冬の海の光景

  あの日 君と僕は 海に出かけた                   

  空はどこまでも透き通り 冬の海は激しく波しぶきをあげていた

  寄り添って涙を流していた僕らは

  冷たい海にそっと手を触れて歩き出した

  この波がもしも僕らをさらって洗い流してくれたなら

  僕らにはこの世に残すものは何もなかったのに


  あれから時が過ぎて 僕らはそれぞれの人生を歩き

  それぞれの運命の人と出会って

  それぞれの鎖につながれて生きて

  過去を思い出すこともなく


  僕らの思いはあのとき真実だった

  いまではつかむことのできない真実

  いま手にしている生活は

  ーーー現実  真実とは違う現実


  どこにもいけない僕の心の中に眠っている思いは

  あのときの海の光景とともに

  朝もやの中で夢に現れる


  いずれ消え去っていくこの光景が

  あの海岸ではいまもかわらず広がっているかもしれない