわっ!! お、泳げない! ルティア、助けてくれぇ!」

ルティア 「……」

アル 「ルティア!? 早く手を! お、溺れるっ…!!」

ルティア 「足着くんだけど? ここ」

アル 「……あれ?」


 その時、ジェミニが残った一基のブースターを全開にして固定台から飛び出した。
 衝撃で固定金具が砕け散る。


シエラ 「ッ!? 人工精霊か!? 無茶をする…!」

ジェミニ 『乗って!』

アル 「……ジェミニ、なのか?」

ジェミニ 『”マスター!” 早く陸にあがって!』

アル 「っ……ああ!!」

ジェミニ 『有効範囲内に補足。転送!』


 ジェミニのコクピットに転送されるアル。


シエラ 「……作戦変更。ケイファー・ナースホルン、聞こえていますね?」

ケイファー 「はい」

シエラ 「転送」


 近くにいたケイファーの体が消え、ヴァルゴのコクピットに転送される。


シエラ 「乙女座のあなたを味方につけたのは正解でした。ダブルキャストモードなら、人工精霊の発現した相手と対等に戦えます」

ケイファー 「ヒクイドリも貴重な研究対象であることをお忘れなく」

シエラ 「わかっています。ですがこうなっては多少の破壊は止むを得ません」

ケイファー 「……手足を封じます。メイン操縦は僕が。ミス・シエラ、あなたはまだサテライターの操縦に慣れていない」

シエラ 「いいでしょう。ただし、失敗は許しませんよ」

ケイファー 「……行きます!」




N 「次回予告」

シエラ 「人工精霊……。答えろ、一体どうやって発現させた?」

アル 「俺たちが何をした!? ふざけるなっ!!」

ジェミニ 『私の心は作り物かもしれない。でも、マスターを守りたいと思うこの気持ちは……本物だと思うよ』

ケイファー 「ルティア、僕は君を……」

ルティア 「次回、双魂のジェミニ 第六話 機械仕掛けの双子星」

ジェミニ 『平和ってなんだろうね? みんなが幸せになること?』



つづく

Copyright(C) 双魂のジェミニ製作委員会