アンドロイドは電気羊な(?)バカSF P・K・ディック『水蜘蛛計画』

バカ度:★★★

オールスター度:★★★★★

 フィリップ・K・ディック。初めて彼の小説を読んだとき、僕はその面白さに打ち震えました。中学生の時のことです。僕とディックとの出会いは『ユービック』でした。
 『ブレードランナー』や『マイノリティリポート』、『トータル・リコール』の原作者として知られるディックの作品を「バカ」とは何事だといわれるむきもありましょうが、なにを持って「バカ」SFという「バカ」という冠詞をつけるのかは最終的には個人の裁量によるのです。人によっては、「日本が沈没するなんてありえねーよ」とか、「死者が蘇るなんてバカバカしくて観てらんねーよ、アハハハ」なんて人もいるでしょう(自分で例を挙げといてなんだが、そんなやつは死んでしまえ)。
 だいたいをもってSFというのは馬鹿げた嘘なのです。大ボラです。っていうか、小説も、映画も、ゲームも、マンガも、基本的には全部ウソの世界なのです。大切なのはそのウソの世界に「現実」を持ち込むのではなく、説得力があるかどうかなのでは?となんだか珍しく真面目に語ってしまいましたが。
 とにかく今日はフィリップ・K・ディックの『水蜘蛛計画』です。
 時は未来。移住局はナクバレン収容所の収容者をプロキシマの植民計画のために宇宙船で送ることになるが、質量が失われたために宇宙船は縮んでしまい、彼らの生命は危い状況になっていた。移住局の役人はあることを思いついた。今はもう抹殺されてしまった、あの優秀なプレコグ(予知能力者)をこの時代に連れてくればこの問題が解決するのではないか。そして、移住局の役人たちはタイムマシンで過去へと飛んだ(ここからネタバレです)。
 そして、移住局の人間はやってきた。1954年の世界SF大会へSF小説は未来を限りなく正確に予測しており、未来ではそれは預言書のようなものだった。SF小説は未来人に「論文」と呼ばれ、SF作家は偉大なプレコグとして未来人に畏怖されているのだった(ちなみに未来では大統領命令でプレコグ、つまりSF作家は全員死刑にされ根絶やしになっている)
 SF大会では移住局の人間がA・E・ヴァン・ヴォクトに『非Aの世界』の結末について尋ねたり、ブラッドベリに近づこうとして「目的を忘れるんじゃない」と同じ移住局の人間に怒られたりして(これじゃ未来人じゃなくて、熱心なSFファンだよ)、ついに目的の人物を発見する。いた!ポール・アンダーソン(『タウ・ゼロ』で有名な実在のSF作家)だ!
 移住局の人間はアンダーソンをだまくらかして、未来へ連れて行き、宇宙船を救うための公式を考えさせたのだった。という楽しいお話でした。
 僕は海外SFに弱いので細かいところには?マークが浮かぶのですが、大筋では楽しめました。海外SFに強いのなら尚更楽しめると思います。
収録;マイノリティリポート(ハヤカワ文庫SF)