バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

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ブラック・スワン(The Social Network)

純白の野心は、漆黒の狂気にかわる

「現実」に潜む「悪夢」

作品情報

■STAFF
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:マーク・ヘイマン&アンドレス・ハインツ&ジョン・J・マクローリン
製作:スコット・フランクリン&マイク・メダヴォイ&アーノルド・メッサー&ブライアン・オリヴァー
撮影:マシュー・リバティーク
音楽:クリント・マンセル

■CAST
ナタリー・ポートマン(ニナ)
ヴァンサン・カッセル(トマス)
ミラ・クニス(リリー)
バーバラ・ハーシー(エリカ)
ウィノナ・ライダー(べス)

作品レビュー

これといったストーリーがあるわけではないが、現実と悪夢を交錯させることにより、主人公の恐怖を観客にも体感させることに成功している極上のスリラー。痛みに注目した映像も利いている。ポートマンは主人公の繊細さとそれゆえ壊されていく精神を見事に表現していた。

■「現実」の「悪夢」
この映画を傑作の域にまで高めているのが、「現実」と「悪夢」の描き方だ。
序盤から、「現実」の中に「悪夢」を潜ませておき、時間がたつにつれ「悪夢」がその領域をどんどん広げていく。
さらに、「現実」自体も、「悪夢」に徐々に近づけ、その境界線を不明瞭にしていくことで、
主人公と同じように観る側にも、どこまでが「現実」でどこまでが「悪夢」なのか分からなくなり、その恐怖を追体験できるのだ。

ラストの展開にも、この「現実」「悪夢」の描き方は効果をもたらしている。
言ってしまえばありがちなラストではあるが、
そこまでで「現実」と「悪夢」の境界線を見えなくしているので、どうなるか予想がつかない。
というより、予想する余裕もない。
だからこそ、ラストが、もはや感動と言えてしまうほど、大きな衝撃と迫力を持って、こちらに迫ってくるのである。

バレエシーンの美しさも、まさに完璧で、力強く羽ばたく黒鳥の妖艶さは、ラストの衝撃を後押しさえしている。

■ポートマンの演技
ポートマンも、当然のことながら素晴らしい。
主人公の繊細さを十二分に表現しており、悪夢におびえる様子は説得力があった。
そして、何よりも、そうやって壊されていく精神を過剰になることなく演じているのが素晴らしかった。
どうしてもオーバーになりやすく、狂気を必要以上に押し出してしまいがちなところを、きちんと抑えて、
あくまでも繊細さを失わせない演技で、もろく崩れそうな際際の状態をラストまで見事に演じきった。

また、他の俳優陣の中では、ポートマンの母を演じたバーバラ・ハーシーが秀逸。
恐怖すら覚えるほどの娘への異様な愛情を体現しつつ、本来あるべき母の温かい視線もにじませる。
ポートマンの演技が光ったのも、この母の存在が大きかったようにも思える。