バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

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リトル・チルドレン(Little Children)

なぜ、満たされないの?

自分の生活に満足できない、大人になれない大人たち

作品情報

■STAFF
監督&脚本:トッド・フィールド(脚本は原作者と共同)
製作総指揮:ケント・オルターマン&トビー・エメリッヒ&パトリック・パーマー
撮影:アントニオ・カルバッシュ
音楽:トーマス・ニューマン
編集:レオ・トロンベッタ
原作:トム・ペロッタ

■CAST
ケイト・ウィンスレット(サラ・ピアース)
パトリック・ウィルソン(ブラッド・アダムソン)
ジェニファー・コネリー(キャシー・アダムソン)
ジャッキー・アール・ヘイリー(ロニー・マコーヴィー)
ノア・エメリッヒ(ラリー・ヘッジス)

作品レビュー

■「リトル・チルドレン」の作品概要と解釈
毎日同じことを繰り返すことしかできない退屈な日常に嫌気がさした主婦と、
夢やプライドを持っているのに、それに反して妻の代わりに「主夫」として子育てに明け暮れる男。
この二人の不倫を描いた作品です。
しかし、この二人「だけ」を描いた作品ではありません。
二人の背後には自分の生活に満足できない実際の人々の姿があります。
そういう人々を象徴しているのがこの二人であり、この映画そのものなのです。

主人公の二人、ケイト・ウィンスレット扮するサラもパトリック・ウィルソン演じるブラッドも、
日常生活に満足できず、そこから逸脱することを求めています。
だからその望みを満たすために、不倫に陥っていきます。
たとえ好みでなくとも、自分を日常から解放してくれる何かを求めたのです。
そういう望みはおそらく誰もの心にひそむものだと思います。
そこに切り込んでいくという題材自体が、私はとても好きでした。

■ブラックユーモアと気の利いたナレーション
これはかなり暗くなりがちな題材です。
しかし、そうはせずに全編をブラックな笑いで包んでいるので、嫌にならず、かえって面白く観れました。
しかもその笑いは、日常生活の中にあるちょっとした「異常」として組み込まれているので、見事に見透かされた気分になります。
このあたりは『アメリカン・ビューティ』に近いものがあります。
ブラックな笑いで日常生活をぶった切られた感覚があるのです。とてもうまいと思います。

もう一つ、暗くなるのを防いでいるのがナレーションの声です。
童話を読み上げるような話口調(『ベイブ』みたいな)と平凡な現代社会の一端、という奇妙な組み合わせが絶妙にマッチ。
独特な味わい深さが生まれた代わりに、暗い雰囲気を取り去ってくれています。
また、「黙るところは黙る」という優れた点もありました。
ナレーションがしゃべりすぎる映画は観る気がうせてしまいますが、
この映画はしゃべるべきところと黙るべきところをわきまえています。
だからこそ、ナレーションが効果的なのです。


■ラストから見える作り手の視点
終盤の展開もすばらしかったです。
今の生活のいとおしさ、自分自身の価値、罪を償うチャンス、そういうものが登場人物たちに与えられます。
観ていてほっとするというか、自分自身を肯定してもらえた気分になります。

こういう部分から、作り手が「退屈な日常に不満を持っている人々」を、愛情を持って見つめていることが分かります。
ここが『アメリカン・ビューティ』との大きな違いです。
『アメリカン・ビューティ』では、そういう人々を見下す視点から描かれていたため、
思い当たることがあって「どきっ」とはしますが、登場人物への共感はあまりありません。
でも、この映画は登場人物に共感し、同情することができます。
どちらも優れた映画ですが、私は『リトル・チルドレン』のこういう部分はとても好きでした。