天国の口、終わりの楽園。(Y tu mamá también)もう、会うこともない。
一瞬の若い活力 作品情報
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■STAFF
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:カルロス・キュアロン、アルフォンソ・キュアロン
製作:アルフォンソ・キュアロン、ホルヘ・ベルガラ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:ナタリー・インブルーリア、フランク・ザッパ、羽鳥美保
■CAST
ガエル・ガルシア・ベルナル(フリオ)
ディエゴ・ルナ(テノッチ)
マリベル・ヴェルドゥ(ルイサ)
フアン・カルロス・レモリーナ(ハノ)
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作品レビュー

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少年たちの姿や特徴的なナレーション、そしてハンディカメラを駆使した長回しのカメラワークにより、リアリティと人間的な活力の溢れた映画に。
リアルに描かれた少年時代のはかなさ、それがさらに広がり、人生のはかなさまで心を向けずにはいられないラストも素晴らしい。
傑作というにふさわしい青春ロードムービー。
■活力にあふれた少年描写
青春といっても、この映画のそれはただ甘酸っぱく描いたようなやわなものではない。
主人公の二人の少年は気持ちが良いくらいに精気盛ん。
日々セックスのことを考え、ドラッグをやり、酔っ払い、バカ騒ぎをして、結局ヘマをやらかしたりする。
飾り気のない、あまりにもリアルな姿。
そんな彼らのくだらないやり取りや出来事からは、その人物像や生活、そしてただ親しいだけではないお互いへの歪んだ感情も滲んでくる。
そして、その内にある微かな痛みも見えてくるが、それが決してセンチな方向へは進まず、
バカなガキであってもそういう悩みを抱えているのだというその事実だけが語られているのだ。
その意味では二人へのアプローチは非常にクールで、それは映画の持つドキュメンタリー性によく合っている。
それでいて、明らかにくそガキである二人のやることなすことが、キラキラと輝き、エネルギーに満ちているのだ。
若いということの素晴らしさをこれほど鮮やかに描き出した映画は、他にあるだろうか?
また、二人を演じるベルナルとルナも素晴らしいキャスティング。
特にルナは、彼が持つ独特のガキっぽさとそれゆえの危うさが、キャラクターの幼さに絶妙にマッチ。
ルックスの良さ、可愛さも画面で映える。
なんだか彼にばかり目が行ってしまう。その意味でベルナルは少し損をしているかもしれない。
■ナレーションや長回し
ナレーションやハンディカメラの長回しもリアルな雰囲気に貢献している。
ナレーションに関しては、とにかく特徴的。
物語を中断するように、他の音を全て消してナレーションの声が入る。
それもかなり頻繁に。
なぜなら、それは物語とは直接関係ない、すれ違うだけの人々や出来事にも言及しているからだ。
しかし、それは決して無駄などではない。
旅で出会う様々な事柄を通して、メキシコという土地までもくっきりと浮かび上がらせる、
そんな役割を果たしているのだ。
この映画は少年たちの姿やそこから見える人生というものにとどまらず、
メキシコという土地、そこで生きるということまでもリアルに描き出しているのである。
また、つらつらと事実を語っていく形ではあるが、
その多くの言葉の後ろには、語られない思いが滲んでいる。
溢れる言葉の隙間からさまざまなことを感じられ、それが作品に奥行きを与えている。
さらにこのナレーションは淡々としているのだが、それゆえの絶妙な毒とユーモアを含んでいる。
起こっている事柄の間抜けさ、バカバカしさに比して、あまりにも冷静な口調で、
それがアイロニックで、面白い。
ハンディカメラを使った長回しの映像も見事。
この辺りは、さすがキュアロンらしい取り方で、
飾られないありのままの生活、行動といったものを覗いているような気分にさせられる。
ドキュメンタリーのように撮っていて、それが生きたメキシコらしさというものを直に感じさせてくれる。
■人生そのものへの感慨
そして、ラスト。
それまで描き続けていた若い輝きが一瞬の物であることが示される。
あれほど活力にあふれていた二人のはずなのに、旅を終えて帰った後は見る影もない。
その姿と、旅を共に続けた人妻の運命とが重なり、
人生のはかなさ、切なさ、そういったものが語らずとも胸に突き刺さる。
いや、語らない突き放したような語り手の姿勢が、よりこのラストを際立たせているのだ。
一瞬の輝きであるが故に、大事にしたいと思える映画なのである。
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