あの頃ペニーレインと(Almost Famous)彼を変えたのは、ロックと切ない初恋だった
ロックへの愛と甘酸っぱさに溢れた青春ロードムービー 作品情報
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■STAFF
監督: キャメロン・クロウ
脚本:キャメロン・クロウ
撮影:ジョン・トール
衣装:ベッツィ・ヘイマン
編集: サー・クライン
音楽: ダニー・ブラムソン
■CAST
パトリック・フュジット(ウィリアム)
ケイト・ハドソン(ペニー・レイン)
フランシス・マクドーマンド(ママ)
ビリー・クラダップ(ラッセル)
フィリップ・シーモア・ホフマン(レスター)
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作品レビュー

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間違いなく、キャメロン・クロウの最高傑作。
素晴らしい脚本と、個性豊かすぎるキャラクター、言葉より威力を持った音楽に満ちた、まさに愛すべきロック映画。
■キャラクターの魅力と台詞
やはり、脚本が冴えわたっている。
その素晴らしさは、ストーリープロットもそうなのだが、一人一人のセリフによるところが多いだろう。
個性豊かなキャラクターたちの魅力は彼らが発するのそのセリフによるものだといっても過言ではない。
一人一人のキャラクターが魅力的だが、その中でも飛びぬけていた3人について。
まずは、主人公、ウィリアムの良き相談相手ともなっている真のロック崇拝者、シーモア・ホフマン演じるレスター。
出番は少ないが彼の語る言葉は、芸術としてのロックへの愛に満ちた、もはや哲学ともいうべき名台詞ばかりだ。
たとえば「顔がきれいな奴は根性がないから本当の芸術は生み出せない。でもオレたちには頭がある」とか、
「本当の友達はクールじゃない姿をさらけ出せる相手だ」とか。
これは彼が吐き捨てた名台詞のほんの一部だが、私のようにロックについて全くの素人であっても、
人生論ともいうべき彼のロック哲学には深みを感じる。
しかも、こういった台詞は作中の出来事と重なっていき、なおその深みを増していくのである。
レスターに負けじとその個性を発揮していたのがウィリアムの母役のフランシス・マクドーマンドだ。
とにかく強烈すぎるキャラクター。
熱心すぎる教育者であり、独自の人生論を持っている。
あまりに熱心すぎ、あまりに相手をねじ伏せてしまいすぎるので、
ツアー中に母から電話があるとその凄味に笑ってしまう。
誰でも母と話すと、怖い先生にひどく叱りつけられた子供の様に小さくなってしまうのだ。
しかし、それは単に強烈なだけではなく、
レスターのロック哲学のような母親哲学なるものの存在を感じさせるほど、支配力と愛情に溢れている。
演じるマクドーマンドの意志の強さを感じさせる口調や画面への目力も当然その言葉の支配力を強めている。
そして、もちろんこの映画のシーンスティラーはペニー・レインを演じたケイト・ハドソンだ。
まぶしい笑顔をたたえているが、その表情はどこか哀愁が漂い、ミステリアスな雰囲気を帯びている。
本名を尋ねられた時、何も答えずただじっと見つめ返すその仕草は彼女のそういう謎めいた部分をよく表している。
こういうハドソンの演技は、ウィリアムが憧れるペニー・レインという存在をより魅力的にしている。
彼女のセリフは、超現実主義の母とは対照的で、夢物語のよう。
強烈さはないが、未知の世界を感じさせ、そこにウィリアムが惹かれていったことがよくわかる。
その言い方も笑顔ではあるが、どこか空虚で本質がどこにあるかわからないようなもの(これはハドソンの実力)。
彼女自身どこか現実を見ていないようであり、そんな彼女のラストでの変化には希望が湧いてくる。
■ロックバンドとの旅の描き方
脚本について、ほかの分も触れたい。
ロックバンドとの道中の描き方がまた最高なのだ。
実際、過去に起こったことのある事件や事故を織り交ぜながら、メンバーの確執を鮮やかに浮き上がらせていく。
そして、そういったものを見事に笑い飛ばすコメディセンス! 観ていて気持ちがいいくらいだ。
これが、特にこの脚本の秀逸しているところのように思える。
そして、その笑いは決してバカにしたようなものではなく、
この欠点だらけのロックバンドに対する「ロック崇拝」とはまた別の「ダメ人間への愛情」が感じられる。
そして、そういうバンド内での不満や確執やらの問題は、ラストの飛行機での大暴露大会に集約される。これが最高に面白い。
■音楽の魅力
ウィリアムはそれまで教育者の母の下、娯楽の要素が排除されたような環境で育ってきた。
だからそれまでは、大好きなロックについても自分で聞き漁ったり、評論を書いてみたりと、
「自分」という枠の中に収まっていた。
しかし、ペニーと出会い、未知の香りのする彼女と一緒にロックバンドと旅することは
今まで知りえなかった世界に足を踏み入れることだった。
そういう未知の世界への期待感を表現するのに、ロックという世界は最高。
音楽という観客もそのまま感じられる媒体を通して伝えるので、ウィリアムと同じような期待感を持って、観ることができるのだ。
音楽は道中でも非常にいい味を出している。
言葉よりも音楽のほうが心に響くところをわかっている。
それは、未知への期待感を表す時もそうだし、ペニーの魅力を表現するときもそうだ。
その中でも、特に際立っているのが、バスの中での合唱シーンだ。
何とも言えない気持ちの温まる感じは、言葉によっては決して成し得ないだろう。
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