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坂木司『先生と僕』(双葉社)

 いつものように、気の弱い大学生が主人公で、ワトソン役になる。いつものようにというのは、この作家の作品では、どちらかというと引っ込み思案で、人間関係もやや弱い大学生やそれに近い年齢の男性が主人公になる。女性の場合もあるが『シンデレラ・ティース』の裏バージョンの『ホテル・ジューシー』の主人公の女子大生が元気溌剌なくらいだろう。この作品でも、探偵役は、ほとんどひきこもりに近い青年である。処女作『青空の卵』はひきこもり探偵で、助手役も極端に気弱な青年だ。

 この作品では、先生が誰を指しているのかが最後までよくわからないのが特徴だ。その設定がまずおもしろい。そして、主人公の大学生は、ちょっとしたことをきっかけにして暗い妄想に突入してしまう癖をもっている。古いきしむエレベーターに乗ると、ロープが切れて墜落していく様子を思い浮かべてしまうといった調子だ。

 したがって、彼は殺人場面を描いた推理小説なんてまったく駄目だ。ところが入学直後にはじめて知りあった同期生に強引に推理小説研究会に入部させられる。そこからミステリーマニアの美少年に探偵助手役として付き合わされるはめに陥る。

 この美少年が奨めた殺しの出てこないミステリー小説は次の通り。

 江戸川乱歩『押絵と旅する男』『屋根裏の散歩者』

 コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの叡智』中の「ノーウッドの建築士」

 アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』

 リリアン・J・ブラウン『猫は手がかりを読む』

 ドナルド・E・ウェストレイク『天から降ってきた泥棒』

 北村薫『六の宮の姫君』

 納得の作品群である。

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