バカSF「日本シリーズ」@ 小松左京『日本漂流』 |
バカ度:★★★★★
スケール:★★★★★
| 個人的にバカSFの中で日本が題名につくものを僕は「日本シリーズ」と呼んでいます。今日はその日本シリーズ第一弾、小松左京の『日本漂流』です。このお話は『日本沈没』を書くまでのつなぎとして書いたものらしいのですが、僕は『日本沈没』と同様に傑作であると信じております。 長野県M町はここ数年間、毎日大小の地震におそわれ続けていた。地震の原因を探るべく、学者のチームが震源地をボーリングすることにし、最新式のターボドリルが地面を掘り進み、ついに目標地点まで達したその時・・・・・・。突如、日本全土を震度五乃至六の地震に揺れ動いたのだ!津波や火事で日本の総人口の一割が死亡する惨事となった。そして、北海道を望む津軽半島にいた人々は信じられない光景を目にすることになる。北海道がみるみる内に離れていってしまうのだ。・・・いや、北海道が離れていっているのではない。「み、見ろ!日本が、動き出しただ!」(ここからネタバレです) 日本列島は九州で波をかき分けながら、南へ十五ノットのスピードで泳ぎ出した。たまたま近くにいたアメリカの原子力潜水艦はとんでもないものを観測した。日本列島の下に巨大な黒いものの影があり、それには巨大な四肢、もしくはヒレがついており、それが水をかきわけながら進んでいるというのだ。そう、日本に伝わるあの伝説は本当だったのだ。「地面の下にいる巨大なナマズが震えることによって地震が起きる」。M町あたりにはこのナマズの背びれがあって、それをボーリングで刺激してしまったことによって怪物を起こしてしまったのだ。日本列島は海底に横たわったこの巨大なナマズの上に土砂が堆積してできたものだったのだ(ちなみに北海道はこの生物の排泄物、つまりウンコだったらしい)。 日本列島ナマズは漂流を続ける。オーストラリアに上陸する寸前で方向を転進し、南太平洋へ。希望峰をまわり、大西洋側へ。ビスケー湾を沖を北上し、ドーバー海峡に九州と南西諸島をはめ込んでしまった。そのままフランスに這い登り、しばし腰を落ち着け、モスクワに進軍。シベリア東北端で冬眠に入り、ベーリング海峡にはまりこんだ(アメリカとソビエトをつないじゃったんですね)。そして日本はかねてからの望みどおり、東西世界の架け橋となったのであった。 スケールの大きなバカSFでした。やっぱり、「日本」という国家を冠せられた題名だと、社会的な情勢へと話が広がっていくので、バカSFの根源である「if」から始まる想像の世界がリアリティをともなってくるのだと僕は思います。しかも「国家」というものを常にテーマにしてきた小松作品ですからね。今度の映画で国家がどのように描かれるのか、僕にはかなり興味があります。 収録:角川文庫『ウインク』 |