【新しい風・後編】



「敵情視察」

そう言われて連れて来られたのはまだ建設途中のレース場。
新しいメンバーのちゃんを含め、僕たちはグランド上へ入ってみると、そこには聞いた事がないモーター音。
その高速すぎるモーター音を聞いて、僕たちが驚いていると…


「げっ!?」


ちゃんが横で驚いた声を出して、僕もびっくりしてどうしたのか聞くと…



「ご、ごめん…烈くんちょっと帽子貸してもらえないかな?一生のお願い!!」



ええ!?
一生のお願いって…

両手を合わせて僕と同じ目線まで体制を低くしてきたちゃん。
理由を聞いても


「訳は後で話すから…今は何も聞かないで〜(涙)」


間近でみるちゃんの瞳に涙すら見えて、正直ドキリとしてしまう。
なんか貸してあげないとこの体制のままだと思うとなんか可愛そうな気にもなってきたので…


「別にかまわないよ。はい」

「Thanks!!」


アメリカ帰りのちゃんは本場の発音でお礼を言った。
僕の帽子を手に入れると正面から顔を隠すよう深くかぶった。
変に思ったけど、訳は後で話すって言ってくれたし、とりあえず見て見ぬふりをした。




ちゃんが帽子を被ったと同時にコースからいきなり黒いマシンが僕たちの横を通過した。
ものすごく早い。

「あれは!?」



ちゃんがまた驚く。
ちゃんはあのマシンの事を知っている?



そんな疑問が沸いた時に、颯爽と外国人レーサー達が僕たちの前に現れた。


「どうだい?これがグランプリマシンだ。君たちのマシンでは到底勝負ができない事がわかったかい?」

「到底勝負できないだと!?やってやる!!」

金髪でゴーグルをしたレーサーが僕たちを挑発してきた。
その言葉に挑発された豪はすかさずマグナムを走らせる。
しかし、結果は明らかだった。ちゃんの勝負の時同様、マグナムはまったく追いつかず、周回遅れになるほどだ。
その結果に豪も膝をつく。


「今度こそわかったかい?無理なんだよ。そのマシンでは」


外国人レーサー達がさらに追い討ちをかける。
こうなったら…


「豪!これを使え!!!」


藤吉くんから半ば無理やり借りたスピンコブラ用のモーターを豪に投げこんた。


「ちゃん!君のマシン。走らせてくれないか!」

「え?」

「このままじゃあ豪が駄目になっちゃうんだ。今渡したモーターだったマグナムと愛称がいいかどうか…」

「…」

ごめんちゃん。
よく事情は知らないけど。
あいつらに正体がばれたくないみたいだけど。
このまま、弟をほっとけないんだ。


ちゃんは少し考えて


「烈くんは…良いお兄ちゃんだね」

「え?」


にっこりと微笑んだちゃん。
そしてそのまま豪に歩み寄り…


「さぁ豪くん!もう一回いってみようか?」

「…。…よし!マグナム、頼むぞ!!」


モーター交換を済ませ、豪とちゃんはマシンを走らせる。
ちゃんはあいかわらず、同じグランプルマシンもあってか外国人チームのマシンに難なく追いつく。
そのすぐ後ろでマグナムはボディをがたがた言わせながらも、先ほどの走りとは別格だった。
そしてそのままちゃんのマシンの後をついていけている。



「なっ!日本にグランプリマシンが!?」



ポニーテールを翻し、外国人の女レーサーが動揺した。
帽子を深く被ったちゃんはその言葉には動じず、後ろからついて来る豪に視線を送っていた。
豪を見るちゃんの表情はとても優しい表情で…それでいて少し切ないような…


とても不思議な女の子だ。
僕はついつい魅入ってしまってた。






レースはちゃんと豪、外国人レーサーのマシンと同着で終わった。
…だが無残にもマグナムトルネードをしたマグナムはそのまま空中分解…。

その結果を外国人レーサー達は軽く笑って



「楽しみにしてるぜ」



そう言って去っていった。
僕たちは帰り際、もう一度会場を振り返り思った。


グランプリマシンがどういうものなのかよくわかった日だった。
って




「あれ?ちゃんがいない?」




会場から、ちゃんの姿が消えていた。





…



「まてよ!!」


俺の声を聞いて、ビクッとする少女。
おそるおそる帽子越しからちらりと様子を伺ってきた。


「…ドチラサマデショウカ?」

「お前。それ本気で言っているならNASAから離れて馬鹿になったんだな」

「…あ〜やっぱりばれちゃったかな?」

「俺の前でマシン走らせてそれを言うか?」

「ごもっとも」


観念して帽子の唾の向きを変える。
ようやく見る事ができた姿は、予測とはまったく違っていた。
背丈は伸びているものの、表情、雰囲気ともに以前となんら変わりない。
大きな瞳が俺を映していた。



「…で、どういうつもりだ?」

「なにが??」

「全部だ。WGPに参加する事。しかも日本代表。2年間連絡なし。」

「…」

「一様、幼馴染のつもりなのだが…。俺たちはそれ以下の関係で信用もなかったか?」

「…ごめんね。そういうつもりは無かったんだけど…」



2年ぶりの幼馴染との再会。
まさかこんな形になるとは思わなかった。
言いたい事が山ほどある。
しかし現状でそれを実行するべき場所ではない。



「なんで日本のチームなんだ?俺たちのチームでも良かっただろう?」

「それは…」


は少し気まずそうに返事を濁した。



「…WGP1ヶ月前でグランプリマシンすら持っていない最弱チームに、元NASA研究員のお前がいる必要があるんだ?」


「…弱小…」



の顔は、柔らかい表情から凛々しい表情へ変化する。
そう。NASAの研究員の頃の表情だ。
プライベートとは別の顔。ビジネスの顔。




「理由がないなら、日本代表を辞退しろ。
…今からでも遅くない。俺たちの所に戻ってこいよ」




「…それは引き抜き?」


「そう聞こえたか?」


不愉快そうなの問いに対して、悪ぶって返した。

もちろんそれもある。
俺たちの使用しているマシンの開発に携わっていた元研究員。
それ以上に天才児。
俺たちのデータだって彼女の頭には沢山入っている。

が敵になっては脅威になる。


しかも日本代表だって?


あんな弱小のチームにが?

の才能さえ分かっていないあいつらのところに居る意味があるのか?



「ブレット。だとしたら答えは『NO』だよ」


「なに?」


は真っ直ぐな目で俺を見た。
大きい瞳には笑みはなく、冷静で…哀しそうな表情だった。



「たしかに今、私のチームメイトはグランプリマシンについて詳しくない。
…だからって勝負はそのときになってみないとわからないよ」


「しかし確率で言ったら、可能性は薄い」



「…相変わらず、固いな〜」


「お前は、変わらずチャレンジャーだな」




ぴりっとした空気が少し和らぐ。



「ブレット。次はレースで会いましょう。もちろん勝つのは私たちだけどねw」


「お前以外、ノーマークだよ。あんな弱小チームは」


「あら?なら尚更勝つのは私たちだよ」


「っ!!?///」


にっこりと笑う。
その昔と変わらない笑顔につい言葉が詰まる。




そのまま、「またね」と手を振って去っていった。
次会うのはおそらくWGP。






「…それでも勝つのは俺たちだよ。…」





俺は彼女の背中を見ながら、一人つぶやいた。












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駐車場前



『あ〜!やっと戻ってきた!どこに行ってたんだよ』(豪)

『ほんとでげす!戻ってこないから心配したんでげすよ』(藤吉)

『…何かあったの?』(J)

『先ほどのレース中、様子がおかしかったしな』(リョウ)

『あっ…えっと(汗)』(烈)


「みなさん!大事な話があります!!!!」






「じつは…私、元NASA研究員でアストロレンジャーズのチームメイトでした!!!!」



「「「「「えーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!?」」」」」








FIN















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長編第2作目…。
すご〜く間空いちゃいましたね…すいません
夢主はブレットと幼馴染なのです。
H23.11.13









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