ロンド: 若妻と半熟美少女のワイセツ・ディボーション
菜々子ちゃんが呼んだのは、紛れもなく、私と同じ名前。
『まさか、だよなあ。ひょっとして、オレのコトを…… いや、そんなはずが。こんなに可愛い女の子が、オレみたいなオジサンなんてさ』
もやもやを打ち払おうとしても、打ち払えないモヤモヤですが、ご老人の言葉を思い返すと、なおさら、あるはずのないことを妄想してしまいます。
目の前の巨大な画面は、満足げに、しかし、どこかしらはかない恥ずかしさをたたえた表情のまま、くたっと、ソファに横になる菜々子ちゃん。
それを見つめている自分の身体が、ずしりと重く感じられました。
「大変なモノを見てしまった」
私の耳には、確かにイク瞬間に呼んだ名前が「まさとし」と残っています。
この後、ホンモノの菜々子ちゃんに会うのがなぜか恐ろしく感じている私です。いったい、どんな顔をして会えば良いのか。
「まさか、俺の名前を呼びながらオナニーしただろう、なんて言えないしなあ」
今の今まで、いいえ、今だってロリコン趣味があるなんて思っても見ませんが、今こうして見てしまったオナニー姿に、硬く勃起してしまっている現実がありました。
あれもこれも、一気に考えなくてはならなくて、ちょっとしたパニックを起こしそうですが、あれこれ思い悩む前に、画面は進んでしまいます。
クタッとしていたのもつかの間。
身体を起こした菜々子ちゃんは、ちょっとイタズラな瞳で、画面を見つめると、手元のリモコンを操作しました。
「ん? 」
キョロキョロと左右を見回した後で、部屋から出て行きます。
これで終わりかと思った瞬間、私は、ある予感で画面を見つめていました。
アングルも変わらず、ソファだけが映っています。
『そっか、ビデオなら、早送りできるよな』
コンソールボックスにそれらしきボタンはすぐ見つかります。
そして、映像の中では、5分もたたないうちに、予想通り戻ってきたのです。
予想もしなかったのは、その姿です。
カモシカのような、と言いたいほどのすらっとした手足と、そして、全ての作りが細っこい、健康的な身体を覆うものが、何もなかったことでした。
そうです。菜々子ちゃんは、誰もいないことを確かめて、全てを脱ぎ去ってしまったのです。
あまりにも大胆すぎる行動ですが、家の中に、たった一人でいることを確かめて、この年頃特有の好奇心と冒険心がさせたのでしょう。
それに、ひょっとしたら、ついさっきのオーガズムで生まれた、女としての欲望に目覚めてしまったのかもしれません。
なんと言っても、いつもなら、好奇心いっぱいの溌剌とした瞳は、見たこともない潤んだ何かを蓄えています。
それこそは、もう一度さっきの快感を、いえ、もっと、もっと気持ち良くなりたいという、幼くとも健康的な欲望に違いありません。
ついさっき、秘所をアップで見てしまったと言っても、全てを脱ぎ捨てたヌードは、また違う物があります。
なんといっても、この年頃の女の子の無防備で、未成熟なヌードというのは、大人の女のヌードとはまた違った、独特のエロスを放っているのです。
スレンダーな首や手足から想像したとおりの、細くしなやかな裸身でした。
お椀型の膨らみは、まだ掌にも満たないサイズですが、オンナになりかけの年頃を自己主張するかのように、充ち満ちた独特の生硬な質感を見せているのです。
私の掌にスッポリ入りそうな膨らみの先端では、控えめなピンク色に色づく小さめの乳首が、さらに淡いピンクの小さな乳輪に埋まっていました。
こうなってくると、硬さを秘めて、まだ掌に入る小ささは、魅力が減るどころか、むしろ、未完成な輝きに満ちているとしかいえません。
ソファに浅く腰を下ろすと、待ちきれないとばかりに大胆に開いた足の間に、指が伸びてしまいます。
それはAVでよくあるような、柔らかなオッパイをこねくり回し、指をズボズボとナカに出し入れして見せるオナニーとは全く違います。
女性の本気のオナニーが、みんなそうなのか、はたまた、未完成のボディのためなのかはわかりませんが、菜々子ちゃんの手は、膨らみかけの胸を触ったりしません。
リモコンを操作すると、恐らくは、さっき見ていた画面が出たのでしょう。
ソファに半ばのけ反るようにしながら、チラチラと画面を見ては、その指は、もはやためらいも見せずに、股間に動きます。
やっぱり恥ずかしさが残っているせいでしょうか、残念ながら、左手で上からフタをするようにして、右手を使っているために、指先の動きは見えません。
しかし、すらっとした脚は、大きく左右に広がっているせいで、太腿に、ヒクッ、ヒクッとケイレンが走るのが、はっきりと見えます。
「感じてるんだよな。それも、相当……」
目の前の巨大モニタに映るその裸身は圧倒的です。
『まだ、ぜんぜん生えてないけど、スゴイ濡れ方するんだ。菜々子ちゃん、案外、エッチなのか? 』
手の間から見え隠れしている白桃のような割れ目は、性感の「才能」を感じさせるようにビショビショに濡れて光っていました。
少女の身体が感じやすく、濡れやすいのだという秘密を知ってしまったことに、一抹の後ろめたさを感じつつも、男としての興奮は、止まりません。
「あん!」
快感が、高まったせいでしょうか。
左手がいきなり、外されます。
ソファの上をかきむしるように動いて、何かをこらえるかのように、ぐっと、座面をつかんでいました。
右手の華奢な指先が激しくも繊細な動きで白桃の谷間を動いています。
広げ続けた脚のせいでしょうか、それともクチュクチュと指でかき回したせいでしょうか、白桃の谷底の赤みの強いピンクの肉が見え隠れしていました。
細かいところまでくっきりと写る高画質のモニタの中では、すぐ目の前で美少女のオナニーをのぞき込んでいるように錯覚させます。
もう一つの巨大なモニタにアップになった表情は、実物よりも大きく映し出され、快感に歪みながらも、なぜか、神々しいまでの美しさを見せています。
ヒクヒクと太ももがケイレンするその中心で、割れ目の中のサーモンピンクが、ヌラヌラと光って見えています。
身体に溢れてくる快感に喘ぐ、その表情は、完全にオンナを感じさせています。ホンわりと唇をちょっとだけ開けたままにした荒い呼吸に混ざり合う、淫らな声。
普段は、こんなエッチなことなど別世界のできごとであるかのように、元気いっぱいの純真な少女なのです。
「あん、あん、あ、あ、また、あう、いいっ!」
セーラー服姿でいる時は、どこからみても、真面目な優等生にしかみえない、いかにも図書委員長、という姿。
元気さと好奇心いっぱいの、とても優しい、ごくごく普通の女の子なのです。
いつも、ツインテールを跳ねながら、子犬のようにじゃれついてくる面影に、こんな淫靡な表情が浮かぶのを想像することなんてありえないこと。
「あん、い、いっちゃうっ!」
少女は、あっという間に、身体をピンと硬直させて、全身を貫く快感に身を委ねています。
キラキラ、知的好奇心に光る瞳と優しい笑顔の代わりに、快感に眉を寄せ、みなぎるオーガズムにヒクヒクと震える、太ももに力が入ります。
「はうう〜」
ソファの上で、ぐったりと力を抜きながら、喘ぐように呼吸する菜々子ちゃんの紅潮した頬。
その表情は、大人の女にも負けない、けれども、あまりにもアンバランスなエロティシズムを醸し出していました。
痛いほどに勃起してしまったものを自分でしごいてしまいたくなっている私がいます。
『オレ、ロリコンじゃなかったはずなのに』
純粋で素直な「聖なる少女」と、目の前のモニタに映る「エッチな女の子」が合わさって、私の中に特別な欲望が生まれていました。
『この子を…… 』
さっき老人に言われたときのためらいは、既にありませんでした。
『この手でイカせてみたい』
いつの間にか男の欲望に満ちた目で、少女を見ていました。
ぐったりとなった菜々子ちゃんがノロノロと身体を起こして、画面から消えてしまった後も、ソファだけが映った映像を、いつまでもボーッと見てしまっています。
かろうじて、自分でしごくのをこらえた私ですが、ふと気が付けば、消えたモニタと私をニコニコと見比べる老人がそこに立っていました。
「楽しんだかな?」
私が見たものを十分に知っていて、満足げに聞いてきたのは、ついさっきまで見つめていた少女の「祖父」なのです。
なんと答えて良いのか思いつかない私を無視して、老人は勝手に喋ります。
「ビデオは、まだまだタンとあるぞぉ、まあ、これ以上のシーンは、なかなか撮れんがなあ、まあ、代わりの場面はいろいろとある」
ニヤニヤとした表情からすれば、菜々子ちゃんの、あの姿を、ご老人もまた、じっくり見ていたのだとわかります。
あのビデオを見せたのはもちろん偶然ではなく、私に何を見せたのか、ご老人は、十分に知っているのです。
「ああ…… あのな、この部屋は、もう、おまえのもんじゃ」
「は? 」
「まあ、寝るのはいつもの部屋で良かろう」
二階には、ご老人の寝室と、いつも私が泊めてもらう客間が三部屋はあるはずです。
「まあ、いろいろと退屈はせんはずじゃぞ」
ニヤリと意味深に笑う顔には、まだまだ、他にもあるんだぞと雄弁に物語っています。
「あ、それとだな」
「はい?」
「ここでは、ワシの寝室以外、あらゆる場所が見えるようになっておる」
え?
心臓がコトンと音を立てて拍動した気がします。
「あらゆる所?」
思わず聞き返していました。
「そうじゃ。トイレも、風呂もじゃ。まあ、ワシのクソする所を見たいのなら止めんがのぉ、ほほほほ」
怪鳥のような笑い声を上げるご老人を見ながら、この部屋に案内されたときに映った、光景が改めて、頭に浮かびます。
唖然とする私の前を横切って老人の枯れた指は慣れた手つきでスイッチを叩きます。
こっちのパネルを切り替えるだけじゃ、と指先が踊るように動くのは、慣れきった既に長年使っていることを物語っています。
モニタに映る場所がめまぐるしく切り替わっている中に、確かに、トイレも風呂も映っているのを、まじまじと見てしまいます。
考えてはいけないのはわかっていても、菜々子ちゃんが、いつものように泊まっているのが自然に浮かんでしまいます。
泊まると言うことは、当然、風呂にも入ればトイレにだって行くのです。
『バカ、オレは何を考えて。ロリコンじゃなかっただろ、第一、菜々子ちゃんのトイレをみるなんて、そんな冒涜を…… 違う! そんなこと考えるなんて!』
「どうじゃ?」
頭の中には、さっき目に焼き付いたヌードの菜々子ちゃんが、シャワーを浴びる姿、トイレにしゃがむイメージが勝手に映し出されています。
慌てて、それを打ち消してみても次々と、考えることすらイケナイ姿の菜々子ちゃんの姿が現れてくるのです。
「ほほほ、ふ〜む、まんざらじゃないようじゃな、良き哉、良き哉、カッカッカッ」
クラクラするような葛藤と戦う私を無視して、まるで、掘った落とし穴のデキを自慢する小学生のように、目を輝かせています。
『ん?』
気が付けば、ご老人が顔をゆがめています。
『へ?顔面神経痛?』
しわだらけの顔を、さらにクチャクチャにして、覗き込んでいます。
『? 』
私は、それが、「ウインク」であることに、ようやく気が付いたのは、そこから数秒たってのことです。
つまりは、私の想像通りを「見ろ」と言っているのです。
菜々子ちゃんの全てを…… 寝る姿も着替えも言うに及ばず、風呂から、トイレまで、聖なる少女の禁断の姿を覗け、ということでしょうか。
さっきのオナニー姿を夢中になってみてしまった私はいまさら、良識ぶってそれを拒否することなどできません。
だからといって、素直に「見せてください」とも言えず、曖昧な笑みでハイと答える私にようやく納得してくれたのか、老人の顔面運動がようやく止まります。
確かに頭から離れません。
菜々子ちゃんの風呂も、そしてトイレも。
想像することすらイケナイコトなのに、指先を動かすだけで全てを目にしてしまう。
ご老人は、それを勧めてさえいるのです。
「家政婦にもこの部屋のことは教えておらんのでな」
掃除機は廊下の奥の物入れなのは知っておるな? と尋ねるでもなく喋ってから、ニヤリと笑った老人は、付け足しました。
「ゴミくずが出たら自分で裏のゴミ入れに入れておけ」
さっき、なんとか自分をしごくのをこらえた私は、老人の実に愉快そうな笑顔をかろうじて、冗談としてかわすことができました。
「この部屋のカギは、ワシの持っているヤツと、これしかない。予備は作っておらんので、そのつもりでな」
部屋を先に出てから、私に、出るときは必ずカギを閉めろと言い置いてから、ゆったりした足取りで、縁側に戻ってきます。
私は、慌ててカギを閉めて、ご老人を追って縁側に回りました。
「うん、あ、そうじゃ。今晩から、菜々子が来る。泊まるぞ」
「は?」
一瞬にして、ついさっき目に焼き付けた、オナニー姿がよみがえってしまいます。
「せっかくだ、おまえさん、ナナと一緒に風呂でも入るか?」
「ちょ、ちょっと、社長、そんな、ダメです。お孫さんですよ!」
「ははは。まあ、そうムキになるな。いずれ、ナナとヤルんだ。風呂くらい良いとは思うがな。まあ、冗句だよ、冗句、そう気にするでない」
老人は「ジョーク」ではなく「冗句」と聞こえる発音で、笑顔を見せますが、どこまでが本気なのか分かりません。
ただ、ご老人が無邪気な子どものように浮かべる、楽しそうな表情には、悪意を感じられませんでした。
「実は、ナナの両親が、泊まりで出かけることになったのでな。ワシの代わりにちょっと、東京までじゃが」
目の中に不思議な光をたたえた老人が、左の頬だけでにやりと笑います。
「なに、ホンの十日ほどだ」
くくく、としわだらけの喉の奥であげる笑い声。私はどんな表情をすれば良いのか戸惑うしかありません。
「東京、ですか?」
「そうじゃ、そう。東京、東京。大事な孫娘に一人で留守番をさせるのは危険だからな。ま、静江達からすれば、ワシの世話係のつもりでよこしたのかも知れんがなあ」
まだ直接お目に掛かったことはありませんが、ご老人の片腕ともいうべき部下と結婚して、今は「村山」に姓を変えた静江さんは、一粒種。
その一人娘だからこそ、菜々子ちゃんとご老人の結びつきは格別なのかもしれません。
それにしても、今、シワだらけの顔に埋まる目の中に、くっきりといたずらな色を帯びた光がきらめいています。
もはや明白でした。
菜々子ちゃんの両親が東京に行くのは、ご老人の差し金に違いありません。
『しかし、このじーさんのところに十日も泊まるのは、一人で留守番をするより、よっぽど危険じゃないのか?』
もちろん、そんなことは言い出せません。
「おまえさんも、仕事の都合でってことで東京に出張してもらおうかな」
老人が、ふたたび、目の光を深い色に変えて、また、にやりと笑います。
「もちろん、おまえさんの『東京』はこの家だがな。そうさ、な、とりあえず一週間ほどとでも言っておくがよかろう」
かかか、と乾いた笑い声。
私は一瞬答えに詰まりました。
老人の気まぐれに応えて朝まで飲み明かすことも、珍しくありません。酔うほどに出てくる若い時の「無茶話」が、私は嫌いではなく、むしろ楽しんで聞いていました。
それが老人には嬉しかったのかも知れませんが、おかげで老人に気に入られたのかもしれませんが、話が進むままに帰るに帰れず、何度、この家から、出勤したことか。
そんなときは、料理一つできない不器用な私に、自ら味噌汁まで作ってくれる、そんな親切心を持ち合わせている人でした。
ちょっと長めですが、泊まりこむことくらい、なんの問題もないのです。
いつもならば、何のためらいもなくできること。
しかし、菜々子ちゃんも、この家で暮らすとなると……
いえ「イヤ」というわけではないのです。むしろ、気持ちだけなら、その反対です。
私には、老人との賭けのことが心にのしかかっていたのです。そして、なによりも、さっきのオナニーシーンを見てしまった今、どんな顔をすればいいのか。
とはいえ、こうなってしまえば嫌も応もなく、なるようになれです。
とりあえずは、さすがに一週間も泊まるとなれば、それなりの用意は必要です。とりあえずは社に戻ることにしました。
幸いにして、社に戻って賭のことを手短に話すと、いつもの老人の気まぐれだろうと、所長は同情的です。
それに、なんと言っても、私が負けたときのチップまでは言えませんでしたが、賭に勝ったときのチップを一言漏らせば、それは、喉から手が出るほど欲しい数字です。
手当が出ないまでも、他のお客様からの連絡に対応することを条件に「出社に及ばず」の好待遇。
まあ、ご老人の威光は、営業所にとっては、それほどのものだ、と言うことかもしれません。
あとは、妻の了解を取り付けるだけ。
浮気をするわけではなくとも、菜々子ちゃんのことを思い浮かべると、ついつい引け目を感じてしまうのが、気の小さいところかもしれません。
でも、そこは、ご老人の意向に逆らえないのだと、自分をごまかします。
デスクの電話から、堂々と「急遽、東京への出張だ」と連絡している私です。
「オレだけど」
「あ、あなた? ちょうど良かったわ。今、会社から?」
いつになく、妻の声が弾んでいます。
「うん。今日から、急に出張が入ってさ。これから東京に二週間ほど行ってくる」
多めに言っておくに越したことはありません。ご老人の気まぐれがどうなるか、分からないのです。
「たいへんね。準備は、大丈夫なの?」
妻の声は心から同情的でした。
何と言っても、営業所の番号が表示され、回りの音も自然に入っているはず。
それに、普段の夫婦の関係からしたら、浮気を思い浮かべるはずもなく、となると、つゆほども妻が疑うことがないのも、当然と言えば当然かもしれません。
「うん。会社に置いてある、いつもの出張セットを使うよ」
老人のワガママに応えるため、いつも、簡単な着替えを置いておくのは、ここ最近の当たり前のことになっていました。
「ところで、ちょうど良かったって言ったね? 何かあった? 」
「え? えぇ、あのね、昨日ね、前に面接をしたところから連絡が入ってて、実は今日、朝一番でテストだったの」
「テスト? 」
「えぇ。黙っててごめんさい。もし、テストに落ちちゃったらって思ったら、恥ずかしくて言えなかったの」
「いや、いいけど。と言うことは、合格したんだね?」
「うん! そうなの! 」
「そっか〜 合格したのなら。良かった。うん。おめでとう」
「ありがと。あのね、それで、ね。実は、早速、仕事が決まったの。さっきまで、その研修をしてもらっていたのよ」
「おや、すごいね、おめでとう。よかった」
「うん。でね、早速、今日から来て欲しいってことで、仕事が始まるの! 初日は短いらしいんだけど、あのね、それがね、えっ〜と、どこだと思う?」
「ちょ、ちょっと待って。いったいどんな仕事なのかを聞いてないけど」
「あ、ごめんなさい。うれしくて! つい、ね、所長さんもとってもいい方なのよ。あのね、お年寄りのお世話をするの。そう、介護ってことね」
「え?介護?」
「うん。それもね、私、別に、何にもいわなかったんだけど、紹介されたのは、ね? どこだと思う? あなたがよ〜くご存じの方よ」
心配していたテストに合格したこともうれしかったのでしょうし、いきなり仕事が決まったことも、妻の声が、こんなに弾んでいる理由なのかもしれません。
しかし、まだ早い春の訪れをつげるかのような明るい妻の声とは裏腹に、私の胃袋は、冷たい手でわしづかみされていたのです。
猛烈にイヤな予感がします。
モヤモヤした黒い塊が声に現れてこないように、懸命な努力が必要でした。
「あのね、これから行くんだけど、ほら、あなたがいつもお世話になっている方。そういえば、一人暮らしをなさってるって、あなた、言ってらしたものね」
『言うな、その名前を……』
心の中で、叫んでいました。
「ふふっ、もうおわかりかしら。うん、そうよね、あなたならきっとすぐ分かるって思ったわ」
『言うなあ! 』
魂の叫びもむなしく、妻の弾んだ声が「大山さん」と告げるのを、気の遠くなるような思いの中で聞いていたのです。
その2へと戻ります。
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