バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

→  Diary
→  Guest book
→  E-mail















Yahoo!ジオシティーズ
→Home    →俳優名鑑    →レビューの部屋    →バナナフィッシュとは    →リンク集

ドライヴ(Drive

疾走する純愛

寡黙且つ美しい、暴力と切なさ

作品情報

■STAFF

監督: ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本: ホセイン・アミニ
原作: ジェイムス・サリス
製作: マーク・プラット
撮影: ニュートン・トーマス・サイジェル
音楽: クリフ・マルティネス
編集: マシュー・ニューマン
■CAST
ライアン・ゴズリング(ドライバー)
キャリー・マリガン(アイリーン)
ブライアン・クランストン(シャノン)
アルバート・ブルックス(バーニー・ローズ)
オスカー・アイザック(スタンダード)
クリスティーナ・ヘンドリックス(ブランチ)
ロン・パールマン(ニーノ)

作品レビュー


言葉をギリギリまで削ぎ落とし、その空白に緊迫感や初々しさ、暴力性を滲ませることに成功したハードボイルドの傑作。
主人公のドライバーを演じたゴズリングは、見事に寡黙な中にある奥行きを表現している。
後半、静寂の中の激しい暴力が鮮烈な印象、独特の映像美となっている。
一方、そういった暴力シーンに挟まれたロマンスの苦甘い味も良い。
全編に渡る孤独感と、ラストの切なさにも心動かされる。
映画だからこそ出せる深い味わいを持った映画。

■言葉を削ぎ落とした脚本
この映画はとにかくセリフが少ない。
冒頭の逃がしのシーンから、ほとんど言葉を発しないのだ。
無線から流れる声、エンジンの唸り、タイヤの擦れる音、視線の動き、
そういったもののみで緊迫感を表現し、初めから観る者を引き込む。
その冒頭から、逃がし終えた主人公の歩く姿を映しながらのタイトルコールは最高にカッコいい。
作り手の素晴らしいセンスが窺える。

その冒頭に続く、序盤から中盤にかけても、言葉は少ない。
が、視線の動きや仕草、表情などで伝え合うその様に、初々しさや生々しさがあり、
画面でありながら人肌というものを感じさせる。

そして、事件に巻き込まれていく段では、内に抑えつけられていた暴力性が滲んでくる。
それもやはり、削ぎ落とされた脚本の力によるものが大きい。
普段、あまり口を開かない主人公が、迷いなく発するからこそ、言葉が強烈になり、
その意志の強さと、抗えない恐怖をも与えるものとなっている。

■ライアン・ゴズリングの演技
主人公を完璧に演じたゴズリングの演技は素晴らしい。
その表情、視線の動き、仕草、動きの緩急のつけ方、
そういったものにより、寡黙な中にある奥行きを見事に体現している。

その中でも、特筆すべきなのは暴力性の表現だ。
抑えがきかなくなった暴力の衝動、それでもギリギリの線を越えまいと耐えるその様子が
表情や震える拳、声の出し方などで素晴らしく表現されている。
しかも、それは演じ過ぎのきらいがなく、あくまで自然に湧き上がる暴力の衝動と見える。
だからこそ、静寂の中にある暴力とマッチし、カッコいいのだ。
こういう風に演じられる俳優は、そうそういない。
もしかしたら彼だけではないかと思えてしまう。

ただの暴力性にとどまらず、繊細で孤独な雰囲気を纏っているのもポイントだ。
言葉の少なさと、彼自身がもともと持っている翳りがうまく呼応し、
主人公に暴力性とは相反する繊細さを与え、その人物像の複雑さ、多面的な様子を滲みだしている。

■暴力による映像美
徐々に剥き出しにされていく暴力は、
言葉少ない静寂と色を抜き落ち着いた画面の中で鮮烈な印象を与える。
静かな緊迫感の中、突如、解き放たれる暴力は観る者を圧倒する。
静とのコントラストのため、暴力は画面の中で美しく映える。
また、そういった暴力に差し挟まれるロマンスも美しい。
緊迫した中で、同じく解き放たれる感情には、ある種のカタルシスが含まれている。

静の中の暴力は鮮烈で美しいだけでなく、深い孤独を表現することに貢献している。
その強い印象により、他人とは相容れない主人公の様子が伝わってくるのだ。
しかし、一方では、彼が他者との繋がりを求めていることが口数少ない中に語られてもいる。
繋がりたいが、そうはできない、そのストレートな孤独感が心に沁みる。
そして、ラスト、ふっ、と未来を意識させるような瞬間が訪れる。
しかし、それでも、他者と繋がりきらない。
その切なさが観終わった後にも深い余韻を与えている。