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映画史上、最も嘆かれた死ヒース・レジャー(Heath
Ledger)
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若手演技派の中でも、抜きん出た存在だったヒース・レジャー。
演技がうまく、役作りに妥協せず、スター性もある、今後の映画界を引っぱっていくはずの人でした。
■注目され始めた頃
彼がはじめに注目を集めたのは、『パトリオット』です。
独立戦争を描いた映画で、メル・ギブソンの息子役を演じました。
この頃から演技がうまく、一つひとつの表情を丁寧に演じているという印象。
しかし、何よりこの映画で際立っていたのが、彼の恵まれた容姿です。
長身で細身、さらに小顔でその顔も美形ではありませんが女性から人気のありそうな優しげな顔立ち。
この後、彼はメジャー作、注目作にどんどん登場することになります。
『チョコレート』では、ビリー・ボブ・ソーントンの自殺してしまった息子役を、短い出演時間ながらも繊細な表情で印象深く演じ、
『ROCK YOU! [ロック・ユー!]』では騎士にあこがれるやんちゃな青年を快活に演じました。
そのほかにも『サハラに舞う羽』、『悪霊喰』、『ケリー・ザ・ギャング』、『ブラザーズ・グリム』などに出演し
どんどん注目を集めるようになります。
しかし、その中でも、彼の実力を世界中に知らしめたのが、『ブロークバック・マウンテン』です。
■『ブロークバック・マウンテン』とイメージの転回
ゲイのカウボーイを描いたこの映画での彼の役柄は、ゲイである事実を恐れ、それを隠し続けようとする男性イニス。
寡黙なこの役柄はレジャーがそれまで演じてきた「若僧」といわれがちな役柄とは大きく異なりました。
事実、レジャーにはじめにオファーが行ったのは陽気な相手役のジャックの方。
しかし、彼は自らより複雑で難しいイニスを演じたいと申し出ます。
そして、これまでのイメージをがらりと変えて、口数の少ない西部の男という雰囲気を作り出しつつ、
その中に潜む不安や緊張を演じることに成功。
相手役の演技派、ジェイク・ギレンホールが大雑把に見えてしまうほど、イニスの心を静かに繊細に表現したのです。
この演技で、レジャーはアカデミー賞主演男優賞にノミネート、そのほか数々の賞を受賞しました。
また、同じ時期に公開された『カサノバ』では、また雰囲気をがらりと変えて、
伝説のプレイボーイをクールかつコミカル、そして魅力たっぷりに演じています。
どんな役柄にもスルリと入っていける柔軟性が彼にはあったのです。
■『ダークナイト』と徹底した役作り
そして、忘れてはならないのは、彼が亡くなった後に公開され、大旋風を巻き起こした『ダークナイト』です。
作品は大ヒットし、彼自身この映画でオスカーを手にしています(亡くなった後ですが)が、公開前は大分様子が違いました。
彼が演じたジョーカーは、オリジナルでは名優ジャック・ニコルソンが演じています。
そのニコルソン・ジョーカーの評判が非常に良かったので、周囲からの風当たりが強かったのです。
ニコルソン本人からも、「ヒース・レジャーにジョーカーを演じるのは無理だ」と言われてしまっていました。
それに加えて、レジャーはかなり役作りにのめりこむタイプ、
そして演じる前にはどんな役柄でも演じられるかどうか不安になってしまうタイプだったようです。
ジョーカーを演じることへの不安も、やはりかなり大きかったらしく、その不安もあって役作りに没頭。
ジョーカーの気持ちを理解しようと、ホテルに缶詰になっていた時期もあったようです。
ただ、撮影後のインタビューで「ジョーカーの気持ちは分からなかった」と語っていました。
それでも、ヒース・ジョーカーがあれほどすばらしいものとなったのは、役作りの結果だと思います。
彼のジョーカーはとにかく不気味な動きからしてサイコー。
猫背でグネグネとした独特の動きは他の人には真似できっこありません(ニコルソンでも)。
もともと低いはずの声も、どこから出しているのか甲高く、ゲタゲタと笑う声も他の映画とは別物。
そして、そういう恐ろしい姿の中に、人間臭い悲哀を感じさせているのもすばらしかったです。
■俳優としての特徴
こうして、レジャーの出演作を振り返っても、彼がどれだけすばらしい俳優だったかが分かります。
その彼の俳優としての特徴を挙げるとするなら、それは「繊細型の演技派俳優」と言えるのではないでしょうか。
例えば、ジャック・ニコルソンなどはレジャーとは違い、鬼気迫る迫力を持った俳優です。
常に演技派であるというオーラを漂わせていて、その演技の内には溢れんばかりの強い感情がありありと見て取れます。
若手でいえばディカプリオなどが、この類の俳優だと思います。
しかし、レジャーはそういう迫力を持っているというより、さりげなくうまく演じてみせるジェフ・ブリッジスなどに近い感じがします。
力強い演技というよりは、静かな、あるいは軽やかな身振りの内に繊細な心理表現を潜ませて魅せるタイプの演技なのです。
ジョーカー役の時ですら、そのパフォーマンスの内にあるのは溢れ出す強い感情ではなく、
見え隠れする悲哀なのです。
もし、俳優を「繊細型」と「迫力型」に分けるとして、「繊細型」に振り分けられた中でも、
彼ほど卓越した才能を持っている人はそうはいないはずです。
ライアン・ゴズリングなどは同じく「繊細型」で演技力もレジャーに劣らないほどの実力がありますが
レジャーのポジションを占めるには、確実にスター性に乏しすぎます。
彼の代わりになれる俳優は、この先、現れないかもしれない。
そんなふうに思えてしまうほど、すばらしい俳優でした。
■おすすめ作
『パトリオット』
『チョコレート』
『ROCK YOU! [ロック・ユー!]』
『ブロークバック・マウンテン』
『アイム・ノット・ゼア』
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出演作
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1997年 ポーズ! おしゃべりパソコン犬危機一髪! (Paws)
1997年 ブラックロック (Blackrock)
1999年 トゥー・ハンズ 銃弾のY字路 (Two Hands)
1999年 恋のからさわぎ (10 Things I Hate About You)
2000年 パトリオット (The Patriot)
2001年 チョコレート (Monster's Ball)
2001年 ROCK YOU! [ロック・ユー!] (A Knight's Tale)
2002年 サハラに舞う羽根 (The Four Feathers)
2003年 ケリー・ザ・ギャング (Ned Kelly)
2003年 悪霊喰 (The Order)
2005年 カサノバ (Casanova)
2005年 ブロークバック・マウンテン (Brokeback Mountain)
2005年 ロード・オブ・ドッグタウン (Lords of Dogtown)
2005年 ブラザーズ・グリム (The Brothers Grimm)
2006年 キャンディ (Candy)
2007年 アイム・ノット・ゼア (I'm Not There)
2008年 ダークナイト(The Dark Knight)
2009年 Dr.パルナサスの鏡(The Imaginarium of Doctor Parnassus)
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