一枚の小説、思いの記録


   いつも風が吹いていた



   いつも風が吹いていた

  僕が悔しさに爪を噛んでいた時も
  淋しさに涙を流していた時も


   いつも風が吹いていた

  もし僕が、あの時、風に向って走り出していたら
  きっと風は僕を飛び立たせてくれただろう


  そして天高く舞い上がらせてくれただろう

  でも僕はそうしなかった
  自分の力だけで飛べる翼が欲しかったから


  いや、単に、飛ぶ勇気がなかっただけかもしれない


   いつも風が吹いていた

  君が力強く羽ばたいていた時も
  そして、あの、君の翼が折れてしまった時も


   いつも風が吹いていた

  今、僕は、もう空は飛べなくていいような気がしてきた
  そして新しい願いができた

   風になりたい

  君の、その光を失った目が
  再びあの輝きを取り戻してくれるように

  君の、その、傷ついた翼でも空を飛べるように
  君に吹く

   そんな風になりたい