バナナフィッシュの世界―映画の小部屋―

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タイタニック(Titanic)

恋愛映画の金字塔

あらゆる意味で救われた――深海のような未知の心

作品情報

■STAFF
監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン
撮影:ラッセル・カーペンター
製作:ジェームズ・キャメロン&ジョン・ランドー
製作総指揮:レイ・サンキーニ
音楽:ジェームズ・ホーナー

■CAST
レオナルド・ディカプリオ(ジャック・ドーソン)
ケイト・ウィンスレット(ローズ・デウィット・ブケイター)
ビリー・ゼイン(キャルドン・ホックリー)
デビッド・ワーナー(スパイサー・ラブジョイ)
ビル・パクストン(ブロック・ロベット)
グロリア・スチュアート(Mrs.カルバート)
キャシー・ベイツ(マーガレット・“モリー”・ブラウン)
バーナード・ヒル(スミス船長)
ヴィクター・ガーバー(トーマス・アンドリュース)

作品レビュー


誰もが知っている超大作。
しかし、有名なだけではない。調べあげられた史実をはじめ、
抑圧される若い女性の心理を切り取った脚本や、俳優の演技、美しい場面を彩る音楽など
一つ一つの要素に作り手の情熱を感じる極上のエンターテインメント。

■確かな史実が生むリアリティ
『タイタニック』で、より感動的なのは男女の恋愛劇よりも
沈没する船の中、最後まで演奏をやめなかった楽士たちの姿だ、という人はかなり多いのではないだろうか。
確かに、感動的である。
しかし、それによって作品を揶揄するのは、少し違う気がする。
そういう姿一つ一つが、この沈没船に様々なドラマがあったことを誠実に伝え、作品自体に深みを与えているからだ。
主演二人では出せなかった哀愁――誇りや友情、愛情を持ちつつ死を受け入れた人々の哀愁を作品に描いたのである。
それだけではない。
実際にあった人間ドラマを交えながら、さまざまな人間模様、欲望、悲しみ、罪悪感などを描いている。
それにより、作品の深みは増し、二人の恋愛劇はそうしたドラマの一つなのだと感じ、
リアリティを増すのである。

リアリティを生む史実は人間ドラマだけではない。
船が沈没するまでの行程を細やかに再現している点も、素晴らしい。
しかも、冒頭でその行程を、映像を使ってうまく解説しているので、
観る側も、何が起こっているのか把握しやすい。
そこにはさりげない親切があるのだ。
とにかく、そうやってうまく再現されているので、後半の沈没していく中で逃げ惑う場面は、よりリアルに迫力を増すのである。

■女性の心理をつく脚本
キャメロンが手掛けた脚本もなかなかのもの。
ただ、その良さは脚本に溢れるセンスや技術ではなく、とにかく注ぎ込まれた情熱が感じられる点にある。
そこに情熱があるからこそ、作品全体に単なる恋愛劇に終わらせないテーマを生んでいるのだ。

そのテーマとは、ウィンスレット演じるヒロイン、ローズに体現される抑圧とそこからの解放だ。
決められた枠に収められ、内に持つ情熱を押し殺さなければならないことへの苦痛。
そして、それがずっと続いていくことへの不安。
そういうものを冒頭からラストまでずっと描いている。
そういう危機的な感情を丁寧に描いているからこそ、
抑圧とは無縁の貧しくも自由なジャックに憧れ、惹かれていくことが自然に映るし、
年老いたローズの言葉に深みを感じる。
そして、彼女の苦しみと内に秘めた情熱を理解し、
解放したいと望むジャックとの恋は必然とさえ感じられるのだ。
こういう流れがあるために、出会ったばかりの二人の絆の強さに不自然さを感じることなく、
感動できるのだ。

■ケイト・ウィンスレットの魅力
ウィンスレットのこの映画での輝きは群を抜いていた。
とにかく、綺麗、とにかく、可愛い。
もともと派手顔なので、お嬢様役は非常によく似合う。若くて肌もつるつる。
ぽっちゃりではあるけど、むしろそれが若さを強調していてGood。
もちろん演技も良く、はじめのうち、自分を押し殺しているが故の冷淡さには、
内側からほとばしる情熱の一端でもある知性が感じられる。
そして、自由になっていくにしたがって、その情熱を表に出していく様子が気持ちよく演じられている。

■音楽
この映画に最高の味付けをしてくれているのが、音楽だ。
どこでどういう音楽を使うと場面をより映えさせられるか、よく分かっているところが素晴らしい。
タイタニック号が発進する場面は、爽やかでいて期待感を持たせ、観客を物語に引き込む。
階下のパーティや、二人が執事から逃げる場面で流れる音楽は躍動感にあふれ、気持ちがいい。
船の先の超有名シーンや、ローズの絵を描く場面、ラストなどで流れるメインテーマは
それだけでロマンティックかつ感動的な雰囲気を作り出す、魔力ともいうべきすごい力を持っている。
こういう音楽があったからこそ、『タイタニック』は成功したのではないかと思えるほどだ。

■ジェームズ・キャメロン
キャメロンらしい小技が聞いているのも良い。
まだタイタニックの物語が語られる前、年老いたローズが持ち込んだ写真もラストにつなげるし、
ジャックがローズにつばのはき方を教えたことも後でいきてくる。
『T2』にしても『タイタニック』にしても、こうした小技は観る者を喜ばせてくれるし、涙も誘う。

描かれる女性像が強いのもキャメロンらしい。
実はほかのアクション映画と同じく、スローモーションも駆使されている。
タイトルコールの場面に凝っているのも、お馴染み。そこからすでに雰囲気を作りこんでいる。

すべてにおいてありったけの力を注ぎ込んで作られたことが分かる、作品への愛情に溢れた作品。