これがホントのお年(落とし)玉? 山田風太郎『男性滅亡』

 お正月の古典的なギャグに玉を落として「これがホントのお年(落とし)玉」というのがあります。今回のバカSFはタマが落ちてしまうお話です。しかも、タマはタマでも男性の股間にぶら下がっている金の玉のお話です。ネタバレですのでご注意下さい。
 著者は忍法帖シリーズで有名な
山田風太郎。作品は『男性滅亡』です。
 196×年、アメリカの原子力発電所の廃棄物がビキニ海域に捨てられていることが判明。海域調査に向かった漁場調査船骸骨丸が日本に戻ってきた。船員たちは皆一様に
股間の痒みをうったえていた
 一ヵ月後、恐るべき事実が判明した。原子虱と名づけられた強烈な放射能をもっている新発見のスピロヘータほどの大きさの微小な虱が船員たちの陰嚢に取り付いており、船員たちの
陰嚢が腐ってもげ落ちてしまったのだ。しかも、伝染性であるという。たちまちのうちに原子虱は男性の間に広がっていった。男性の金玉は腐熟した茄子のごとく、ぼとぼとと落ち始めた
 そんな中、男性と女性の立場は変貌してしまう。吉原では男性が体を売り、国会では女性が主に議会を牛耳り、内閣は女性だけになってしまい、ここに女性社会が誕生した。その内閣が調査したところ、日本の残存男性能力保持者は数千人までに落ち込んでいた。このままでは日本は滅んでしまう。そこで政府が決定したのはその
男たちを「種男」として徴用し、抽選された女性と交わらせ、子孫を維持するという方針だった。
 東京で三人のみ残っていた
金玉保持者のうち、二人は徴用され、残る恩田周平にも徴用の日がやってきた。彼は原子虱の退治法研究のために徴用を免れていたのだが、事態はいよいよ差し迫ったことになっているらしい。恩田は政府に連れて行かれ、授精室へ導かれる。そこには度を越えた授精のために身も心もカラカラになりかけのかつての知人がいた。残るあと一人の金玉保持者は上野の浮浪者であった。恩田は自らの貞操を奪われる直前にはたと気づいた。今まで原子虱に金玉をやられなかった者たちの共通点を。そうだ、そうなのだ。「いんきんです。いんきんです!」恩田は思わず叫んだ。いんきんを起こす糸状菌が原子虱を食べてしまうのでいんきんを持っている男どもは今までやられずにすんでいたのだ。かくして神国日本はいんきんに救われたのだった
 さすが山田風太郎ですね。ぶっ飛びすぎです。久しぶりに小説を呼んでいて吹き出してしまいました。ただ一部現代の見地からいえば、女性蔑視的表現・思想がみられるのでそういうのが苦手な人は読むのはやめたほうがいいかもしれません(でも、閣議の席が、「
まんなかに井戸をつくってそのまわりにソファをすえる」という描写であるのには笑いました。井戸端会議ですね)。そういえば筒井康隆にも『女権国家の繁栄と崩壊』という作品があって、これも抱腹絶倒ものでした(女性には眉をひそめられるだろうけれど)。
 あと山田風太郎には
陰茎人』という鼻が生殖器になっている男の話、『自動射精器などの作品があるので、機会があったら紹介したいと思います。