バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

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失うものなくして、5億人の友達は作れない

議論からにじみ出るほの暗い情熱

作品情報

■STAFF
監督: デビッド・フィンチャー
脚本:アーロン・ソーキン
撮影:ジェフ・クローネンウェス
製作:スコット・ルーディン&マイケル・デ・ルーカ&ショーン・シャフィン、デイナ・ブルネッティ
製作総指揮:ケビン・スペイシー&アーロン・ソーキン
音楽: トレント・レズナー&アティカス・ロス

■CAST
ジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ)
アンドリュー・ガーフィールド(エドゥアルド・サベリン)
ジャスティン・ティンバーレイク(ショーン・パーカー)
アーミー・ハマー(キャメロン・ウィンクルボス&タイラー・ウィンクルボス)
ルーニー・マーラ(エリカ・オルブライト)
ジョゼフ・マゼロ(ダスティン・モスコビッツ)

作品レビュー


この作品を傑作の域にまで高めているのは、何と言っても力強い脚本。
しかし、その脚本の持つ魅力を映像化するのは極めて難しいはずであり、
監督のデビッド・フィンチャーや俳優陣が如何に優れていたかがうかがえる。
完璧な脚本とその魅力を100%伝えきる演出と演技、それらがこの映画を「2010年度最高の作品」と言わしめたのである。

■議論の中に暗い情熱を映し出す脚本
この脚本は一人一人の議論を中心に展開される。
台詞は「言葉の応酬」というのが相応しく、登場人物は次から次へと自らの意見をぶつけていく。
単調になりやすい描き方だが、この脚本のすごいところは、それを退屈と思わせず、
むしろ画面へ引き込む力も併せ持ってもいること。
それは、議論自体に若者の苛立ちと機知、そして人間的な欠陥が浮き彫りいなっているからだ。
そのほの暗い情熱に惹きつけられてしまうのである。

こうした若者の情熱が最も強く投影されているのが、主人公、ザッカーバーグの姿だ。
才能のある彼は周囲にその才能を知らしめたい、という強い願望を持っており、
その願望が強すぎるからこそ、周囲の感情には無頓着である。
芸術家と同じように、彼にとってはFacebookが才能を集結させた「作品」であり、
その「作品」を高めていくこと、自分の才能を発揮し、周囲に認めさせることがすべてであった。
そのために、そうとは知らず他人を傷つけてしまうのである。

つまり、自分の才能への情熱が強すぎるのだ。
そして、その才能を認めようとしない世間に対して怒り、敵対心を抱いているのだ。

そういう彼の様子は、冒頭の元ガールフレンドとの議論の段階からはっきりと見て取れる。
そして、物語が進んでいき、さまざまな議論が展開される中で、より鮮やかになっていく。
このような主人公の人格を暴くような議論だけでも十分楽しい。

そんな知的好奇心をくすぐる脚本になっている。

■脚本の魅力を映像化する演出、演技
だが、こういう議論中心で展開される脚本は、
たとえどんなに人間の心理をついた素晴らしいものであっても、取り方によっては退屈を誘う。
そして、そうなってしまう可能性は極めて高い。

しかし、この映画では退屈する場面など一つもない。
それは、間違いなくフィンチャーの演出の賜物。
さすが、これまで多くの秀作スリラーを手掛けてきただけあり、緊張感とスリルを画面に留めるのがうまい。
抑えた色調と、冷淡にさえ感じられる静かな演出で程よい緊張感を、
一方、徐々に全様が見えてくるミステリーのような演出でスリルを醸し出す。
そして、肝となる議論を次から次へと展開させるスピーディな演出で、文字通り目が離せないのである。
こういう演出があるからこそ、台詞の持つ意味、登場人物の心理がどんどん観る者の内に入ってくる。

俳優の演技も素晴らしい。
中でも、やはり突出していたのはザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグだ。
どうしても気弱なオタク青年のイメージが強かったが、この映画ではその気弱な部分を抑え、邪悪ささえ感じさせる演技を披露。
見事にザッカーバーグの暗い情熱や世間への苛立ちを体現した。