一枚の小説、思いの記録






   キリスト


   誰も知らないこの街で

   名もないキリストが暮らしている

   誰を救うこともなく 奇蹟を起こすこともなく

   ただ毎日あくせくと働いて

   世界が救われる日を待っている


   壊れていく世界を思いながら

   夢を見ることもなく 悲観することもなく

   毎日 その日暮らしに働いて

   自分の時間を生きていく


   世界が堕ちていくのを見ながら

   正しき者がより正しいことを

   誤れし者がより誤れる様子を見ながら

   なにも見ないふりをして毎日を生きている


   この瞬間にも裁きの時が訪れるかもしれない

   そのことを知っているのは自分だけであることを知りながら

   来たるべき世界の姿を思い描きながら

   日々 この世の仲間と談笑している


   覚醒した頭脳と 銀の信念を持ち

   限りない優しさと 雷の厳しさを持ち

   裁きに対する覚悟を固めている

   覚悟を固めながら 自らの時代に時が来ないことを願っている


   キリストはいつの時代にもいた

   それを否定する根拠があるだろうか

   裁きの時がくればそのことが証明されるだろう