:: 江神二郎の洞察
ようやく読めました♪
大好きな江神二郎シリーズの短編集。
江神シリーズは長編5編、短編2編で完結する予定らしいけど、そんなこと言わずにもう少し書いて欲しい。
掲載作品は下記の通り。
瑠璃荘事件
ハードロック・ラバーズ・オンリー
やけた線路の上の死体
桜川のオフィーリア
四分間では短すぎる
開かずの間の怪
二十世紀的誘拐
除夜を歩く
蕩尽に関する一考察
story/trick
アリスが入学して以降の「月光ゲーム」前後の隙間を埋める短編集。
推理小説研究会(EMC)メンバーを愛する者としては、何気ないやり取りとか小さい事件で4人が一緒に行動しているのを垣間見られるだけでも嬉しい一冊。
一つ一つ詰めていくと得られる江神の結論。
このシリーズは大学時代が懐かしくなるような、学生たちの爽やかな感じとか、社会に出る前の少し前の限られた時間というちょっと感傷的になりそうな感じ等々、色々なものがないまぜになっていてイチ押し。
終わりを決めずに執筆頂きたいものです。
京都の趣きを感じさせつつ、元号が平成に変わろうとしている落ち着かない世相も描かれていて、ちょっと懐かしい記憶を思い起こさせてくれる短編集でした。
瑠璃荘事件
江神シリーズに期待している論理的な推理の積み上げが見られる。
これが冒頭に来ていて、テンション上がった。
ハードロック・ラバーズ・オンリー
好きな曲なら会話も成り立たないほどの大音量の喫茶店もいい・・・ものなのかな。
オチは「あぁ」って納得。
江神の洞察力と想像力がいい。
やけた線路の上の死体
時刻表ミステリーはちょっと苦手。想像力が付いて行かず、どのような状況なのか、全くイメージ沸かないので、結論だけ急いでしまう。
これも、ちゃんと江神のように状況を丁寧に掬い取る能力があれば分かるトリックなのかなぁ。
その証言から、その事実を認識して、推理しますか。
モチの実家、田舎の夏の1コマってところが、江神シリーズっぽくていい。皆でわいわいやりながら、探検に繰り出す感じ。
桜川のオフィーリア
人の秘密を知ってしまってからの緊張感。
桜が満開の時期の水死体。情緒的な風景をイメージさせる一方で哀しい事件の記憶。
EMCメンバーは分かってたようだけど、私は全く分からなかった。
石黒操と同じ不安感を持ちながら読みました。
四分間では短すぎる
ハリイ・ケメルマンの『九マイルは遠すぎる』という1947年に発表された小説があるらしいのだけど(読んだことない・・・)、この小説ばりにEMCメンバーがアリスが偶然聞いた会話を元にどんな意味が隠されているのか推理していくゲームに興じる話。
こういう、他愛のない遊びをできる4人は羨ましいほどの仲の良さ。ほのぼのしてて、いいわ〜。
オチも面白い。
開かずの間の怪
少し背筋がぞっとする夏の一コマ。
江神って動じないのがすごいよねぇ。どの事件でもそうだけど、ビビるとかないんだろうか。
トリックを見破ろうと一生懸命、皆で相談するところがEMCらしくていい。
二十世紀的誘拐
いつ、どのように絵画は盗まれたか。
“二十世紀的”っていうのヒントでも全く想像できなかった。難しかった。
江神と犯人の比喩的会話もお洒落というか、分からない人にはさっぱり分からない応酬。
珍しく江神がやり込められるところもあり。
有栖川先生の話の終わらせ方って綺麗で好き。余韻の残る幕引き。
除夜を歩く
江神とアリスが大晦日の夜を二人で歩きながら、延々会話をする話なんだけど、江神の最後まで踏み入れさせないようなところにちょっと切なさを感じつつも、大晦日に二人歩きっていうのは情緒的でいい。
モチの小説も劇中劇のように出来るんだけど、モチの力作をネタに二人で推理小説論議を繰り広げてくれる。
江神の言う通り、ミステリーで気になるのは、「別のトリックが使われた可能性を消去する方法がない」こと。
その意味では青崎有吾さんの『体育館の殺人』は結構潰し込みを図ってくれて高評価。
有栖川先生、時折、作中でこういった本格推理小説に対する持論を展開してくれますが、本格推理を愛しているのが感じられる。
蕩尽に関する一考察
本編でも少し書かれていたマリアが英都大推理小説研究会に入会するまでの話。
ちゃんとミステリーも入ってます。
character
江神がやっぱり寂しいというか、何かを抱えている感じがあるというか(抱えてるんだけど)、不意にどこかに消えてしまいそうな危うさがあるんですよね。そこがいいとも言えるけど。
「俺が死んだら」とか「来年は彼女とお参りにこい」とか、そんな不安になるようなこと言わないで〜。
上で散々書いたけど、江神シリーズって、4人(マリアが入ってからは5人)が冒険に出て行くような話なので、わくわくさせてくれる。
それぞれの持ち味と距離感が絶妙。モチと信長の掛け合いも笑いのポイントだし。
江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)
江神二郎の洞察
著者:有栖川有栖
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
2012年12月
2014年8月読了