
| 性的倒錯・・・それはバカSFへの誘い 森奈津子『西城秀樹のおかげです』 |
バカ度:☆☆☆☆☆
ヒデキカンゲキ度:☆☆☆☆☆
| 性的倒錯。それはバカSFへの誘(いざな)いです。小松左京の『男を探せ!』とか、『ダブル三角』なんかがすごく面白いです。今日はその性的倒錯バカSFの中でも特にぶっとんでいらっしゃる森奈津子の『西城秀樹のおかげです』です。 恐ろしい疫病のために、人類は破滅の危機に陥っていた。主人公「わたくし」は一人生き残り、孤独な生活を送っている。「わたくし」は自称十五歳の清らかな乙女。「ああ、どこかにわたくしを可愛がって下さるお優しいお姉さまが生き残っているはずだわ」という川端康成の少女小説の登場人物みたいなことを思いながら毎日をエンジョイしているのだった。そんな中、「わたくし」は生き残りの一人の男性を発見したのだ。男(自称ジャネット)は女装好きのゲイボーイであった。ジャネットと「わたくし」はゲイとレズビアンという同性愛好者で、妙にウマが合った。なぜ、この二人が生き残ったのか。話している中に、ウイルスが蔓延していたそのとき、二人は同じ行動をとっていたことがわかった。(ここからネタバレです) そう、二人は西城秀樹の『ヤングマン』を聴きながら熱狂的にダンスをしていたのだった。元々『ヤングマン』はヴィレッジ・ピープルの『Y.M.C.A』のカバー曲だが、ヴィレッジ・ピープルはリードボーカル以外は全員ゲイなのであり、アメリカのY.M.C.Aは当時ゲイの溜まり場であり、「きみもY.M.C.Aで楽しく過ごそう」という歌の裏の意味には「きみもY.M.C.Aでホモろうぜ」というものが隠されているのである。その裏の意味を知っており、社会に迫害されている同性愛者である二人は、世間の連中がそれを知らずに「ワーイ・M・C・A」などと陽気に踊っている姿が面白すぎてたまらず、α波が出まくって、免疫力が異常に高まり、疫病の脅威から逃れることができたのだった。 二人きりの生活が続いたある日、地球に疫病ウイルスを持ち込んだ宇宙人が謝罪のためにやってくる。そして、なんでも要望をきくから許してくれといった。そこで「わたくし」とジャネットは次のことを頼んだ。人類の復興・・・ではなく、ジャネットは自分を愛する屈強な十人の若者の召使(もちろん男性)と美少年を要望し、「わたくし」はレンガ造りの女学校と自分を愛してくれる優しいお姉さまを出してくれるように頼むのだった。「わたくし」とジャネットは「秀樹、ありがとう」と今は亡き西城秀樹に感謝を捧げるのであった。 そして、ゲイとレズビアンだけになった地球人類は八十八年後に滅亡したのであった。 初めて、これを読んだときは爆笑し、あまりのすごさに絶句しました。凄いぜ、森奈津子・・・・・・。プロフィールによれば、趣味はカクテル作りとゲイカルチャー観察。あらゆる意味で凄いやつだぜ・・・・・・。 ちなみにこの人が参加しているアンソロジーに『カサブランカ革命〜百合小説の誘惑』というものがあるのですが(なんと大原まり子氏も参加している)、森奈津子氏は『悶絶!バナナワニ園』というほんとうにバカな話を書いているので、機会があればこちらもご紹介したいと思います。 |
収録:『西城秀樹のおかげです』(ハヤカワ文庫JA)『SFバカ本 たいやき篇プラス』(廣済堂文庫)