トゥルー・グリット(True Grit)
天罰なんか待ってられない
素朴で雄大な西武劇 作品情報
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■STAFF
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
脚本: ジョエル&イーサン・コーエン
製作:ジョエル&イーサン・コーエン&スコット・ルーディン
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:カーター・パーウェル
■CAST
ジェフ・ブリッジス(ルースター・コクバーン)
マット・デイモン(ラビーフ)
ヘイリー・スタインフェルド(マティ・ロス)
ジョシュ・ブローリン(チェイニー)
バリー・ペッパー(ラッキー・ネッド・ペッパー)
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作品レビュー

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いつもその素晴らしい構成力で魅せるコーエン兄弟が、シンプルな物語を丁寧に紡いだ一品。
それゆえ、登場人物や開拓期の西部の素朴な魅力が浮き彫りになっている。
俳優陣も魅力たっぷりで、スタインフェルドの田舎くさい雰囲気が役柄にマッチする一方、ブリッジスの酔っ払い演技も健在。
音楽も作品の素朴さを引き立てている。
■素朴な魅力あふれる映画
多様な登場人物がそれぞれに繰り広げる展開の妙味を、見事にまとめあげる構成力を持ったコーエン兄弟。
だが、今回はひとりの男を追うという、その一点に焦点を絞った非常にシンプルな物語構成だ。
しかし、この映画ではそのシンプルさが主人公の少女、マティや、無骨な保安官の魅力を際立たせていて素晴らしい。
シンプルだからこそ、ひとりひとりのセリフが印象的になり、それぞれの人物像が見事に浮き上がるのだ。
そして、その人物像はみな素朴であり、ユーモアを含んでいて、嫌味もない。
そんなキャラクターを囲む西部という土地も、雄大且つ飾らないその映像が、同じく素朴な魅力を醸し出している。
また、音楽も一役買っていて、画面からあふれる素朴な魅力を引き立てている。
終盤の展開も良い。
復讐劇の結末をドラマチックに脚色、演出せずに、どこかあっけなく描いているところが、素朴さを出し、西部劇にふさわしい虚無感さえ生んでいる。
しかも、そこで終わらせると虚無感がある一方、鑑賞後感がなくなってしまうことも考え、
程よく引っ張り、余韻を残すラストにつなげているのもうまい。
道中出くわす人々とのやり取りも利いている。
そこまで多くはないが、コーエン兄弟らしい珍道中的な妙味がいきていて、どこか楽しい。
■俳優陣の演技
キャラクターの中でも、主人公の少女、マティを演じたスタインフェルドと保安官を演じたブリッジスの魅力は秀逸
二人ともその個性をいかし、キャラクターに人間的な体温を感じさせている。
スタインフェルドは、まさにはまり役。
同じ少女スターであれば、すでに引っ張りだこなのがシアーシャ・ローナン。
そのローナンが幸薄いと思えるほど繊細さを醸し出す美少女である一方、
スタインフェルドはその顔立ちからも力強さを感じさせる。
言葉は悪いが。イモっぽいというか、田舎くさいというか。
だからこそ、西部劇では――特に復讐のために自ら危険な旅に出ることを選ぶ少女という役回りでは、いい味を出す。
そういう魅力は、演技とセリフによって、さらに威力を増す。
マティが話す言葉は知性に溢れており、
話す時の表情は大人と対等に渡り合おうとする強さと健気さが感じられる。
容姿とセリフ、演技(表情)という三つの要素が溶け合い、マティというキャラクターに大きな魅力を与えている。
もう一人の主役と言える、ブリッジすも良い。
やはりこの人の酔っ払い演技は凄まじく、とんでもないほどのリアリティを持っている。
べろんべろんに酔っぱらって、千鳥足で歩きながら銃を撃つ、そんな演技をこんなに自然に演じられる人は他にはいないはず。
しかも、酔い方の違いまで演じ分けている。
だが、当然それ以外の演技も素晴らしい。
演技で自分を目立たせるのではなく、逆に作品の雰囲気に溶け込んでいて、
ライフルを持つ姿も、馬に乗る姿も、風景の一つのようにとても自然。
改めて「ブリッジスすげー」と思う間もなく、するりするりとラストまで進み、
観終わってからコクバーンというキャラクターがとても魅力的に映っていたことに気が付く、そんなうまさを持っている。
他のキャストも、それぞれがそれぞれの個性を輝かせていた。
デイモンは何年たっても「若造」扱いだが、それがラビーフというキャラクターに絶妙にマッチし、旨みが出ているし、
仇であるチェイニーを演じたブローリンはいつもの迫力を抑え、小心者とさえ感じさせる演技でキャラクターにリアリティを与えていた。
そして、何よりうれしかったのが、悪党集団を率いる大物、ネッドを演じたバリー・ペッパーが意外なほどの存在感と、ドライな魅力を見せてくれたこと。
どのキャラクターも、どの風景も、素朴な魅力にあふれていた。
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