バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

→  Diary
→  Guest book
→  E-mail















Yahoo!ジオシティーズ
→Home    →俳優名鑑    →レビューの部屋    →バナナフィッシュとは    →リンク集

Dr.パルナサスの鏡(The Imaginarium of Doctor Parnassus)

鏡の中はわがままな願望でいっぱい

ユーモア、キャラクター像、映像が見事に融合した幻想世界

作品情報

■STAFF
監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム&チャールズ・マッケオン
撮影:ニコラ・ペコリーニ
衣装デザイン:モニク・プリュドム
編集:ミック・オーズリー
音楽:マイケル・ダナ&ジェフ・ダナ
■CAST
ヒース・レジャー(トニー)
クリストファー・プラマー(パルナサス博士)
リリー・コール(ヴァレンティナ)
アンドリュー・ガーフィールド(アントン)
ヴァーン・トロイヤー(パーシー)
トム・ウェイツ(悪魔/Mr.ニック)
ジョニー・デップ(鏡の中のトニー#1)

ジュード・ロウ(鏡の中のトニー#2)

コリン・ファレル(鏡の中のトニー#3)

作品レビュー


スパイスの利いたユーモアとキャラクターの個性、そして幻想的な映像が絶妙に混ざり合い、独自の世界を作り出すことに成功した作品です。テリー・ギリアムが本来の力を発揮してくれました。

■絶妙なユーモアセンス
やはり、ギリアムのユーモアセンスは抜群。
台詞や展開によって表現されるユーモアが、キャラクターの持つユーモアと溶け合い、幻想的な映像がそれを後押し。

例えば、最愛の人を見つけたのに、老いているがゆえに、それを伝えられないことに悩む博士の件では、
不死の力があるのに自殺しようとする博士と、それを必死で止めようとする小人(ここでの小人の台詞がオモシロイ)、そして、その自殺をサラッと阻止する悪魔。
場面は荒波が叩きつける絶壁で、そこから落ちた博士を悪魔がひょいと釣竿で吊り上げる。
見事に3つの要素が融合して、ダークで辛辣な幻想世界を創りあげています。

■キャラクターの個性
特にそのユーモアを支えているのが、3要素のうちのキャラクターの個性です。
ひとり一人が一筋縄ではいかない苦旨い個性。
中でも小人と悪魔の個性は味がありました。

悪魔は良い意味でとても「悪魔的」。
博士たちをからかうように、賭けを持ちかけ、チャンスを与え、気まぐれで助けてみたりする。
「悪の化身」というよりは、「意地悪なひねくれ者」。
いつも隅からひょっこり現れて、本当に意地悪。
でも、その意地悪さがダークな雰囲気にさらにビターな味を加えてくれています。

小人も非常に面白いです。
昔からの博士の片腕で、キャラクターの中で最も物事がよく見えています。
だからこそ、その助言や忠告は的を射ていて、あまりに的確すぎて「確かに」という笑いがこみ上げる。
お笑いでいう「ツッコミ」に見事に徹してくれているのです。
彼がちゃんといてくれることで、観る側もホッとする、そんな愛すべきキャラクターです。
この役どころを小人にしたのも、ハイセンス。

そして、忘れてはならないのが、この作品が遺作となったヒース・レジャーです。
映画を見る前はマジメな役かと思いましたが、そうでもなく。
とてもずる賢い男の役で、「ヤバイ」と思った時の表情や、嘘を隠そうとするさりげない仕草が面白い。
普通にやっているようですが、こういうのをわざとらしくせず、自然に演じるのは難しいもの。
それをさらりと演じられるのは、彼が演技派である何よりの証拠。
演技のタイプとしては、ちょっとずる賢くて、セクシーで、一言多いのが魅力だった『カサノバ』に近い感じです。
道化の格好もよく似合っていて、カッコ良かったです。

■監督ギリアムのパワー
監督であるギリアムも素晴らしいです。
ユーモアとキャラクターの個性と映像を絶妙に溶け合わせたのは、紛れも無く彼の構成力。
その構成力をもって、彼の頭の中にあったイメージを壮大な世界として創りあげたのです。

ただ、正直、ストーリー自体は、かなり分かりにくい部分も。
特に、博士と悪魔が最初に賭けをした部分の件は、不親切なほど分かりにくいつくりです。
しかし、実はそんなことは問題ではないのです。
そもそも、この映画自体良く分からない幻想世界。
むしろ、分かりにくくてもやもやした感じがあれば、そのもやもやが幻想世界への誘いを助けてくれる。
分かりにくい方が、映画を楽しめるという、不思議な力を持った作品なのです。
ギリアムのほかに、ストーリーが分かりにくいことが強みになる監督がいるでしょうか?

そして、その物語が行き着く先も、観客の期待を良い意味で裏切りました。
最初や中盤とはイメージをがらりと変えたトニーと、
悪魔の決して悪ではない意地悪な「悪魔っぽさ」がうまく終盤の展開と絡み合い、深い味を出す。
そして、それを上手くラストの苦甘さにつなげました。
すごく苦いけど後味の良い、なんとも不思議な感覚が楽しい作品。
そして想像し得ないラストへ物語を違和感なく持っていく
ギリアムのパワーが感じられる作品でもありました。