バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

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ファンタスティックMr.フォックス(Fantastic Mr.fox

ファンタスティックに、生きる

愛とユーモアに溢れた傑作

作品情報

■STAFF
監督:ウェス・アンダーソン
脚本: ウェス・アンダーソン&ノア・バームック
製作:ウェス・アンダーソン&スコット・ルーディン他
原作:ロアルド・ダール
撮影:トリスタン・オリヴァー
音楽:アレクサンドル・デスプラ

■CAST
ジョージ・クルーニー(Mrフォックス)
メリル・ストリープ(Mrs.フォックス)
ジェイソン・シュワルツマン(アッシュ)
エリック・アンダーソン(クリストファソン)
ビル・マーレイ(バジャー)
ウィレム・デフォー(ラット)

作品レビュー


人形を使った温かみのある映像とキャラクターたちの個性が生み出すハーモニーが絶妙で、
見事にシュールなアンダーソンワールドを形作ってる。
その世界の中でMr.フォックスやその息子アッシュなど、
キャラクターたちの思いや変化が大きな説得力を持って描かれているのも素晴らしい。
音楽もいちいち気が利いていて、最高というにふさわしい作品。

■映像が生む温かさとキャラクターの個性
近年、フルCGアニメや3D 作品などが目立つなかで、
あえて昔ながらのストップモーションを用いている辺りは、さすがアンダーソン。
全編を包む粋な雰囲気や、キャラクター一体一体のユーモラスな動きの魅力はCGになればすべてなくなってしまうだろう。
しかも、こういう雰囲気や魅力はシュールな世界に絶妙にマッチしている。
アンダーソンは、さすが、自らの作品をよく理解していて、どうすればその世界観を伝えられるか分かっている。

また、映像に関して言えば、一つ一つのキャラクターパペットが個性的なのがうれしい。
背の高さや横幅などの体型はもちろん、
顔立ちや表情、動き方も一体一体ちがっていて、それぞれの性格や心情に説得力を持たせている。
しかも、それらの外見的特徴と、性格、心情が織りなすハーモニーは実にユーモラスで、観ていて楽しくなる。
そうやって、キャラクターごとに一つ一つ丁寧に作られているのも、ストップモーションならではだし、
その中でも、これほどそういった部分に注力されている作品はそうはない。
作り手の深い愛情を感じる一方、観る側もキャラクター一つ一つに愛情を持って見つめることができる。

また、音楽も魅力的。
画面の中の躍動感をポップな音楽が際立たせてくれたり、
西部劇さながらの人間との対決のシーンでは、勇気を奮い立たせるような(?)音楽が程よく胸を刺激する。
また、有名な曲ではないつなぎのメロディも素晴らしく、それぞれがおもちゃ的な可愛らしさを持ちつつ、その場面になじんでいる。

■伝えるものを持ち、ウィットにとんだ脚本
この映画の素晴らしいところは、全編を包むシュールな世界観だけではなく、
きちんと伝えるべきものを中盤から終盤にかけて描いているところだ。

その一つは主人公のMr.フォックスの姿から鮮やかに浮き上がってくる。
小さく収まることを嫌い、昔のように泥棒業を始める彼の姿には、野生動物のサガを飛び越えた、
人間にも変換できる普遍的な心理が感じられる。
冒険を求めてやまない心、いわゆるロマンというやつである。
そういうものを求める心情が見事にストーリーの中に組み込まれていて、
観る者に共感を与えるに違いない。
また、この部分に関してはネズミもいい味を出しているのだが、ネタバレなので書かない。

もう一つの伝えるべきもの、それは息子アッシュの姿に描かれている。
変わり者で、ひねくれ者で、チビで、でもどこかで父のようになりたいと強く願っているアッシュは
終盤ではその父よりも存在感が大きい。
彼のひねくれ者ならではの行動は、冒頭からいちいち面白いのだが、
そこには常に、父に対する愛情や、自分を認めてほしいという願望が表れている。
そして、ラストの方では、劣等感の裏返しでもあった、そのひねくれた根性を捨てたとも言えるいいセリフを吐き、その成長で見る者の心を熱くしてくれる。

また、全編にわたってウィットにとんだセリフがちりばめられているのも楽しい。
さらりと出てくる一言一言に、気が利いたユーモアと、ちょっと苦い毒がある。
展開も同じく、ユーモラスで、
特に、キツネ相手とは思えない農場主たちの奮闘ぶりは、程よくパロディ的でオモシロい。

画面からにじみ出る温かみと、キャラクターの個性、気の利いたセリフや、描かれる深い心情など、さまざまな要素が魅力の最高の一品。