:: 双頭の悪魔
たまに少し読み直そうとして、結局、じっくり読んでしまう。
夏の“事件”でショックを受けたマリアは大学に休学届を出して旅に出て、行き着いた先が四国のある村。
資産家が買い取った廃村で芸術家たちが創作活動に勤しむ、外との関わりを極力絶った村と聞いて、心配になったマリアの両親に迎えに行ってもらうよう頼まれた江神たち。
story/trick
隔絶された木更村と川を挟んだもう一つの夏森村で起こる殺人事件。
クローズド・サークルと正統派なロジックで詰めていく推理が堪りません。
鍾乳洞が出てきたり、芸術家の集まる村ということからか、幻想的なイメージです。
「読者への挑戦」が3つあったけど、1つ目はまぁ犯人が分かったの。
よく考えて、論理的に潰し込みを図っていけば方向性が付くという本格推理小説は本当に読んでいて、わくわくする。最近の流行りじゃないみたいなのが残念。
本格推理小説に「そんな村あるかな」とか無粋なこと言っちゃダメです。
というか、私はむしろ、少し変わった舞台設定というだけで胸躍っちゃいます。最低限、その世界の法則性がはっきりしていて、物理法則が守られていれば、他はあまり気にならないかも。
トリックと2つの村での殺人事件がきちんと収束されていて、秀逸だと思います。
それぞれの伏線もちゃんと回収されている。
ちゃんと意味づけもされていて、江神が入手した情報できちんと犯人が分かるという美しさ。
あれにそんな意味があったのか!的な。
ラスト、クライマックスで江神が犯人と対峙する場面。読んでいて、息詰まる激しい応酬。
江神の追及をぴしゃりとはねつける犯人と犯人の抗議を無視して追い詰める江神。
すごい張り詰めた空気が伝わる。
対決の行方が知りたくて、一気に読んでしまった。
character
マリアへの面会を求めても取り次がれることなく追い返されてしまう推理小説研究会メンバーが強行手段に出て、木更村に乗り込んでの大立ち回りの場面は読んでいてわくわく。こういうのは江神シリーズならでは、って感じ。
騒動を知らずに図書室に居たマリアに雨に濡れた江神さんが声を掛けるところなんかは、どきどきさせてくれる。
「元気か、マリア?」
江神さん、カッコいい。この人、ほんとに雰囲気ある。
前作に続き、一人真実に気づく江神はいつも苦しそう。
マリアに自分の生い立ちをちらりと語るところがあるけど、寂しい感じ。
others
作家アリスシリーズは学生アリスが書いたもの、というのは、聞いたことがあったのですが、「犯罪学者」が出てくる推理小説を書いているとマリアに語ったという記述がこの「双頭の悪魔」に出ていたことに再読で気づきました。前回は気づかなかったなー。
事件収束後の場面での会話も甘酸っぱい感じ。江神シリーズは青春小説っぽいと読んだことがありますが、うん、まさにそんな感じ。
それでいて、ロジカル。
私にしては何回も読み直せる推理小説。
双頭の悪魔 (創元推理文庫)
双頭の悪魔
著者:有栖川有栖
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
1992年2月(1994年4月文庫化)
2013年8月読了